死神少女と鏡の魔眼   作:LAMLE

8 / 22
明けましておめでとうございます!(←遅すぎる)
久方ぶりの投稿になりますね。
もしかしたら話に矛盾があるかもしれませんが
少しでも楽しんでもらえれば
それではどうぞ!





第七話

第七話

 

<Another wiew>

 

始まりの夜。

一つの影が森で起きた一部始終を見ていた。

影は笑う。

 

影が見つめるその先には力尽きたようにグッタリしている少年と

彼を背負い運ぼうとしている少女。

その周りにはスクラップのように散らばるものがあった。

それは先ほどまで少年を追い詰め、トドメを刺そうとしていた

天使だったものの残骸。

 

「だけどまだ…足りない」

 

誰に言うわけでもなく、そっと呟く影。

 

「……」

 

少年を背負っていた少女がふと何かを感じたのか。

闇夜に輝く瞳が影のいる場所へと視線を向ける。

しかし、すでに影は闇夜に消えていた。

 

「……」

 

数秒間見つめていたが、少女は再び視線を前へと戻し、歩き出した。

 

-------------------------------------------------------------

 

深い、海の底から浮上する感覚。

途絶えていた意識が再び構築され、一筋の光が差す。

次第に暗闇が晴れ、感覚がはっきりしてくる。

 

「ん…」

 

重たい瞼をゆっくり持ち上げる。

最初に眼に入ったのは、どこか見覚えのある天井。

あぁ、そうだ。

ここは第七寮にある自室のベッド。

既に日が昇っている為、カーテンから漏れる光が眩しい。

スプリングのギシッという音を立てながら奏華はゆっくりと身体を起こす。

妙な気だるさが、身体を支配している。

だるそうにベットから降りて身体を伸ばす。

そしてゆっくりと思い出す。

昨日は…確か希沙羅の手伝いをして、夕方に帰って…。

その後は…。

寝起きのせいか、上手く思い出せない。

まるで頭に霧がかかっているような気味の悪い気分だ。

 

コンコンッ

 

考え込んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

この時間、希沙羅が寮にいることはない。

 

「(…だれだ?)」

 

ノックの主に返事を返す前にガチャリとノブが回り、扉が開く。

扉の前に立っていたのは、綺麗な女の子だった。

絹のようにサラサラな銀色の髪。

整った顔立ち、海のように澄んだ藍色の瞳。

学園指定のシャツの上に桜模様をあしらえたエプロン。

そしてその手には調理器具であろう、お玉が握られていた。

 

「あ、起きたんですね。”兄さん”」

 

少女の視線は真っ直ぐにこちらへ向けられる。

 

「にい、さん?」

 

『兄さん』それは目の前の少女が俺に向けて言った言葉。

その言葉に違和感を覚える前に…。

 

--ザザッ--

 

ああ、そうだ。

なんで忘れていたんだろう。

ふいに霧が晴れたように頭がクリアになる感覚。

まるでバラバラになったパズルのピースがカチリとはまるように。

さっきまでの違和感が嘘のように消えていく。

そう、この娘は---

 

「…桜花(おうか)」

 

「はい、おはようございます。兄さん」

 

はにかむように、小さく微笑む目の前の少女。

肩の力が抜け、自然に頬が緩むのが分かる。

大切な妹が、今日からこの寮で暮らすことになったのだから。

 

 

----------------------------------------------------

 

 

『八神 桜花』

八神 奏華の妹でRUBICの二年生。

妹といっても、血の繋がりは無い。

桜花は俺と同じく希沙羅に保護された少女で、俺と同じく記憶の欠落が見られる。

そのため、両親すら覚えていないという。

同じ境遇のためか桜花はすぐに俺に懐いた。

そして俺も、いつからか、そんな桜花を守ろうと誓った。

血の繋がりなんて関係なく、桜花は俺にとってかけがえのない家族で大切な妹なのだと。

だが桜花は生まれつき身体が弱く、何度も入退院を繰り返していた。

俺がRUBICに行く時も、桜花の強い希望により、この島にある病院に入院することになった。

それが先日ようやく退院したのだ。

今日から正式に、同じクラス、同じ寮で共に過ごす事になる。

 

