死神少女と鏡の魔眼   作:LAMLE

11 / 22
取り敢えず拙い文章力でようやく、ここまで来ました…
これから物語が進んでいきますよ!(多分ね!)


第十話

先ほどまでいた多くの魔物たちは全て息絶え、泥が広がるばかり。

辺りは妙な静けさが支配していた。

 

「おう…か…?」

 

「はい、どうしましたか。兄さん?」

 

桜花の見た目は変わっていない。

何一つ、おかしなところはない。

だが、先ほどまでの言動に違和感を覚える。

 

――ドクンッ

 

まるで初めてその姿を見たように。

 

――ドクンッ

 

その声に、その姿に、その存在に。

 

――ドクンッ

 

綻びはすぐに広がる。

頭の中で何かにヒビが入った。

 

―――ザザザッ

 

ノイズがひどい、頭が痛い。

テレビの砂嵐の様に頭の中がグチャグチャになりそうだ。

 

「あ…ぅ…」

 

上手く言葉が出てこない。

出てくる言葉はノイズによってかき消され、その意味を失う。

 

「…...」

 

桜花は何も言わない。

苦しむ俺を見ても何も反応を示さない。

あるいは何かを待っているのか。

その藍色の瞳にはどこか期待が込められているように感じられた。

 

「…う…ぐ…ぉ…まえ…」

 

まるでその先を言うのを妨害するように、ノイズは更に激しく痛む。

 

「お前は…だ…れだ…?」

 

お前は誰だ?

そう言った瞬間、自分の中で何かが音を立てて割れるのが分かった。

ノイズが止み、痛みも徐々に引いていく。

それと同時に力が抜け、膝をつく。

すると、辺りに響く、パチパチと手を叩く音。

頭を押さえながら視線を向けると目の前の少女―桜花が手を叩いていた。

 

「おめでとうございます。八神奏華さん」

 

妙に頭がすっきりしている。

そして嫌でも分かる。

分かってしまった、目の前の少女は『妹などではない』と。

 

「…お前は誰だ」

 

「…思っていたより元気ですね。安心しました」

 

「答えろ!!お前は誰だ!!」

 

手に持った黒い剣を目の前の少女に突きつける。

思えば朝、俺がおかしくなったのは、この少女にあってからだ。

方法は分からないが、あの時、この少女が自分の事を妹と言ったのがきっかけだったはず。

何らかの暗示か、催眠術か、理屈は分からない。

だが少女は、『何か』を使って、自分の…八神奏華の妹だと、俺を含めた周囲の人間に信じ込ませた。

もし眼の前の存在がそれを行ったのなら、それは脅威でしかない。

 

剣を突き付けられても、目の前の少女は怯えひとつ見せない。

 

「…私(妹)に剣を向けない方がいいですよ」

 

「どういう…なっ…」

 

少女がパチンッと指を鳴らした途端。

手に持っていた影の剣がゆらゆらと揺らめき、その輪郭を失い始めた。

柄の感触も次第になくなっていき、最後は空気に溶けるよう消えてしまった。

 

「サービスはここまでです」

 

「(まさか…さっきの影の剣…こいつの力?)」

 

「ここで話すのもなんですから、まずは寮へ戻りましょう。肩貸しましょうか?」

 

俺はその返答に首を横に振った。

桜花は肩をすくめると寮の方角へと歩き出した。

負傷しているとはいえ、俺に対し、無防備な背中を見せることに面食らう。

警戒を解くつもりはないが、向こうが話すと言っているのだ。

俺は痛む足を気遣いながら、大人しくついていくことにした。

 

 

<第七学生寮>

俺が足に怪我している事もあり、少女の言う話し合いは俺の部屋で行われることになった。

俺はベッドに座り、桜花は椅子に座る。

 

「そうですね。まず、昨日の夜の出来事は覚えていますか?」

 

朝とは違い、どこか雰囲気が変わった桜花が質問する。

昨日の夜…考えてみるが特に思い出せない。

 

「希沙羅の手伝いをして、寮に帰って寝た…と思う」

 

桜花はそれを聞いて溜息一つ。

 

「…そうですか。では単刀直入に言います。貴方は昨日、天使の襲撃に合いました」

 

「…ッ!?」

 

天使の…襲撃!?

