リゼヴィムの一言と共に転移させられた俺たちがいるのは城の端にある塔の頂上のようだ。
ここからなら城下町全体を見ることが出来るが……大量の邪龍が飛び回り、町のいたるところに炎を吐き出していた。
このままだと、すぐに町が火の海になるな。
「くっ……リゼヴィムの野郎は?」
アザゼルが周囲に目を配る。だが奴は上だな。
俺はリゼヴィムを睨み、ヴァーリは怒鳴った。
「リゼヴィムッ!」
「やっほー、ヴァーリきゅん♪お祖父ちゃんが遊んであげるぞい☆肩叩きしてくれるとありがたいなぁ~」
空を飛ぶリゼヴィムはリリスを抱えてこちらに手を振ってきていた。ヴァーリは光翼を展開し、リゼヴィムのほうに飛び出していった。
「おい、ヴァーリ!」
「アザゼル!悪いが俺もリゼヴィムに行くぞ!下手したらヴァーリが殺されかねない!」
「くそ!人手が欲しいところだが、頼む!」
「ああ!」
「お兄様!」
「大丈夫だよリアス。死にはしないさ……」
「シドウ。東門の地下にシェルターがある。そこに住民を避難させておく。終わったらすぐに来い!」
俺はアザゼルの言葉に頷き悪魔の翼を展開し、空中で戦うヴァーリとリゼヴィムのほうに向かった。
俺がリゼヴィムに向かって飛び出していく中でヴァーリが奴に蹴り飛ばされ下の建物に叩きつけられた。
「うぉら!」
俺はブレードを上から振るが、リゼヴィムは体を横にすることで避ける。
「ん、ん~っ!やっぱり
リゼヴィムはそう言いながら右手を手刀のようにして突きを顔面目掛けて放ってくる!
俺はそれを首を大きく右に傾けることで避けるが、かすったオーラだけで皮膚が切れ、頬に血が流れる。
俺はその突き出された右手を斬ろうとブレードの刃を返し振り上げようとした、だがリゼヴィムが左脇に抱えているリリスにブレードを粉砕されてしまった!
「くそっ!」
俺は悪態をつきながら両手にブレードを作り出し、連続で斬っていくが、リゼヴィムは体捌きで避けつつ手刀で防ぎ、時にはリリスの一撃でブレードを粉砕される。
「まだだっ!」
先ほど吹き飛ばされたヴァーリが戻ってきて二人で攻撃を繰り出していくが、ヴァーリの攻撃は全て効果無しで俺の攻撃は全て避けられる。
くそ!言い方が悪いがヴァーリが邪魔だ!ブレードを振りにくい!ヴァーリの奴、怒りで回りを見てないだろ!
そう思いながら俺はブレードをナイフに切り替え攻撃していく!
「いいねぇ!いいねぇ!楽しいねぇ!」
リゼヴィムはそう言いながらヴァーリを殴り飛ばし、俺にミドルキックを撃ってくる。
俺は上体を後ろに反らし避け、距離を取る。
つ、強い………さすがは兄さんたちと並び称される超越者だ。
ヴァーリは……今度はツェペシュ城に突っ込んでいた。
最初に戦っていた場所からかなり動いてたんだな。
俺はブレードをリゼヴィムを囲むように展開し、すぐさま撃ち出す!
リゼヴィムはそれを予期していたように全て避け、高度を下げていった。
俺はブレードを飛ばしながらリゼヴィムを追い、高度を下げる。
俺の飛ばしたブレードを弾いていくリゼヴィムに再び斬りかかる!
そのまま攻撃していくが顔を狙った突きを避けられ、横凪ぎに振ってもリリスに防がれ、袈裟懸けに斬ってもあっさりと避けられる。
俺がいくら攻撃しても当てられない!ここまで歯痒いのも久しぶりだな!
俺は攻撃の速度を上げていくがそれでも当たらず、リゼヴィムは再び手刀で突きを放ってくる!