「もう、私の初登校日なんですよ?寝坊なんて、ひどいです兄さん」

 

拗ねたように頬を膨らませる桜花。

いつもは、しっかりしている妹なのだが。

俺に対して、こうして甘えてくる時がある。

 

「悪かったよ。でも桜花なら友達だってできると思うぞ?」

 

そう言って桜花の頭を優しく撫でる。

手入れが行き届いている、サラサラの髪は触り心地がいい。

兄である俺が言うのもなんだが、桜花なら問題なくクラスに溶け込めると思う。

綺麗な長い銀色の髪に、透き通るような肌。

整った顔立ちも合わせ、かなりの美少女だ。

きっと世の男どもは放っていないだろう。

そのことを伝えると桜花は顔を赤くしてワタワタと手を振る。

 

「も、もう!またそうやって誤魔化すんですから!」

 

そうは言っているが頭を撫でられて、桜花も気持ちよさそうだ。

頭を撫でている数分間、大人しく撫でられていた。

そして手を離すとハッとしたように慌てて離れる桜花。

 

「そ、それより、朝ごはんです!顔を洗ってきてください」

 

「あぁ、すぐに行くよ」

 

待っていますね、と顔を赤くしたまま、桜花は部屋を出て、一階へと降りていく。

さて、待たせるわけにはいかない、俺も行かないと。

早速、廊下に設置されている洗面台に向かう。

蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗う。

その後すぐに部屋に戻り、ハンガーにかけておいた制服に袖を通す。

上着を鞄の上に置いておき、支度を済ませた俺は、一階へと降りた。

 

エントランスから通じる扉を開け、食堂へと入る。

すると、食欲をそそるいい匂いがしてきた。

テーブルには二人分の食事が置かれていた。

御飯に焼き魚、みそ汁にサラダ。

どれもおいしそうだ。

 

「それでは冷めないうちにいただきましょう」

 

洗い物をしていたのか、タオルで手を拭きながら、桜花がテーブルに着く。

俺も同じように席に着き、手を合わせる。

 

「「いただきます!」」

 

互いに、そう言いって食事を口に運ぶ。

 

「(…美味しい)」

 

今までサンドウィッチくらいしか作らなかった俺とは違い。

桜花の料理はどれも美味しかった。

それに、せっかく妹が作ってくれたのだ。

気の利いた労いの言葉を掛けるべきではないだろうか。

 

「…むぅ」

 

そう考えてみるが、女心も分かっていない俺に(←気にしている)

気の利いたセリフなんて思いつくはずもなく。

 

「ふふっ、無理に褒めなくても、兄さんが美味しそうに食べてくれるだけで私は嬉しいですよ」

 

と微笑んでくれた。

どうやら俺の考えていることはお見通しだったようだ。

うん、無理なものは諦めるか。

 

「どれも、すごく美味しいよ」

 

「はい!」

 

結局シンプルな言葉でしか言えなかったが桜花は喜んでいた。

その後はテレビから流れるニュースや学園での他愛もない会話をしながら、

穏やかに食事は進んでいった。

 

 

<学園通学路>

 

朝食を食べた後、学園に続く通学路を二人歩く。

時間も余裕があるので桜花のペースに合わせ、ゆっくりとした足取りで向かう。

その間、俺は少し考えていた。

今朝起きてから感じる違和感についてだ。

桜花が部屋に来た直後までは、何か違和感の様なものがあった。

何か大切なことを忘れているような。

そんな不安が胸に広がる。

 

「あの、大丈夫ですか、兄さん。今朝からずっと上の空ですが」

 

考え込んで黙っている俺を不思議に思ったのか。

桜花がこちらの顔を覗き込む。

 

「え…と、な、何でもないよ」

 

藍色の瞳に見つめられ一瞬言葉に躊躇してしまう。

それが良くなかった。

桜花は訝しげに、じっ…と見つめる。

えっと、なんて言えばいいんだろう?