 

「まて、天使の襲撃ってこの島で…なのか?」

 

「はい」

 

「俺が…襲撃されたのか?」

 

「貴方も善戦したようですが、そこは人間と天使の差。貴方は重傷を負いました」

 

桜花の言っていることはにわかには信じられないことだった。

RUBICに天使が来れる訳がない。

この島には結界が張られている。

簡単に入る事なんて…。

 

「申し訳ありませんが、そこを考えるのは後にしてください。今重要なのは貴方が天使の襲撃に合い、負傷した。納得はしなくてもいいですが、ここまでいいですか?」

 

有無を言わさない桜花に俺は天使侵入の思考を止めて、しぶしぶ頷いた。

 

「そして瀕死の貴方を私が助けた…みたいです」

 

助けた…みたい?

桜花の言った、その言葉に少し違和感を覚える。

 

「…みたいです?」

 

「はい、私は事実として知っているだけです。貴方を助けたのは『前の私』」

 

「まてまて!なんだ前の私って」

 

天使だとか、前の私だとか、予想外の言葉ばかりで頭が混乱してきた。

 

「まぁ、隠しても意味が無いので正直に言いますが、今の私、記憶がひどく曖昧なんです」

 

「は…はぁ!?」

 

記憶が曖昧?

それってどういう…。

 

「順を追って説明します。重症だった貴方は私に触れたことで、コンタクトを取ることができました。そして貴方は一つの願望を持った。私はそれを叶えるために貴方と仮契約を果たしました」

 

「俺の…願い?」

 

「ええ、貴方の”生きたい”という願いの為、私の魂と貴方の魂を接続しました。その影響のせいかは分かりませんが、私は記憶の大半を失いつつ貴方の身体に入りました」

 

「ちょ、ちょっと待て!触れた?魂の接続?それに俺の身体に入った?」

 

「はい、触れた、というのは桜の木です。私はそこで眠っていましたから」

 

「桜の木って…」

 

脳裏に浮かぶのはあの噂だった。

『狂い桜って知ってるか?』

 

「(あの噂の木の事か?)」

 

「次に今貴方の中には二つの魂が入っています。あなた自身の魂と、私の魂です。と言っても今私は外に出ているわけですが」

 

「……」

 

正直、話がぶっ飛んでいて付いていけない。

だが、彼女の話に不思議と納得している自分がいる。

桜花は視線で話を続けても?と訴える。

俺は頷き、再び話を聞く。

 

「私が記憶を失う直前、前の私は何やら細工をしたみたいです。その一つが今の私のポジション」

 

「八神 奏華の妹…か?」

 

俺の質問に桜花はゆっくりと頷く。

 

「私が知っているのは私に与えられた役割、それと目的です」

 

「役割と目的?」

 

「はい、まず役割は貴方の回復です。貴方は天使との戦いで重傷を負いました。はっきり言って死に掛けでした」

 

死に掛け…という言葉に背筋に寒気が走る。

無意識に自分の身体を動かしてみるが、先ほどの怪我以外、特に痛みはない。

とても重傷には見えなかった。

しかし、俺の考えを読むかのように、桜花はその疑問に対し、答える。

 

「それは当然です。今の貴方は私の魂によって一時的に健康になっているんですから」

 

