この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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オリジナル展開ありというタグを書いたんだし、もう思いっきり主人公が目立てるように自由に書くことに決めました。

その結果、作者が苦手なシリアス風戦闘になりました……なりました……
もっとギャグかセクハラがしたいです……せめてシリアルか尻アスにしたいです……


第14話 首無し騎士ベルディア

「あ、あんたなんか……!あんたなんか、今にミツルギさんが来たら一撃で斬られちゃうんだから!」

「おう、少しだけ持ちこたえるぞ!あの魔剣使いの兄ちゃんが来れば、きっと魔王の幹部だって……!」

 

後ろにいる連中が何かさえずっているが、ミツルギはたぶん王都への道を全力で走っているはずだぞ。というか武器を投げるなり魔法を撃つなりして攻撃か何かした方が良いんじゃないだろうか。少なくとも、デュラハンがこっちに歩いて来ているんだから準備しておけよ。

見かねたダクネスが走って剣を構えているレベルなんだぞ。

 

「ではそいつが来るまで…………!持ちこたえられるかなぁっ!」

「はああああああああああああっっ!!」

 

だ、ダクネスがまともに打ち合っているだと!?てっきり全力で攻撃を受けに行ったと思ったのに!というか、魔王幹部とまともに打ち合えるってどんな筋力をしているんだ…………

って、俺も妨害くらいはしなくては。頭痛も吐き気も多少回復しているしとりあえず他の事は一旦無視だ、早く援護を…………!

 

「『コンプレスグラビティ』!」

「ちぃっ、鬱陶しい!」

 

はぁっ!?デュラハンにかなりの強度で仕掛けたってのに抜け出された!?カエルとかワニ相手に潰し爆ぜさせたスキルが鬱陶しいレベルってどれだけ頑丈なんだよ馬鹿野郎!

……しかし、あの様子だと邪魔程度にはなっているか、それならば……スキルでも打つときに妨害すれば援護にはなるか。あと、ダクネスがいつもの変態発言やらをしているのは無視だ。

 

「魔法使いのみなさーん!!」

 

カズマも、他の冒険者たちに声掛けしてサポートに徹している。呆然としていた奴も己の武器を構えて攻撃できるように準備している。

 

……デュラハンが地面に剣を突き刺した?そして、指差しした……?マズイ!

 

「『コンプレスグラビティ』ッ!……げほっ、ごほっ!」

「お前らまとめて一週間後に――――ええい、また貴様か!どれだけ俺の邪魔をしようとしているんだ!」

 

デュラハンの腕にだけ、重力を掛けたが、あのスキルは、指で差さないといけない、制約なのだろうか。しかし、俺もそろそろ、打ち止めになる、のだろうか。いい加減頭が、持たなくなってきている。一旦、他の奴に任せつつ妨害するか。

 

 

――――――― 

 

 

その後もダクネスはデュラハンと切り結んでいた。というよりかダクネスは剣を逸らし、受け止め、防いでいるといった様子であった。碌に攻撃スキルが無いためなのか、あくまで防御だけで凌いでいる。

他の冒険者も加勢はしている。が、デュラハンがまた頭を上に投げ出し、何らかのスキルを発動させたことによって近接職の攻撃は躱されむしろ反撃を受けている。魔法職や後衛職の攻撃も躱されているか、効果が薄そうだ。

 

「よくやったダクネス!一旦下がれっ!『クリエイト・ウォーター』ッ!」

 

背負っていためぐみんを安全な場所まで運んだのだろう。カズマが唐突に水魔法を唱えていた。しかし、あの程度の水でダメージが入るとは思えないが…………

 

「うぇっ!?」

 

ん?何であのデュラハンは大慌てで飛び退いたんだ?カズマもそのことを気にしつつ、詠唱を行っていた。

 

「なんであそこまで大げさに避けたかは知らないが、とりあえず『フリーズ』!」

 

すると地面に撒かれた水がデュラハンの足ごと凍り付かせた。おお、あんな発想を急に思いつくなんてすごいな。

 

「!?ぬかったか…………だが貴様、俺の強みが回避だけだと思っているのか……?」

「はっ、回避しづらくなれば十分だ!本命はこっち、『スティール』ッッ!」

 

カズマお得意の窃盗(スティール)か!カズマほどの幸運ならあいつの武器も盗め、る…………何にも、奪えていない、だと!?

