では一話目、どうぞ。
俺たちは一斉に校庭に飛び出した。
見上げると、花畑の爽やかなな映像が空一面に広がり、悪魔文字で、しばしお待ちください、と記されてある。その映像を見ながら全員が構えるなかで、空からふざけた口調の声が聞こえてきた。
『え?もう始まってんの?マジで?ちょっと待ってよ~。おじさん、まだお弁当全部食べてないって。いいから、出ろって?わかったわかった』
聞き覚えのある、ムカつく声だ。今の声を聞いた全員が憎々しげに映像を見ていた。
花畑の映像が、銀髪の中年男性の映像に切り替わる。
『んちゃ♪皆のアイドル、リゼヴィムおじさんです☆皆、はじめまして、あるいはお久しぶり!なんだか大変なことになっちゃっているだろうけど、説明なしではなんだから俺が直々に説明してあげようかなって思ったしだいです!ほら、こういうのを適方が説明するのはお約束じゃん?こちらが不利になっても種明かしをするのもお約束じゃん?』
相変わらずイライラする口調だ。
『なんとなーくわかっていると思うけど、実は、僕たち、その辺一帯丸ごと、結界で包囲しちゃいました!いやー、いきなりのドッキリで申し訳ない!』
申し訳ないと言うわりには、罪悪感を感じてる素振りは見せていない。当たり前だ、あいつにとってはそれが普通なんだからな。
『やってくれたのは、邪龍軍団のラードゥンさん!初代英雄ヘラクレスにぶっ殺されちゃった黄金の果実の守り手さんだ!』
リゼヴィムの背後に巨大な木のドラゴン、
『例のごとく、"せい☆はい"で再生怪獣のように大復活させちゃったわけだけど、彼の持つ強力な守護防壁、結界の類いは健在でねぇ。いやはや、ユーグリットくんのレプリカ
リゼヴィムの横にユーグリットが現れる。その手には聖杯が握られていた。
「…………ッッ」」
イッセーの横にいたギャスパーが双眸を危険なほど輝かせて奥歯を噛んでいた。ギャスパーにとっては、この映像は耐え難いものだろう。
『そして、その町にいる諸君!そこも結界で包囲したあげくに名だたる魔法使いの皆の魔法力も封じてしまいました。封じたのは、邪龍の中の邪龍!千の魔法を操るアジ・ダハーカさん!こちらの方法もお見事!もちろん、レプリカのブーステッド・ギアで強化済みです!』
リゼヴィムの背後に、もう一体の巨大な三つ首のドラゴンが現れる。あれがクロウ・クルワッハと同格と称されるドラゴン。できれば相手にしたくないな。
リゼヴィムは嬉々として続ける。
『なお、外界から完全に時間ごと隔絶されているから、外にいる者たちには、気づかれないよん』
リゼヴィムはそう言うと耳障りな笑いをあげ、肩をすくめた。
『なーんで、こんなことをしたかって?理由は、簡単♪そこに集まる魔法使いの皆が俺に協力してくるないなら、まとめて吹っ飛ばしちゃおうってね!あと、アグレアスの技術もちょいと盗ませてもらえると助かります!僕のパパたちが作り出したものだもーん。俺が相続してもいいものだと思わない?ねぇ、思わない?』
リゼヴィムは俺たちに指を突きつけてきた。
『うひゃひゃひゃひゃ、そこに俺たちの打倒を企てて結成したっていうD×Dの皆がいるんだろう?何、事前情報ぐらいは得てるぜ。おもしろいから、勝負といこうぜ?量産型邪龍の大群と、伝説の邪龍さまがそちらと、あの空中都市に向かう。蹂躙するためだ。それを止めてみろよ。ねぇ、止めてみてくれって』
リゼヴィムはそう言うと指を鳴らす。その瞬間に町を囲うように紫色の巨大な火柱が天高く立ち上がり始めた。
「……紫の炎、
俺がそう言うと、リゼヴィムが楽しそうに手を振っていた。
『てなわけで、踏ん張ってくれよ!三時間後、行動開始だっ!うひゃひゃひゃひゃっひゃひゃひゃひゃ!』
映像はそこで終わる。
