ROYAL Sweetness   作:皇緋那

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新キャラが――出ます。


プリンセス集結

【前回のあらすじ】

 

ども、雪です。ついに本番、戴冠式なわけですが……他のプリンセスたち、どう出るんでしょう。ま、私も遅れをとらないよう多少は本気を出しますよ、多少は。

 

 

ふたりの少女が降り立ったのは、前回と変わらぬ真っ白な場所。いるかの手元にある端末に表示される地図を見るには狙ったとおり18番セクターに到着したようだった。

18番セクターの様子として、変わったところはある。壁も床も白いままだが、その白の中にはまた白の人形がいくつも点在しているのだ。それらはすべて武器を持ち、こちらを狙っているらしい。壁に追い詰められ来た瞬間にいきなり絶体絶命の状況に見える。

 

「なんとまぁ、派手なお出迎え」

「囲まれてる……けど、全部倒せば問題ないよ。ユウキちゃん、いくよ!」

「うん!」

 

ふたりは揃って自分のペティグリィを構えた。ユウキは本を開き、いるかは首輪を覗く。少女をこの世界に実体として留めている意思の力が光の粒子として漂い、ふたりを包む。誰に習ったわけでもないが、声を揃えた同じ掛け声で変化は一気に始まった。

 

「「チェンジ・プリンセス!」」

 

光の粒子に包まれた中で、来ていた制服が消失するような感覚。実際に消えているらしく、ユウキといるかの身体の曲線が浮かび上がり、光のタイツを纏っているような格好になる。髪はいつもより長く、ボリュームが増える。それから伸ばした腕に籠手や手袋を、足元にブーツやニーハイを、腰には大きく広がったスカートを、といったふうに光が弾け、中からプリンセスのコスチュームが姿を現す。プリンセスの戦闘形態、また姫としての姿への変身である。

最後に胸部が披露された後に、胸元にはちいさく光が集約していく。やがて同じように弾けた中から、ブレイヴァーは七色の宝玉が輝く剣、テイマーは狼の横顔の紋章――王権を主張するエンブレムが現れた。

 

ブレイヴァーの持つ本からは、すっと黄金の刃を持った剣が浮かぶ。前回と同じ行動ながら、今度は自らでなく友人を助けるための剣。しっかりと重みを感じながら、世界に聖剣を喚び出した。

 

「――勇気を以て正義と為す、プリンセス:ブレイヴァー!」

 

剣を構えて名乗りをあげる。

負けじとテイマーが首輪を上へと投げ、指で笛を鳴らした。落ちてくる首輪には、再び光が集う。しだいにひとつの貌となって地に降りて、その場の生命にその白き毛並みを靡かせてみせた。凛々しく立つその白狼はテイマーを助ける獣、ブランである。

 

「――駆け抜ける数多の野性、プリンセス:テイマー!」

 

変身を終えたふたりのプリンセスにレヴェルたちがややたじろぐような仕草を見せたあと、その細い四肢で飛びかかろうと動き始めた。

だが、そのような隙だらけの動きは一瞬のうちに野性の勘と勇者の眼に見抜かれている。数匹は足元を潰され、数匹は上半身らしい部分と下半身らしい部分に両断され、虚空へと消えた。

 

「初陣だね、ブラン。背中は任せたっ!」

 

本人が戦えるわけでないテイマーが乱戦の中から壁のところまで離脱したのを見て、ブレイヴァーが群れの中へ切り込む。手応えがいくつもある中を、次から次へと切り捨ててみせる。ブランも雑兵を何匹も潰して投げ捨て、時に不意を突こうとする個体を主人・テイマーの指示で返り討ちにしていく。

 

「……さて。残りも全部倒しちゃおっか!見ててねユウキちゃん、これがプリンセスの奥義だよ!」

 

残るレヴェルの一団に向かって指をさすテイマー。ブランが彼女のもとへ敵をくぐり抜けて駆けつけると、いるかの意思に呼応して首輪が淡く光はじめる。ちらりと視線を向けてアイコンタクトをかわすと、テイマーはすぅっと深く息を吸って、声を張り上げた。

