【凍結】Fate/Grand Order 特異点X 東方戦国魔城 日本 〜戦国の三英傑〜   作:餌屋

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後編です。
今回よりガバ設定が火を噴きだします。
どうかご注意を。



第2節 歩き巫女<2>

 

 

 

 

森に叫び声と戦闘音が響き渡る。

 

アサシン・望月千代女率いる謎のくノ一集団と俺達カルデア勢の戦い。

 

 

そして俺達は、今確かに苦戦していた。

 

決して負けそうという訳ではない。

くノ一達は確かにサーヴァント反応が出ているが、一人一人の強さは非常に低く、脅威ではない。

しかし、彼女たちは4人一組で俺達一人一人と戦っており、更に特殊な能力によって俺達を手こずらせていた。

 

 

「ちいっ!何なんですかこの人達は!斬っても斬っても死なないんですけど!」

「手ごたえは確かにあるのに…まるで傷を負っていないなんてっ」

「ええい…これではじり貧だな」

 

前衛を担当する沖田と頼光母さん、そして後方支援に回る先生がそうぼやく。

 

確かにこちらの攻撃は通っているはずだ。

 

相手はひるむし、吹き飛ばすこともできるし。

 

 

しかし傷がつかないのだ。

まるでゾンビ。いやゾンビの方がよっぽど攻撃が効いてくれるだろう。

 

「どうなってんだ?まさか、これがアサシンの?」

 

そして俺は一つの可能性にたどり着く。

 

この戦闘中の巫女たちは千代女の宝具による何らかの効果を受けているのか。

 

 

 

 

 

「いや待てよ…」

 

ウチのカルデアには百貌のハサンというアサシンがいる。

彼女、いや彼女たちの宝具は、多重人格という特性を活かした群体分裂。

 

もし彼女たちが百貌と似たように千代女の宝具から生まれた存在だとしたら?

 

 

 

 

「ふふっ、もうたどり着いたようですね」

 

俺が推理していると急にすぐ真後ろから千代女の声が響いた。

慌てて目をやると目の前には小刀を俺に向けて振るわんとする千代女の姿。

 

「バカな、さっきまで向こうに!」

「いかん!藤丸!」

「マスター!?」

 

直撃コースだ。

幾ら鍛えたからといってサーヴァントに勝てるほどの力はないし、避けるにしても完全に反応が遅れた。

俺は振るわれるその刀を見つめ、

 

 

「先輩!!」

 

 

マシュがガードに入ってくれるのを待った。

 

「ナイスだマシュ」

「ご無事で何よりです!」

 

マシュが大盾を千代女に振り下ろす。

しかし、千代女の敏捷値もかなり高いのだろう。難なく攻撃をかわし距離を取られた。

 

「ふっ、棒立ちとは…サーヴァントが必ず助けてくれると信じていたかのように見えましたね」

「ああ、ウチのマシュは優秀だからな」

 

嘘です結構びびってました。

本当マシュ間に合ってくれて良かった。

 

「しかしそのおかげで何となくあんたの能力が想像ついたよ」

「ほう?」

「あんたの能力、いや宝具か…それは、固有結界だ」

 

俺の推理に千代女は感心したような顔をする。

 

「せ、先輩?固有結界とは、どういう事ですか?」

「まあ正確には違うだろうけどな。恐らく、一定範囲内に幻影のくノ一達を召喚、そのくノ一達を地点指定してそこと交換転移可能ってとこか?」

「素晴らしい、良く見破りました!」

 

千代女は満面の笑みを浮かべて推理が正解であることを示し拍手する。

 

「私は生前、自分の教え子たちを『望月千代女』を再現するように育てました。そう、『望月千代女』は個にして全。それが宝具となり教え子たちを『望月千代女』として一定範囲に召喚できるようになりました。本体以外は幻影である為私が健在な限り半永久に自立行動ができるのです」

「なんて強力な」

「更に彼女たちは『望月千代女』であるがゆえに私がそこにいるという事実を生み出します。これを利用した疑似的な空間転移が可能なのですよ」

「『空間転移』だって!?疑似的で制限があるとはいえ魔法の域にある技術だぞ!」

「チートじゃな」

 