 

「……悪くはない手だったな。だが、俺は仮にも魔王の幹部。レベル差というやつだな。もう少しお前との力量の差がなければ危なかったかもしれん。……さぁ、茶番は終わりにしよう!」

 

くそっ、これでまた振りだしだ。カズマの窃盗(スティール)も効かないとなると……仕方ない、じり貧ではあるがまた妨害しつつ、ちまちま削っていくしかないか。しかし、ダクネスも、打ち合っていた消耗でもうそろそろ危ない筈だ。タンク役がやられてしまうとただの攻撃役や援護役は一瞬で溶けちまう。

 

……カズマが、また何か考えている?あいつの発想によって一時的にとはいえ、デュラハンの動きを封じられたのだ。それならば……賭けに乗っかった方が良いか。

 

「……カズマ、時間稼ぎは、しますから、何か思いついたら、実行をお願いします。」

「わ、わかった!できるだけ稼いでくれ!こっちも急ぐ!」

「…………急いだら、良い考えは思いつきません。こっちは、任せてください!」

「……それもそうだな、ならそっちは任せた!」

 

こっちの心配そうに見つめていたが、一応大丈夫だから気にするな。それよりもダクネスも息を荒げつつ凌いでいる。早く妨害をしなくては…………!

 

「『コンプレスグラビティ』!」

「そう何度も引っ掛かると思うなよ……って、うおおおおおっ!?」

 

お前だけを対象に最大強度だよバーカ。範囲を絞っているから、まだ頭痛は酷くないのが救いか。しかし、これで膝すらつこうとしないあたり、元は相当立派な騎士だったんだろうな。だがな、こっちだってそう引き下がれるかよ!

 

「ぐおおおおおおおおっ!負けて、たまるかあああああああっ!」

 

それでも、あの重力下の中で動き始めたデュラハンはさっきのは遊びだったのかと思うくらいの迫力でダクネスに喰らい付いている。ダクネスも防戦はしているが、その迫力によるものか、ついに剣が折れてしまってからは鎧とその身で耐えていた。

俺も頭痛やらめまいやらでまともに立っているのかすらおぼつかない。それでも、カズマにかっこよく宣言はしたんだ、あいつの策が思いつくまでは押さえつけてやる。逃がしてたまるかよ!

 

「そうだ!『クリエイト・ウォーター』ッッッ!」

 

カズマが放った水魔法にデュラハンはまた大げさに飛び退く。重力掛けているのによく綺麗に飛び退けるものだ。にしてもなぜあそこまで大げさに……………………あ、ああ!なるほど、そういう事か!

 

「水だあああああああーっ!あいつは水が弱点だーっ!!」

 

カズマの言葉を一斉に後方の魔法使いたちが水魔法を唱えた。次々と飛んでくる水をデュラハンは紙一重で避けている。俺の重力下でよくあそこまで避けられるものだとむしろ感心する。

 

「ねえ、いったい何の騒ぎなの?カズマ達ったら魔王の幹部と何を水遊びしているの?バカなの?」

「あいつは水が弱点なんだよ!なんちゃって女神でも水のひとつくらい出せるだろっ!」

 

…………アクアよ、お前は今まで何をしていたんだ?というかカズマの言葉すら聞いてなかったのか?

 

「!?あ、あ、あんた、そろそろ罰のひとつでも当てるわよ無礼者!洪水クラスの水だって出せますから!謝って!水の女神をなんちゃって女神って言ったこと、ちゃんと謝って!」

 

出せるのかよ。それだったらさっさと出してくれよ。

 

「あとでいくらでも謝ってやるから、とっとと出しやがれよこの駄女神が!」

「わああああーっ!今、駄女神って言った!あんた見てなさいよ、女神の本気を見せてやるから!」

 

コントはいいからさっさとやれ。俺も他の連中も抑えるのに必死なんだよ。

 

 

「ひっく…………ふぅ、この世にある我が眷属よ…………水の女神、アクアが命ず…………」

 

…………おい、なんかすっごい空気が震えているんだが。めぐみんがさっき打った爆裂魔法レベルで空気が震えているんだが。と、言うかアイツ洪水クラスの水も出せるって言ったよな…………

 

それ、俺たちも危なくないかこれ?デュラハンにかけていた重力を打ち切り、俺ができる最大範囲で水を押さえる準備をしておこう。

 

「我が求め、我が願いに答え、その力を世界に示せ……!」

 

あ、デュラハンが逃げ出そうとしたらダクネスに捕まっている。

 

 

 

 

「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」

 

 

 

 

……うわぁ、空から大量の水がデュラハンとダクネスを叩きつけている。

 

で、やっぱりアクアは自重せずに出している、と…………やっぱりこっちに水が来やがったよこんちくしょうが!

