グレモリー家の次男   作:EGO

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life06 魔法の力と意味だぜ

急遽開始されたおっぱいドラゴンのイベントを抜け出し、俺はのんびりと校舎を見て回っていた。

子供たちは講師からの指導を受けて元気よく、真剣に体を動かしていた。

魔力や魔法の基礎を教えているところがあったが、魔力に乏しい子供たちが真剣な顔でそれらに向き合う姿に。

いや~、俺もあのぐらいの年の頃はヤンチャしてたなぁ。

何て事を考えながらブラブラと歩いていると。

「シドウ様。こんなところに」

ソーナに見つかってしまった。別にやましいことがあるわけではないのだが、いちおうソーナに案内されている最中にいなくなったため、探させてしまったのだろう。

「おう、イッセーたちの方はいいのか?」

「はい。レイヴェルさんが指導しているので大丈夫かと」

「そうか、にしてもいいところだ。子供たちも生き生きしてる。学校ってのはこうでないと」

「この学校にはレーティングゲームだけでなく、すべての教育機関から入学を拒否された子供たちも来ています。能力が低いから、階級が低いから、そんな理由で入学ができない、そんな子供たちが……」

ここにいる子供たちは学校に行きたいが何かしらの問題に直面した、そんな子供たちだ。そんな子供たちが、わらにもすがる気持ちでこのアウロス学園に来たのだろう。

今の悪魔は、そのような者たちに容赦がない。救られる機会すらあたえられないのだ。ソーナはそれを変えようとがんばっている。

ソーナが窓から運動場を走り回る子供たちを見ながら言う。

「がんばります。まだスタートもしていませんが、あの子供たちのためにも、これからひとつひとつ壁を突破していきます」

言っていることがリアスみたいだが、それだけこの学園の設立に気合いが入っているのだろう。

俺はソーナを見ながら言う。

「そんじゃ、俺が出来ることは少ないが……義兄(あに)としてがんばりますかね」

「あ、義兄(あに)!?」

俺の一言に珍しくソーナが取り乱したが、一度咳払いをして調子を整えた。

「支援をしてくださるのはうれしいことですが、やりすぎないでください」

「わかってるよ。上の連中は頭が固いからな……」

ソーナはそれを聞くと腕時計で時間を確認し、「それでは」と一言告げてから再びどこかに行ってしまった。

おそらく講師の手伝いに行ったのだろうが、俺に関してはそこまで堂々と行動できないので、またブラブラと歩くことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてレーティングゲーム、ランキング一位の皇帝(エンペラー)、ディハウザー・べリアルが学校に来るという出来事があったらしいが、中庭のベンチでのんびりしていたおかげで会えなかった。

何か俺とディハウザーさんは、中々縁がないな。リアスとサイラオーグのゲームの時も解説として参加していたが、そのときは曹操と戦っていたわけだし、今もタイミング逃しちゃったし……まぁ、そのうち会えるだろう。

てなわけでまた校舎を歩いているわけだが、ある授業が子供たちが廊下に溢れるほどの盛況を見せていた。

親御さんも立ち見で見学しているほどだ。

中を覗くと、ロスヴァイセが子供たちに囲まれていた。

ロスヴァイセは、ソーナからも、サイラオーグからも「教師をやってくれないか?」言われていたし、あのデートの時にも言ったが、とりあえずという事でやっているのだろう。

俺は後ろから気配を感じて振り向く。

そこには銀髪の淑女ゲンドゥルさんがいた。

「ゲンドゥルさん、お久しぶりです」

「こちらこそ、ロセがいつもお世話になっております」

「いえ、そんなことは……」

「聞きましたよ。あの子のわがままで買い物に付き合わされたとか」

俺とゲンドゥルさんの会話が聞こえていたのか定かではないが、ロスヴァイセが俺たちに気づき、驚きの声を上げた。

「シドウさん!ばあちゃ……お祖母さんも、見てたんですか」

ゲンドゥルさんが教室に入っていき、俺もつい流れで中に入ってしまった。

「ここで特別講師をする約束だからね。明日の集会前にいい気分転換にもなります」

明日だったな、例の集会。その前にここで講義をするってわけだな。

すると、教室内に緑色のオーラに包まれた小さな妖精のようなものが出現し始めた。

妖精は羽ばたきながら、軽やかに教室内を飛び回り、教壇に着地する。

教壇にはゲンドゥルさんが立ち、妖精をやさしくなでながら、やさしい笑みを浮かべ、静かに口を開いた。

「魔法の起源……魔法がどういう風に生まれたか?皆さんはご存じかしら」

その問いに子供の一人が元気よく挙手をして答える。

「占いや呪術だって聞きました!」

ゲンドゥルさんは笑顔で頷き、やさしく語りかける。

「その通りです。魔法は、占いやおまじないから誕生したのです。こんなことが知りたい、あんなことになったらいいな、あのヒトのために、他の誰かのために……たくさんのヒトを助けられる方法が欲しいと願った術者たちが作り上げたものなのです」

俺もついつい聞き入ってしまうほど、ゲンドゥルさんの言葉はすんなりと耳に入ってくる。

……あのヒトのために、他の誰かのために……か。

「現代の魔法には確かに優劣があり、明らかな差があります。ですが、これだけはまず最初に覚えておいてほしいのです。……どのような魔法でも必ず術者と他の誰かの役に立ちます。この世に意味のない魔法なんてないのですから」

そのにっこりとしたやさしさ溢れる笑顔は、厳しそうなゲンドゥルさんからは想像できないものだった。

……この世に意味のない魔法なんてない、いい言葉だ。

それを聞いたロスヴァイセも少しだけ微笑んでいるように見えた。

俺が忘れてはいけないものを、ゲンドゥルさんから改めて教えられた気がするな。

ゲンドゥルさんの講義は続く。

「さて、このお話はここまでにしておきましょう。では、突然ですけれど、妖精と仲良くなりたいって思いヒトはどれくらいいるでしょう?」

「「「「「はいはいはいはい!」」」」」

一斉に手を挙げる子供たち。に混ざってイッセーも手を挙げかけて、匙に止められていた。

その匙も名残惜しそうにしていたがな。俺はゆっくり聞かせてもらうぞ!

そんなわけで、俺はゲンドゥルさんの講義を楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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