 

「『ファーストオーダー』っ!おねがい、来て……!」

 

テイマーが指笛を鳴らすと共に、背後の壁に大きな光の門が開く。呼び声に応えてか、門の中より何やら重量を感じさせる音がする。危険を察知したブレイヴァーが跳躍によって離脱し、残されたレヴェルたちは無防備なテイマー向けて武器を振り上げた。

 

次の一瞬。門から巨体が現れたかと思えば、すでにレヴェルたちは吹き飛ばされていた。

 

その巨体によって人形の群れなどたやすく全滅させたもの。それは、強固なる筋肉の鎧に包まれた猪。

瞬く間に包囲の陣は崩壊し、レヴェルたちの数は既に1割も残っていない。残党たちは単なる武器を持っただけの人形である自分らには無理と悟ったのか、それぞれ違う壁から道をすり抜けて逃げていった。役割を終えた猪はテイマーに一撫でされ、門の向こうへ帰っていった。

 

「はい、今みたいなのがオーダー!ファーストオーダーとラストオーダーがあるの。意思の力を使っちゃうから、連発すると強制退去になっちゃうけどね」

「なるほどね、切り札があるのかぁ」

 

あたりに残党がいないことを確認するブレイヴァー。残党どころか死体もないが、奴らは倒すと消滅する。嬉しそうに説明する主人をよそに、ブランはすでに追跡を始めているようだ。狼の嗅覚ならばいずれ群れている場所を見つけて報告してくれることだろう。

 

「それまでは私がいるかを守るから、離れないで」

 

ブレイヴァーはテイマーがエンブレムを貼り出すこと前提で話を進める。警戒する彼女の気迫に質問しづらく、テイマーは黙って頷く他なかった。

 

「にしても、どこがいいのかな。狙われにくかったり……それとも、支配の主張だから目立つところに?」

 

 

「防衛に於いて有利な場所、ではないでしょうか」

 

突然響く綺麗な声。ブレイヴァーの警戒の網にひっかかりながらも、動じずに歩いてくる姿があった。声の主だろう。そして、その格好からはプリンセスであろうことが窺える。テイマーを庇う体勢で近寄る謎のプリンセスは、透き通るほど薄いレースと氷の結晶が描かれた水色、二枚が重なったスカート部を揺らしながらふたりの眼を見た。

ブレイヴァーにもテイマーにも、見覚えのある顔立ち。精巧な氷細工のような、美術品に類する美しさ。

 

「……まさか、生徒会長……!?」

「はい。私は虚依青女と申します。プリンセスとしては氷結姫『フリーザー』を務めさせていただいておりますわ」

 

スカートの裾を持ち上げながら頭を下げるフリーザー。驚いて何の言葉も出せないのかテイマーは固まり、ブレイヴァーは依然として警戒を緩めてなどいなかった。

 

「そう警戒せずとも大丈夫ですよ。私の目的は、プリンセスをひとめ見ることと、そのお方への忠告ですもの」

「忠告、だって?」

「……はい。世界の支配、勝利の果実に目が眩んだというのは構わないのです。ですが、その望みは他人の願いを踏みにじってでも叶えたいものか。自分の命を賭けるほどのものか。それを考えていただきたいのです」

 

元より望みを持って参加したわけでないブレイヴァーは、自分ではなくテイマーの顔を見た。フリーザーからも注ぐ視線に耐えられなかったのか彼女は下を向いてしまい、ブレイヴァーは元の警戒対象に注意を戻した。

 

「なにも、教えろとは言っておりません。考えてくださったうえでプリンセスとして戦うのならば、それでよいのです」

 

伝えることはすべて伝えたのだろう。ふたりに背を向け、18番セクターから去っていくフリーザー。学校で見る青女と同じく、背筋の伸びた上品な後ろ姿であった。

 

 

一方、別の場所。ユウキが流れ着いた19番セクターより北に行くとたどり着く、細長い『┏』という形をした15番セクターにて、少女――雪は、予想外の場面に出会していた。

 