 

「私には言えない事…ですか?」

 

「いや、そういうわけじゃないんだ。なんていうか、自分でもちゃんとわかってないっていうか。 …悪い、上手く伝えることができないんだ」

 

自分ですらこの違和感の正体がわかっていない。

そんは今の状況を桜花に説明なんてできるはずもなく、ただ謝るしかできない。

 

「いえ、別に謝って欲しいわけでは…ただ、少し合わないうちに兄さんも妹に隠し事する人になってしまわれたんですね…くすん」

 

ヨヨヨと、ポケットから取り出した、ハンカチを目に当てて、悲しむ桜花。

これは…冗談半分。心配半分だろうな。

 

「えっと…」

 

「…なんて、ちょっとワガママな妹でしたね。すみません兄さん。

 …ですが忘れないでください、兄さんだけの身体ではないんですから」

 

俺が困った顔をしていると、不承不承だが桜花の方から折れてくれた。

俺自身、今の感覚が何なのかよく分かっていない。

そんな今の状態を話しても、ただ桜花を心配させるだけになってしまう。

今はまだ、不要な発言は控えた方がいいだろう。

 

「ごめんな。桜花に心配はかけないよう。気を付けるよ。

 ほら、早く行かないと遅刻するぞ」

 

桜花の頭をポンッポンッと軽く叩き、走り出す。

 

「あ、待ってください兄さん!」

 

先に行った俺を追いかけるように桜花も小走りになって走る。

少々強引だったかもしれないが、今はこうした方がいいだろう。

 

「…ふふっ」

 

奏華の後ろを追いかけながら、微かに笑う桜花。

そんな妹の小さな笑う声は奏華の耳に届くことはなかった。

 

 

<教室>

 

朝っぱらからランニングで二人校門を走り抜けたせいか。

教室に着くまでに周りからの視線がやけに多かった。

なんだか、いつもより、ヒソヒソ声が多かった気がする。

階段を上がり、桜花と共に教室へと入る。

教室にいた琥珀が読んでいた雑誌から目を離し、俺たちに視線を向ける。

 

「おう、奏華。おはよ…おぉぉ!?」

 

バターンッ!

 

琥珀が椅子ごと後ろに倒れる。

…頭からいったな。大丈夫か?

少しの悶絶をしたのち、すぐに起き上がる琥珀。

何やら慌てた様子でこっちに来た。

 

「そ、そそそ奏華くん!誰ですかその隣の美少女は!?」

 

俺の方を掴んだまま、琥珀の視線は隣にいる桜花へ向けられている。

いや、琥珀だけではない、俺たちに視線を向けているのはクラスメイト達も同じだった。

 

「(あーなるほど)」

 

その反応を見て、俺は納得した。

校門から感じた視線はやっぱり…

視線を隣に向けると、その張本人である桜花は「?」と、頭にハテナマークを浮かべている。

 

「(本人は自覚なし…か)」

 

奏華の想像通り、校門を通った時も、教室までの道のりで受けた視線は、彼の隣、可憐な美少女へと向けられていたのだ。

そして彼らは同時に思っただろう。

 

『『((この美少女との関係は!!))』』

 

そんな周りの視線を居心地悪そうに感じた俺は迅速に誤解を解くために先手を打つ。

 

「妹だ」

 

「いも…うと?」

 

復唱するように繰り返す琥珀に「あぁ」と頷く。

視線を桜花に向け、アイコンタクトをする。

桜花もそれに気づいたようで、スカートの端をつまみ、淑女の様にお辞儀をする。

 

「兄さんの妹で八神桜花といいます。よろしくお願いします」

 

お辞儀さえも華やかに見える。

八神奏華の妹、その言葉を理解したクラスメイトは一斉にして驚く。

 

「「「い、妹だってーー!!??」」」

 

俺と桜花と見比べて周囲にどよめきが起こる。

 

「まっじかよ、あんな綺麗な子が!?」

 

「髪も肌も綺麗…」

 

「お兄様と呼ばせてください!」

 

あるものは見惚れ、あるものは感嘆の息を吐く。

この様子だとすぐに桜花の事は広まるだろうな。

ってか、おい誰だ!いきなり兄呼ばわりしたやつは!

