死神少女と鏡の魔眼   作:LAMLE

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一話目ですね。
プロローグを書いてから
かなり期間があいてしまいました。
大体の内容は考えているんですが
それを文章にするのがめちゃ大変で(汗)



第一話

<奏華の部屋>

 

「…ん」

 

目が覚めると俺『八神 奏華(やがみ そうか)』はベッドで寝ていた。

見慣れない天井に同じく見慣れない部屋。

目覚めたばかりで、まだ少しボーッとする頭で思い出す。

ここは学園の近くに用意された寮のひとつ。『第七寮』

見慣れないのは、つい最近、引っ越してきたばかりだからだ。

 

「……」

 

ダルイ身体で寝返りをして、視線を窓へ向ける。

窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、朝日が差し込んでいて眩しい。

その日差しを手で覆いながら何となしに呟く。

 

「また…あの夢」

 

夢…ある時を境に見始めたもので、どこか現実味のある夢。

いつも暗い場所から始まり、勝手に進んでいく。

分かっていることは、微かに香る桜の匂い。

暗闇の中、今にも途切れてしまいそうな、少女の声。

少女は…今にも消えてしまいそうな声で俺の名前を呼ぶのだ。

夢の中の俺はその少女のことを知っているはずなのに名前が思い出せない。

無理に思い出そうとする激しい頭痛が襲ってくる。

俺は痛みに耐えながらも、必死に手を伸ばす。

少女を救うために。

だが、その手が届くことは…ない。

やがて声は聞こえなくなり、あとに残るのは

救えなかったという後悔と少女を失ったという絶望。

そんな現実を生んだ世界を憎みながら終わる夢。

その気持ちは起きた後も、胸の中に残り続ける。

湖畔に積み重ねていく泥のように何層にも何層にも。

 

「はっ、毎回バットエンドの夢とか…笑えねぇ」

 

思わず乾いた笑いがこぼれる。

まるで忘れることを戒めるように

あの夢が無くなることはない。

俺はいつもの癖で無意識に左眼に軽く触れる。

左眼はほんの少し熱かった。

 

ピロリン♪

 

「ん?」

 

唐突に鳴った着信音によって俺の意識は枕元へ向かう。

見ると携帯のランプがチカチカ点灯している。

携帯を手に取り、確認すると一通のメールが届いていた。

メールの送り主は…希沙羅だった。

 

『友禅寺 希沙羅(ゆうぜんじ きさら)』魔法使い育成機関RUBICの

学園長で数年前、孤児だった俺を保護、生活できる環境を

用意してくれた、俺の保護者に当たる人物だ。

 

メールには

『依頼求:今日の放課後、いつもの場所へ』

と書かれていた。

この学園は少し特殊で生徒たちは何かしらの仕事を与えられている。

アルバイト…に近いのだろうか。

とにかく、何かしらの仕事を一人一つ以上持つことになっている。

俺の仕事は学園長である希沙羅の雑用…もとい手伝いをしている。

ふと、携帯のバッテリーを見ると赤いランプで20%と表示されていた。

おそらく、昨晩は充電を忘れて寝てしまったのだろう。

 

「まずったな。だけど今日は午前授業だし20%でも大丈夫だろ」

 

視線を時計へと向けると、針は七時を指していた。

学園は八時から始まる。

そろそろ朝飯を食べておいた方がいいだろう。

俺はメールを打ち込み

『了解』

と返し、支度を始めた。

 

世界に突如として現れた『魔物』『天使』『悪魔』『死神』

奴らは共にあらわれた幾つかの島を拠点に自分たちの領域を作りあげた。

政府が目を付けたのは、異種族と同じように各地に出現した

森で覆われ、魔力の蓄積される謎の島。

政府は、この島のひとつを開拓、街を作り、異種族に対抗するための

魔法使い育成機関『RUBIC』を組織した。

魔法使いとしての素質があるものが本土から呼ばれ、入学する。

俺も、ここの生徒として暮らしているひとりになる。

 

季節は春。

この島に暮らし始めてから約一年がたった。

ここの生活にもだいぶ慣れたし、思ったより不自由ではない。

俺の住んでいるココは、生徒が住むために用意された学生寮。

本来この寮は六人用なのだが、今俺が住んでいる第七寮は

俺と希沙羅の二人になる。

といっても希沙羅がここへ帰ってくることはほとんどない。

なので、この寮で暮らしているのは実質、俺一人ということになる。

 

一階にある食堂、その奥にある食糧庫から野菜を適当に取り出す。

サラダを作るために、野菜を軽く水で洗い、一口サイズに切って、皿に移す。

フライパンに卵を落とし、目玉焼き。食パンを焼いて、目玉焼きを上に乗せる。

早く、簡単な朝食ができた。

広い食堂で食べるのは俺一人。

去年からこの寮に入居者はおらず、今年も望みは薄いだろう。

その理由は…まぁ色々だ。

 