「ったく、つくづく運の悪いことになりやがって……しかも二人かよ……!」

 

壁に身を隠して覗き見する雪の視線の先には、ドレスに身を包んだ少女がふたり。片やボロボロで、馬に引きずり回されたのをコンセプトとしたような服のプリンセス。片や緑を基調とし水玉というよりは木の中で輝く果実というべき模様がいくつか入った、手入れの行き届いた果樹園を思わせる衣装で如雨露を持ったプリンセス。

二者は互いに笑みを浮かべているが、ボロボロの彼女は焦りからくるもの、果樹園の彼女は淑やかで、まだまだ幼い妹を可愛がるときと同じものだ。

 

「申し訳ないんだけどさ、ちょっと諦めてくんないかなぁ。うち競争とか無理なのよ」

「それこそ無理なお願い、というもの。このセクターも、いとしいこの子たちの楽園となるのですから」

「はぁ、この子たちって誰だかわかんないけど……こうなれば実力行使、しかないじゃんさ。きっついわー」

「えぇ。あなたのような肥料と共同統治など、土に埋まったほうがマシですものね」

 

自分を卑下する言い種ながら闘争心を露にするものと、それをあくまでも淑やかさを保ったままに見下すもの。

一触即発、今雪が出ていけば巻き込まれて痛い目に遭うこと間違いなしだ。生憎、雪の変身する盗賊姫『ファインダー』には高威力の攻撃がない。ここは隠密に徹して、あの二人の戦力を見極めるべきだろう。

 

「言ってくれるじゃん?名前は?」

「――農園姫『プランター』。」

「なるほどなるほど、うちは死人姫『カダヴァー』。頼むから、生き残らせてほしいじゃんっ!」

 

カダヴァーがボロ布をはためかせながらプランターの方へ飛び込んでいく。自らの唇を舌で濡らし、目の前の敵に向けて気合いを入れ直しているらしい。

だが、その一瞬の隙。気合いを入れ直す行動が、プランターの反撃の瞬間だ。布の切れ目から見えていた脇腹へ向け、何やら太い蔦らしきものが大きな衝撃を与えた。

 

「ごはっ……!?」

「甘い。甘い果実を煮詰めに煮詰めてなお砂糖を加えたほど甘い」

 

カダヴァーの身体は雪の見ているほうに吹き飛ばされてくる。幸い彼女の注意はずっとプランターへ向いているため、見つかる心配はなさそうだ。

 

「ジャムに例えられるとか、どんだけじゃん……!?」

 

プランターの周囲で蠢く蔦を睨む。あいつはどこから伸びているのかちょうどプランターで隠れて見えないため、動きも読みづらい。本人を狙うには蔦が邪魔であり、素手では余程格闘技に熟練していなければならないだろう。二人を相手に対応できるほどの技を、カダヴァーは今持ち合わせていない。

意思の力による一時的なものとはいえ、実体は実体である。本来は行わなくてよい生命活動も行われるし、身体へのダメージがあれば痛みを感じるのだ。そのせいで、カダヴァーの脇腹にはかなりの激痛が走っていた。肋骨でもイカれたらしい。

 

「ちっ……これ、ハズレプリンセスじゃん……!」

 

カダヴァーは序盤に弱い自分の能力に怨み言を吐き捨てる。

そうこうしているうちにプランターの配下は、今度はこっちの番だと攻撃を仕掛けてくる。上方からの叩きつけを転がって回避して、次に備える。今度は横薙ぎに襲い来る相手に対してこの際仕方がないと左腕すべてで受け止めた。また骨がやられかけているらしい左の激痛に耐えつつもう片方で蔦を掴むと、ひとおもいにかぶりつき喰いちぎった。

手をつかず立ち上がって、喰いちぎった蔦の先をそこらへんに棄てる。打ち棄てられた植物は光へと消え去って、プランターは相手に称賛の拍手をおくった。

 

「まさかその子がやられてしまうとは。ではこうしましょう……『ファーストオーダー』っ!」

 

