【全知全能】になった俺がアイドルになって人生を謳歌していく   作:PL.2G

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毎々お世話になっております。

久し振りのサイドストーリーとなります。

メインのシンデレラガールズより先に楓さんで申し訳ございません。

今しばらくお待ちください。


Fourth Side Story ~ 楓's Memory ~

 こんにちわ、高垣 楓です。

 

 今、騎士君と仕事中なのですが、

 騎士君と仕事をする時、決まって思い出すことがあります。

 

 それは、私が初めて騎士君にお会いした日のお話。

 

 

 ──────────────────────────

 

 ―シツレイシマス! 

 

「初めまして、一ノ瀬騎士と申します。本日は宜しくお願い致します」

 

「あら、初めまして。高垣楓です。貴方のお噂はかねがね・・・今日は、宜しくお願いしますね」

 

 今日は話題の騎士様と初めてのお仕事。

 どんな人なのかちょっと気になっていたのだけれど・・・残念・・・悪い方に予想が外れてしまいました。

 

 外見はやはり悪くない、職業柄やはり外見は重要です。

 川島さん辺りはとても好きそうなタイプだと思われますね。

 あとは・・・そうですね、物凄い丁寧でした。

 マニュアル通りに人と接している、みたいな印象・・・それならまだ柔らかい例えかもしれません。

 表情が自在に動くロボットの様・・・表面上だけで、感情に起伏が全く感じられませんでした。

 たった一言の挨拶で私は彼にそんな印象を持ってしまいました。

 

 突然ですが、私は旅行をするのが趣味なんです。

 色んな地方に足を運び、色々な所に宿泊をする。

 そして色々な人と出会い別れまた出会う。

 そんな事をずっと、何度も何度も繰り返してきました。

 その所為もあってか分かりませんけど、人を見る目は養われていったと思います。

 ですから、たった一言で、私は彼に苦手意識を覚えてしまいました。

 

 今日はつまらない一日になりそうだなぁ・・・と、そう思ったんです。

 

「はい、よろしくお願いs・・・・」

 

 唐突に言葉を途中で止めた彼は、私と目を合わせたまま、まるで時が止まったかのように急にピタリと・・・動かなくなってしまったんです。

 

 どうしたんでしょう? と思ったのですが、彼は私の目を見ている事で一つの結果に至りました。

 私の両目が気になってるのでは? と。

 まぁ余り日本には、と言うより世界的に見ても、人間の虹彩異色症(ヘテロクロミア)はそうそう居るものでは無いようですし。

 そもそも、病気と言う認識もありますしね。まぁ、小さい頃は奇異なモノを見るような目で見られるからこの目は嫌いでした・・・

 けれども、今は周りも自分も大人になりましたし、色々な見方(・・)も変わり、味方(・・)も増えましたね・・・ふふふ。

 

 しかし、彼は一向に動く気配がありません。

 

「あの・・・大丈夫でsきゃっ!?」

 

 急に肩を掴まれました。

 全然痛くは無いのですが凄い力で抑え込まれて全く動けません。

 不思議です。正直怖くないかと言えば嘘になりますが、でも、何故か危機感はありませんでした。

 

「とても不思議だ・・・、そしてとても綺麗で魅力的だ・・・」

 

「えっ!?」

 

 さっきまでの表情付ロボットの時と打って変わって、情熱的で感情的な表情と瞳をもって迫ってきました。

 

「もっと、もっと良く見せてもらって宜しいですか?」

 

 そう言って、私の答えも聞かずに騎士君は両手を私の頬に添えて来ました。

 そして彼の顔がどんどん近づいてきて・・・

 

 スパコーン!!! 

 

「おうコラ、騎士よ。白昼堂々女性に襲い掛かるとは・・・お前も中々どうして犯罪者になったな。騎士の名が泣くぜぇ?」

 

 凄いおちゃらけた感じのお兄さん? おじさん? が騎士君の頭を、

 丸めた台本で叩いたようでした。

 この感じですと、騎士君の事務所のお方でしょうか? 

