ですがこの話はオリ主人公の設定埋めのような話ですので読まなくとも特に支障はありません。
お好きなようにしてください。
「な、なんでよおおおおおっ!?」
…………またアクアが叫んでいる。今日はよく叫んでいるな、いったい何があったのだろうか。依頼掲示板でアクアお断りとでも書かれていたのだろうか?流石にそんなことはないはずだが、お金関係もさっきので終わっているはずだし、今回は見当がつかない。
カズマにばれないようにこっそりめぐみん辺りに聞いてみるか。
「…………めぐみん、いったい何があったのでしょうか?」
「ああ、ユタカですか。最近魔王の幹部らしき人がここら辺に来たのですが、その影響でしょうか、近くに住み着いている弱いモンスターが隠れてしまって仕事が激減しているんですよ。で、今残っているのが高難易度の依頼だけなんですよ。」
「…………なるほどです。アクアが叫んでいるのはそのためですか。」
「まぁ、来月には国の首都から幹部討伐のための騎士団が派遣されるので、それまでの辛抱ですね。」
「…………ん、めぐみん、教えてくれてありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
あの借金で有り金全部なくなったアクアらしい。で、依頼で何とか稼ごうとしたものの魔王の幹部によって、自分たちでできそうな、というよりも稼げそうな依頼が出来なくなった、と。
…………うん、今回ばかりはアクアの運のなさには……同情できねぇわ。貯金なり節約なりしておけばいいものを調子に乗って遊び倒していたからこんな目に遭うんだろう。俺個人としては自業自得としか思えない。
とはいえ俺も他人ごとではない。繁殖期で元気が良いジャイアントトードでもいればいいのだが、この調子だと他の奴もたぶん、カエル目当てに狩りに行きそうだしな。俺も何か仕事を探しておかないとな……。
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仕事か……ここ、異世界でも仕事は探せばある。だが、その仕事が俺の適正に合っているのかが問題だった。
例えば、カズマとアクアがやっていた土木工事の作業員。カズマの話を聞くだけではきついところもあったが働いている人たちも優しく、楽しそうなところなのだろう。しかし女の子の体の俺では体力が持たずにすぐ潰れてしまうだろう。
ではギルドのウェイトレス。あれは俺にもできそうだが、ギルド関係者には幼児化のことが知られていることから却下。どんな羞恥プレイだ。
……そこらの店番。力が無いため強盗相手には戦えないし、『コンプレスグラビティ』を街中では使いづらい。また、敏捷こそ多少あるものの、やはり体力不足で泥棒とかを捕まえられない。それにこの体だと大きな掛け声も出しづらいため却下。
…………俺、良くここまで生き延びられてきたな。本当、商人一家に助けられてばかりだ。
で、やっと俺にもできる仕事が見つかった。それは自分が思いもしない形ではあったがな。
「……いらっしゃいませ、お客さま。こちら、何日ほど泊まっていきますか?」
そう、俺が今拠点にしている宿屋で従業員として働くことだった。こんなことで、いつものローブ姿ではなく可愛らしいフリフリの服を着るとは思わなかった。
事の発端は俺が商人一家に50万エリスを渡したことだった。せめて宿代に、と思って渡したのだが、三人共に苦笑されて、自分のために使いなさいと返されてしまった。それでもこれまでのお礼としてもらってほしかった俺は無理やり押し付けようとした。のだが、その時に色々と話してもらった。
それは、俺が住んでいた宿屋自体が商人一家が営んでいる宿だったということだ。というのも、元は行商人として働いていた一家であったが、老夫婦の体の衰えや、目標であり憧れであった街での生活のためにこの宿屋を買い、商いを行うためであったそうだ。
その割には客とかいなかったのだが、その理由もこの宿屋を買いはしたが開店するための手続きや、家具の購入などの準備が必要だったからだそうだ。それと、その資金を稼ぐために積み荷を売り払うための時間も必要であったため、まだ開店していなかったためらしい。そのため、実質購入済みだとはいえ、俺を泊めたときはあくまで借りていたという状態だった。
………………それじゃ、なんで俺を泊めたんだ。お金は払ったから大丈夫、なんて嘘までついて。
…………おい、困った人を助けるのは当たり前、って随分良い人過ぎやしないか?お人よしにも程があるぞ。いや、いつも言っているのは聞いていたが、まさか本当にそうだとは思わなかったぞ。あと、女の子がいると華やかだからって、それでいいのか。お爺ちゃんとお兄ちゃん、お婆ちゃんが凄い笑顔になっているぞ。思いっきり拳、構えているのだが止めなくていいのだろうか。
まぁ、そんなことがありつつ仕事の話に戻るのだが、そろそろ開店するということなので俺はその手伝いとして宿屋で働くことにした。で、50万エリスは受け取ってくれなかったし、恩の分もあるから無料でやるつもりだった。
流石にそれは断られた。まぁ、ここまでは想定内だ。タダ働きさせたなんて店の風評にも悪いだろうし。かと言ってここで引き下がると、また無駄な世話を掛けちまう。その代わりに他の従業員よりも恩の分も込めて安くしてくれた。安くした分は俺が泊まっている宿屋代の分だと言いくるめたかいがあった。
まぁ、そんなこんなで俺は宿屋で他の人と一緒に従業員として働いている。今は魔王幹部が討伐されるまでは碌な依頼が無いため、お金がないのだろう。冒険者もあまり泊まりに来てないから暇だ。ま、来月には忙しくなるだろうしそれまでは練習として思っておこう。
…………それと余談だが、商人一家と話し終わった後、部屋では思いっきり泣いた。あんな優しい人たち、もう二度とお目にかかれない筈だ。別れの時はいつか来るかもしれない。それまでに今まで受けた恩を返すだけでなく、むしろ俺が恩を売る形まで持って行きたい。それが、俺にできる礼のはずだ。……しっかりと頑張ろう。あの人たちがありがとう、って言うまで頑張ろう。
ところでカズマ、最近めぐみんを背負って帰ってきているが何があったのだろうか。
あと前話でなぜアザトースの名前を出したかというと、とある擬人化アザトースが可愛すぎて愛が溢れてしまっただけです。ニャル様と迷いましたがアザちゃんが可愛くて出してしまいました。誤解を招くような表現をしてしまい申し訳ありませんでした。