この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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キャベツの調査をしたかった理由がなぜギルドが今年のキャベツの出来が良かったことを把握していたことで妄想したものです。

あと、せっかくのパンツ回なのにあまりセクハラできなくて申し訳ありませんでした。


第7話 ほうこく

とりあえずは外に出て『ポラリス』を発動する。

人の少ない路地裏をしばらく歩き、周囲に人がいないことを目視と『ポラリス』による俯瞰視点で確認する。…………うん、人はいなさそうだ。これなら今だけ口調を崩しても大丈夫だろう。だが大声を出したら人が寄ってくる可能性もあるため注意して、

 

「………………はぁぁぁ、キャベツの調査って何すりゃいいんだよ……!!」

 

なぜ異世界に来てまでキャベツのことを調べなければいけないのだろうか。風邪を治す薬効がある木の根とか、力や魔力が一時的に上昇する薬草とか、そんな浪漫を感じるものやファンタジー色バッチリのものならばやる気は出るものの、よりによって調べるのが元の世界であったキャベツだ。

 

「………………やる気出ねぇよな」

 

何が悲しくてキャベツを調べなければいけないんだ。そんなもの元の世界の主婦のお姉さんに聞けば品質の良し悪しが分かるのだろう。それだったらそこら辺の女性を捕まえればわかるのだろうか……。

 

「…………50万エリスと聞いて受けたが、ここまでテンションが上がらない依頼は初めてだな。」

 

とにかく、今はギルドにキャベツの現在地に進行方向、後はざっと見たときの数くらいは報告しておいた方が良いだろう。品質の良し悪しは報告を行ってからギルドのお姉さんや他の冒険者に聞けばわかるはずだ。…………きっと。とにかく、今はキャベツの大群がどこにいるかを探さなきゃ。

 

とりあえずもう十分嘆いたし、報酬金の分ぐらいは頑張らないと……中途半端に手を抜いて減額だけは免れたいからな。

 

 

―――――――― 

 

たぶん よくじつ

 

たいようは2かい、おつきさまは1かい、みたからたぶんよくじつ。

きゃべつさん、あとすこしでまちのちかく、くるからじゅんびしたほうがいいよ?

ほかのひとよんできて、きゃべつさんほかくする?

 

「……え、えっと、そうですね。それでしたら今から冒険者の方をギルドに来させるように呼びかけますので、あと少しキャベツの動向と監視、頑張れますか?」

 

だいじょうぶ、あとすこしくらいならへいきそう。

まりょく、ちょっとあぶないけど、それよりもあたま、いたい、きもちわるい。

 

「き、緊急クエスト!緊急クエスト!町の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します!町の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!」

 

きゃべつさん、まだそうげんにいる。

すぴーども、まだだいじょうぶそう。

でも、まちにきゃべつさん、いるのもいるからきをつけて。

 

 

……? ぎるどにひと、いっぱいきた。

みんな、いっぱい、すごいひとたち。

 

ぎるどのおねえさん、ぎるどのなかにはいって、みんなのところにいったのかな?

 

「皆さん、突然のお呼び出しすみません!もうすでに気づいている方もいると思いますが、キャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!今年のキャベツは調査員の報告によると出来が良く、一玉の収穫につき一万エリスです!すでに町中の住民は家に避難して頂いております。では皆さん、出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしないようお願い致します!なお、人数が人数、額が額なので、報酬の支払いは後日まとめてとなります!こちら、調査員によってキャベツの出現位置をまとめた紙ですので一度ご確認のうえ、キャベツの捕獲を頑張ってください!」

 

……これで、わたしのやくめしゅうりょうです?

 

「はい、大変お疲れ様でした。報酬金は後日お払い致しますので今日はしっかりとお休みくださいませ!大変無理を言い、休憩も無しに働かせてしまい申し訳ありませんでした!」

 

えへへ、それならがんばったかい、あったよ!

ごほーび、ちょうだい?

