グレモリー家の次男   作:EGO

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本日二話目、どうぞ


life10 防衛戦開始だぜ

リゼヴィムが指定した三時間後というタイムリミットまで残り四十分ほど、俺は作戦会議を終えると一足先に地上に出て、空を埋め尽くす邪龍の群れを睨んでいた。

これからあの数の邪龍を相手にしなければならない。吸血鬼の王国で出現したのは百体弱、だが今回は下手をすれば数千体、規模がまったく違う。

俺がそんなことを考えていると、リアスたちも上がってきた。だが一つ気になることが、鎧を着た男性が数十人いるのだ。

「リアス、その人たちは?」

「子供たちの父兄の方々です」

リアスの言葉を聞いてから改めて男性たちを見回す。全員が覚悟を決めた顔をしていた。

俺はリアスにただ頷き、リアスもそれを確認すると頷きみんなの方に戻っていった。

それだけで十分だ。彼らがなぜ剣をとり、ここに来てくれたのか、理由なんて知れている。

時間まで二十分、俺たちの戦いが始まろうとしていた………。

 

 

 

 

 

それからも町を囲うように量産型邪龍は滞空し続けていた。

気合いたっぷりだったお父さんたちもそれを見て戦慄していた。

俺たちは持ち場に散らばる前に校庭で最終確認をしているところだ。

作戦を立案したソーナが一歩前に出て言う。

「今から作戦通り、この学園を中心に八方に散らばってもらいます。基本的には二人一組で敵を迎え撃っていただきますが……」

「俺は単独だろ?わかってるさ」

「お願いします」

俺たちはアウロス学園を中心に邪龍を迎え撃つ。基本的に前衛と後衛で展開できるように、リアスとソーナ両眷属の混合チームで展開する。

俺だけは単独だ。理由としては人数的に、もうひとつはまたクリフォトが、リゼヴィム自身が接触してくる可能性があるからだ。

アーシアはイッセーの船型使い魔、スキーズブラズニルこと龍帝丸に乗せて戦場を飛び回ってもらい回復オーラを飛ばしてもらう。ロスヴァイセはその護衛だ。

俺たちが最終確認を済ませると、校庭に連絡用の魔方陣が展開される。魔法使いがよく使うものだ。

その魔方陣は紫色のゴスロリ衣装の若い女性を映し出した。ゴシック調の紫色の日傘をくるくると回していた。

『ごきげんよう、悪魔の皆さん。わたくし、魔女の夜(ヘクセン・ナハト)の幹部をしているヴァルブルガともうしますのよん。以後、お見知りおきをん♪』

神滅具(ロンギヌス)紫炎の祭主による磔台(インシネレート・アンセン)の所有者か……」

俺の言葉にイッセーたちは言葉を失っていた。

ヴァルブルガはニッコリと笑いながら続ける。

『もうじき戦闘を開始する予定ですが、準備はよろしいのかしらん♪』

俺たちはヴァルブルガを睨むが、彼女はわざとらしく怖がるだけだ。

『いやーん、怖いですわねん。悪魔の皆さんが激おこですわ♪うふふ、楽しくなりそう』

彼女の声音は本当に楽しみにしている奴のものだ。そしてその笑みもまたイカれた奴がするものだった。つまりこいつもイカれてるってわけだ。

『ロスヴァイセさんってどなたかしら、いちおうそのヒトとシドウ・グレモリーだけは無事に連れてくるように言われているのん』

全員が俺と俺の横にいたロスヴァイセに視線を集めてしまい、あいつにバレてしまった。

「リゼヴィムとユーグリットに言っとけ、俺もロスヴァイセも行く気はないってな」

「その通りです。私たちは戦います」

俺とロスヴァイセがそう告げるとヴァルブルガは『そうよねん♪』と返事がわかっていたように応じた。

ヴァルブルガはスカートの裾をあげ、別れのあいさつをした。

『では、皆さん。よいバトルをしましょうねん』

それだけ言うと魔方陣は消失した。

「ああいう奴の考えることも心理もよくわかってるが、あれは、そうだな……これから殺す相手の顔を見て、殺す瞬間の喜びを強くするタイプだな。言葉が悪いが反吐(へど)が出る、としか言えん」

リアスは俺の言葉に息を吐くと強気な笑みを浮かべた。

「用意はいいかしら?さぁ、私のかわいい眷属たち!相手は量産型の邪龍を引き連れたテロリストたちよ!今までも私たちはどれだけピンチをくぐり抜けてきたと思う?これもまた窮地(きゅうち)でしょうけど、死ぬことは許されない!」

