この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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今回は閑話的なお話です。原作にはないオリジナル展開なのと作者の技量が悪いため、いつも通りの駄文となっています。申し訳ありません。文量も短くてすみません。


第34話 小休止

「あらあらぁ?なんでこんなところに……あぁ、なぁんだ、ただちょっとこちら側に来そうになっているだけなのねぇ」

 

 酷い眠気と強烈な頭痛のせいで眼すらも碌に開けない闇の中、どこか小さな子に向けて話すようなゆったりとした、気のせいか舌っ足らずに思える女性の甘い声が聞こえる。

 

「それならぁ、早く元の場所に戻りなさぁい。あんまりこっちにいたらぁ、私たち困っちゃうのぉ」

 

 その声にまた眠気が強くなっているのを感じてしまう。なんだこれは、何か魔法か何かでも掛けられているのか?そもそも俺に語り掛けてくる、この女は何なのだ。

 

「ほらぁ、良い子良い子。良い子はぁ、早くおねんねよ?……それにしても不思議ねぇ、別に私たちみたいのに会ったわけでも無いのにぃ、何でここに来れたのかしらぁ?」

 

 するりと髪の毛が動く感覚がした。そして頭を何か柔らかいものがゆっくりとさすってくる。それをこの女性が俺の頭を撫でているのだと気づいた時には―――

 

 

