では一話目、どうぞ
俺はブレードを構え、グレンデルは姿勢を低くし、突撃の構えをとる。
俺たちの耳には遠くからの爆音や邪龍の咆哮が聞こえてくる。
『そんじゃぁ、行くぜぇぇ!』
その叫びと共にグレンデルは飛び出してくる。そのまま俺に肉薄すると、拳を、蹴りを連続で撃ち込んでくる。だが俺は自慢のスピードで全て避け、グレンデルに斬りかかりダメージを与えていく。
『相変わらず速えぇなぁぁぁ!』
グレンデルはそう言いながら飛び退き、腹を膨らませる。
火炎を吐くつもりなんだろうが………。
俺は手に持っていたブレードをグレンデルに投げつけると同時に高速で動き出す。
グレンデルはそれを体さばきだけで軽々と避けるが、火炎の溜めを一瞬だけ遅らせた。ブレードはそのままグレンデルの後ろまで飛んでいく、走り出していた俺はそのブレードをキャッチし、背後から斬りかかる!
今の一瞬でグレンデルは俺を見失い、火炎を吐けないでいた。ブレードに一瞬でも注視すれば、俺を見失わせることなんて簡単だ。その隙に斬らせてもらった。
『くそが!』
グレンデルは火炎を吐くことを諦め、尻尾を大きく振り、俺を牽制してくる。それも避け、尻尾をブレードで貫き、そのまま地面に固定する。
俺は一旦離れ、グレンデルを睨む。
「オラオラどうした!その程度かグレンデルさんよ!」
『舐めんなぁぁぁぁぁぁ!』
俺の挑発にキレながら、グレンデルは自分の尻尾を引きちぎろうとしていた。
ブチブチと嫌な音を出しながら、少しずつ尻尾が自由になっていく。
『がぁぁぁぁぁ!』
グレンデルの叫びと共に尻尾が自由になる。
『どうだぁぁ?これで自由だぜぇぇ?』
「やれやれ……」
俺は再びブレードを作り、構える。
尻尾からは絶えず青い血が流れ出していた。このまま放置しておいてもこいつは失血で倒れるだろうが、それだと時間がかかりすぎるな……。みんなことが心配だし、早く終わらせたいんだがな。
俺が考えを巡らせていると、グレンデルが体当たりを仕掛けてくるがそれをジャンプで避け、グレンデルはひとつの家屋を壊し、奥まで飛んでいった。その時嫌な声が聞こえてきた。
「きゃっ!」
「ッ!」
『あぁん?』
俺とグレンデルがその声に反応して、その声の主の方を、今ので壊された家屋の方を見る。
そこには一人の女性が!逃げ遅れがいたのかよ!
グレンデルはその女性を見て、口の端をニヤリと歪ませ、腹を膨らませていた。
俺は反射的にその女性の前に移動し、大剣にオーラを込める。
グレンデルは火炎を吐き出すと同時に俺もオーラを飛ばす。その二つがぶつかり激しい衝撃波が巻き起こった!
「で、何でこんなところに!」
「そ、その怖くて………」
怖くて動けなかったと?それはそれで怖くてなかったのかよ!
「とにかく、どうにか移動を……」
『喋ってる場合かよ!』
「…ッ!」
俺がグレンデルの声に反応して振り返ると同時に、放たれていたグレンデルの蹴りで吹き飛ばされた!
「ガッ!」
『オラオラァァァ!』
吹き飛ぶ先に回り込まれ、アームハンマーで地面に叩きつけられる。
イッテェなっ!まったくよ!
『オラオラどうした?そんなもんか!悪魔ちゃんよ!』
グレンデルは俺を見下ろし、そう言ってくるが……あの女性はどうなったかな。
グレンデルが俺にもう一撃入れようと足を上げる。踏み潰すつもりなんだろう。
すると、そのグレンデルに魔力弾が降り注いだ!
