グレモリー家の次男   作:EGO

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life08 体験入学中止だぜ

アウロス学園体験入学二日目の早朝、とある問題が発生していた。

あの風呂騒動のあと、それぞれ二人で一部屋を割り当てられたのだが、俺はイッセーと相部屋だったんだ。イッセーとじっくりお話をしてから就寝。そして起きてみるとレイヴェルとアーシアがイッセーに添い寝していたわけだ。

そんなわけで二人を正座させて二人を睨む。

「……で、言い残すことは?」

「ちょっ!?シドウさん!?二人をどうするつもりですか!?」

「冗談だよ。で、どうしてああなった」

「……はい、実は、ゼノヴィア様とイリナ様がアーシア様を連れて何やら怪しげな話をしていたので、気になってあとをつけたのです。そうしたら……」

「そうしたら、その三人が部屋に入ろうとしていて、なんやかんやでこうなったと」

「「はい……」」

「「はぁ………」」

レイヴェルから話を聞いて、俺とイッセーは溜め息をついた。あの二人は自重しろよまったく………。

「とりあえず、ゼノヴィアとイリナにはあとで話をしとくから、ここまでだ。そろそろ朝食だしな」

俺の一言で話は終わり、食堂に移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、俺たちはざっと状況を確認していた。

何でも、匙のヴリトラ、アーシアの(?)ファーブニルがヴァーリの神器(セイクリッド・ギア)に潜ってしまった(むこうでは赤龍帝被害者の会なるものがあるらしく、イッセーの新しい力を活かすためにもそれを説得中)、サイラオーグとその眷属は午前中はディハウザーさんの主演映画に出演のためにこれないこと、そしてそれぞれの持ち場を確認して、今日の活動が開始された。

そんなわけで俺は木場、ゼノヴィアとともに騎士(ナイト)についての授業を実演込みで行っていた。

ゼノヴィアは刀剣を片手に子供たちに力説する。

「いいか?剣は己を表す鏡のようなものだ。迷いがあれば、すぐに刃に出てしまう。常に平常心で剣を構えなければならない。それと、やられる前にやる。特に敵が話しかけてきた瞬間に問答無用で剣をぶつけるんだ!」

それとは対照的な木場の騎士(ナイト)の話が始まる。

「でも、力に頼り切って剣を振るうのは危険だからね。騎士(ナイト)は何よりも技能を求められる。そして、特性である速度。戦場を誰よりも駆け回って相手を翻弄する。隙を見つけて、的確に突く」

それじゃ、俺の番だな。

「二人のように一言で騎士(ナイト)と言っても考え方がまるで違う。どっちが正解とか、不正解とかはない。自分が一番だと思うことを出来る限りやる。そうすれば自分にとっての正解がわかるはずだ。ちなみに俺は木場よりだが、時には力で押す。何事もバランスが大事だと思ってる」

俺たちの話を誰も聞き逃さず、関心を寄せてくれていた。

 

 

 

 

 

それから無事に騎士(ナイト)の授業は終了し、俺はロスヴァイセの手伝いのために移動していた。

その時だ。全身に嫌な寒気が走り、俺の第六感を刺激した。

その感覚の直後、冥界特有の紫色の空が白く塗り替えられていく、謎の怪現象が発生した。

突然のことに俺や講師を含めた校内にいる全員が空を見上げていた。

イベントではない。こんな無茶苦茶なことをするのは、奴らしか考えられない。

俺が考えているなかでロスヴァイセが声をかけてくる。

「シドウさん!これは……まさか」

「わからんが、十中八九クリフォトだろ……」

俺とロスヴァイセが意見を確認し終えると同時に、校内放送が学園中に響いた。

『グラウンドにいる体験入学生、父兄の方、講師、スタッフの皆さまは速やかに校内に入ってください。繰り返します………』

緊急放送を聞いた俺とロスヴァイセは、嫌な予感がして仕方なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オカ研、生徒会のメンバーが職員室に集まった。父兄と子供たちは、とりあえず体育館に集まってもらっていた。真羅副生徒会長主導で情報を集めてもらっている。

俺は外への通信を試みるが、繋がらない。

「ダメだな。外に連絡できん、転移のほうは?」

転移型魔方陣を展開していた朱乃に訊いてみるが、彼女は息を吐いて言った。

「ダメですわ。遠くにジャンプできません」

連絡、転移、どちらもダメか……。英雄派と戦っていたの時にもこんなことはあったが、また別空間に飛ばされたか?

猫耳を出して、気配を探っていた小猫が言う。

「……周囲の気を探りましたが、草も木も本物です」

俺はあごに手をやりながら言う。

「……となると、少なくともこの町ごと結界で覆われたって感じか」

ソーナが連絡用魔方陣を出しながら言った。

「アグレアスと町の集会場には繋がりました。映像を出します」

すると、職員室に立体映像が二つ浮かび上がった。一つはアグレアスにいるサイラオーグ、もう一つは町の集会場にいるゲンドゥルさんだ。

サイラオーグが開口一番に言う。

『これはどうなっている?』

その疑問にゲンドゥルさんが答えた。

『この地域一帯丸ごと、敵対勢力の結界に覆われたと考えていいでしょう。今、総動員で各々使役している生物に結界の規模を確認させていますが、どうやらこの町とアグレアスを楕円形にすっぽり覆っている可能性が高いと報告を受けています』

