この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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このお話は一巻と二巻の間をイメージして作った短編的なお話です
原作とは全く関係のないオリ展開ですのでそれが苦手な方はお気を付けください

あと、次回も似たような話を挟むつもりです
ご了承ください


閑話1 新しいスキル!

 ……さて、あのデュラハンが討伐されてから、もう一か月過ぎた。高難易度しかなかった依頼も、デュラハンに怯えていたモンスターが活発になるにつれて元通りになってきた。ギルドでは冒険者たちが騒いでいる日常に戻りつつある。とはいえ、デュラハン討伐の報奨金が出ているから冬に備えては貯蓄をゆっくりとためている最中らしい。だからか、昼でも酒を飲んでいる奴も前よりもちらほら見える。

 

 そんな俺も宿屋の仕事を手伝いつつ他のパーティーに混ざって依頼を達成する忙しくも楽しい生活を送っていた。魔王討伐?あんなの他の奴に任せるに限る。

 

 さて、今までカエルやらワニやらその他大勢のモンスターを爆ぜ潰してレベルアップしてきたが、今回遂に他のスキルを取ることにした。

 

 というのも以前のデュラハン戦で俺のやったことなんぞ妨害と被害軽減だけになっている。『コンプレスグラビティ』も通常のモンスターなら爆ぜさせることも可能だが、あのデュラハン相手の様に、格上相手には良くて妨害程度だった。

 もし、また格上相手と闘う際に『コンプレスグラビティ』だけでは碌に戦えないだろう。ましてや俺一人だけでやるソロの場合なんて逃走一択しかない。

 

 そこで、ここで新しいスキルを取って占術……戦術の幅を広げよう、ってことだ。この職業、ろくに占星してないが大丈夫なのだろうか。というか、俺のスキルはほとんどがどういった効果を発揮するか分からない物ばっかりで困る。しかも一つ一つにかかるスキルポイントも馬鹿にならないため、運試しじみたことになって困る。まぁ、いい。取らねばわからぬのなら、実際に取ってみるしかないだろう。…………不安で仕方ないのは無視する。盲目白痴の王(Azathoth)?そんなもの知らんな。

 

 

 ―――――

 

 

 で、いくつか取得して試してみた。まず『ガーディアンサテライト』。効果だが、使用者か指定された物の周りに、大きめの石や大量の小石が浮かんで周囲を漂うスキルだった。これ単体だとよくわからなかったが、どうやら敵が近づいたときに自動で攻撃や防御をしてくれるスキルっぽいな。

 初心者たちのパーティーに参加してジャイアントトードを討伐する依頼をやっていた時、群れで来て前衛が抜かれた際に小石の群れがくさび状に固まってカエルの舌を思いっきり突き刺していたのを思い出す。

 

 

 次に選んだのが『ウィスパースター』。こいつはかなり便利で、何か危険なことが近づいたり、訪れそうになったりと俺にだけ聞こえる音、というか声で教えてくれるスキルだ。なんだが、唐突に耳元に話しかけるように発動するためか、ちょっと心臓に悪いことと、一日に発生させられる回数が決まっていること以外は良いスキルだと思う。それにこのスキルは『ポラリス』との併用でもっと酷くなる。屋外では盗賊職の領分を思いっきり食っちまうレベルで優秀なスキルだ。

 

 

 最後に『コメット』。これに関してはちょっと驚くことがあった。何せ、こいつは攻撃と支援の二つの効果が発動できるスキルだったからだ。

 攻撃に関してはその名前由来の為なのか、ほうき星のように尾を引きつつ発射される魔法弾だ。威力に関してはそれなりだが、『コンプレスグラビティ』のように一旦集中してから発動させるようなことがない。つまり、意識した瞬間に発動が可能なのだ。速攻で発動できる分だけ重宝はできる。牽制に使おう。

 そして肝心の支援の効果なのだが、俺が味方と認識した相手にこの魔法弾を撃ちこむと、対象の相手は敏捷が上昇するバフを得るというものだった。効果時間こそ長くはないが、上昇幅が大きい。例えば重鎧を着たクルセイダーのような敏捷が遅い者でも、他の冒険者と同じくらいにかなり素早く動けるようになった。ちょっと癖こそあるものの、慣れれば良いスキルだとは思う。

ちなみにこのスキルの効果は、ダクネスが実験体として名乗り出てくれたために判明した。本人は痛みに悶えるかと期待していた分、落胆の気持ちが大きかったようで申し訳ないやら頭が痛むやら何とも言えない。

 

 

 ……以上が今回取得したスキルになるか。今回は安全そうなのを取ってみたが、効果もどっちかというと後衛や支援役の奴が多いな。パーティーを組む分にもいいのだが、ソロでの効果を発揮できるのもあってよかったと思いたい。

 

 というか、他のまともな名前のスキルに紛れるように隠れてあったから見たときは驚いたのだが、『スーパーノヴァ』とか『エクストリームメテオ』って何だよ。明らかに爆裂魔法と同系列のアレだろ。流石にあれと同じようなことをする気は一切ないと思いたい。

 

 そして、子孕む雌山羊(Shub-Niggurath)というまたどこかで聞いたことがあるような取得可能なスキルも生えてきているし。俺がこの体で生理を迎えたことの皮肉かこのスキル、色々とふざけんなよこんちくしょう!