 

「『コンプレスグラビティ』!最大範囲!最大出力!」

 

あ、ヤバい、今ので軽く意識が飛びかけている。水の勢いは一旦止めたとはいえ、この状態ならあと数秒で倒れるな。でも、せめて他の連中の防衛態勢までは防ぎたいが。

 

「…………はっ!おい、あの嬢ちゃんを守れ!無理な連中はあの水に備えろ!」

「あの水を凍らせろ!せき止めておかないとこっちにまで来る!」

「あと正門も固めておけ!街まで水浸しになっちまうぞ!」

 

あー、他の人たち、やっと動き始め、たか。この様子なら、もう、大丈夫、そうだな……もう無理、意識が、持たない………………

 

 

――――――――――――――― 

 

 

知らない天井、ってこれ前にもやったな。たぶん宿屋の天井で合っているはずだ。俺がこうして無事にいるってことは誰かが運んでくれたはずだ。あとで商人一家から聞いておくか。

窓から街の様子を見てみたが、モンスターやアンデットが侵入しているような風景はなかった。どうやらあのデュラハンは無事に討伐されたようだ。……とりあえず、着替えてギルドに行ってどうなったか聞くか。

 

 

 

ギルドではもう出来上がっている奴が多いせいか、むせ返るような酒の臭いに顔が歪む。どうやらもう翌日になっていたようだ。酒も昨日の討伐記念による宴会だろう。

一緒に飲まないかと誘われたが丁重に断っておいた。あいにく俺は前から酒は好まなかったため、こっちに来てからも飲んでない。とにかく、ギルドのお姉さんにあの後どうなったかを聞くか。

 

「ああ、ユタカさん、お待ちしておりました。今回の魔王幹部、デュラハンのベルディア討伐に参加いただきありがとうございます。今回、皆様には魔王幹部討伐のための報奨金が渡されることになっております。ユタカさんに関しましては、戦闘において魔王幹部の行動の妨害を行い、また正門や外壁、街への被害軽減による評価を加えた額を差し上げます。」

 

…………待って、討伐による報奨金も、妨害のことはわかるが、正門や外壁に街への被害軽減ってなんぞや?

 

「…………被害軽減?心当たりがないのですが一体何があったのですか?」

「ユタカさんが行ったスキルですね、あれによって水がせき止められたことにより、ある程度勢いをなくしたのです。その結果、正門やその付近にある家への洪水の損害が緩和されました。大変感謝いたします。」

 

……ああ、駄女神がやらかしたあれか。あの時は必死に止めていたからよく覚えていないんだよな。

 

「つきましては、報奨金は二千万エリスです。ご確認ください。」

 

……………………ふぇ?え、二千万エリス?………………いやいやいや、多すぎでないだろうか!これが魔王幹部討伐による正当な額なのだろうか?しかしあいつの討伐にそこまでこの額が見合っているとは思えないのだが。

 

「あ、可愛い。……いえ、何でもございません。それに関しましては別口から徴収しますのでご安心を……ああ、ちょうど来ましたね。」

 

別口から徴収っていったい何をするんだろうか。というか、来たのはカズマじゃないか。…………なんか、嫌な予感がするから離れておく。

 

「サトウカズマさん、ですね。お待ちしておりました。実はカズマさんのパーティーには特別報酬が出ています。」

 

まじか。もしかしたら、大方最後にアクア辺りが神聖魔法で葬ったのかもしれない。アンデットに葬るという言葉が正しいかは置いておいて。

 

「えー。サトウカズマさんのパーティーには、魔王幹部ベルディアを見事討ち取った功績を讃え…………三億エリスを与えます!」

 

……うん、たしかにアクアは神聖魔法と洪水で、めぐみんは爆裂魔法、ダクネスは戦闘を長引かせて時間稼ぎ、カズマはその発想でデュラハンを追い詰めた功績としては十分だろう。

 

そしてその言葉を聞いたカズマがパーティーに集合を掛けて何か話し合っている。少し聞こえてくる言葉に耳を立てると、カズマはもう冒険者として働く気は無いようだ。その幸運で商人に転向するつもりなのだろうか。んで、他のメンバーはそれに反対している、と。何ともあいつららしいグダグダっぷりだな。

 

というかお姉さん、何で困ったような申し訳なさそうな表情をしてんの?まぁ、勝手に話し合われたら困るか。って、小切手を渡した?それを見たカズマの顔色が一気に青くなっていった。

 

「ええっと、ですね……実は、アクアさんの召喚した大量の水により、外壁や街の入り口付近の家に大きな被害が出ておりまして……魔王軍幹部を倒した功績もありますし、全額弁償とは言わないから、一部だけでも払ってくれ……と……」

 

……ああ、お姉さんが言っていた別口からの徴収の意味が分かった気がした。アクアとめぐみんがこっそりと逃げ出しそうになっていたが、カズマがしっかりと捕まえていた。

 

「報酬三億。……そして、弁償金額が三億一千万か。明日は金になる強敵相手のクエストに行こう。」

 

ダクネスの言葉に、思いっきり肩を落としたカズマに後で何か奢ってやることを決意した。

 




とりあえず、次の話は二巻に入るまでの閑話としていきたいです。
その後に二巻に入っていけたらいいなぁ……

※カズマたちの借金の額が原作よりも減っているのはきっと仕様です。仕様です。

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