 

「桜花こっち」

 

「…あっ」

 

とはいえ、いつまでも教室の入り口に立っている訳にはいかない。

桜花の手を引き、机の場所へと案内する。

桜花の席は俺の席の右隣になっているようだ。

 

桜花が座ると、クラスメイトたちがドッと押し寄せてくる。さながら荒波のようだ。

転校生ということに加え、美少女がやってきたのだ、気になるのも仕方がないか。

彼女彼らは、桜花の周りに集まり、質問を始める。

なんでこのタイミングに来たのか。

魔法知識はどんなものか。

中には実力について聞いてくる者もいたが

桜花本人は嫌な顔ひとつせず、ひとつひとつ答え、対処していく。

この様子なら、すぐにクラスメイト達と打ち解けるだろう。

 

「すごい人気だな、桜花ちゃん」

 

いつの間にか、そばに来ていた琥珀に話しかけられる。

桜花ちゃんって…お前。

 

「お前と同じ苗字なんだから区別しておいた方がいいだろ。これは休み時間まで続くかもな。お兄様」

 

「…ふぁ~~っ」

 

色々ツッコミたいことはあるが、今は眠い。

その衝動に耐えることなく、俺は腕を枕にして寝ることに…。

 

「うぉい!無視して寝るなって!」

 

このまま無視したいのは山々だが、そうしたら、こいつの場合、もっと騒いだりして眠れなくなるだろうな。

睡眠は諦めて身体を起こし、さっきの発言に返事を返す。

 

「ん、お前に兄呼ばれされると寒気がやばいな」

 

「もうちょっと言葉とか選んでくれませんかねぇ!奏華さん!!」

 

「桜花はしっかりしてるからな。心配ないだろう」

 

そんな俺の言葉を聞いて、琥珀は苦笑いを浮かべる。

 

「しっかし、なんでこのタイミングで登校したんだ?」

 

「あぁ、昔から身体が弱くてな。入院のせいでまともに通えなかったんだ」

 

この学園では実技、座学、出席を大事にしている。

桜花は俺の様に魔法が使えないではないし、魔力量も技術もそれなりに培っている。

ただ、身体が弱いため出席日数が足りなかった。その為、このランクのクラス入りになったのだ…と琥珀へ簡易的に説明する。

 

「…そんな重いのか?」

 

先ほどまでのふざけた様子はなりを潜め、真面目な顔になる琥珀。

こういった切り替えの良さは琥珀の長所なんだろう。

 

「そこまで重いわけじゃないさ。それに退院する位には良くなっているんだ」

 

「はい、ようやく兄さん達と同じ教室で授業を受けられます」

 

俺と同じような質問を受けたのだろう、自分の事を律儀に答える桜花。

小さく微笑むその笑顔に少しだけ心が痛んだ。

力のある者だけが上に行くことができるこの学園は桜花にとって苦痛ではないのか、と。

兄への信頼してる、その言葉に何やら感心したように琥珀が頷く。

 

「そっか、まぁ何かあれば言えよ。手伝ってやるからさ!」

 

親指をグッと立てて、二カッと笑う。

琥珀は基本善人だ。

困っている人がいれば手を伸ばせる。

まるで物語のヒーローのような奴だ。

 

「あぁ、ありがと」

 

「…それにしても、こんな可愛い妹がいたなんてな。それに愛されやがる、幸せもんだな」

 

ツンツンと肘で小突く琥珀。

割と痛いので顔をしかめるが、桜花のいる日常が幸せなのは、あながち間違っていないので

 

「……(ドスッ!)」

 

仕方なく、肘で勘弁した。

 

「脇腹がもの凄くいってぇ!?」

 

