グレモリー家の次男   作:EGO

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life05 学校見学だぜ

ソーナが目標としている"誰でも通えるレーティングゲームの学校"はアガレス領にある。

理由はいくつかあるが、一番大きな理由はソーナが魔王(セラ)の妹だからだ。俺やセラはソーナを応援しているが大きな支援は出来ていない。下手に動くとセラの政治目的と思われてしまうからだ。

俺とリアスがグレモリーとして支援が出来ないのもまた、兄さんが魔王だから。同じく応援してくれているサイラオーグは大王家の次期当主だから大きな支援は出来ていない。

本当に政治ってのは面倒だとしか言えない。

それを知ったソーナは、夢を捨てることも考えたらしい。そんななか、ソーナに助け舟を出してくれたのがアガレス家現当主だったわけだ。

そんなわけで誰でも通えるレーティングゲーム学校第一号がアガレス領に建てられた。

という事で、オカ研メンバーと俺は土日を利用して、体験入学の手伝いをするためにアガレス領に来ている。

学校が建てられた場所は、いつかにリアスとサイラオーグがゲームをした、俺は曹操と一対一で勝負をした場所、空中都市アグレアス、その近くにある町、アウロスだ。

冥界では農産業随一と称されるアガレス領……まさにそれを体現しているような町だ。

この町は農業で生計を立てている住民が多いが、人口自体は多いとは言えない。レーティングゲームの聖地アグレアス(悪魔が聖地と言うのも変な気がするが)からも近いため発展していそうだが、その観光用の町はここの反対側に位置しているため、滅多なことではヒトが来ないという。

つまり、観光名所の近くにある田舎町ってわけだ。

俺たちが転移してきたのは、そんな町の中心にある監視塔の最上階。窓からは緑溢れる町と、その町にいくつかある風車小屋、そしてゲームの聖地アグレアスが見える。

学校を建てる場所としては、中々いい環境だと思う。

転移魔方陣の前で待っていてくれた町の役員に連れられ、監視塔を降りていく。下で待っていたのは……。

「よう、兵藤」

匙だった。

グレモリーの次期当主のリアス、魔王レヴィアタンの眷属の俺が行くと聞いて町長さんも顔を出そうとしたらしいが、俺とリアスが事前に「大仰な出迎えは無用です」と伝えたことと、例の魔法使いの集会の準備でも忙しいとのことで来ていない。

役員から匙に案内役がバトンタッチされ、俺たちは学校に向けて歩き出した。

どことなくヨーロッパを思わせる石造りの家や畑、風車小屋、都会では感じることのできない、いい静けさがこの町にはあった。

匙が言う。

「いいところだろ?冥界の田舎町!けど、魔法使いの集会とかが毎年行われるくらいの、いわゆる知るヒトぞ知る町だ。近くにレーティングゲームの大舞台アグレアスも一望できるし、環境は最適とさえ言える」

俺やリアスがいることを忘れてタメ口で喋る匙だが、それを指摘する者はいない。

その後も他愛のない会話をしながら匙についていくこと十分ほど、町の南端に真新しい建物が現れた。

大きさとしては駒王学園には及ばないが、体育館と思われるものや、運動場が見てとれ、その配置がなんとなく駒王学園に似ている。

校門に設置されている表札には"アウロス学園"と記されている。ソーナはこの町の名前を学校名にしたようだ。

まぁ、シトリーとかの名前を出してしまうと、上の連中がうるさいだろうからな。

校門を潜り、本館に近づいていく。

運動場では、もう子供たちが走ったり、魔力を競い合っているようだ。ソーナやサイラオーグの眷属が付き添っている。

それを確認し、本館に入ると、ソーナが出迎えてくれた。

匙がソーナに伝える。

「会長、オカルト研究部の皆さんをお連れしました」

「サジ、ご苦労様でした。担当のところに戻ってくれてかまいません」

それを聞いた匙は足早に担当の場所に戻っていった。

どことなく駒王学園に似ている本館からは、新築独特のにおいがする。

リアスが手を差し出し笑顔で一言告げる。

「改めて、おめでとう、ソーナ」

ソーナはリアスの手を握り、微笑む。

「ありがとう、リアス。まだ第一号で、開校も大分先だけれど、体験入学を実施できるまでには形にできました」

「俺からもおめでとう。セラにも見せてやりたいもんだ」

「ありがとうございます」

ソーナはいつも通りの口調だが、どことなく明るい声音だ。

「それでは、中を案内しましょう」

俺たちはソーナの先導で校内を歩くことになった。

見ていて思ったが、ここに来ている子供たちはだいたい十歳ほど、人間的に言うと小学生ぐらいの子供が多い。

逆に言うとそれだけの子供学校に通うことを望んでいるわけだ。

それからしばらく歩いていくわけだが、時々イッセーとリアス(おっぱいドラゴンとスイッチ姫)を見て驚く親がいたが、二人とも手を振るだけにとどめていた。ここで握手だのサイン会だの始めたら体験入学どころじゃないからな。

渡り廊下を越え体育館に入ると、聞き覚えのある力強い声が耳に届いた。

「いいか!パンチというのは腰をおとして、体全体から打ち出すように一直線に前へ突き出すのだ!」

『はい!』

体育館で子供たちに正拳突きを教えているサイラオーグの声だ。

子供たちもたどたどしくはあるが、元気にパンチを繰り出していた。

「ハッ!ハッ!ハッ!」

子供たちに指導していたサイラオーグが俺たちに気づき、構えを解いて、朗らかな笑みを見せてくれた。

「おおっ、リアス、シドウ様も」

サイラオーグが子供たちに言う。

「見ろ、おっぱいドラゴンたちだ」

サイラオーグの一言で子供たちが一斉にイッセーたちのほうに興味を注いだ。

こうなると子供は止まらないからな。

「とりあえず、レイヴェル。頼んだ」

「お任せください!イッセー様のマネージャーとしてのがんばりどころですわ!」

その後、レイヴェルの指示のもと、即時イベントが行われた体育館だった。

 

 

 

 

 

 

 




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