この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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お久しぶりです。
今回は以前よりも短めの内容となっています。後、いつも通りの駄文です。
ご了承ください。



第24話 容疑者K&Y

「冒険者、サトウカズマ!貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられている!自分と共に来てもらおうか!」

 

 

 ………………え?カズマが、国家転覆罪?

 ……マジで?いや、カズマはそこまでのようなことはしない筈なのだが、いったいどんなことに巻き込まれたんだ?

 

「自分は王国検察官のセナ。冒険者サトウカズマ、貴様には現在、国家転覆罪の容疑が掛けられており、テロリストもしくは魔王軍の手のものではないかとの疑いも掛けられている」

 

 いやいや、それはどんな冗談だ?カズマはこう、ちょっとした悪事くらいならするかもしれないが、そんな大きな事をしようとするほどの度胸も性格でもないだろ。精々、窃盗くらいならわかるが国家転覆罪となると、国王の暗殺や魔王軍を街中に入れようとしたくらいだろ?そんなこと、小市民のカズマには無理だとしか思えない。

 

そのいきなりの言葉にカズマとアクアが目を見開いている。あ、アクアが再起動した。

 

「ちょっとカズマ、また何をやらかしたの!?ほら謝って!私も一緒にごめんなさいしてあげるから、ほら早く、謝って!」

「この馬鹿!またって、俺が何もしていないのはお前がよく知っているだろ!」

 

 そうだな、むしろカズマはアクアとかの世話とか、仲間のやったことの尻拭いの方がやっている気がしてならない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。それは何かの間違いではないですか?カズマはセクハラとかの小さい犯罪はしますが、そんな大それた罪に問われることをするほど、度胸なんてありませんよ」

 

 ……めぐみん、それは援護になっていないし、むしろ印象を悪くしているぞ。

 

「そうだぞ検察官殿、それは大きな間違いだろう。そんな度胸があるなら、普段屋敷を薄着で歩いている私に獣のような眼で見ておきながら、何もしないなんてことは無い筈だ」

 

 ダクネス、お前の願望が入り混じった言葉は混乱しか生み出さないから黙っていろ。あとカズマ、今は色々と言いたいことがあるかもしれないが、ここで騒ぐとさらに印象が悪くなってしまうかもしれないんだから大人しくしていてくれ。

 

「……そもそも、国家転覆罪と言いましたが、どういったことでその罪になったのでしょうか?」

「それはだな、その男の指示で転送された機動要塞デストロイヤーの核であるコロナタイトだが、この地を収める領主殿の屋敷に転送された。幸い怪我人や死人は出ていないが、それでも行ったことは領主殿への反逆行為としてテロリストか魔王軍の手の物ではないかとの嫌疑が掛けられている。詳しいことは署で聞かせてもらおう」

 

 ……あのテレポート、指示したのはカズマだが、行ったのはウィズだったはずだ。つまり、ウィズの薄倖によってこんな結果になったのだろうか?だとしたら、カズマはドンマイとしか言いようがない。

 

「……ですが、カズマはデストロイヤー討伐戦では全体の指示など、様々なことを行った功労者ですよ?確かにコロナタイトの転送を指示したのはカズマですが、あれは緊急の対応によって起こった行動です」

「そうですよ!カズマの機転が無かったら、コロナタイトの爆発で死者だって出ていたかもしれません褒められはしても、非難されるいわれはありません」

「ゆ、ユタカ……めぐみん……!」

 

 おうそんな目で見るな。今はただでさえ情報が少ないんだから、今ここで救える気は全くないんだよ。

 

「そ、そうだぞ!カズマは冒険者であっても、犯罪者なんかじゃねえ!」

「そんなもの、国家権力の横暴だ!」

「冒険者の自由を奪うつもりか!」

 

「「「自由!自由!自由!」」」

 

 おい馬鹿止めろお前ら。そんなことしたって、荒くれ者の冒険者を黙らせる対抗策なんぞあるに決まっているだろ。だからカズマ、希望を持った顔はやめて諦めろ。

 

「……ちなみにだが国家転覆罪は、犯行を行った主犯以外の者にも適用される場合がある。この男とともに牢獄に入りたいというのなら止めはしないが……言動には注意した方がいいぞ」

 

 途端、周りの冒険者たちの声が静まった。まあ、残当だとしか言いようがないな。それにつられて、アクアとめぐみんもカズマから離れ、ぼそぼそと呟いていた。

 

「……確か、あの時カズマはこう言ったはずよね。『大丈夫だ!全責任は俺が取る!こう見えて、俺は運が良いらしいぞ!』…………って」

 

 アクアよ、それは言ってはいたが今言うと確実に連れていかれてしまうぞ?それで困るのはお前のはずなんだが……

 

「わわ、私は、そもそもデストロイヤーの中に乗り込みませんでしたね。もし私がその場にいれば、きっとカズマの止められたはずなのに……。しかし、その場にいなかったものは仕方ありません。ええ、仕方ありません」

 

 わあ、すっごい掌返しだ。こいつらの手首にはモーターでも仕込んでいるのだろうか。自分たちが助かるためとはいえ、仲間のあんまりな様子にカズマも口を挟めずにいる。

 

「待ってくれ。主犯は私だ、私が指示した。だから是非とも、その牢獄プレイ……じゃない、カズマと共に連行し、厳しい責めを負わせるがいい!」

「あなたずっと、デストロイヤーの前で盾やっていただけじゃないですか。役立たずの分際で口答えしようとしないでください」

 

 おおっと、ダクネスが光悦した顔でやられてしまったー。カズマは目の前が暗くなっているのではないだろうか。……こっちを見るな。今どうすればいいかを必死に考えているところなんだ。カズマももう少し粘って時間を稼げ。

 

 そんな中、ずっと黙っていたウィズがオズオズと手を上げて話し始めた。というか、何でここにいるんだ。ただでさえヤバい立場なんだし、店に引っ込んでいた方が安全なんじゃないか?