「(まぁ気楽っちゃあ、気楽なんだけどな)」

 

流石に一年もこの寮で一人暮らししていれば嫌でも慣れた。

今ではそこまで違和感も持たないようになった。

 

朝食を済ませた後、身支度を整えるために部屋へと戻る。

クリーニングに出していた、白のシャツに赤いネクタイ。

黒を基調に赤のラインが入った軍服に似た作りの制服に袖を通す。

ちなみにラインとネクタイの色は学年によって違っており、二年生は赤色になる。

昨日のうちに必要な物は鞄に詰めておいたので

準備にそれほど時間はかからなかった。

まだ最低限、必要な物しか置いてない殺風景な部屋。

部屋の扉付近には、まだ荷解きをしていない

段ボールが無造作に置かれている。

 

「(今日あたりに片づけておくか)」

 

そんなことを昨日も言っていた気がする。

俺は鞄を手に持って、寮を後にした。

 

 

<学園通学路>

 

RUBICの学年は三年生まであり、学園は島の中心にある

丘の上に建てられている。

また希沙羅の「生徒に本来の学生生活を」という意向により

その構造や施設も従来の学校と似た作りになっているらしい。

他には体育祭や文化祭などのイベントも用意されている。

もちろん、能力の実技試験や、魔法を使った大会のように

この島独特のイベントもある。

島にも商店街なんかも作られている。

 

切り開かれた森に敷かれた硬いアスファルトの道を歩きながら学園を目指す。

寮から学園までの距離は、十五分程度で着くため、さほど遠くない。

歩いていると同じように登校してきた生徒たちを見かけるようになる。

何人かの生徒が俺の姿を確認すると、ヒソヒソと話し出す。

中には俺に聞こえるよう大きめの声で話す者もいる。

 

「見ろよ、ブランクが来たぞ」

 

「ホントよく諦めずに来るよな」

 

「努力したって無駄なのに」

 

「おいおい、そんなこと言ったら可哀想だろ。

 俺らと違って才能の無い落ちこぼれなんだから」

 

あはははっ

と笑い合う数人の生徒達。

『ブランク』というのはこの学園で付けられた俺のあだ名みたいなものだ。

なぜそんな風に言われているかというと、彼らの言った魔法使いとしての才能がない。

これに尽きる。

具体的に言うなら、俺は魔法が使えないのだ。

高度な魔法はもちろん、初歩の初歩である魔法すらまともにできない。

『白紙の紙(ブランク)』ということだ。

そんな俺がなぜここにいるのか。

それは、俺の持つ魔力量は一般の魔法使い以上あるようで

そのまま放置するのは後々危険ではないか…ということで

保護対象という名目のもと、この学園に入る権利が与えられた。

だが魔力量が多くても肝心の魔法が使えないので成績は常に最下位。

魔法使いは何より実力を重んじているそうで

(プライドの高い上級魔法使いである)彼らからしたら俺みたいな落ちこぼれは、

憂さ晴らしのターゲットになる。

この学園は『魔法』という一種のステータスによって生徒の優劣を決めてしまっている。

魔法使いとして優れたものは劣るものを見下す。

もちろん全員がそういう考えを持っているというわけではないが。

 

「(ホント…面倒くさいな)」

 

思わず溜息が出る。

希沙羅に保護された俺だが

てっきり希沙羅の元、雑用として働くものだと思っていた。

しかし何を考えているのか、希沙羅はこの学園に俺の入学をねじ込んだのだ。

あの友禅寺 希沙羅が入れた者。

ということで当初は話題にもなった。

 

「(まあ、すぐに魔法も使えない落ちこぼれ野郎って評価になったんだけどな)」

 

それも含めて、俺の学園での立場はあまりよくない。

最初の頃はそれで噛みついたりしたが

魔法が使えないブランクの俺では喧嘩をしてもまず勝てない。

そんな当たり前のことが嫌でもわかった。

だから今ではトラブルなく過ごすことが一番の選択だと思っているし、

いままでそうならないように避けてきた。

そのおかげでこの状況にも幾らか耐性がついて慣れた。

聞こえてくる侮蔑の声を無視して

さっきより少しだけ早足になって学園へ向かった。

 

 




はい、ヒロインとかまだ出ないです。
もう少しかかります。
いや~文章書くのって大変ですよねぇ(二回目)

これからも時間は掛かってしまいますが
できるだけ書いていきたいです。

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(ガラスのハートなのでお手柔らかにお願いします)

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