シドウは紫色の炎に包まれ、その炎が消えると同時に全身を包んでいた滅びのオーラが消え去り、崩れ落ちた。
「な、何が……」
「私がやりましたのよん♪」
疑問を口にする彼を紫色のゴスロリ衣装の女性が見下ろしていた。
『ヴァルブルガっ!テメェ邪魔しやがって!』
「あらん?ピンチに見えましたから助けて差し上げたのに」
『チッ!』
『シドウ先生!』
ヴァルブルガを追うように闇の獣となったギャスパーも現れる。
「あらん。しつこい子は嫌いじゃないわよん♪お姉さんはこっちよん♪ついてらっしゃいな」
ヴァルブルガはそう言うと、また離れていく。
「ギャスパー、俺はいい、あいつを追え!」
『で、でも……』
「あいつが被害を増やす前に……止めろ!」
ボロボロになりながらも立ち上がり、叫ぶシドウの気迫に負け、ギャスパーは『直ぐに戻ります』と告げ飛んでいった。
『あのクソ女、まぁいい。テメェは殺すなって言われてるが、最悪フェッニックスの涙があれば回復できるからなぁぁ……しばらくいたぶらせてもらうぜ?』
グレンデルはそう言うと、シドウに飛びかかった。
あれからシドウは何度も蹴られ、殴られ、踏まれ、ついに動かなくなってしまった。学校にもかなり近づいている。
『さぁぁて、そろそろ連れていくとするか?殺しちまったらリゼヴィムがうるさいからな』
シドウの右手を掴みあげ睨みつけるグレンデル。
そしてグレンデルはシドウの右手を掴んでいる手に力を込める。
「がぁぁぁぁっ!」
『痛ぇか?痛ぇよな!』
グレンデルはそのままシドウの右手を握り潰す。シドウの右手からは鳴ってはいけない音が鳴り続けていた。
「がぁぁっ………」
シドウはそれからピクリとも動かなくなってしまう。
それを見てグレンデルは一瞬、殺してしまったか、と焦るが、まだ息があることを確認し、ニヤリと笑った。
『あ?気絶しちまったか?まぁかなり痛めつけたからなぁ、当たりめぇか』
グレンデルはそう言うと連絡用魔方陣を展開し、会話を始めようとする。
グレンデルが何かを言おうとした矢先に、何かがグレンデルを殴りシドウを解放させた。
そのグレンデルを殴った何かは、空中に投げ出されたシドウをキャッチしグレンデルを睨みつける。
黒色の髪に紫色の瞳、全身から滲み出る闘気、傍らには黄金の獅子を引き連れていた。
『誰だぁ?俺の楽しみを邪魔しやがったのわ!』
「サイラオーグ・バアルだ」
彼……サイラオーグ・バアルは極大の闘気を放ちながらグレンデルを睨んだ。
「貴様か、シドウ様をここまでやったのは」
『だったらなんだ?ここにあるもんはほぼ全部ぶっ殺していいって、ぶっ壊していいって、聞いてるぜぇ!』
「学校を、子供たちを狙っているのか」
グレンデルの言葉にサイラオーグは怒りをあらわにし、いっそう強くグレンデルを睨み、シドウを寝かせた。
「させてなるものか……!滅んでもらうぞ、邪龍よ!貴様を冥界の怨敵と断定する!レグルスゥゥゥゥ!」
『ハッ!』
サイラオーグの傍らに立つ獅子、レグルスが黄金の輝きを放ち始め、サイラオーグは高々と吼えた!
「我が獅子よッ!ネメアの王よッ!獅子王と呼ばれた汝よ!我が猛りに応じて、衣と化せェェェェェッ!」
一帯全域が震えだし、周囲な風景を吹き飛ばしながら、サイラオーグとレグルスが弾けた!
「『
黄金の輝きを放ちながらそれは現れた。
サイラオーグ・バアルと
サイラオーグは莫大な闘気を放ち、グレンデルは愉快そうに笑っていた。
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ドゴォォォン………
そんな音で、俺…シドウ・グレモリーは目を覚ました。
状況を確認するために痛む体を無理やり起こすが、ふらついてうつ伏せに倒れる。血が足りねぇが、アザゼルに感謝だ。まったく
『シドウ、その義手にフェニックスの涙を微量だが仕込んでおいた。義手がある程度のダメージを関知すると、体内に直接投与するようにしてある。一回限りに加え、微量だからな、でかすぎる傷は治りきらないが……応急処置ぐらいにならなるだろう』
そんな機能のおかげでまだ戦えそうだっ!