 

「あ、あのー……テレポートを使ったのは私なので、カズマさんを連れて行くなら私も……!?」

「駄目よウィズ!犠牲が一人で済むならそれに越したことが無いわ!辛いでしょうけどここはぐっと我慢して……!カズマが無事お勤めを終えるまで、私たちは待ってあげましょう?」

 

 え、何でアクアの奴、ウィズをかばう真似をするんだ?少なくとも、アンデット絶対殺すと叫んでいたアクアが、リッチーのウィズをかばうなんてどんな風の吹き回しだ。

 というか、お勤めって、カズマの罪を認めているんじゃねえよ。国家転覆罪なんて下手したら死刑か無期懲役のを待つなんて、無理だと思うんだが……

 

「くそっ、俺の仲間たちはどいつもこいつも駄目な奴ばっかりだ!ていうかお前らが味方してくれなくたって、俺にはギルドの皆がついてるからな!」

 

 ……その皆とやら、カズマから目を逸らしているのは気のせいだろうか?振り返っても、ギルドのお姉さんも忙しそうに無視してくれた。まあ、これがカズマの人望なのだろう。噂の件といい、カズマの株は結構安くなっているだろうし。そもそも仲間に真っ先に売られている時点で、御察しではあるのだがな。

 

 …………だからそんな絶望したような顔でこっちを見るな!碌に策も、覚悟も決めて…………!

 

「……ゆ、ユタカ、お前だけは、違うよな?」

 

~~~~~!!ああ、もう!お爺ちゃんとお婆ちゃん、お兄ちゃんごめんなさい!ちょっとしばらく帰れなさそうだから!

 

「……検察官殿、私も、カズマと一緒に連れて行ってくれないでしょうか?私も、カズマがテレポートを指示した場面に居ましたし、それなりの成果は出しているため有効な証言はあると自負していますが……」

 

 さあ、これで食い付け……!あとめぐみん、必死にしがみついて俺の口を塞ごうとするのは止めろ。もう賽は投げられたのだ。

 

「セナ様、彼女の名前は、ユタカさんです。確かにデストロイヤー戦では足止めに、侵入後の味方の援護に敵の掃討など、様々な功績を残している方ですので信用は置けると思いますが……」

「……そうですね。ではユタカ、貴女もコロナタイトのテレポートに関与したため、国家転覆罪の容疑で拘束させていただきます」

 

 ……よし!これで一旦カズマと話し合いながら証言を擦り合わせて、無罪だと証明できるようにしておこう。まさかの新しい容疑者に騎士たちも困惑しつつ、俺の腕を掴む。思っていたよりも強く握られていたいが、顔は冷静を保ったままにしておく。別に悪いことをしたわけでも無いんだ、顔を上げて前を向いて歩く。

 

「……カズマ、先に言っておきますが、これはあくまで知り合いが全くの冤罪を掛けられて気分が悪くなったからこうしているだけです。別に貴方の事を心配は……していますが、そういったある種特定の感情はありませんからね?」

 

 とりあえずカズマには忠告しておく。カズマの事だから、調子に乗って面倒なことを起こしそうで困る。釘だけは刺しておかないと……でも、最後の方はあまりはっきり言えなかったが、聞こえたのだろうか?

 

「ああ、そんなことはどうでもいいんだ。でもな、こうして俺をかばってくれる奴がいるだけでも、本当に、嬉しいんだ……」

 

 ……お、おう。なんかカズマの煤けた背中と、床に落ちている水の染みを見ているだけでなんか心が辛くなってくる。いや、極一部の奴も庇ってはいたが、一人は自分の欲望のためだし、もう一人は黙殺されたし……ウィズに関してはアクアが悪いだけじゃね?流石に背中くらいはさすってやりたいが、下手なことをして痛くもない腹を探られるのは嫌だし、大人しくしておく。

 

「ほら、罪人どもはさっさと歩け!」

 

 罪人と決まったわけでも無いのに、厳しい口調のセナに苛立ってくる。こういう時に過去を見せるスキルでもあれば犯罪証明が楽になっていいと思うのだが、そんな魔道具とやらは無いのだろうか?もし無事に出所できればウィズあたりに聞いてみるのも悪くないか。

 

「……とりあえず、歩きましょうか」

「……そうだな」

 

 カズマの足取りは重そうだ。俺もつかず離れずで歩いて署に向かった。

 

 

 

 




宿屋の 一家が アップを 始めた!

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