俺はその隙にその場を飛び退き先ほどの女性の方を見ると、父兄の方々に連れられ避難していた。それと同時に俺に緑色のオーラが飛んで来て、傷を回復する。
これでよし、だいぶ吹っ飛ばされたからな、おかげであの女性を助ける時間は稼げた。
それで今の援護攻撃はロスヴァイセからで、緑色の回復オーラがアーシアだろう。
俺が戦闘中と聞いて飛んで来てくれたのか、助かるが…
俺は魔力装置の電源を入れる。
「二人とも助かった。もう大丈夫だ。他のとこに行ってくれ」
『わかりました。何かあればすぐに』
ロスヴァイセの言葉に「わかってるよ」と返事をして、再び電源を切り、グレンデルの方を睨む。
「相変わらず、卑怯だな。あれか?テンション維持のための適度な殺しってやつか?」
俺の問いにグレンデルは笑いながら答える。
『その通りだ!まぁテメェを殴れたからいいがなっ!』
「そうか……いい加減面倒だ」
俺はそう言うと少しずつオーラを解放していく。
『ッ!』
あのグレンデルが警戒して、身構えた。
「グレンデル……これからやるのは"一方的な"殺戮だ、蹂躙だ。テメェは果たして、滅びずにいられるかな?」
俺はそこまで言って、完全にオーラを解放し、滅びを身に纏う。滅びのオーラに包まれた俺が一度力を入れると回りに衝撃波が発生し、砂ぼこりが舞うが砂ぼこりは俺に当たった瞬間、全てが消し飛んでいく。
『いいじゃねぇか……それがリゼヴィムの野郎が言ってたやつか!』
『そうだ。グレンデル……今の俺は滅びそのもの……魂も残さずに………消してやるよ』
俺はそう言うとグレンデルの背後に一瞬で回り込み突きを放ち、腹部に風穴を開ける。
『ぐぅっ!』
グレンデルからしてみれば、俺は消えたように見えただろう。
『舐めるなぁぁぁ!』
グレンデルは振り向き、その遠心力に乗せて右拳を放ってくるが、俺はブレードを引き抜き、避けるのではなく真っ正面から左手だけで拳を受け止める!
『なにっ!』
『一応言っとくが、左手は義手なんでな、俺の魔力にあわせてパワーがあがる。パワーアームってやつだ』
『何が言いてぇんだよっ!』
『グレンデル……おまえのオーラが今の俺に負けてるんだよ。だから撃ち抜けない』
『ッ!くそが!』
グレンデルは後ろに飛び、火炎を吐いてくる。だが俺はその炎に突っ込み、グレンデルに肉薄する。
『なっ……』
『オラッ!』
グレンデルが驚いている隙に、左手で顔面を殴る!
グレンデルは大きく態勢を崩すが、倒れずに持ちこたえる。
だがその顔は混乱と驚愕の色が強かった。
『赤龍帝でもねぇおまえが、俺の炎を!』
『何で突っ切れたか?簡単だ。滅びで俺の周辺の炎を消し飛ばして、熱いと感じる前に突破した。それだけだ』
『ッ!』
俺の言葉にグレンデルは悔しそうに奥歯を噛み締めていた。
『次はなんだ?また逃げ遅れでも探すか?』
俺はわざとらしく腕を横に広げながら言う。
するとグレンデルの耳元に連絡用の魔方陣が展開される。が、俺はすぐさまグレンデルに近づき、連続で攻撃して会話に集中させないようにする。右手のブレードで腹を斬り裂き、左手で顎にアッパーカットを叩き込んでいく。
『グボッ!』
グレンデルが大きく後ろにのけ反るが、その勢いで頭突きを撃ち込んでくるが、それを再度左手のアッパーカットで迎え撃ち、押し返す。
『弱い』
俺の一言でグレンデルは目元を引きつらせていた。
『終わりだ……』
俺が止めのためにブレードの剣先をグレンデルに向けた瞬間、俺を紫色の炎が包み込んだ。
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