グレモリー家の次男   作:EGO

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life03 いつの間にか天界だぜ

最近倒れてばっかりだな。

俺、シドウはそう思いながら回りを確認する。

見覚えがない設備ばかりの場所だ。俺は重い体を無理やり動かしてベッドを降り、窓を覗く。ぼやける目を凝らし、外を見た瞬間に理解する。ここは冥界ではなく、天界だと。

白一色の町並みと強烈な光が病室から確認できた。

まさか気を失っているうちに天界に担ぎ込まれていたとは……。

俺はベッドに腰をかけ、なぜこうなったかを思い出す。

ゼクラム様から話を聞いて、退出したまでは覚えてる。そこからが何も思い出せないから、そこで気絶したんだろう。

俺がそこまで考えると、病室の扉が開き、誰かが入ってくる。

視界のぼやけはマシになってきたが、まだよくわからないな、オーラの感知はどうにかできそうだ。

「シドウさん!よかった!」

今の声とうっすらとわかる銀髪とオーラから察するに

「………ロスヴァイセか?」

「はい!……あの、どうして疑問形なんですか?」

「いや、どうも視界がぼやけてな」

「だったら横になっていてください。まだ解呪も完璧ではないんです」

ロスヴァイセはそう言うと俺の体を支えベッドに寝かせてくれる。

俺はベッドに入ってから訊く。

「完璧ではないってことは、ある程度はできてると?」

「トウジさんを優先しているそうで、今シドウさんは薬で発作を抑えているそうです」

イリナのお父さんを優先か。向こうはただの人間だし、当たり前か。

俺はロスヴァイセに訊く。

「それで、ここには何をしに?」

「ああ、忘れるところでした。アザゼル先生から義手が届きました。『あったほうが多少は動きやすいだろう』とのことです」

ロスヴァイセがベッドに寝る俺の足の上に義手を置いたのか、重さが伝わってくる。でもどっちがひじ側で、どっちが拳側なのかがわからん。

「…………つけるの手伝ってくんない?」

「え?あ、はい。え~っと、ここをこうして、こうかな?」

ロスヴァイセがぶつぶつと言いながら義手をつけてくれた。

拳を握ったり、開いたり、回したりして動きを確認する。

「どうだ?ちゃんと動いてるか?」

「はい。大丈夫そうです」

良しっと。後はトウジさんの解呪が終わって、俺の番が来るのを待つだけだ。…………義手つけるのそれからでよかったかもな。

俺はそう考えながら、ロスヴァイセに訊く。

「リアスたちはどうだ?」

「シドウさんの心配はしていましたが、みんな口を揃えて、『シドウ先生なら大丈夫』と言っていましたよ」

「……実際その通りなんだよな」

オカ研のみんなからも、タフガイ認定されてしまった。

「あと、クリスマスプレゼント計画の方は?」

「そちらも問題なしです。シドウさんとトウジさんが怪我をした以外は、ですが」

ロスヴァイセの言葉に若干の刺を感じるのだが、反論出来ないな……。

「まぁ、クリスマス当日までには治るだろ」

「そうだといいんですが……」

ポジティブに捉える俺とは逆に、ロスヴァイセは不安そうな声音だ。

俺は若干無理をしながら体を捻り、微笑みながらロスヴァイセの頭を右手で撫でる。

「大丈夫だって。知ってのとうり、俺は頑丈なんだから」

「し、心配したんですよっ!」

震えた声から、彼女は泣いているのか、またはそれを我慢しているのか……。

俺は真剣な顔でロスヴァイセに言う。

「ロスヴァイセ、心配するなって。説得力がないかもしれないが、俺は大丈夫だ」

俺の言葉でロスヴァイセは黙ってしまった。

ドゴオォォォォォンっ!

「「ッ!?」」

俺とロスヴァイセの耳に突然爆発音が響いた!

「近かったな」

「敵……ですよね」

「だろうな」

俺がベッドから出ようとすると、ロスヴァイセに押さえつけられる。

「シドウさん!あなたは怪我人なんです!今回はここで……」

「休んでたら殺されちまうよ。だったらロスヴァイセと一緒にいたほうが行動しやすい」

「そうかもしれませんがっ!」

俺がロスヴァイセの説得をしていると、魔方陣が展開される。

「リアスさんからの連絡のようです」

ロスヴァイセが説明してくれる。よかった、敵の転移とかだったらマジでヤバイ。

『ロスヴァイセ、聞こえる?』

「はい、リアスさん。シドウさんも目を覚ましましたよ」

「聞こえてるぞ」

『よかった!ロスヴァイセ、とにかくお兄様を移動させられる?今そっちに、八重垣が向かっているの』

「わ、わかりました」

ロスヴァイセも動揺しているが、八重垣の狙いは俺じゃなくて、トウジさんのほうだろう。

「リアス、トウジさんがどこにいるか、わかるか」

『聞いてどうなさるおつもりですか!今、お兄様は……』

「いや、トウジさんも一緒に動かしたほうがいいなかってな?」

『でしたら、お兄様のいる病棟の隣の棟です』

この部屋からは見えないから、廊下側か

「わかった。移動する。救援はできるだけ早めに頼むぜ?」

『わかっています。それでは、これで』

リアスの言葉で魔方陣が消える。

「そんなわけだから、行きますか」

「狙ってやりましたねっ!」

ロスヴァイセが問いただしてくるが、俺はまっすぐ彼女の目を見て、言う。

「当たり前だろ」

ペシッ

「あたっ」

「~っ!」

俺を小突いたロスヴァイセは声になっていない声を出していた。よくわからないが、きっと怒っているのだろう。

俺は今度こそベッドを出る。

足は動く、手も動く、ブレードも出せるが少し脆いか。

視界はだいぶ回復して、前は見える。ブレードの展開がしにくいが、投げたり飛ばしたりしなければ大丈夫。

俺はそれを確認すると、魔力で患者服から普通のものに服を変える。これも問題な……

「きゃっ!」

ロスヴァイセが急に声を出した。

「どうした?」

「し、シドウさんっ!」

「だからなんだっ!」

「どうして上半身裸になるんですかっ!」

俺はそれを聞いて体を見る。確かに上半身裸だ。黒いズボンと、同じく黒いメンズのロングブーツを履いてある。

あれ?俺はライトアーマーとかにしようと思ったんだが、もしかして、毒の影響か?

それにしても、上半身裸の理由か……

「気持ちがいいからだ」

ペシッ

「あたっ」

「~っ!」

ロスヴァイセは俺を小突いて、顔を真っ赤にしていた。

「とりあえず、これを着てくださいっ!」

ロスヴァイセはそう言うと魔力で作ったと思われる、黒いロングコートを投げ渡してきた。

俺はそれを素直に羽織る。

「これでいいか?」

「~っ!なんでそうなるんですかっ!」

俺はロングコートを羽織ってはいる。前は全開だかな。

「何か不満か?ロスヴァイセが渡したって事は、こうして欲しかったわけじゃないのか?」

「もういいですっ!」

俺の言葉でロスヴァイセは反論を諦め、一瞬で鎧を纏い扉のほうに歩き出した。

「って、置いてくなよ」

俺もロスヴァイセを追って、扉のほうに歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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