その一撃はさっきのものとは比べ物にならないほど早く、俺は咄嗟にブレードで軌道をずらしたが俺の左肩を深く斬っていった!
「ッ!!」
俺は態勢を崩すが歯を食い縛って痛みには耐え、反撃に出ようとした瞬間、リゼヴィムがリリスを放した。
「さぁ、リリスちゃん!重い一撃。頼みます!」
俺は反射的に盾を作り出しありったけの魔力を込める。この距離じゃ攻撃の余波だけでもやられそうだ。だったら真っ正面から耐える。……耐えれるかは微妙なところだが。
リリスが見た目はかわいらしい動作で拳を撃ってくる。
次の瞬間、俺は信じられないほどの衝撃に襲われ吹き飛ばされた!
建物を数えたくないほどの数をぶち抜きながら吹き飛ばされ、地面に十回ほどバウンドしてからようやく止まる。
「……ッ!!」
俺の全身を激痛が襲うが、左腕からそのなかで一番の激痛が走った。そして理由はすぐに知れた。
俺の視線の先に左腕の肘から先が落ちている。
俺は左腕を確認するがやっぱりない……そりゃ痛いわけだ……。
俺は体をゆっくり起こすが
「ゴボッ!」
今度は盛大に血を吐いちまった。これはヤバイな……死ぬか?
「うひょー!今の一撃でも生きてるとか!マジでただの悪魔なの?ねぇねぇ、どうなの?」
動けない俺の近くにリゼヴィムが着地した。
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「ヴァーリきゅんはあれから全然出てこないし……ちょいと話そうや。ちなみにリリスちゃんは先に帰ってもらったから安心してね」
「……テメェと話すことなんかねぇよ………」
「いいから聞きなさいって!俺さ、シドウちゃんを見て一つ思ったことがあるんだよね」
倒れるシドウに構わずリゼヴィムは笑顔で話し始めた。
「シドウちゃんさ。あんたは俺の"同類"だよ。今ある状況に満足してねぇだろ?心のどっかではあんたも戦いを求めてる。俺にはわかる!あんたの眼は確かに俺の大っ嫌いな正義の眼だ。だがあんたの眼だけには影が見えた。何が言いたいかわかる?本当のあんたは正義のために戦うような奴じゃない。あんたは俺らと同じ悪側の奴さ」
シドウはそれを聞いて俯いた。リゼヴィムが言っていることに反論したいが、今の彼にはその体力も、説得力もない。彼はつい先ほど殺すために力を振るってしまったからだ。
「でもでも、あんたは正義の側に立って戦ってる。何で?こっちに来たほうが楽しいよ?刺激的だよ?やっぱりあれかい?家族や恋人は裏切れないってか?」
「テメェに何がわかる?血の繋がった孫を……家族を何とも思わないお前に!ゴボッ!」
「おいおい……無理してっと死ぬぞ?」
リゼヴィムは血を吐いたシドウにそう言うと顔が真剣なものになる。
「私はなシドウ。キミに私たち側に来てほしいと思っているんだよ」
「……ッ!」
彼は口には出せないが驚いていた。いつもふざけていたリゼヴィムが急に真剣な顔を……
「キミは私の考えを理解し、予測した。キミと私は似ているんだよ。考え方がね。別にいいじゃないか、殺したいから殺すことも、裏切ることも、キミは今に満足しているのかい?本当の自分を抑え、誰かのために戦う自分に」
「…………………」
「だから……私たちの元に来い!そうすればキミは自由に戦える。本当の悪魔として、キミが気に入らないものをその剣で斬り裂いていけばいい。強いものが弱いものを支配し、服従させる。気に入らない奴を殺す。私が目指しているのは異世界でそれを行うことだ。キミはそれに……私の夢に共に参加したくはないのか?未知の敵と何度も戦える。その戦いに……なぁシドウ・グレモリーよ!」
シドウはそこまで聞くとフラフラと立ち上がった。
「俺は………あんたを……あなたをただの自己中と勘違いしていたようです」
明らかに敬意を払うような口調になったシドウに、リゼヴィムは祭儀場で見せた無邪気なものとは違う、冷静な喜びを感じる笑顔を見せた。
「そうか!わかってくれたか!」
リゼヴィムはそう言いながらシドウの服の汚れを払い抱擁した。
「それなら話が早い!すぐに治療を……」
「俺は……一つのことがわかりました」
「……?」
疑問符を浮かべシドウの顔を覗き込むリゼヴィムに彼は言った。
「…ようやくわかりましたよ…………あなたが…………あんたが本当のクズってことが!」
「……!!」
シドウはそう言うとリゼヴィムが驚愕した一瞬の隙に離れ腹部に蹴りを入れ、顔面に渾身のストレートを叩きこんだ!