桜花は言った。

俺は天使との戦闘で肉体は勿論、魂に至るまでボロボロになった。

それは、そう簡単に修復するものではないらしい。

しかし、肉体と魂は均衡を保っているらしく。

ボロボロの俺の魂に変わり、桜花の健康で強い魂が入ることで

傷ついた肉体もそれに伴い修復することができるらしい。

だが、その修復は一時的な物らしく、例えば桜花の魂がなくなれば

弱った俺の魂に合わせ、肉体は再び、ボロボロとなり、修復が不可能となる。

ある程度の時間が立てば、魂は修復されるようだ。

 

「以上が、私の知る限りの情報です。何か質問はありますか?」

 

「質問…ねぇ」

 

正直、桜花の言っている事はどれも予想の斜め上すぎて

何を言っているのか正直分かっていない。

ただ、今の話を聞いて思ったことがある。

 

「じゃあ、まさか授業中のあの跳躍力は…」

 

「えぇ、アレは貴方の身体が強化されたことで出来たものです、昨日までの身体では絶対に無理でしたよ?」

 

俺自身、あの時は無意識に魔眼でも使ってしまったのかと焦ってたが、そう言うことだったのか。

 

「…お前は俺の過去、身辺について知っていたよな。あれはどういったカラクリだ?」

 

桜花の話を信じるなら、彼女が目覚めてから一日も経っていない。

それなのに彼女は俺の過去についてある程度知っているようだった。

俺の質問に対し、桜花は、「あぁそのことですか」と言うと。

 

「私の魂が貴方の身体に入った時、記憶も共有したんですよ。だから朝の時点で貴方について、ある程度は把握していました」

 

「…は?」

 

「あぁ、大丈夫ですよ。記憶を見たのは共有した時なので今は見えません」

 

「…それ、どこまで見たんだ?」

 

「…ポッ」

 

「ポッ、じゃねぇよ!!なに人のプライベート暴いてんだよ!!」

 

「大丈夫ですよ、眼とか知りません。眼とか。あと学園長に対するセクハラまがいのラッキースケベとか」

 

「結構、知ってんじゃん!!!」

 

「冗談はさておき、他に質問はありますか?」

 

「スルー!?冗談って言ったからって、なかったことになると思うなよ!!」

 

とても疲れた。

無駄に体力を使ってしまった。

だが、分かった事もある。

どうやらこの少女は俺の秘密を含め知られているらしい。

 

「あの影の剣もお前が?」

 

「えぇ、それが私の持っている能力。簡単に言うと影を操る能力ですかね?まぁそれなりに魔力消費は伴いますが」

 

なるほど、あの時の剣は俺が戦えるよう桜花が”貸した”わけか。

それが死神の力と言われたらそれ以上の回答は期待できないだろう。

 

「じゃあ、最後の質問だ」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「お前は…誰だ」

 

「妹ですよ、貴方の」

 

「誤魔化すな。それくらいは知っているんだろ?」

 

本気ではなかったのだろう、桜花はそれ以上茶化すことなく、視線をこちらへ向けた。

藍色の瞳が真っ直ぐ俺をとらえる。

 

「人間か…それとも…」

 

「えぇ、貴方の予想通り、私は人間ではありません」

 

あっさりと、言い放つ桜花に、思わず面食らう。

この少女の事だ、また煙に巻かれると思ったからだ。

 

「…やっぱり、そうなのか」

 

魔法にしては人間が使っている魔法とは根本的に違っている。

人の記憶や感情に干渉する魔法なんて聞いたことが無かったからだ。

あくまで魔法とは第一世代と第二世代この二つしかない。

桜花の干渉した力はこのどちらにもかみ合わない。

 

「もう一度聞くぞ…お前は…誰だ?」

 

「私は…『死神』です」

 

「な…に…」

 

夜も更ける魔法使い育成機関『RUBIC』。

その学生たちが住む第七寮で今、時が動き出す。

 

 




はい、なんだか話が駆け足な気がしますが
今回はここまでです。

不定期なこの小説ですが
ここまで読んで下さった皆さん有難うございます!
(まだまだ続くよ?)

さて、そろそろ人物紹介を(ry

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。