申し訳ありませんがご了承ください。
さて、老夫婦と青年の商人一家に教えてもらった通りの道を歩くと酒場と思われるところについた。ここがギルド、なのだろうか。ファンタジーもののギルドと言えば荒くれ者が昼間から酒を飲んでいたりするイメージがあるんだがここはどうなのだろうか……
ゆっくりと扉を開けて中の様子を窺いつつ入って行こう。決して怖がっているわけではない。
それにしても思っていたよりも人が多いな。街中でも見かけたが分厚そうな鎧を着た剣士にとんがり帽子をかぶった杖持ち、退屈そうにナイフを持っている人間、日本ではコスプレ会場でもないとお目にかかれないような人たちばかりだ。
「いらっしゃいませ!お食事でしたらお席に、お仕事案内などございましたらこちらのカウンターへどうぞ!」
綺麗なお姉さんから声を掛けられた。この人はギルドの人だろうし、ここで冒険者の登録をすればいいのだろうか。
「…………ここで冒険者になれると聞いたのですが?」
「はい、ここでは冒険者の登録が行えます。ただ、登録の際には手数料として千エリス程かかってしまうのですがよろしいでしょうか?」
うん、商人一家の人たちが言っていた通りだな。教えてもらった通りに銀貨をお姉さんに渡す。あと口調も変えておいた方が良いと言われたが、これで大丈夫なのだろうか?流石に男の時の口調はあれだが、これはこれで違和感が酷くて不安だ。
「……ん、これで、いいですか?」
「はい、千エリスちょうどですね。確かに頂きました。」
よし、特に何のトラブルもなく渡せたな。
それにしてもこの世界の宗教でエリス教というものがあるが、このお金の単位もそれにあやかったものなのだろうか?
「それではいくつか冒険者として必要なことを説明させていただきます。では最初に――」
その後、冒険者として必要なことを話されていく。その中でも気になったのが冒険者カードというものだ。このカード自体が身分証明書になっており、依頼を受ける際にも冒険者カードが受けられないなどとても大切なものだとか。それにそのカードには自分のレベルやステータス、スキルに倒したモンスターなどが記載されるらしい。貰ったのなら確認しておこう。
「それではこちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴などをお書きください。」
さて、身長と体重はおおよそでいいとして、名前、か……
とりあえずは本名から「ユタカ」とだけにしておく。この世界で苗字だと貴族だと間違われる可能性があるかもしれない。それで絡まれても面倒だし名前の所だけでいいだろう。身体的特徴は……暗い紫色の髪だけでいいだろうか。他の所なんぞ鏡を見てないし知らん。
……そもそも俺はどうやってこの世界の言葉が分かったり文字を書けたりするのだろうか。これも駄女神がつけた機能のひとつなのだろうか。
「はい、ありがとうございます。ではこちらの書類はお預かりいたしますね。
それではこちらのカードに触れてください。それであなたのステータスが分かりますので、そのステータスの数値に応じた職業をお選びください。選んだ職業によっては専用のスキルが入手できますのでそのあたりを踏まえてお選びください。」
カードに触れるだけでステータスが分かるってそれ、相当な魔法なんじゃないだろうか?それがあれば敵のステータスが簡単に分かってしまうんじゃないだろうか?
まぁ、それはそれとしてカードに触れてみる。
「はい、ありがとうございます。ユタカさんのステータスは……おお!魔力と知力が高いですね!これでしたら魔法職などが最適かと思われますね。ですが…………少々言いにくいのですが、筋力に耐久、生命力は平均よりもかなり低いため、ソロで行うと危険ですのでパーティーなどを結成することをお勧めしますね。他の器用度や敏捷、幸運はそれなりにあるので頑張ってくださいね。」
……ま、まぁ、肉体が女の子になったんだ。それくらいは想定していたさ。(震え声
剣を持って近接戦しなくていいことを喜ぶべきか、男としてのプライドを傷つけられたことにへこむべきか複雑だ。
「では、職業の選択を行いたいと思います。先ほど述べた通り、魔力と知力が高いため魔法職あたりをお勧めいたします。ですがこのステータスですと上級職のアークウィザードはまだ無理かと思われます。ですので…………あら?」
「…………どうかしたのですか?」
「いえ、見覚えのない職業がございまして……えっと、
!これは駄女神に頼んだ才能の影響によるものだろうか。それならばだ、それにしておいた方がいろいろと捗るだろう。
「……それなら
「えっと、よろしいのでしょうか?ギルドの方でも把握していない職業ですのでどのようになるかはわかりませんよ?」
「……ん、大丈夫です。むしろ、面白そうだし、これが良いです。」
「…わかりました。それではユタカさん、ようこそ冒険者ギルドへ。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」
「あ、冒険に行く前にスキルの取り方と、今夜過ごせる宿を教えていただけないでしょうか?」
「あ、あはは、それではこちらも説明いたしますね。」
―――――――
さて、ギルドで冒険者カードも貰ったし冒険に行こう……とは思ったがアクセルの街についたのが3時すぎだったはずだ。そして諸々の手続きや説明を受けたときには太陽は沈め始めている。冒険は明日からにしよう。
それにしても初心者は宿なんかなくて馬小屋でないといけないという。……少なくとも馬なんぞテレビの中でしか見たことない俺に馬小屋の臭いや処理ができるか不安だ。少なくとも、今日は眠れないことも覚悟しておいた方が良いな。
それに、カードを何度見直しても体力面のステータスは何度見直しても低く、ソロでの活動がほぼ禁じられた。普通にパーティーを組む分にはいいのだが、俺の場合は転生者であることと元男という秘密があるため、それがばれるようなことはできるだけ避けたい。
スキルも見たことない職業のためどんなのがあるか分からないし、武器も職業的に杖を使えばいいのか星について書かれた本を用いればいいのかすらわからない。
「…………はぁ、あの駄女神め。なぜミスなんぞしたんだ。」
少し八つ当たりっぽいとはいえ、これくらいは許してほしい。ミスがなければ悩みの種も一つ減ったのだからな。
「……とりあえず、馬小屋に行って空きがあるか聞かないと。」
流石に街中で野宿は嫌だ。さっさと行かないと。
その後、ちょうど馬小屋が空いてなく、せめて安全な城門の前で野宿しようとしたところで商人一家に拾われて宿屋で過ごすことになった。しかもお金はあちらが出してくれた。
……本当に足向けて眠れないな。今度お礼に何かしてあげた方が良いな、うん。
拝啓、お父様お母様。親不孝な娘は異世界で皆さんが大変親切にしてくれて泣きそうです。
占星術師はゾディアックじゃないとか、そもそもゾディアックは横道帯だとかのツッコミはなしです。
この作品では占星術師=ゾディアックです。よろしくお願いします。イイネ?
あと、カズマ君に早くセクハラさせたいので次の話では一気に時間が飛んでしまいますのでお気を付けください。