 

「あ、どうもどうもはじめましてー。私こう言う者です」

 

 そう言って私に名刺を渡して来ました。

 心でも読まれたのでしょうか? 

 しかし、プリクラを貼っている名刺なんて、

 とても内面がお若い方なんですね。

 

「ご丁寧にありがとうございます。あら?」

 

 名刺の名を見て少し驚きました。

 

【8723プロダクション 代表取締役兼プロデューサー】

【英 雄 -HANABUSA TAKERU-】

 

「8723のプロデューサー・・・あなたが噂の英雄(えいゆう)さまですか。貴方のお噂もかねがね」

 

 騎士を騎士たる男に育てた英雄(えいゆう)、8723の英雄(ヒーロー)(はなぶさ) (たける)

 名は聞くのに表舞台にまったく出て来ないので、実は騎士君が作り上げた架空の人物なのではと言われているほど。

 業界内でも現場でお目にかかる事は、天然記念物に遭遇するのと同じくらい難しい事らしい。

 

「346プロの高垣楓さんが俺なんかを知って居てくださって至極光栄・・・」

 

 スっと息を大きく吸ったかと思うと、

 

「うちの若輩者が大変失礼いたしました~!!!」

 

 非常に大きな声と共に英雄さんが深々と頭を垂れていた。

 

「な~にボケ~ッっと突っ立ってんだよ!! お前も頭を下げるんだよ!! オラッ!!」

 

 英雄さんに髪の毛を掴まれ無理やりな感じで騎士君の頭を掴み、頭を下げさせました。

 頭を掴まれた騎士君は心此処に非ずな感じで、操り人形のように見えます。

 

「大変申し訳ありませんでした」

 

 頭を下げると同時に騎士君からそんな謝りの言葉が出ました。

 しかし、このセリフも一言目同様、機械音声の様な、感情の起伏が全く無い・・・そう、条件反射で出たような謝罪の言葉・・・

 

 そんな状況をみて、さっきの騎士君を思い出し私はちょっとだけ悪い事を思いつきました。

 

「ふふふ、大丈夫ですよ。でも、噂のトップアイドル様がこんなに情熱的な男の子だったなんて、お姉さんちょっとドキドキしてしまいました。他の共演者様にもこのような事をしていらっしゃるのですか?」

 

 事実ちょっとってレベルでは無かったのですが・・・

 

 良いですか、考えても見てください? 

 初対面であれ、自分の中でそれなりに格好良いなと思うような男性に、肩を掴まれ、あげく「綺麗」だの「魅力的」だの言われたあと、頬に両手を添えられ、触れられそうな程に顔を近づけられて、ドキドキしない女性は居ないかと思われます。

 どう言うドキドキかは置いておいて。

 

 ふぅ、少しヒートアップしすぎました。

 

 と言う事で、仕返しって程でもないですが、少し意地悪な質問をしてみました。

 彼は何と答えるのでしょうか? 

 でも彼は非常に頭も良いと聞いていますし、当たり障りない感じの答えが、

 

「いえいえ、滅相もございません。高垣さんの瞳があまりにも綺麗だったもので、つい出来心で、いや、魔がさして・・・違う、興奮して・・・いやいや・・・・しかしもしここにプロデューサーが居なかったらと思うとゾッとします。と、言うより今もなおしてます。ごめんなさいすみませんでした本当にごめんなさい申し訳ございませんでしたお許しくださいなんでもしますから」

 

 凄く綺麗な動作で直立の姿勢から土下座の姿勢に変わる騎士君。

 予想外にも結構な取り乱しっぷりですね。楽しくなってきました。

 しかし本当に綺麗な姿勢・・・

 これは、あれですね。巷で噂の【無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き】ってヤツでしょうか。