確かに、幾ら宝具と言えどあまりに強い。

しかしそれほど便利な宝具でもなさそうだが。

 

「その宝具、維持魔力がトンでもなさそうだな」

「ええ、まあ。流石に普段では中々使いづらいものがありますね。範囲指定があるので諜報活動にも使えないですし」

 

しかしそれでも破格の宝具だろう。

アサシンの持つ気配遮断スキルと合わせると、幻影体さえ配置できれば完全な死角から本体の膂力で奇襲が可能なんだ。

 

「ですがご心配なく」

「?」

「我々には魔力に不安が残らない位のバックアップをしれくれるものがあるのですよ」

 

そういった千代女はこれまで以上に殺気と闘気を放つ。

 

『そうか!この時代を特異点化させる原因となっているのは信長軍。なら織田信長が聖杯を持っていてもおかしくない!』

「聖杯の魔力バックアップが働いているのか!」

 

となるとまずい。千代女の宝具に対する対策が無い以上これはただの消耗戦だ。

しかもこっちが一方的に魔力を使い続けるだけの。

 

勝てない。

 

今すぐ離脱して態勢を立て直す必要があるが、この包囲網を平助さんら保護対象を抱えて逃げるには無理がある。

 

「それではそろそろ終わりにしましょう。盾持ちのお嬢さん、マスターを果たして守り切れますか?」

 

そう言い放ち、千代女は今度こそ終わりだとばかりに刀を構える。

 

 

 

 

 

「そこまでだ!」

 

すると突如、馬に乗った騎兵たちが森の中を駆けて千代女の包囲網を突入してきた。

 

「おおっ!来てくださったのか!」

 

平助さんが騎兵たちを見て喜びの声を上げる。

 

「皆!急いで我らに乗れ!撤退するぞ!」

「応!さ、藤丸殿や他の皆様も行きますぞ!」

「え!?え!?!?」

「マシュ!行くぞ!」

「は、はい!」

 

この機を逃すわけにはいかない。

俺はマシュに声を駆けると皆にも視線をやって撤退の指示をだす。

 

「むっ同盟の増援か、しかし逃がしはしません!」

「いや!撤退させてもらう!」

 

俺達が騎兵たちと共にその場を離脱する中、追撃しようとする千代女達の前にクリーム色の馬に乗った一人の少女が立ちはだかるのが見えた。

 

「ん!彼女は!?」

「安心せえ藤丸殿。あの方は見た目はああだが名将と謳われた方よ!」

 

名将…え、彼女武将なのか!?

 

「そこをどけえええ!」

「宝具開放…『小豆長光八閃(あずきながみつはっせん)』!!」

 

 

彼女が宝具を開放すると、一筋の光が煌めき、轟音とともに千代女は吹き飛ばされた。

あまりにもの衝撃だったからか、宝具の維持が出来なくなったのだろう。他の千代女達が消えていく。

注目すべきは宝具の真名とうっすらと『8本の刀が切りかかったか』のように見えたことだ。

 

「小豆長光、か…」

 

そして俺達はそのままその場を離脱した。

 

 

 

***

 

 

どれくらい走っただろうか。

 

既に山中を抜け、野原に出てきた。

しかしのどかな所は言い難い。

少し周りに目をやれば、戦闘の余波が辺りに散らかっているのがわかる。

 

要するに野ざらしの死体があるのだ。

 

「これは…」

「まあ、戦国の世なぞこの位珍しくなかったからのう。本当に戦が起こっているようじゃな…」

 

なるほど、戦国武将であったノッブは見慣れているのか。

他のメンバーも大なり小なり慣れているのだろう。先生は多少眉間の皺が深くなったかな?