俺は起き上がり、周りを確認する。
視線の先では、グレンデルと金色の何かが殴りあっていた。
あれは……サイラオーグか?てことはアグレアスは優勢ってことだよな。
右手が全然動かない、骨折を治すには涙の量が足りてないってことか……。
左手はまだ動く、両足も動くが、左足がおかしいな、だが問題ねぇ。
『くそ、何で倒れねぇんだよ!』
グレンデルの悪態が聞こえてくる。そうか、サイラオーグは押してんのか……。
俺はブレードを出現させ、オーラを込める。
サイラオーグに集中しているグレンデルは気づいていないようだ。
少しずつオーラを込め、ブレードの紅が少しずつ黒くなっていく。
『くそ!ここで退けってのかよ!まぁいい、また会おうぜっ!』
グレンデルはサイラオーグを殴り飛ばし、逃げようといつの間にか展開されていた
今しかないな………!
俺は一気に最高速度まで加速し、
「………無視は困るな」
『て、テメェは!』
「シドウ様!」
グレンデルが驚いている間にサイラオーグがやつを殴り飛ばし、俺の横に着地する。
「大丈夫なのですか、そのお怪我で」
「大丈夫も何もないさ。今はあいつを倒すしかない。それで戦況は?」
「現在は学校周辺まで範囲を狭め、防衛戦を続けています。もうすぐ術式も完成するはずです」
「了解……グレンデルはここで仕留める!」
「はいっ!」
俺はブレードを作り、サイラオーグは拳を握り、飛び出していく!
俺の斬撃がグレンデルの肉を裂き、サイラオーグの拳がグレンデルの肉を抉る。
グレンデルは相当消耗しているらしく、ただ打ち込まれていくだけだ。
俺がグレンデルの左目を潰し、サイラオーグの打撃で大きく後ろに吹き飛ばす。
「どうした?反撃しないのか?」
『舐めやがってぇぇ!死に損ないがぁぁぁ!』
グレンデルはそう言うと火炎を吐き出してくるが、俺はオーラを飛ばし、相殺する。
サイラオーグはその間にもグレンデルに接近し、拳を撃ち込んでいった。
すると、背後から気配を感じた。だが敵の気配じゃない。
「シドウ先生、大丈夫ですか!」
「小猫か………その宝玉は?」
「イッセー先輩からもらいました。私に考えがあります。グレンデルを弱らせてください」
「やってみるか………」
俺はブレードを構え直し、サイラオーグに合流し、再び攻撃していく。
俺たちから攻撃され続けたグレンデルは空に逃げる。
「サイラオーグ!俺がやつを落とす!決めろっ!」
「はいっ!」
サイラオーグは拳を引き闘気を集めていった。
俺は飛び上がりながらブレードに魔力を込めていく。
『かかったな!バカが!』
グレンデルは火炎を吐き出してくるが、俺はそれを斬り裂き突き進む!
グレンデルの表情は驚愕と共に恐怖を感じているようなものだった。自分が殺されることへの恐怖、ついにそれを感じたんだろう。
俺は最高速度で突っ込んでいき、すれ違いざまにグレンデルの両翼を斬り落とす。
『な、何ぃぃ!』
ゆっくりと落ちていくグレンデル……その先にはサイラオーグが。
「邪龍グレンデル、滅びの力が宿らぬ拳なれど、貴様に滅びを贈ろうっ!」
サイラオーグの宣言と共に放たれた正拳突きが、グレンデルの腹部に深々と突き刺さった。
『この俺が………?そこの死に損ないといい……。滅びの姫さんといい……俺は……滅びの血筋に……嘘だろ?』
グレンデルは今にも死にそうな声音になっていた。
俺は着地すると、片膝をつく。
さすがにキツいかな?だがまだ終わってない。
俺が気力を振り絞り立ち上がると同時に、小猫が
その小猫は火車を出現させ、陣を描くようにグレンデルを囲んだ。
小猫が片手で印を結ぶと、火車が回りだし、グレンデルを中心に真っ白い魔方陣が生み出された。
それを確認した小猫はイッセーからもらったという宝玉をグレンデルに放ち、さらに印を結んだ。
「邪龍グレンデル!その魂よ、
小猫が呪文を口にした瞬間、魔方陣がいっそう強く輝いた!
その光が止み、そこにあったのはグレンデルの形をした土の塊と、深緑色の宝玉だった。
小猫はほっと安堵の息を吐いていた。
「魂の封印か、考えたもんだ」
「はい。帰ったら天界などに任せて、この宝玉に結界を張ってもらいましょう。意識が漏れだしたらまた復活してしまうかもしれません」
一応と斬り落とした翼の方を見てみたが、そっちも土になっていた。
グレンデルの撃破、封印。これがD×D最初の戦果となったのだった。
そのあとアーシアとロスヴァイセが駆けつけ、俺とサイラオーグのダメージを回復、そのまま五人で学校の方に急ぐのだった。
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