 

「ごほーび、でしょうか?今回は一日中調査を行ってくださったので、報酬金に上乗せする形にしようかと思っていたのですが……」

 

そんなことより、あたま、なでなでしてほしい。

なでなで、きもちいいからすき。

 

「な、なでなで、でしょうか?それくらいでしたら別に構いませんが……」

 

ん…………きもちいい。

えへへ、あたま、なでられるの、すき!

 

「そ、そうですか。ですが、そろそろ休むのはどうでしょうか?目の隈もすごいことになっていますし、身体もちょっとふらついていますし……」

 

む―……それなら、きょうはかえる。

でも、またきかいがあったら、なでてね?

それじゃ、ばいばいー!

 

「ええ、それではさようなら。ユタカさん、本当にお疲れ様でした。………………ユタカちゃんってあんな笑顔もするのね、可愛らしかったわ。」

 

――――――――― 

 

……知らない天井、ではないな。この世界に来てから幾度と見た天井だ。窓の方を見ればもう日が暮れている。キャベツ狩りを終えたと思われる冒険者たちが談笑しながら歩いているのが目に入る。

 

…………なんだあれ。自分でドン引きする声出して、なんで撫でるように要求したのだろうか。というかまさか寝ずにキャベツの監視をする羽目になるとは思わなかったぞ。

 

あのあと、無事に宿に着き、ベッドに倒れこんだ瞬間に眠ったのだろう。あの酷い頭痛と精神年齢の退行はおおよそ『ポラリス』の連続使用によるものなのだろうか?

以前から他のパーティーとの臨時でのモンスター討伐でも連続使用はしていたが、丸一日の連続使用はやっていなかったことから今回、初めて分かったのだろう。流石にあんな目は嫌だが、もしかしたらあの状態になってしまうこともまたあるかもしれない。今回はそのことを知れただけでも十分だ。それともこの肉体が徹夜とかが無理な体質なのだろうか。今度暇なときに試してみた方が良いな。

 

「…………うわ、ひっでぇ隈だな。一日でこうなるものなんか?つーか、髪の毛もぼさぼさだな、まぁ、風呂すらも入ってなかったし仕方ないが……」

 

とりあえず自分の臭いも気になるし、大衆浴場で体を洗おう。飯はその後でいいだろう。空腹程度はこの体は多少平気のようだし。

 

でも飯食うとしたらギルドだよな、他の所は知らないし、今日は挑戦する気力もわかないし……あの口調や精神状態をギルドのお姉さんたちに見られているから正直行きたくない。この歳にもなってあれはさすがに恥ずかしい。しかし、今行かないとギルドの関係者に言ってしまうかもしれない。できるだけ他の人に話したりしないように言っておかないと。これ以上広まるのだけは勘弁だ。

 

――――――― 

 

もう遅かった。ギルドに着いた時にはすでにギルド関係者と思われる人間にはクスクス笑われた。しまいには、また撫でてあげましょうか?とかやめろ。そんな年でもないし羞恥プレイは結構だ。あと、今やりたいのはキャベツ狩りがどんな感じだったかの結果であって撫でられることじゃない。

 

おいやめろ、なんでこっちに近づいてくる。あと手の動きも妖しいぞ。待て、本気でやめろ、恥ずかしいから、やめて!

 

 

 

 

 

 

な、何とか逃げ切れた。なんであんなにチームワーク良く追い詰めていくのだろうか、そんなことはもっと仕事なり他のことに使え。……はぁ、キャベツ狩りがどうなったかはもう明日でいいだろう。そんな気力は尽きた。もう早く飯だけ食べたら帰ってゆっくり休みたい。お金も50万エリス貰えるのなら、明日も休みでいいだろう。

 

…………ん?あれはアクアにカズマか。しかし見慣れない人がいるな。前言っていた募集したパーティーのメンバーだろうか。一応、声は掛けておいた方が良いな。

 

「…………カズマ、こんばんは。キャベツ狩り、お疲れ様です。」

「……ん?ああ、ユタカか、ありがとうな。そっちはご飯か?」

 

知らない相手に下手に喋ってぼろを出すわけにはいかないし、カズマの言葉に無言でうなずく。

 

「おや?カズマ、その子は誰なのでしょうか?」

「ああ、この子はユタカ、占星術師(ゾディアック)という珍しい職業の子だ。」

 