だが俺やマシュは幾つもの特異点を渡り歩いたといっても流石にまだ慣れない。

 

「この辺りまでくれば安全でしょう…あなた方は未来から来たという方ですね…?」

 

と、後ろから追いかけてきた先ほど千代女を撃退した女の子が俺に声を駆けてくる。

ストレートの黒髪に頭にカチューシャを付け、白い透き通った肌をした少女。

彼女が本当に『あの』武将なのか…まあノッブ等前例もあるからなあ。

 

「あなたは…ありがとうございます。助かりました」

「いえ…指示通りの事をしただけです…」

 

しかし先ほど戦闘中はキリッとした感じだったが、今はとても寡黙な様子だ。

戦っている時だけ性格が変わるというやつなのだろうか。

 

 

「色々聞きたいところでしょうが…取りあえず我々同盟の本拠地にお連れします…あなた方を待っている人もいるので…」

「待っている人?」

 

 

 

 

 

「…『同盟』の代表、豊臣秀吉です」

 

 

 

 

***

 

 

江戸城、天守。

 

そこは新たな城主となった『織田信長』の本拠であり、司令室でもあった。

 

 

「そして、ボロボロの状態で帰って来たという事か、千代女」

「…申し訳ありません」

 

椅子に腰かけ優雅に酒を呑む信長の前に、何とか城にたどり着いた千代女が土下座の状態で報告を行っていた。

 

「それで?魔術師とサーヴァント達は『同盟』の元に向かったのか?」

「恐らく。既に兵を動かし逃走方向の索敵を行わせております」

「よい」

「は?」

「よいと言ったのだ。奴らは泳がせておけ。それより同盟とは関係なく各地で抵抗を続けている武将たちはどうなった?」

「…鬼兵隊達の物量に敵軍なすすべなく追い込まれている模様。しばらくすれば各地より制圧の報が入るでしょう」

「そうか。もうよい。ご苦労だったな千代女、下がってよいぞ」

「…」

 

その信長による赦免の言葉に千代女は驚いた様子を見せる。

 

「信長様…私に罰をお与えにはならないのですか…?」

「ふん、バカを言え。貴様は忍だ。忍が敵の戦力を確認してくるという仕事をこなしたというのに罰を与える阿呆がどこにいる」

「…はあ」

 

「よいではないか。信長はお主を褒めておるのだ。ありがたく受け取っておけ」

「え、お、お館様!お戻りでしたか!」

 

千代女に背後から声が掛けられる。

大柄なその男を見るに千代女は信長以上に恭しく頭を下げる。

 

「おお、帰ったか。して、首尾は?」

「うむ。とうに死んでおるのははっきりした。んがやはりここに来ているかは分からんのう」

「変質しているとはいえ、枠は必ず割り当てられているはずだ。不確定要素は手元に置いておきたい。何としても探し出せ、『虎』よ」

「応ともよ。千代女は借りていくぞ」

 

そういって『虎』と呼ばれた男は千代女を連れてその場を後にする。

 

 

 

「さあ、人類最後のマスターよ。貴様の手腕、とく期待しているぞ」

 

 

 

 

 

第3節へ続く

 

 




おき太「私のセリフが一言だけについて」
ノッブ「千代女の宝具がトンデモ設定な事について」
作者「ぼくのかんがえたさいきょーのサーヴァント」
ノッブ「おいこら。取りあえずもう一度宝具の能力を教えてくれんか」
作者「要は一定の範囲内に限り、魔力が続く限り実体を持った幻影を召喚でき、更にその範囲内で自分と幻影の位置を入れ替える能力です」
おき太「望月千代女は個であり全とかは…」
作者「独自設定です。調べた際の情報量が少なくかなり独自設定多めになってしまいました」
ちゃりん娘「実際空間転移は第五次キャスターのメディアだから使用可能なほどの大魔術なはずですが本当に可能なんですか?」
作者「正直ただの意識転移みたいな事も考えたけど宝具にしてはしょーもないなと。その代わりと言っちゃなんですが、燃費の悪さや幻影体を配置しているところじゃないと移動できないという制限を加えました」
おき太「でも燃費は聖杯のバックアップがあるから問題なしみたいですけど」
作者「ぐっ」
ちゃりん娘「何はともあれ読者の皆様は本作中気になる設定が多々あるかと思われますが、お手柔らかにエンタメとしてどうかお楽しみくださいね」



第二節でした。
いかがでしたでしょうか…

次回はついに真打登場です。
お楽しみに。
感想評価等お待ちしております。

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