 

 ~~~~~~~~~ 

 

 

 

 結局、俺が気絶した、らしい。俺もあまり実感がないから断定はできないが、帰り道までずっと背負ってくれたダクネスの話によると、カズマが首をへし折ったのと同時に俺は地面に向かって顔面ダイブしたらしい。その時の顔の擦り傷や精神的ショックからはアクアが治療してくれたみたいだが、何か魘されているような声を上げつつ目を覚まさなかったらしい。その後はめぐみんの奇策?でカズマが先に復活したらしく、日も暮れてきたことだしと俺を背負ってきてくれたとのことだ。

 ……奇策って何だよ。ダクネスはそこのところを詳しく教えてくれなかったが……やけに恥ずかしがっていたが、めぐみんはカズマ相手に、本当に何をしたんだよ。

 それにしても、あの夢みたいなのは何だったのだろうか。あの声に関してはどこかで聞いたことがあるはずなのだが……駄目だ、思い出せない。まあ、思い出せないのなら街のどこかで聞いただけなのだろう。きっと、それだけのはずだ。

 

 

 

 で、なんで俺がこんな情報を仕入れているのかというと、それは目の前にいる当事者2が原因だろう。

 

「おおー、カズマから聞いていましたが、思っていた以上に殺風景なんですね。もっとこう、私の心がくすぐられるようなものはないんですか?」

「……少なくともめぐみんが考えているような危険なものはここに置いていない筈ですよ?そんなものでこの宿屋に迷惑をかけるなんてこと、できませんからね」

 

 なんでここにいる、紅魔ロリ。お前には帰る居場所(屋敷)があるだろうが。急に駆け込んできたからまた問題ごとが起きたかと思ったら、この宿屋に泊まらせてほしいって何なんだよ。カズマに屋敷を追い出されたかと思ったらしばらくの間だけだから違うっぽいし……

 

「………そういえば私、何でめぐみんがこの宿屋に泊まる理由を聞いていないのですが。何か事情があるのならお手伝いしましょうか?」

「……あー、えっと、それはちょっと申し辛いことでして、たぶん時間が何とかしてくれると思いますので……それまでちょっと、ここにいさせてください」

「……まあ、今は部屋に空きがありますし、こちらも断る理由はありませんが」

 

 宿屋に泊まってお金を落とす以上、その人はお客様だ。お客様相手にはそれなりの対応を取らせてもらうつもりだ。ただ、無断で俺の部屋に乗り込んできたのなら話は別だが。俺が着替えている時に突撃して気まずいことになったらどうするつもりなのか。

 

「にしても、ここ結構大きな宿だったんですね。小さいながらも食堂らしきところもありましたし……しばらくここに引きこもれませんかね?」

「……あ、この宿、軽食くらいなら出せますが、めぐみんの食べる量を考えますと、ギルドなり屋台なりに言って食べてくる方がいいですよ。この時期だと頼む人もあまりいないでしょうし、期待はしない方がいいですよ」

「そうなのですか、助言に感謝します」

 

 実際めぐみんの食べる量は、小柄な体格なのに大食いというものだ。いったいどれだけ巨大な胃なのだろうか。俺ですらこの姿になってからは大分少食になったというのに。

 

「……んー、ところで、やっぱり私がこうしていることは気になりますか?」

 

 少しためらいがちに問い掛けられた言葉に頷く。いつもならなんだかんだで一緒にいることが多いのに、なぜ今日からしばらくの間離れることになったのかは心配もわく。少なくともこちらは友人だとは思っているんだ。何かあったのかくらいは心配させてもらってもいいだろう。

 

「そうですか……その、それなら説明させていただいてもいいですか?友人のところに押しかけて、何の事情も説明しないというのも……」

「……その、教えてくださるところを水を差すようで申し訳ないのですが、少し待ってもらっても良いですか?冒険したので、体を洗い流したいので……めぐみんも待っているのも暇でしょうし、お風呂、行ってきてはどうですか?」

 

 まだ肌寒いとはいえ今日闘った場所まで徒歩で歩いたことで汗はかいたし、地面に倒れたらしいかもしれないが、服だけでなく髪や顔からも土と草のにおいもするから一旦洗い流したい。

 

「あれ、銭湯に行くのでしたら私も一緒に行きますよ?」

「…………その、銭湯側も私の扱いに関しては困っているようでして……申し訳ありませんが、行くのならめぐみんだけでお願いします」

「……ああ、なるほどです」

 

 あちらも元男の現女なんて厄介な客を入れるわけにもいかないのは仕方ない。今まで黙って入浴していたのも、何か事情があってのものと許してくれただけでも十分にありがたいからな。

 とはいえ、今は大分よくなったとはいえ、ばれたときはまだ冬だったのもあって、桶のお湯とタオルで身体を拭うだけでは寒くて仕方がない。だからと言ってカズマの屋敷の風呂を使わせてもらうのもなあ……

 

「……なので、後でギルドの方で合流という形でいいですか?一緒にご飯も食べましょう」

「そうですね。では、先に着いた方が注文をして待っているってことで」

「……わかりました。では、後程で」

 

 

 

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 で、各自身体を洗い終わってギルドの集合後、めぐみんの話を聞かせてもらったのだが……

 

「…………………………本当に何やってるんですか」

「いえだって、アクアがしっかりと戻ってこれるようにしたのに、それで復活しないカズマが悪いんですよ……私たちだって、とても心配したのに、あの冗談は笑えませんよ」

 