杖もちでとんがり帽子……魔法職と思われる女の子とカズマの声につられる様に一礼をする。名前に職業と必要なことは言われたんだ。これ以上特に言うこともないから黙っておく。

 

「ユタカか、私はダクネス。職業はクルセイダーだが攻撃に関しては不器用過ぎて当たらなくてな。その代わりと言っては何だが壁役として活躍したいと思っている。いや、むしろ壁役が良いというか……」

 

……ちょっとユニークなお姉さんだこと。でもタンク役としては十分だろう。攻撃が出来ないのならその分他のことも兼ねてやらせればいいし。傷ついても回復役のアークプリーストのアクアがいるからなおさら大丈夫だろう。というか俺がほしい。攻撃と周囲警戒は俺がやるから盾役として頑張ってほしいかったが、カズマたちのパーティーに入ったのなら仕方ない。

 

「ふっ……ではあなたにもこの名を聞かせてあげましょう。我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕いてみせましょう!」

 

…………え、これ、俺も名乗り返してあげるのが礼儀なのだろうか?流石にそんな名乗り方は全く考えてないけど、即興でもやっておいた方が良いのだろうか。

 

「…………めぐみん、ユタカが困っているからちゃんとした名乗り方にしておきなさい。」

「うるさいですよカズマ!これは我が一族、紅魔族の由緒正しい名乗り方なんですからこれ以外の名乗りなんてありえませんよ。」

 

あ、俺はしなくていいんだな。それならよかった。

 

「……愉快なパーティーメンバーで、良かったですね。」

「俺としては今すぐ常識的なメンバーが入ってほしいくらいなんだがな……!……ま、いいや、ユタカも一緒にご飯食べるか?」

 

カズマの声にもう一度うなずく。

 

――――――― 

 

カズマたちのキャベツ狩りは聞いたところ、かなり良い結果だったらしい。ダクネスはキャベツを盾役として周りの冒険者の分まで受け止め、めぐみんの『エクスプロージョン』でダクネスごとキャベツを捕獲。カズマはクリスという人から教えてもらった『潜伏』で隠れつつ『敵感知』キャベツの動きを捕捉し、『窃盗(スティール)』でキャベツを捕獲していたという。

アクア?一人好き勝手にキャベツを追いかけ回し、全く活躍していないそうだ。

 

「それにしても意外ですね。鬼畜変態のカズマにこんなまともそうな知り合いがいたなんて。」

「おい、誰が鬼畜変態だ、爆裂変態娘。それとあのことをユタカの前でそんなこと言うな。」

「……カズマが鬼畜変態、ですか?いったい何があったのでしょうか?」

「おい、めぐみん、ユタカに変なこと言うんじゃない!」

「はぁ?あれも全部、カズマがやったことじゃないですか!」

 

カズマとめぐみんが言い争うし始めたのでダクネスにそうなった経緯を聞くことにした。

そもそもの発端がアクアとめぐみんを生臭い体液濡れにする特殊なプレイを行ったことかららしい。その翌日、クリスに窃盗(スティール)を教えてもらった際の勝負で彼女のパンツを剥き、パンツと交換するために有り金を根こそぎ持って行ったらしい。その後もめぐみんをパンツを剥いていったらしい。

 

…………パンツ剥きすぎだろ。というか窃盗(スティール)ってあれ幸運依存のスキルの上、取得できるものはランダムじゃないのか?流石に2連続でパンツを取るとはある意味凄いではあるが、聞くだけでは基本的に全部偶発的なことだろう。

生臭い体液濡れはカエルに丸呑みされたんだろうし、二回ともパンツを剥いたのは偶然だろう。あと、有り金全部なのもクリスが先にカズマの財布を盗んだんだ。自分からやっておいてそれで落ち込むのも違うんじゃないか、とは思う。

 

とはいえ、それで元同郷の奴が鬼畜変態呼ばわりなのもなぁ……なんか気に食わないし、一回カズマに試させてみよう。

 

