グレモリー家の次男   作:EGO

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今日は二話更新を予定しています。
では一話目、どうぞ。


聖誕祭のファニーエンジェル
life01 謎の剣士だぜ


アウロス学園防衛戦から時が流れ、今はクリスマスシーズンだ。

そんなわけで俺は休日にあるヒトと共に、駒王町から駅三つほど離れた場所で買い物を楽しんでいた。

「ちょっと、シドウ!ボーっとしないの!」

「わかってるよ、セラ」

「ならいいけど」

あるヒトというのは、セラなわけなのだが……。理由はロスヴァイセとのデート前の、『セラともデートする』という約束を果たすためだ。

セラもオフを(強引に)もらい、俺はリアスたちから、『たまには気分転換をしたらどうですか』と散々言われていたため、今日のデートが実現したわけだ。

ちなみに今日、俺は義手を外している。あの戦いでグレンデルの拳を止めたり、踏まれたり、蹴られたり、ユーグリットを殴ったり、大砲撃ったりでガタがきていたようで、先日ついにぶっ壊れた。壊れたというよりは動きが悪くなったので修理に出している。ついでに言っておくとリアスたちは天界に行っている。

俺は回りを見回しながら言う。

「それにしても……スゴい人だな」

人間界(こっち)はクリスマスだもの、当たり前よ」

セラはそう言うと俺の手を握ってくる。

「迷子になったら大変だもの……ね?」

「迷子って……子供じゃないんだから……」

俺はそう言いながらもセラの手を握り返す。

セラはそれを受けて微笑んでいた。

 

 

 

 

 

その後セラお目当ての店に到着したわけだが……。

「何でオモチャ屋?」

「それは簡単よ☆」

セラは上機嫌に言う。

「魔法少女ミルキーのクリスマス限定グッズを手に入れるためよ☆」

魔法少女ミルキー……ああ、あれか。

「確か、アニメだったな?おまえもぶれないねぇ~」

「好きなものはいつまでも好きなものよ☆それじゃ、ゴーッ!」

「ちょっ!」

セラは俺の返事を聞くことなく、俺の手を引いてお店に突撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何の問題もなくデートは進み、目的だった物は無事確保。買ったものは転移魔法の応用で、冥界のセラの部屋に送ってある。

今、セラは飲み物を買いにいき、俺は公園のベンチで休ませてもらっている。

どうも最近、疲れが溜まりやすくなってしまったようで、時間を見つけたらしっかり休むことにしている。

昼過ぎの午後三時、時間帯的に誰かいてもいいと思うのだが、まるで結界でも張ってあるかのように、この公園の中にも周辺にも誰もいない。

てかこれは張られてるよな。セラが離れた瞬間に張った感じか?セラが気づいて早く戻ってくることを祈るな……いかんせん、現在俺は右腕しかない。

俺が周辺を警戒しているなかで、前方から一人の男が現れる。長い黒髪から察するに日本人か?

そんな俺の疑問はすぐさま吹き飛ばされた。その男の手には禍々しい波動を放つ剣が握られているからだ。

「俺に何か用か?」

「バアルの血筋の者……シドウ・グレモリーだな」

男はハッキリと言った。それにしてもバアル家か……。

「確かに俺の母はバアル家の出身だが……おまえみたいな奴は見覚えも聞いたこともないぜ?てか今おまえが言った通り、俺はあくまでグレモリー家の者なんだが……」

「……………………」

男は語らず剣を構え、オーラを込めていく。やる気のようだ。

俺は立ち上がり、ブレードを構え、男と対峙する。

男は音もなく、俺の視界から消える。だがオーラで場所はわかる!

俺は左からの突きを身を屈めることで避け、体を左に捻りながらブレードを斬り上げ、男の腹を裂きにいく!だが男は後ろに跳躍することでそれを避ける。

気配からして奴は人間、跳躍したら無防備だ。

俺はブレードを展開し、撃ち出していく。

男は冷静にブレードを弾き、着地の態勢に入る。

俺は走りだし、着地の瞬間を狙う!

すると突撃、男の剣から何かが放たれ、俺を攻撃してきたっ!?

俺は飛び退きながらブレードを放っていき、その何かを牽制する。

少し離れた場所に着地をして、改めて何かを見る。

八つの頭を持つ巨大なドラゴンと思われるそれは、血涙を流しながら、大きな顎を開き、無数の鋭い牙を覗かせていた。その首の一本一本が意思を持つようにうごめいている。

気配から見てあれは邪龍だな。八本首の邪龍となると……

「そいつは霊妙を喰らう狂龍(ヴェノム・ブラッド・ドラゴン)、日本的に言えば、八岐大蛇(やまたのおろち)ってやつか」

俺の言葉に男は頷いた。

「ご名答。ついでにこの剣は天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)、昔に折れたがそれを直し、八岐大蛇を取り込ませた。とんだ皮肉だろ?」

あの剣は八岐大蛇の尻尾から出てきたもの、それに本体を取り込ませたってことか。

その大蛇の首が一斉に俺に襲いかかってくる!

俺は右に左に、時には後ろに避けながら、どうにかして男に近づこうとするが、それを大蛇が許してはくれない。

俺がブレードを放っても体を盾にして防ぎ、懐に飛びこもうとしても、大蛇が男を囲むようにとぐろを巻き、攻撃を防いでくる。

傷をつけてもすぐさま治ってしまうあたり、さすがは邪龍だ。

だったらその首を落とすっ!