 心配した俺が馬鹿だった。いや、死んだ世界の居心地が良いから生き返りたくないといったカズマもカズマだが、それに怒ってカズマの下腹部に『聖剣エクスカリバー↓』なんて書くめぐみんもめぐみんだ。何二人して馬鹿なことしてんだ。子供か。もしくは男が攻められる側の同人誌的な落書きでもするつもりか?

 

「えっ?いえ、そこまではするつもりは……というか、ユタカもそんな本を読むんですね……ああ、なるほど、そういう事ですか」

「……待ってください、誤解です。……いえ、男の時にそんなのがあるのは知ってはいますが誤解です……というか、なるほどって何に納得したんですか?」

「ユタカは落書きされることが好きってことでは?」

「それこそ誤解です。私は落書きされたって鬱陶しく思うだけです」

 

 というか、落書きされるのが好きってやつはごく少数なのではないか。少なくとも俺は書かれたところで興奮しないのは確実だろう。……ふと金髪巨乳で、そういった落書きを喜びそうな奴の顔が思い浮かんだが。ダクネスなら率先してされそうだな。いや、妙に初心なところもあるし、恥ずかしがるのか?……割とダクネスの性癖が分からなくなってくる。

 

「……こほん。で、めぐみんはこれからどうしたいのですか?カズマに謝りたいのですか?謝ってほしいのですか?時間が解決してくれるのを願って待ちます?」

…その、あれは衝動的に行ってしまったことですが……ただ、あれはカズマも悪いと思うのですよ!……そう、思います」

「……ん、まあ、一日二日くらいは時間をおいても良いとは思いますね。流石に明日明後日くらいはカズマも怒っているかもしれませんが、三日くらいたてば怒りも収まりはしているかもしれませんし」

 

 そのくらいになったら、アクアかダクネスあたりを通じて何とかしてもいいか。

 

「……とはいえ、友人が困っていますし、多少であれば手伝いますからね」

「……普通に手伝ってはくれないのですか?」

「…………今回のはカズマもカズマですが、めぐみんもめぐみんですよ?というか、こういったパーティーの仲での問題に介入するのはあまりよろしくないので……」

「それは私たち相手に今更じゃないですか」

「……今更だとしても、です。一応とはいえ、私の冒険者としての立場は誰とでも組める臨時メンバーみたいな感じですから、こういった問題に関わってしまうと面倒なことになる可能性がありますので」

 

 依頼だけこなしてあまり自分たちに関わってほしくないっていうパーティーも無くはないし、どのパーティーでも不仲や金銭関係での問題は多少なりともある。そんなところに部外者が首を突っ込んだところで冷たい目で見られるだけだしな。それで前例を作ってしまって変な邪推や疑われるのも面倒なのだ。

 めぐみんには申し訳ないが、こういった問題にはあまり手を貸せないし貸すつもりもない。できるだけ自力で頑張ってほしいものだが……。

 

「それなら仕方ありませんが……とはいえ、流石にカズマのあの答えには気が落ちますね……」

「……もしかしたらカズマも苛立っていただけかもしれませんよ。とにかく今はご飯を頂きましょ?どうせ食べるのなら、美味しく頂いた方がいですよ」

 

 暗いして食べたところで美味しくないかもしれないからな。

 

「……!それに、今日はカズマもダクネスもいないんです。いつも止められていたお酒も飲みませんか?お酒、飲むと気分が爽快になっていいですよ」

「あっ、お酒は結構です。流石にユタカのようにはなりたくありませんから」

「……一応、あれでも自制はしている方なんですが……?」

「あれで自制しているなら頭の中では一体どんなことになっているんですか」

 

 それこそ俺が聞きたい。別にそんなことしたいとも思ってないのに、体が勝手に動こうとするのが悪い。あと、変なことを吹き込んできたお兄ちゃんが悪い。ついでに悪乗りして教えるお爺ちゃんが悪い。俺に非は一切ない、俺は悪くない。

 

「はいはい、料理も来たことですし、ユタカの言う通り楽しく食べましょうね。ほら、早く食べないと冷めてしまいますし、ユタカのエールだってぬるくなってしまいますよ」

「……気のせいか、扱いが雑になってませんか?」

「気のせいですよ、気のせい。ほら、ちょうどいいですしコップ持ってくださいよ」

 

 はあ……もうちょっと丁寧に扱ってもらっても良いのに……ん、分かったよ。ほら、これで良いか?

 

「それじゃ、今はカズマのことも一旦置いておくとして、冒険成功と美味しいご飯に乾杯!」

「……乾杯」

 

 ……ま、とりあえずめぐみんの顔がさっきよりか明るいし、いっか。

 

 

 この後、めぐみんのライバルを自称しているゆんゆんが乱入してきたり、他の冒険者も混ざってきて宴会模様になったりしたが、まあ、特に問題ないか。

 

 




ふたりの宴会での会話?

「ふと疑問に思ったのですが、ユタカは宿屋と冒険者の二つのお仕事していますが辛くないですか?」
「……?別に辛いといったことは……?」
「だって、ユタカはいつも宿屋で働いているか、冒険者としてパーティーを組んでいるかで忙しそうですから、大丈夫なのかなーって思ったんですよ」
「……ああ、それは大丈夫です。そういったのはお婆ちゃんが『働きすぎ!』って怒って無理やり休ませてくれますからちゃんとありますよ?最近は事前に休日を作ってくれますし、迷惑を掛けて申し訳ないのですがありがたいです」
「……その、つかぬ事を聞きますが、以前は休日ってあったのですか?」
「……たしか、ここに来た時は宿屋の人たちに恩返しをしたくて働いていたから……13,4日で1日くらい?のはずです。……あっ、今は最低でも7日で1日はお休みを頂いていますから安心してくださいね」
「ええ………………」

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