予想通りではあったが、えらい大規模だな。

ゲンドゥルさんは続ける。

『それに加えて、私たち術者は魔法の大半を封じられてしまっています。この通り』

ゲンドゥルさんはそう言うと額を見せた。そこには禍々しい輝きの魔方陣が描かれていた。

俺も確認のために一度ブレードを作り出すが、長さ強度共に問題なし。俺に続くように全員がオーラを集めるなり、神器(セイクリッド・ギア)を展開するなりしているが、そちらも問題なしだ。

「このようだと、そちらにいる魔法使い限定の封印のようです。ここまで大規模かつ緻密(ちみつ)なことができるのはおそらく……」

『ええ、シドウさんの言うとおりです。このようなことができるのは、千以上の魔法を操ったという伝説の邪龍……魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)、アジ・ダハーカ。かの邪龍ならば、魔法使いを封じる術も知っているでしょう』

ゲンドゥルさんの言葉に全員が絶句していた。伝説の邪龍の名前が出てきたんだ、当たり前だろう。

そして、そのアジ・ダハーカを復活させたのは、クリフォトだ。

「しかし、規模があまりに……。いくら伝説の邪龍だろうと、名だたる魔法使いたちと共に広大な土地を丸ごと封じるなんて……」

イリナが疑問を口にしているが、それもおそらく。

「報告で聞いた、ユーグリットが所持している赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)のレプリカ。それによる強化があれば話は変わるだろ」

イッセーがサマエルの毒で体をダメにされたとき、魂をグレートレッドの一部に移し換えることで戻ってきたが、次元の狭間に残っていた前の体の肉片、そして聖杯を使ってドライグの力を再現したようなのだ。

ゲンドゥルさんが息を吐いた。

『この一帯丸ごと囲う結界と、ここにいる魔法使いすべての術を縛る外法、どちらも増大させて発動したんでしょうね。レプリカとはいえ、相変わらず常識を逸した力を発揮しますね、神滅具(ロンギヌス)というのは』

まったくだ。ユーグリットの野郎、イッセーの力まで悪用しやがって!

イッセーも怒りをあらわにしていたが、すぐに何かを思い付いたような表情になった。

「だったら俺が解呪法を増大させます!」

それを聞いた俺とソーナは首を横に振った。

「いい考えだが、カウンターの術式が用意されてるはずだ」

「その通りです、イッセーくん。下手をすると大惨事になります」

相手は必ずカウンターの用意をしているはず、むこうもブーステッド・ギアの特性をよく理解してやがる。

「つっても、そう何度も使えるもんでもないだろ。所詮はレプリカだ。報告だと、使うだけでもかなりのコストが必要なようだからな。それにしたって、アジ・ダハーカの術を増大させるとは、そっちもかなり緻密な加減が必要だったはず。ユーグリットの野郎はブーステッド・ギアの扱い方を熟知してるようだ。だかなイッセー。おまえが劣ってるわけじゃない。おまえが異才なら、ユーグリットは鬼才って言うのか?それはともかく、ルキフグスの名は伊達じゃないってわけだ」

そう、相手はルキフグス。グレイフィア義姉さんの実の弟だ。

「相手の狙いはゲンドゥルさんたちと、おそらくアグレアスの旧魔王時代の技術と見るべきか?」

俺の呟きにソーナが頷く。

「あのアグレアスには、旧魔王時代の技術が使われています。いまだ解明できていない部分もありますが、前ルシファーの息子である、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーはあの島にある何かを狙っているのかもしれません」

『旧魔王時代の遺跡、あるいは兵器の類いでしょうか。それとも666(スリーシックス)に繋がる何かということかもしれません』

「異世界関連の物の可能性もあるな」

ゲンドゥルさんと俺が何となく予想を立ててみたが、答えは出てこないな。

「これだけ大規模な結界を張ったんですから、外の誰かが異常を察知しているのでは?」

イッセーから質問がくるが、奴らの事だ。

「それも想定済みだろう。こっちの一時間が結界の外だと一分とかにしてるのかもしれん。それをするにしてもかなりの準備が必要なんだが……伝説の邪龍とレプリカブーステッド・ギアが合わされば、簡単だろう」

『ここまで大規模な術は確実に身を削りますね。ドラゴンだろうと、命が対価になってもおかしくありません』

「体が滅んでも聖杯で即復活できるからな。そりゃ無茶するぜ」

俺とゲンドゥルさんが話を進めていくなかで リアスが言う。

「英雄派の魔獣騒動から、各主要都市には様々な防壁術式が設置してあるけれど、まだここは……」

「アグレアスとここにはまだ防壁術式を張っていませんでした。アグレアスはレーティングゲームの聖地の一つで観光名所です。防壁術式を張るには一時的に機能を完全に止めなければなりません、ですから延期が続いていたんです。それが裏目に出てしまいました」

リアスに続いてソーナが言うが……。

「明らかに狙ってるよな。もしかしたら政界かそれなりに階級が高い奴がクリフォトに通じてるのかもしれん」

俺がそこまで言うと、全員の表情が固くなってしまった。裏切り者がいるかもと言ったんだから当たり前だ。

職員室に一人のスタッフが息を切らしながら、入ってくる。

「……どうかしたか」

俺が訊いてみると、スタッフは息を整え、人差し指を上にさして答えた。

「……上空に映像が」

俺たちはそれを聞いて、一斉に校庭に向かい走り出した。

 

 




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