グレモリー家の次男   作:EGO

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life04 新たな情報だぜ

兵藤宅に戻った俺とロスヴァイセ。その後、リアス経由で話を聞いたオカ研メンバーが俺の部屋に集まった。

「……うかつだった。まさか東京に来るとは」

俺は出発前に、首都東京なら大丈夫、と考えたことを悔やんでいた。

東京をはじめとした各国首脳都市は、この駒王町並の結界が張られてはいる。

だが、ユーグリッドは白昼堂々とそこに現れた。

やはり、この町で済ませてもらうべきだったか?いや、今回はロスヴァイセのために出掛けたんだ。彼女の願いを叶えないわけには………。だがそれが結果的にロスヴァイセを危険に………。

俺が頭の中で終わりが見えない議論をしているなかでイリナが言う。

「今までのテロリストとは一線を画すわね。彼らは人間界に影響を及ぼすことに躊躇いを持っていそうにないもの」

イリナの言う通りだ。クリフォトは今までの連中とは根本的に違う。今までの連中は、目的のものだけを集中的に狙ってきていた。だが、クリフォトは目的に辿り着くためなら何であろうと攻撃してくる。事実、吸血鬼の国もそれで……。

あそこでユーグリッドと戦闘に入っていたら……考えただけでもゾッとする。あそこで戦ったら数百人の犠牲者が出たはずだ。

やはり、うかつだったのか?

そんな泥沼に入ってしまっている俺にリアスが言う。

「お兄様、彼らが東京に現れるなんて誰も予想できなかったことです。プライベートのタイミングで接触されるなんて……」

「想定外だった。それじゃ片付かない……。この町並の結界が張られた場所に来る………それも予想しておくできだった………」

考えがどうにもまとまらない俺の耳に、朱乃の一言が聞こえた。

「向こうもかなりのリスクを負ったはずです。一度やってしまえば、二度目はないと断言できます。あちらとしても余程のことがない限り、行動は起こせないはずです」

「だが奴はそのハイリスクを負ってまでロスヴァイセに接触した。理由はロスヴァイセが破棄したという論文か……。アザゼルに訊いてみるしかないな。そろそろ定時連絡の時間だったはずだ。ロスヴァイセもそれでいいか」

「はい」

ロスヴァイセは返事をしてくれるが、あれからずっと考え事をしている時のような難しい表情になっていた。

数分後、アザゼルから連絡が入った。今アザゼルはグリゴリに、神器(セイクリッド・ギア)や異世界、クリフォトについてなどの話し合いをしに行っている。だからこうして定時連絡まで待っていたわけだ。

俺たちから一通りの話を聞いて、アザゼルはあごに手をやり目を細めた。

『シドウの次はロスヴァイセか……』

「ああ、666(トライヘキサ)の論文がどうとか言ってたが」

『最近頻発している、名うての魔法使いの行方不明騒ぎ。調べてみたんだが全員が666(トライヘキサ)に関する研究をしていたようだ。特に一般的なモノとは違う方面から攻めていたって研究者だ。集会に参加する者にも何人かいるようだ』

「奴らは666(トライヘキサ)の情報を求めて、それっぽい術者を手当たり次第って訳か?」

俺の確認にアザゼルは頷いた。

『黙示録の内容と聖書の神を知っていれば、ある程度封印に使われた術式が特定できる。一応クリフォトでも解除困難なものが、少なくとも二十三あると想定されている。そこから逆算して666(トライヘキサ)復活までの猶予がどれほど残っているのか協議中だ。復活させる気はサラサラないが、最悪のケースも想定しておかないといけないからな』

最悪のケース……グレートレッドと666(トライヘキサ)の衝突。それが実際に起きてしまえば、本当に世界が滅ぶかもしれない。

全員が同じことは考えたのか表情が固くなっていた。

そんな俺たちを見てアザゼルは笑った。

『深刻になるには早ぇよ。いちおう、おまえら以外にも"保険"は作る予定だ。今度、それに関しても詰めていかないといけないんだが、まぁ、それはおいおいだな』

俺も全部の情報を知っているわけじゃないからわからんが……アザゼルが言った"保険"は俺じゃ想像も出来ないものなんだろうな。

「そういえば、さっき666(トライヘキサ)に関して一般的なモノとは違うって言ったがどういう意味だ?やっぱ異説の616のほうか?」

『ロスヴァイセ、どうなんだ?』

ロスヴァイセは俺たちからの質問に口を開いた。

「シドウさんの言うとおりです。私は異説である616のほうで研究していたんです。そちらの数字で各種関連のものと照らし合わせて、数式、術式を組み立てていきました」

『やはりか……さっき言った拉致された術者たちの大半も616から調べていた者だったそうだ。グリゴリですら616は本来の解釈じゃないと信じていたほどだ。……やつらがこう動いたということは、666(トライヘキサ)の封印は616をベースに?』

独りで話し始めてしまったアザゼル。俺もさっきはあんな感じだったのか。声には出してなかったが……。

アザゼルは声に出ていたことに気づいたようで、咳払いをしてからロスヴァイセに言う。

『とりあえず、ロスヴァイセ。おまえが書いたという論文を覚えている限り、文字に書いてこちらに回せ。こちらで調べてみる』

「……少し前から、書き起こしてありました」

ロスヴァイセはそう言うと、レポート用紙の束を小型の転移魔方陣にのせ、ジャンプさせた。すると連絡用魔方陣に映るアザゼルの手元にレポート用紙の束が現れた。

レポートを受け取りながら、アザゼルはロスヴァイセに言う。

「しかし、おまえも大したもんだ。自然と祖母と同じものを調べていたなんてな。血は争えないというやつなんだろう」

俺はロスヴァイセが難しい顔をしている理由に気づいた。

クリフォトに狙われている魔法使い、それにロスヴァイセの祖母さん…ゲンドゥルさんも含まれているからだ。

「…………」

それからロスヴァイセは複雑な表情を浮かべたまま、何も話すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 




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