プランターは、持っていた如雨露からセクターの地面へ水をそそぐことによって姫の力の行使を宣言する。

水をそそがれたセクターの地からは、先程の蔦よりも強靭なる草花がいくつも現れたのである。思わず息を呑むカダヴァー。この草花へ呑み込まれることを覚悟した彼女であったが、次に見る光景は違うものだった。

 

「さぁ、土に根を張るのです――」

 

ぬるぬるとまるで蛸か何かの触手のように蠢くそれらは、プランターの身体へと伸びていく。袖からも、胸元からも、スカートからも、彼女の素肌に緑をすべらせていく。やがて幾本にも巻き付かれ、彼女の姿は辛うじて脚が見えるのみだ。

植物たちは次に、自らを支えていた基幹たる根を一気にセクターより引き抜く。それをどうするかと思えばプランターの素肌へ押し付けて、呑み込ませたのだ。

 

「農園姫って……姫自身が土壌ってこと……!?」

「えぇ。私こそは大地の恵みをもたらす者。単なる死者とは違うのです」

「いや、それはわかってるじゃん?でも、そいつは予想外じゃん……!」

 

新たに現れた数本の草花たちは、すっかり自らが栄養を吸い上げる鉢をプランター自身としてしまった。また、既に宿主を守るようにカダヴァーへと茎の先を向けている。

 

「行きなさい」

 

立ち尽くすカダヴァーへ向けて、農園すべてが牙を剥く。

 

雪は思わず視線を逸らすだけでなく、耳を塞いだ。それでもお構いなしに、背後からは水分を含んだ音と人体があり得ぬ方向へ曲げられているらしい音が聞こえてくる。

 

「……くそっ……なんなんだよ、あいつ……!」

 

 

しばらく固まっていた雪。それが功を奏したのか、いつのまにかプランターの気配も飛び散ったであろう血痕もなく、ただそこは木漏れ日のさすのどかな森となっていた。

木々の中には、子葉が二枚開いているデザインのエンブレムが見える。だが、雪はあんな相手に喧嘩を売る気にはなれず、15番セクターから南へと逃げるように移動していった。

 

 

フリーザーが去っていったあと、数分後。テイマーの元には白狼が帰還した。ブランに成果を尋ねているらしい彼女。聞いているところを見ると、あまり芳しい結果ではないようだが。

 

「……え?どういうこと?」

 

頭上に『?』を浮かべるテイマー。いったいなにがあったか聞こうと、彼女のほうへ一歩踏み出したとき。いきなり、あたりが暗くなった。

 

「え?」

「ユウキちゃん、上!」

 

咄嗟に跳んで回避する。先程までブレイヴァーがいた場所には、テイマーが喚んだあの猪ほどの大きさを誇る恐竜のような姿のレヴェルが降ってきていた。

 

「このセクターのヌシかなにか!?」

「まって、こいつ……死んでる」

 

よく見れば、あんぐりと開いたティラノサウルスには舌も足先も無い。尾の先から、消滅をはじめている。

 

「じゃあどうしてこんなとこに――」

「とーってもおいしそう」

「――降ってくる、の?」

 

ブレイヴァーが振り向くと、そこには見慣れぬ少女が立っていた。ギザギザの歯を

見せ、気味が悪い表情に、貴族の舞踏会で着られるような服の上から幼児がレストランで使う紙エプロンをしたプリンセス。

 

「だ、誰!?」

「けたけた……わたし、食人姫『イーター』っていうの。けたけた」

 

得体の知れないものと認識させる笑い声。まったく変わらぬ表情。舌ったらずな話し方と体躯を見るに年下であることは確かだが、この状況では可愛らしさは感じられない。つぶらな瞳は恐怖感を煽るのみだ。

 

「ここは、わたしの、らんちてーぶる、だよ。けたけた……おねえさんたちは、おりょうり?それとも、でっしゅ?それとも……ごはん?」

 

ぐぱぁ、とギザ歯が上下に開くと同時に、その様子を拡大して写したような口が空間に現れる。どうやら、ブレイヴァーとテイマーを食べ物と認識しているらしい。食べられるのは御免だと、真っ先に狙われたブレイヴァーはレヴェルの消え始めている死体を盾に回避を試みる。