殴り飛ばされ地面を転がるが、すぐに立ち上がりシドウを睨んだ。
「………貴様!何をする!」
「………ああ、テメェの言うとおりだよ。俺は正義側じゃない。おまえの言うとおり俺は悪側だ。おまえの話で目が覚めた」
シドウがそう言うと体に紅のオーラを纏いはじめる。
「そう……俺は
彼のその言葉と共に体を紅のオーラが完全に包み込んだ。
「…………これは、まるでサーゼクスではないか……」
リゼヴィムの言うとおり、今のシドウは紅のオーラに体を完全に包まれれ表情もわからなくなっていた。
知っている者からしたら、今の彼は
もっともシドウの滅びでは地面が消し飛ぶほどのパワーはないのだが………。
『そうだな、
彼はそう言うと紅の軌跡を残しながらリゼヴィムに肉薄した。
リゼヴィムはその速度に一瞬驚愕するがシドウが放った突きをギリギリで避けようとする。
その瞬間、シドウが突きだしたブレードの剣先が枝分かれになりリゼヴィムに襲いかかった。
リゼヴィムは瞬間的にブレードが当たる場所を見極め魔力で小さな盾を作り出し、防ぐが
「グッ!」
何本かはその盾を貫通し、リゼヴィムに突き刺さった。
リゼヴィムはすぐさま手刀で刺さったブレードを叩きおり距離を取ろうと後ろに飛ぶが、折れた剣先だけが体に染み込むように流れ込み、激痛で態勢を崩し着地に失敗した。
「…………ッ!?」
微量だが滅びを流し込まれ、苦悶の表情になるリゼヴィム。
シドウは無くなった左腕を両刃剣の刃の部分のように変え、リゼヴィムに向ける。
「なっ!?左腕そのものをブレードのように!?」
『さぁ、終わりだ……』
シドウはそう言うとリゼヴィムに向かい飛び出そうとするが、一歩踏み出した瞬間前のめりに倒れ込んだ。
それと同時に体を包んでいた紅のオーラが消失する。
「………くそ………限界か……」
「……私にも届きうる力……下手をすればキミも超越者と呼ばれそうだな。貴様は危険だ。だからこそ私はキミが欲しい。少々力ずくになってしまったが……後でじっくり話すとしよう」
リゼヴィムはそう言うとシドウに警戒しながら少しずつ近づいていく。
リゼヴィムの手がシドウに伸び、触れようとする。
だがその瞬間、白い閃光がリゼヴィムに襲いかかった。
リゼヴィムは後ろに飛び、白い閃光の正体を確認した。
「ヴァーリ……しつこいな」
「リゼヴィム!まだだ!まだ終わってない!」
ヴァーリは兜越しにリゼヴィムを睨み、攻撃に移ろうとする。
だがその瞬間、彼らの周辺を闇が染め上げた。
「これはリアス・グレモリーの
「ここまでか……シドウ・グレモリー!また会おう!」
リゼヴィムはそう言うと飛び去っていき、ヴァーリはリゼヴィムを追いかけて行ってしまった。
「もう……会いたくない…ぜ……リゼヴィム………」
シドウはそう言うと気を失った。
書いていてシドウがリゼヴィム側に行ったら……何て事を考えてしまった。
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