 ともあれトップアイドルと呼ばれる騎士君を土下座させてるこの現状・・・

 特にそう言った性癖とか趣味は持ち合わせては居ないのですが、なんかこう、グッっとくるものがありますね・・・うふ、ふふふふ・・・

 

「どうしましょう、流石に世界の騎士様を通報する訳にはいきませんし・・・どうするのが得策かと思われますか? 英雄(えいゆう)様?」

 

 事の成り行きを一度8723さんに渡して見る事にしましょう。

 まぁ、考えは無くは無いのですが、あちらがこの状況をどう言う風に挽回するのか気になる所です。

 

「ふむ、今回は俺が同伴で最悪な事態は回避できた~つっても騎士の前科は消えん訳で、ここで高垣さんが俺に意見を求めて来たって事は、譲歩の余地アリって事なわけだ。理解はしてるか騎士?」

 

「あ、ああ・・・いえ、はい」

 

 土下座姿勢のまま、顔を下に向け返事をする騎士君。

 

「高垣さんが納得出来る条件を提示して見せるか、もしくは、高垣さんがすでに何か考えついているから、それをお前が言い当てて実行すればそれで良し」

 

 英雄(えいゆう)さんは騎士君の近くにがしゃがみこみ、騎士君の髪の毛を鷲掴み、持ち上げて顔を覗き込んでそんな事を言っていた。

 構図的にガラの悪い人が絡んで恫喝してるみたいに見えますよ? 

 

 しかし、この8723のプロデューサーさん、騎士君のプロデューサだけあってやはりと言うべきか。只者では無さそうですね。私がすでに条件を持っていると断言しました。と言う事は、私の一挙手一投足から何か導き出し得た結果なのでしょう。

 

「ふふふ、どんな言葉が飛び出してくるのか楽しみですね」

 

「・・・」

 

 土下座姿勢で下を向いたまま、沈黙する騎士君。

 直後、彼は姿勢を変え、私の前に跪く形になり口を開いた。

 

「では、私の持てる力全てを使い、私が出来うる限りを尽くし、あなたの望みを何でも叶えて差し上げる・・・と言うので、いかがでしょう、か・・・?」

 

 私の顔色を窺うように、しかし自信有り気と言った感じの無表情で声高々に、しかし尻すぼみに宣言した。

 

「えらい大きく出たねー、騎士ー」

 

 願い事一つ、どこぞの物語の台詞みたいな事を言い出しました。

 

「最早、俺の進む道はそれしか残されていない。それを捨てれば後は犯罪者の道のみ・・・なれば、ここで高垣さんの奴隷になる事だって辞さない」

 

 奴隷と来ましたか・・・そこまで高望み・・・と言うより、そんな下衆な考えはしておりませんよ? 

 言うほど怒っても居ないですし、問題にしようとも思って居ないのですよね・・・あら? 

 英雄様が下を向いて肩を震わせておりますね・・・笑って・・・る? 

 

 なるほど、私が問題にする事も無いと結論付けていた・・・と言う事でしょうか。

 だから、行き過ぎて考え過ぎている騎士君を見て笑っている・・・と、

 中々どうして私以上に意地悪な上司様ですね。

 

「そこまで言うのなら、願いを叶えて頂きましょう」

 

「私が出来うる事ならば何なりと・・・」

 

 騎士君は今何を考えているのでしょうか? 

 私に奴隷になれと言われれば本当に奴隷の様になってくれるのでしょうか? 

 もし、奴隷では無く恋人にと言ったら・・・って、あら? 私は一体何を考えて・・・

 

 恋人・・・か・・・、この短時間で、少なからず私は騎士君を恋人にしても良い・・・かもと考える程には意識してしまっている、という事でしょうね。

 こんな事考えたのは高校生以来でしょうか・・・? 

 

 彼の何に私は魅かれたのでしょう? 