 

ばくん。空間ごと口に削り取られたように、レヴェルの頭部から胸部にかけてが消え去った。あの範囲ならば人間ひとり程度一瞬で食べ尽くされてしまうだろう。食べる者、イーターと名乗るだけあると、ブレイヴァーは策を練ろうとテイマーのもとへ駆け寄る。ブランの姿がないのは、危険だと判断して姿を消させたのだろう。

 

「どうしよう、私のファーストオーダーじゃまるかじりにされちゃう……」

「……私のオーダーに賭けてみようか」

 

もきゅもきゅ咀嚼しているらしいイーター。おいしそうに食べる彼女の姿は、年相応に可愛らしい。脅威を見たあとでもそう思える容姿のようだが、あの笑みが台無しにしているのかもしれない。

 

「それって……大博打だよ!?」

「大丈夫、剣を信じてほしい」

 

黄金の剣の刀身には7個7色の宝石が嵌められており、希望を示している。不安な顔だった友人はそれを見せられ、しぶしぶ了承した。

 

ばくん、と。テイマーが頷いた直後に二度目の捕食が行われる。ついにレヴェルの後ろ半身も無くなって、イーターは再び至福の時間らしい。

 

万が一のため、身軽なブレイヴァーとあまりそうとは言えぬテイマーは距離をとる。そして、あの恐竜の肉を飲み下しているらしい少女に切っ先を向け、本を構えた。

 

「……ほへ?おねえさん、なにしてるの?」

 

高速でページが捲られていき、やがて淡く光を放つ。剣にも同様に溜められる力。きょとんとする少女へ、光の奔流が迸る――!

 

「――『ファーストオーダー』ッ!煌めけ、選定の剣!」

 

一閃。それはさながらすべてを焦がす現代兵器であり、剣に宿る魔法の力。ブレイヴァーのファーストオーダーはイーターを呑み込み、彼女に致命的な火傷を負わせる。

 

「やったか!?」

 

はず、だった。

 

「けたけた。ありがとう、おねえさん。ごちそう、うれしいな。」

 

なんと、イーターはあの大きな口を盾として、剣より放たれたビームをすべて呑み込んでしまったらしい。尋常ではない胃袋だ。

ブレイヴァーもテイマーも、次の反撃に対応できなければもうセクターを放棄するしかないと、覚悟を決めようとした。

 

「……おねえさん、やさしいね。わたし、おなかいっぱいになっちゃった。けたけた、またこんど、たべにくるね。」

 

このときばかりは、その不気味な笑みが安堵をもたらした。

ばいばい、とイーターは手を振って去っていく。いちおう手を振り返すと今度は両手になって、ぴょんぴょん跳ねながら帰っていった。

 

やがて姿が見えなくなると、ふたりは駆け寄ってハイタッチを交わす。

 

「信じてよかった!」

「でしょ?ささ、はやくエンブレム!」

 

ブレイヴァーに急かされて、壁に向かうテイマー。胸元に付いた狼の横顔のエンブレムのあたりに手をやると大きく転写され、ここは彼女の領土だと主張する。

それを満足して眺めていたブレイヴァーの背中を叩き、いっしょに戦うんだから、と同じくエンブレムの転写を求める。仕方なしにブレイヴァーもエンブレムを隣に刻むと、数歩下がって並んだ紋章を見た。

 

「……第一歩、だね!」

「うん。まずは一つ、拠点にね!」

 

かくして、18番セクターにはふたりの姫が君臨することとなる。並んだエンブレムは、仲良く白い風景でその存在を主張している。

 

向かい合って笑うふたりは気づいていないが、このときセクターボードには『すべてのセクターに支配者が誕生した』という旨の通知が届いているのだった。

 

 

 

 

【次回予告】

はじめてのセクターを手に入れたユウキといるか。

今度は、現実で事件が起こる。

次なるプリンセスは保健室の天使、回復姫『ヒーラー』で……?

 

次回『迷える反逆者を追え!』


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