「…………カズマ、私に一回窃盗(スティール)してみてください。私はカズマが鬼畜変態とは信じていませんし、これで下着以外を盗めば汚名返上できますよ。」

「え゛、あ、あなた正気ですか!?この鬼畜変態に窃盗(スティール)をやらせるとか正気ですか!もしかしたらまた下着剥ぎ取られてしまいますよ。いえ、むしろ嬉々として剥ぎ取りに行きますよ!」

「おいめぐみん、俺に不満があるのなら今すぐこのパーティーを抜けてもらって構わないぞ。」

「…………別にそれくらいなら我慢しますので大丈夫です。それに、カズマが好き好んで女性の下着を剥ぎ取るような輩だとは思っていませんし大丈夫でしょう。」

「……本当、ユタカのようなやつが居てくれて助かるよ。ただ、その信頼が重い……」

 

身体こそ女の子ではあるが、精神は立派な男だ。別に下着を剥かれても怒るというほどではないしな……

 

「…………それじゃ、どうぞ。」

「分かった、それじゃ行くぜ。『スティール』ッ!」

 

カズマが俺に右手を向けてスキルを発動した。

さて、結果は…………

 

うん、まぁ、知ってた。カズマの右手に収まっていたのは綺麗な水色で、レースが多く掛かっており、全体的に細いシルエットをした布だった。というか俺のパンツだった。出かける時に着替えてはいるからそこまで汚くはないが、そう大っぴらに見せびらかせないでほしい。

 

「………………………………カズマのエッチ」

「ま、待ってくれ!これは誤解だ!」

 

あ、やばい。思っていたよりも羞恥心とか悔しさとかが色々混ざって涙が出そう。というか顔から蒸気を拭きそうなほど熱くなっていっているのもわかる。

…………と、とりあえず、今は帽子で顔を隠しておこう。

 

「誤解も何も、信頼してくれた女の子の下着を思いっきり握りしめていたら説得力もなにもないわよ?」

「流石カズマですね。信頼を思いっきり裏切るとは大したものです。そんな真似、私はまったくできないですよ。」

「はぁ……っ!はぁ……っ!こんな簡単に下着を剥ぎ取るとは……!やはり、私の目には狂いがなかった……!流石カズマだ……!」

「お、お、お前らあああああああ!」

 

にしてもここまで窃盗(スティール)でパンツを剥ぎ取るということは……このスキルには使用者が願ったものほど手に入りやすくなるのだろうか?一応いざという時に価値こそ低いが貴金属類に魔道具を服や靴に仕込んでいる。しかもクリスやめぐみんの時も布よりも貴重価値のあるものがあったにも関わらずにこうして下着を剥きとるということは……うん、まぁ、カズマも男の子なんだろう。そんな可能性があることも否めないだろう。

 

それとカズマ、ギルドのみんなからの冷たいどころか氷を思わせる目線には気づいた方が良いぞ。俺が抑えているうちになんか反応しておけ。

 

 

―――――― 

 

「………………本気で、疲れた。」

 

おかしい、ギルドからの仕事が終わったらベッドにぶっ倒れてちゃんと大衆浴場で体を休ませ、飯もしっかりと食べたはずなのにどうしてここまで疲れているのだろうか。

まぁ、原因は分かっているから何とも言えないが。

 

とりあえず今はしっかりと休もう。報酬金はキャベツ狩りの報酬の時と一緒に渡すそうだから今はあんまりないが、明日くらいは休んでもいいだろう。ここまで疲労が多いと明日は昼近くまで眠っているかもしれない。

 

…………ところで、なぜかまた何か忘れている気がする。カエルの時といい忘れごとが多い。今度から何かあったときには、メモを取るようにしておいた方が良いだろうか。

 

……うん、思い出せない。とりあえずもう寝よう。流石にこのまま寝るのもあれだし、お婆ちゃんにも言われて買ってきた寝間着を着て寝よう。

 

……………………あ。

 

「……カズマから、パンツ返してもらってない。」

 

 

 

 

 

翌日、見かけたカズマにパンツのことを言おうとしたが、なんかキラキラ輝いていたため、何も言わないでおいた。

 


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