 自分の事なのに良くわかりません。

 これからゆっくり考えて行く事にしましょう。

 

 なにはともあれ今考えるべきは、

 

 

 私の願い・・・

 

 

 元々考えていたものと変わりますが、私の心がそれを望んだので、それに素直に従うとしましょう。

 

 

「楓・・・と、そう、私の事を呼んでください」

 

「はっ?」

 

 間の抜けた顔を顔と返事をしたので、再度お願いを口にします。

 

「ですから、私の事は楓、と、下の名前で呼んで下さい。それがあなたに望む私の願いです」

 

「はっ? じゃねーよ、はっ? じゃ。な~に間の抜けた返事してんだよ」

 

「いや、だって・・・」

 

 急に狼狽し始めました。気になったので聞くことにしましょう。

 

「騎士様には出来ない事でしたでしょうか?」

 

「出来る出来ないでは無く、モラルと言いますか、プライドと言いますか、ポリシーと言いますか・・・」

 

 えらくハッキリしないですね。何が問題あるのでしょうか? 

 

「では、警察に電話でも致しましょうか・・・」

 

 携帯電話を取り出してみる。

 

「わー、わかりました。か・・・楓・・・さん」

 

「楓、です」

 

 どうせなら呼び捨てが良いですね。

 

「か・・・楓・・・・・・・・・さん」

 

「むー」

 

 頑固ですね。

 

「リピートアフタミー。か!」

 

「か・・・」

 

「え!」

 

「え・・・」

 

「でっ!!」

 

「で・・・・さ「ぶーっ!!」」

 

 騎士君も強情ですね・・・

 

「まぁまぁ、高垣さん、こいつは時間かけて躾けて行きますので、今日はこの程度で・・・もう少しでリハも始まりますし」

 

 英雄様に止められてしまいました・・・

 

 

「むー、では最後にもう一つ、8723プロ様にもお願いがあります」

 

 流石に断りはしないでしょうし、欲深いとも思われないと思います。

 

「はいはい、何なりと」

 

 とても軽口に、でもとても快く返事が返ってきた。

 

「最低でも1年に1回、騎士君とお仕事をさせて下さい。内容は問いません」

 

「それは、こちらとしては大変ありがたい話なのですが、良いんですか勝手に決めちゃって?」

 

「いえ、私は普段通り346で過ごして居るだけ。私と一緒の仕事を取るのは英雄様の手腕にかかっておりますよ?」

 

「なるほど、そいつは難しい願いだ。わかりました。その望み必ずや騎士と共に叶えて見せましょう」

 

「言質、しっかりといただきました。忘れずにお願い致しますよ? 騎士君もね?」

 

「はい・・・わかりました・・・」

 

 なんだか今日はつまらない日になりそうでしたが、そんな事はなさそうですね。

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

「ふふふ・・・」

 

「ん? ・・・楓さん、どうしました? 急に笑い出して。渾身のギャグでも思いついちゃったんですか?」

 

「そうですね、ちょっとした思い出し笑いです。騎士君と・・・初めてお会いした時の事を・・・」

 

 ふふっと小さくまた笑う。

 

「ちょっと記憶を無くしていただいてよろしいですか? 記憶喪失になる秘孔は習得しておりますので・・・大丈夫痛くはしません」

 

 騎士君が両手をプラプラと揺らし始めた。

 

「ダメです。この記憶を失ってしまったら、()()領域が1()()無くなって人生が少しつまらなくなってしまいます。それは私にとって死活問題です」

 

「まぁ、そんな事は絶対にしませんけど、もうそろそろ時効にしてくれませんか・・・?」

 

 騎士君の()()()()()()()は見ていて飽きませんね。

 

()()ですか・・・、気が向いたら、()()しましょう」

 

 今日も調子が良いですね。

 仕事もうまく行きそうです。




最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。

前書きにも記載致しましたが、
メインのCGの出番が少なく誠に申し訳ございません。

重ねて申し上げますが、
今しばらくの間、お待ち下さいますよう、
ご容赦の程、よろしくお願い致します。

では失礼致します。

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