 そもそも俺は男だし、そもそも孕むつもりも男と付き合うことも……ない……ない……ないよな?最近自分でもちょっと怪しくなってきたからそんなことが起きないように祈っておこう。

 

 

 ―――――――――――― 

 

 

 月が軽く昇り始めたころ、俺はギルドに飯を食いに来ていた。今日も必死にクエストを達成していたのだろうか、カズマが口から魂が出そうな顔で机に張り付いていた。しかし、他の仲間も見えないし、一体どうしたのだろうか。

 

「…カズマ、どうしたのですか?疲れ切っているのは分かりますが、そこまで疲れているのでしたらもう帰って休んだ方が良いですよ。」

「………………ああ、ユタカか。今は軽く休憩しているだけだ。飯食べたらもう帰るから大丈夫だ。」

「……その顔で大丈夫は信用できませんよ?とりあえずご飯でも頂きつつ話しませんか?借金もあるそうですし、今回はこっちが奢りますので好きに注文してください。」

「マジでか!ユタカありがとうな!お姉さん、ここからここまでのメニュー持ってきてください!」

 

 おいふざけんな、そこまで奢るつもりはない………………はぁ、ま、今回だけだぞ。流石にあそこまで嬉しそうな顔をしているのに、やっぱり無しというは可哀想だ。

 

 

 

 先に持ってきてくれたサラダをほおばりつつカズマと話をした。今回の依頼はアクアとめぐみんの反対を押し切って、局地的に大量発生したジャイアントトードの討伐を行ったらしい。討伐報酬は安くても数で押していけば大丈夫と高を括ったらしいが、アクアは一番に特攻して丸呑み、ダクネスもアクアを助けるという名目で突撃し丸呑み。そんな二人を巻き込むように爆裂魔法を撃っためぐみんも結局は丸呑み。最終的にはカズマがほとんど討伐を行ったらしい。そりゃ、あんだけ疲れもするわけだ。

 

 で、仲間は仲良く大衆浴場で粘液を洗い流しているそうだ。それで仲間を待っていたカズマが俺と出会った、と……この机に乗っている料理も仲間たちのためにお願いしたのだろうか、そう考えるとしっかりとリーダーをやっているんだな、と感じるはする。やっていることはたかりであるが。

 

「ところで、ユタカの方はどうなんだ?ベルディアの報奨金もあるのに依頼をこなしているそうじゃないか。しかも、新しく冒険者になった初心者たちのパーティーに混ざって、冒険の仕方やモンスターとの戦い方を教えているとかも聞いたぞ。」

「……ただの趣味と実益です。私は固定で組むのは嫌ですので、臨時参加できるパーティーが増えれば、色々と楽ですので。」

「んー、本当、固定パーティーを組むつもりはないんだな。俺たちのパーティーに今すぐ入ってほしかったが、ま、諦めておくな。」

「……そうしておいてください。臨時参加するパーティーには申し訳ないですが、こっちの方が気楽にできますので。」

 

 本当、参加できるパーティーが増えてくれるとこっちは嬉しい。それだけぼろを出す確率も下がって安心できる。

 

「まあ、今はせっかくの楽しい飯の時間だ、つまらない話を振って悪かったな。それじゃ、料理も着たことだし、乾杯でもするか!」

「…………そうですね、ご飯、頂きましょうか。」

 

 おっと、お姉さんが大量の料理を持ってきていたか。それじゃ、いただきます。

 

 ――――――――――――― 

 

 

「…………そこまで疲れているのでしたら、マッサージとかしてもらった方が良いですよ。ダクネスあたりなら頼めばやってくれそうですよ」

「それもそうなんだがな……ダクネスはあのパーティーの中では色々と支えてくれているから下手に頼むのも忍びないんだよ。めぐみんも爆裂魔法打つから疲れているし、アクアは論外だし」

 

 疲れているためか、カズマの飯を食うスピードも遅そうだ。食わねば疲れは取れないと思うが、そりゃ、ジャイアントトードというデカ物を何十匹も一人で倒すのは骨が折れるしな。大変お疲れさまである。さて、カズマの疲れはどうするべきかだな。仮にも元同郷、現在はこうして話したりする知り合いだしな。多少の困りごとくらいなら乗ってあげたい。

 

 とりあえず大衆浴場で多少の疲れは取らせるとして、その後をどうするかだな。一旦アクアたちから離しておいた方が良いが、あんまり長く離れすぎも疑われるしな……あ、ちょっとサービス過剰な気がするが、ま、カズマも俺のようなやつ相手には大丈夫だろう。

 

「……カズマ、疲れているのなら私がマッサージでもしてあげましょうか?」

「はぁっ!?ゆ、ユタカ、急に何言ってんだ!」

「…………?ああ、大丈夫ですよ、やるときは私の部屋でやりますからね。馬小屋ではあまり落ち着いてできないかもしれませんし、安心して受けていってくださいね」

「違うっ!そうじゃないんだ!」

「…………あ、アクアたちが帰ってきましたね。先に頂いていましたが、誘って食べましょうか。足りなくなったら注文しても大丈夫ですよ」

「ユタカ、話を聞いてくれよ!…………まぁ、役得だからいいけどさ」

 

 なんかカズマがぼそぼそ言ってたが、聞こえなかったから無視しておく。とりあえず大衆浴場から帰ってきた三人に手を振って知らせておいた。

 




カズマへのマッサージは気が向いたら書きます

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