死神少女と鏡の魔眼   作:LAMLE

18 / 22




エピローグ

翌日、奏華は希沙羅に呼ばれ、資料室に来ていた。

希沙羅は椅子に座りながら、手に持った紙に視線を移す。

 

「報告書は読ませてもらった」

 

希沙羅は顔に手を当てて、頭が痛そうにしていた。

 

「学園生徒が…か」

 

苦虫をかみつぶしたような顔。

希沙羅なりに責任を感じているのだろう。

溜息を一つ吐くと、希沙羅は視線を奏華へ向ける。

 

「それで、彼の話だが…」

 

その時、希沙羅から聞いた話は、耳を疑うものだった。

 

 

------------------------------------------------------------

 

 

「あ、お帰りなさい。八神君」

 

寮に戻った俺を出迎える桜花。

いつの間にか、『兄さん』が固定だったが、いつの間にか『八神君』になっていた。

その事について聞くと。

 

『だって、その方が距離が縮んだ感じしません?もう協力者なんですし』

 

とのことだ。

人前では『兄さん』二人の時は『八神君』と使い分けるらしい。

 

「…何かあったんですか?」

 

複雑な表情を浮かべる俺に何か感じ取ったのか。

単刀直入に質問をする。

 

「後で話すよ。少し整理したいし」

 

二人で食堂へ向かう。

席には既に二人分のティーセットが置かれていた。

準備のいいことだ。

 

「それで、詳しく話してもらうぞ」

 

「詳しく…ですか?」

 

「お前は死神で、でも記憶が無くて、昨日のアレは何だ!女になったぞ!」

 

「質問が多いです」

 

….

 

「まずは昨日の状況整理ですね。攻撃を撃った後、八神君は直ぐに気絶してしまいましたし」

 

朝起きたら寮の自室で寝ていたから嫌でも分かる。

最近多くないか、こういうこと。

 

「その後ですが、砕けたQ-bicから零れる様に行方不明者が出たんですよ。勿論、君嶋さんも含めてね」

 

希沙羅の話では全員命に別状はないらしい。

ただ、ひどく魔力が枯渇しており、当分入院する必要があるみたいだ。

 

「その後は、八神君の形態を使って学園長に連絡。その後の対応は早いものでした」

 

希沙羅は直ぐに医療班を送り、全員病院へ緊急搬送された。

その後は重要参考人として、桜花が希沙羅に事の顛末を話したそうだ。

 

「まぁ多少はアレンジしましたけどね。貴方の魔眼と私の魔力で君嶋さんを無力化したしたって」

 

「あんまり、魔眼使ったとか言わないで欲しいんだが…」

 

「はい、善処します」

 

ニッコリと笑う桜花。

これはあまり信用できないな。

 

「それにしても八神君はもう動けるんですね。魔力の回復が凄く早いんですね」

 

「あぁ、そう言えば。てか、そもそもあんなに魔力使ったこと自体初めてだったからなぁ」

 

「流石魔力タンクですね」

 

「不名誉な呼び名はやめろ!広めるなよ!!」

 

ただでさえブランクと言われているんだ。これ以上の呼び名は絶対勘弁。

 

「それで、学園長との話で何か気になる事でも」

 

「いや、そこまで大した話ではないと思うんだが…」

 

「聞かせてください。貴方の疑問は私の疑問。二人で考えれば解決するかもしれません」

 

「…君嶋に襲われる前日。俺たちは様子のおかしい所を見たよな」

 

「あぁ、あの時ですか。やけに泥だらけで、意味深な事を散々言ってましたね」

 

「あの時は気分が悪かったからそこまで考えてなかったが、アレのお陰で、君嶋に対して少しだけ、警戒心を持つことが出来たんだ」

 

だけど…

その先が、希沙羅から話された違和感。

 

『いや、君嶋 本人はずっと森にいたと言っておる』

 

…え?

 

『だから夕方にお主達と会ってなどいないと。嘘をついている様子はなかった』

 

『じゃあ、あの時のアイツは?』

 

『なぁ、奏華。お主を疑うわけではないが。本当にそれは君嶋だったのか?』

 

 

「それは…単に記憶を失っているのでは?」

 

確かに桜花の言っていることも分かる。

だが、そもそも力を手に入れたからって、あんな行動と発言はリスクが高すぎる。

 

「…二人で考えればと言った手前、申し訳ありませんが、情報が足りませんね」

 

「そう…だな。考えすぎかもな」

 

完全に忘れるわけではないが、頭の隅に置いておこう。

 

「そう言えば聞きそびれたけど、お前の目的ってなんだよ」

 

「急に聞いてきましたね。私の目的…ですか?」

 

「ほら、お前が自分の正体言った時、言ってたろ。役割と目的って。契約も結んだんだ、教えてくれてもいいだろ?」

 

「あぁ、私の目的…ですか。あくまで過程の話ですが」

 

そう言うと、カップの紅茶をグッと飲む。

あっという間に空になった。

 

「『狂い桜』の元に行くことです」

 

 

 

 

-------------------------------------------------------

 

 

 

 

森の中を歩く小柄な人影。

 

「アハッ、もう終わっちゃった〜。ショージキ、興ざめ?」

 

手元の携帯をクルクル回す。

 

「まぁ、ヒントもあげたし、トーゼンかなぁ」

 

すると、手に持った携帯が振動する。

手慣れた手つきで操作を行い、電話に出る。

 

「はいはい、もしもし総帥?」

 

「うん、うん?えぇ…本当に好き勝手にやらせるの?アイツにぃ?今回も失敗したのにぃ?」

 

「ふぅ~ん、まぁ総帥が良いっていうならアタシも反対はしないけどさぁ」

 

電話を切った後、その携帯電話へ視線を向ける。

倒れる奏華と、ワタワタと慌てた様子の桜花が撮られた写真。

どう見ても隠し撮り。

しかも、その現場は昨日のTレックスとの死闘後の様子。

それを見て楽しそうに少女は笑う。

 

「頑張ってね…八神奏華…ぃ」

 

最後の言葉は風にかき消され誰にも届くことはない。

 

 

 

華の少年の物語はここから始まる。

 

 

第一章 了

 




ふぅ、取り敢えず今回はここまで!
拙い文章+遅い投稿でしたが、ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
機会がありましたら、第二章でお会いしましょう!

それでは~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。