悶絶する琥珀を放置。机にうつぶせになって眠る体勢をとる。

瞼を閉じ、視界が暗くなる。

その時、一瞬だけ浮かぶ情景。

桜の木だ。

 

「(…また、これか)」

 

眼を閉じるたびに映る桜の木。

今朝からこの調子だ。

まるで瞼の裏に焼き付いたかのように、忘れることを許さないように消えることのない映像。

 

「(…一体なんなんだ)」

 

俺自身、桜の木なんて写真でしか見たことがない。

春に咲き、夏になる頃には散っている。

知っているといってもその程度。

そもそも、この島に桜の木なんて存在していない。

元より、異世界からの漂流島。

この世界にあった元々の植物がここで育つことはない。

本土のいた頃も見る機会はなかった。

周りはコンクリートの壁ばかりで、植物なんて観葉植物ぐらいだった。

だからこそ、俺には分からなかった。

 

「(もしかしたらこれも記憶の鍵なのか?)」

 

そんな考えも一瞬。寝不足の頭ではそれ以上の考えは浮かばなかった。

近くでクラスメイトと談笑する桜花の声を聞いているうちに眠りへと…。

 

「あ、そう言えは奏華。『狂い桜』って知ってるか?」

 

「…なんだって?」

 

琥珀の言った『桜』というキーワードが気になり、眠りを中断。

眼を開けて琥珀に視線を向ける。

さっきまで悶絶していたはずだが、ケロッとしている。

思った以上にタフな奴だ。

 

「あぁ、最近もっぱら噂になっているやつだな」

 

「……」

 

噂…それは外部からの情報が一切取ることができないこの学園生徒が

娯楽として楽しんでいるものの一つだ。

根も葉もないデタラメな噂が大半を占めているが、中には本当にあったものも存在している。

それは希沙羅の手伝いをしている関係上、そう言ったものが嘘か本当か、ある程度見てきたからだ。

その結果、流れた噂を調査し、修正する事が俺の主な仕事になっていた。

その為、事前にトラブルを防げるよう変わった噂を聞いて集めるようにしている。

集めた後は希沙羅へ報告、出来るならその噂の出所も見付け、解決するようにしている。

その活動自体は非公認だから希沙羅以外、知らない為、あまり大きな行動はとれないが。

 

その為、俺はある程度、『噂』に対して、反応することがある。

だが今回はそれだけではない。

桜の木、今気になっているキーワード、聞かずにはいられない。

噂という言葉に俺が反応するのはいつもの事なので、琥珀は大して驚かず、話をつづけた。

 

「あぁ『狂い桜』ってのは---」

 

………………

 

琥珀の話によると『狂い桜』というのは、今この学園で流行っている、都市伝説みたいなもの一つらしい。

内容としては、春夏秋冬枯れることなく咲き続ける不思議な桜の木で

夜にしか見ることができない…という話だ。

なんでも触れば魔力の向上がみられるだとか、何でも願いが叶うだとか

はたまた見ると呪われて一週間以内に死んでしまう…だとか。

どれも一貫性が無く、バラバラでいかにも適当に作られた話のように思えた。

だが、嘘にしろ、真実にしろ、何人かの生徒が興味本位で夜、森に入って探しているらしい。

 

「でもまぁ、今んとこ信憑性の無い、噂程度なんだけどな」

 

琥珀の話に耳を傾けながら、携帯を取り出し、一通のメールを打つ。

それは希沙羅宛に送るために先ほどの噂の内容をまとめたものだ。

実際に学生が森に行っているなら希沙羅にすぐ報告した方がいいと判断した。

 

「まぁでも噂にしろ本当にしろ、この話が流れているなら今日あたり教師たちも動くかもな」

 

冗談交じりに言う琥珀。

その言葉に若干の不安がよぎる。

 

「(学園側も森の強化をすぐに行えるわけじゃない。もしかしたら今日にでも…)」

 

メール送付を確認しながら奏華は今夜起きるであろう可能性を考えた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。