俺はブレードを握り直し、走り出す。大蛇の攻撃を避けていき、一本の首に狙いをつけ、一閃する。

首を落とせたが、新しい首がまた生えてきた。

ピチャッ………

「?」

首の後ろに水滴が落ちた感覚……雨でも降ってきたか?

俺は一度距離をとる。すると突然、視界がぼやけた。

「………ッ!?」

目を擦ってみてもぼやけ、ろくに前も見えなくなってきた。足に力が入らず、片膝をついてしまう。手も震え始め魔力の流れを狂わされたような感覚に襲われたっ!ブレードを維持できないっ!

そうかっ……思い出したっ!…こいつの血はっ……!

俺は男を睨みつける。

「て、テメェ……!」

「これでいい、存分に苦しむといい」

男がそう言うと、足元に転移型魔方陣が展開された。

「……待てっ!」

俺は苦し紛れにブレードを投げつけるが、男に届く前に消失してしまった。

その間に男は転移の光に包まれ消えていった。

「くそがっ………」

俺はうつ伏せに倒れこんだ。

「シドウ……シドウっ!」

セラの声を聞いて、俺の意識は暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は重い瞼を開け、上体を起こし周囲を確認する。白い天井に独特の匂い、病院だな。これ何回目だ?と自分に聞いてしまうぐらいの余裕はある。

それにしても"今回は"どれくらい寝てたんだろ?

「あ、シドウ。大丈夫?」

ちょうど入室したセラが、俺が目覚めたことを確認して訊いてくる。

「ああ、大丈夫だ。ってこのやり取りも何回目だろうな?」

俺の問いにセラは首を傾け、考えること数秒。

「う~ん。三回目?」

「知るか」

セラの回答に即答で返す。

それを聞いたセラは口元を引きつらせていたが……まぁいい。

「で、今度は何日ぐらい寝てたんだ?」

「今回は六時間ぐらい」

「短かったな……毒をくらったから長くなるかもって思ったんだが」

「ここ最近、あなたを心配するのがおかしく思えてきたわ……」

セラがそう言うが、俺も自分のタフさにびっくりだよ。

それに毎回数日単位で寝てたから六時間が短く感じてしまう。

そんな事を考える俺をよそにセラが言う。

「後でリアスちゃんが来るから、その時に一緒に細かく聞こうかしら。何があったのか、詳しくね」

「わかった。で、あれからずっとここにいたのか?」

「ま、まさかぁぁぁぁ!」

俺の質問にセラは動揺して目を泳がせていた。

いたな、絶対にいたな。

「仕事はサボるなよ?今日はオフだったからいいけど」

「わ、わかってるわよ!」

そんな会話をしながら待つこと数分、リアスが到着する。

「お兄様!大丈夫ですか!」

「そのセリフも何回目だろうな?」

「ふざけてる場合ですかっ!」

リアスはそう言いながらも俺の頬を引っ張ってくる。

とにふぁく(とにかく)ふぁなしていいかぁ?(はなしていいか?)

俺が確認するとリアスは手を離してくれる。

「それじゃ、俺とセラが別れてからだったな………

 

 

 

 

 

 

 

…………というわけだ」

俺はありのまま起こったことを話した。あの男と、あの剣の話を……。

一通り話を聞いたセラが訊いてくる。

「ひとついいかしら?」

「なんだ」

「シドウ、あなた……八岐大蛇の毒をくらったのよね?」

「ああ、そうだが?」

「ずいぶん元気ね?」

「……………確かに」

八岐大蛇の毒は、サマエルほどではないが魂をダメにするほど強力だと、(さっきは忘れていたが)アザゼルに聞かされていた情報だ。

なのに俺は体に異常を感じない。

「何でだろ?」

俺は二人に訊くが

「わかりません」

リアスはそう答えるが、セラはしばらく考え何かわかったような顔をした。

「何か心当たりがあるのか?」

「ええ!よく言うじゃない!バカは風邪を……」

スパンッ!

俺はハリセンを取りだしセラを叩いた。

「いたっ!は、ハリセン!?」

「マジメに頼む」

「じゃ、わかんない」

「あ、はい」

手詰まりだな。とにかく

「リアス、あの男についてはイッセーたちに警告しておいてくれ。あの計画の邪魔をされたら大事だ」

「わかりました」

「それにしても……俺とデートするとどうしてこう……邪魔が入るのか」

「運がないのよ……きっと」

セラはそう言うが、しょんぼりしている。

「気にするな、また俺が油断しただけだし、デートならまた行けばいい」

「うん…………」

セラはそう言うと黙ってしまった。

「とにかく、検査結果によっては退院できるだろ。そしたら俺も頑張らないとな」

「お兄様、あまり無理はしないでくださいね」

リアスが心配して声をかけてくれるが、俺は笑顔を作り、言う。

「なーに、ゆっくり休ませてもらったんだ。大丈夫だよ」

俺がそう言うとリアスは「それでは、失礼します」と言い残して部屋を出ていった。

「それじゃ、私も行くね」

「ああ、すまんね。毎度毎度こうなっちゃってさ」

「もう慣れたわ」

セラはそう言うと退出していった。

さて、もう一眠りしますかね。

俺は目を閉じ、眠気に身を任せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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