最悪だな。ここは守るべきものが多すぎる。学園、子供たちとその父兄、そしてこの学園に賭けるソーナたちの思い。だか、守るりきってやるよ、幸いD×Dの悪魔チームのほとんどがここにいる。
俺たちは対応のために動き始めた。
すぐに行動を開始した俺たちはまず、この学校にいる非戦闘員全員を学校の地下に避難させていた。ソーナが万が一に備えてシェルターを用意していたのだ。
相変わらず準備が良いな、シェルターの大きさだったら体験入学にきた子供たちとその父兄、この町の住民全員が入っても余裕がある。
先ほど、俺とゼノヴィアで結界を攻撃してみたが、紫炎と障壁は吹き飛ばせたが、すぐに修復されてしまい脱出は無理そうだ。
同時にロスヴァイセの解呪術も試してみたが、それもダメ。
ならばと穴を掘って地下からの脱出もやってみたが、紫炎は地下にまで届いており、そちらもダメ、つまり脱出に関して言えば完全に手詰まりだ。
魔法使いの皆さんが術を封じられてなければまだどうにかなったかもしれない。
だが、準備は進んでいる。封印されていない術式を応用して、新しい転移型魔方を作り出すという離れ業をやっているのだ。この町にいる魔法使いは高名な方ばかりだ。だからこそできるぶっ飛んだ方法だ。
それは数時間あれば構築できるそうで、俺たちはあくまで完成までの時間稼ぎをすればいいわけだ。
アグレアスのほうは、シーグヴァイラが指揮をとり、戦闘に備えているそうだ。
今はまさしくD×Dの正念場と言うわけだ。今日、俺たちがこの町にいなければと考えるとゾッとしてしまう。
俺がそう考えているなかでも刻々と戦いが迫っていた。
戦闘開始前の最終ミーティングをおこなうため、作戦会議室に向かっていた。
すると曲がり角の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。俺は壁に寄りかかり聞き耳をたてる。
「この学校はおもしろい?」
「うん!ねえ、僕も強くなれるかな?」
「きっと、私よりも強くなれます。その歳で諦めずに何度もチャレンジするなんてとてもとてもすごいことなんですから。だから、何があっても自分を信じなければダメですよ?」
「はいっ!」
何があっても自分を信じる……か。俺も肝に命じておきますかね。
今ので話が終わったようだし俺もいきますか。
俺は曲がり角から出て、今話していた、リアス、ロスヴァイセ、そしてイッセーに合流する。ロスヴァイセの表情が心なしか、晴れやかに見えた。
作戦会議室を前にして、ソーナと匙、そして子供たちを見かけた。
子供たちは不安そうな表情で訊く。
「サジ先生、こわいドラゴンがくるの?」
「この学校、無くなっちゃうの?」
匙は子供たちの頭を撫でながら笑った。
「なーに、何の心配もないさ。俺たちが、悪いドラゴンを全部倒してきちまうんだからさ!でも、皆がケガしたら大変だから、ここにいてもらうんだ。だから、いい子で待っていてくれよ。ねぇ、会長」
ソーナも微笑みながら言う。
「ええ、そうです。皆さんは何の心配をしなくていいんですよ?そうですね。ここでおっぱいドラゴンのビデオを見ていてください。それが終わる頃には、きっと悪いドラゴンもいなくなっていますから」
それを聞いた子供たちは、安心した表情になり、避難場所に移動していった。
匙は子供たちを見送ったあと、拳を握りながら言った。
「……壊させてたまるものかよ。この学校に希望を見出だそうとしている悪魔がたくさんいるんだ。……俺たちの夢でもあるんだ」
俺は匙の肩に手を置く。
「ああ、何としても、何に変えても絶対に俺たちが守る。だろ?」
それを聞いた匙とイッセーは頷き、ソーナとリアスも強気な笑みを見せた。
お互いの意識を確認したところで、俺たちは会議室に入ったのだった。
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