リアスは一度言葉を区切り、堂々と言い放った。

「いつものように吹き飛ばしてあげましょうっ!」

『はい!』

リアス眷属とイリナが勇ましく返事をした。

ソーナも眷属に向かって言う。

「……私たちが敗れれば、この学校は跡形もなく消え去るでしょう。壊されたあとにまた直せばいいという単純な話ではありません。………夢と希望がここに集まりました。それを壊させていい道理はありません。守りましょう。それがここを建てた私たちの戦いです」

『はい!』

ソーナ眷属が気合い十分に返事をしていた。

俺も父兄の方々に対して言う。

「いいか!これは死戦だ!だが死ぬことは絶対に許されない!あんたたちは子供たちの未来を、夢を見届ける義務が、責任がある!だから絶対に死ぬな!這ってでも帰ってこい!」

『はっ!』

こっちも気合い十分だ。

俺たちは指定の場所に散らばっていった。

 

 

 

 

 

 

 

俺の担当は東側だ。俺は一人、畑の真ん中を陣取り待ち構えていた。

オオオオオオオオオオオオンッ!

空から響いてくる咆哮。邪龍の群れが吼えたのだ。それが合図となり邪龍が一斉に飛来してきた。

俺はブレードを百本ほど展開し、一気に撃ちだし迎撃していく。ブレードを喰らい絶命した邪龍が次々と落ち、地面を揺らしていった。

その後もブレードを飛ばしていき弾幕をはるが、それをくぐり抜け、近づいてきた邪龍はブレードで斬り裂き、コツコツと邪龍を片付けていった。

ひとつ感じたんだが、俺のブレードの威力が上がっているようだ。リゼヴィムと戦ったときに色々と解放したせいだと思う。

そんなことを考えながら剣速を上げ、邪龍を倒していくが、キリがない。

すると、俺の影から何かが飛び出し、邪龍に襲いかかっていった。ギャスパーが学校で闇の獣を作りこっちに飛ばしてくれているようだ。一応、俺のところを優先と言われているようだが、そんなことは言っていられなさそうだ。

俺は闇の獣に邪龍を任せ後ろに飛び、ブレードを大剣に変え、オーラを込める………。

「ギャスパー、獣を退けろ!」

俺がそう言うと闇の獣が俺の後ろまで下がった。それを確認し、大剣を横に振り抜く!

滅びの凶刃(クリムゾン・ファング)

今回は横に振り広範囲を一気に片付ける!

俺の一撃は大量の邪龍を飲み込み、消し飛ばしていった。

「ふぅぅぅ……」

俺は一度大きく息を吐き、大剣をブレードに戻す。

確認してみても、多少減ったかな?と思う程度しか邪龍が減っていない。

俺はブレードを握り直し邪龍の群れに突っ込んでいった。

それから十分ほど、俺とギャスパーの獣で順調に邪龍を片付けているとき、ここまで届くほどの爆音が鳴り響いた。

振り返ると、天を突く巨大な紫色の火柱が発生していた。

ヴァルブルガが動き出したか……あっちは北側、リアスとベンニーアが担当だったはず!

耳に入れていたインカム代わりの魔力装置からソーナからの指示が届く。

『北側より、先ほどのヴァルブルガが襲来しました。リアスたちだけで相対するのは厳しいでしょう。一旦、防衛範囲を……』

ソーナの指示を最後まで聞こうとした矢先に、上空からの火炎が俺を襲った!

俺はすぐさま飛び退き、それを避ける。

『よう、悪魔ちゃぁぁぁん。久しぶりだなっ!俺様だ!』

俺はその声の主を探すように上を見上げた。そこにいたのは黒い鱗に包まれた人型のドラゴンだ。

「グレンデル!」

グレンデルは銀色の双眸をギラギラとさせながら俺を見下ろしてきた。

俺とグレンデル、ここまで来ると因縁のようなものを感じる。

「みんな、しばらく連絡が出来ない。俺の分も誰かカバーしてくれ、俺は……グレンデルを()るっ!」

『シドウ様っ!……わかりました。グレンデルはお任せします』

俺はソーナの言葉を聞き終えると魔力装置の電源を切り、構える。

「さぁ、グレンデル。決着だ」

『いいねぇぇ。そうこなくっちゃよっ!』

俺はブレードを握り直し、グレンデルは着地し、姿勢を低くして突撃の態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 




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