VividStrikeScarlet!   作:tubaki7

6 / 43
という訳でルーテシアifストーリーですどうぞ


♯ SPECIAL

 カーテンの隙間から入り込む太陽の光。外では鳥の声が聴こえる。朝だという事を体が感じれば意識がゆっくりと浮上し、覚醒へと至る。それでもなかなか起き上がれないのは異様な気怠さと、僅かに感じる幸福感からだろうか。しかしそれでも朝は朝だ、やることは沢山ある。まず朝食を用意しなければと躰を起こせば、普段感じることのない違和感に気が付く。

 

「・・・重い」

 

 そう呟いて自身の胸元に視線を向ければ、見覚えのない膨らみで下がほぼ視えなくなっていた。いや、どういうことよコレ。

 

「・・・なんじゃこりゃ」

 

 そんな女の子らしくない言葉を口にしてしまうのも、ひとえに彼のせいだなと自己解決した後に改めて触る。うん、中々の大きさ。そして何より柔らかい。

 

「いやそうじゃなくてっ!」

 

 慌ててベッドから出る。乱れた寝間着姿のまま自室の扉を開けてすぐさま廊下へ。途中、バランスを崩して転びそうになるも持ち前の身体能力でそれを回避し階段を駆け下りる。

 

「お母さん!」

 

 リビングにいるであろう母を呼べば、キッチンから顔を出す。

 

「どうしたのルーテシア?」

「えっと、その、なんて言うかこう、よくありがちな何かしらに巻き込まれたような・・・」

 

 この子は朝からどうしたんだ。そんな怪訝そうな顔で首を傾げる母だが、それもすぐに笑顔――――いや、これは笑顔ではない。どちらかと言えばニヤニヤと表現した方がいいだろうか。兎に角そんなイヤな笑みを見せ「あらあらうふふ」と口元に手を添えて笑う。どうしてだろう。たった一人の母親なのに猛烈に殴りたい。ワナワナと震える拳を必死に抑えつつも、そんな力のこもった左拳を見てハッとなる。

 

 薬指に光るリング。そうだ、私結婚したんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ってことがあったのよ」

「せっかちだなぁ。そういうとこ、昔と全然変わらないな」

 

 今朝起きた出来事の一部始終を話すと苦笑いで返される。かなり焦ったんだからとさらに食い下がれば「はいはい」と軽くあしらわれて相手にされない。むぅ、どうしたものかと考えていると不意に彼が何かを差し出してきた。

 

「ここんとこ色々忙しかったからな。これ飲んでちょっと落ち着けって」

 

 そう言って差し出されたのは栄養ドリンクの入った瓶。まだ未開封で少しひんやりとしている。アルミ製の蓋を開ければ、あの何とも言えないどこかいい匂いが嗅覚を刺激しその中身を体内に流し込む。

 

「旅館の経営指導に施設管理、従業員の確保・・・・ホント、スゲーよ」

「貴方と一緒になるって決めた時からずっと視野には入ってたしそれほどでもなかったわよ。それに、ちょっと楽しかったし」

 

 特にアスレチックの増設とか、と付け加えればまた苦笑い。また増やしたのかと言われれば「だってみんなすぐ壊すんだもん」と少しふくれっ面になる。全力で動いてくれるのは凄く嬉しいしやってるこっちも楽しいのだが、いかんせん時間の経過とともにタガが外れだすから困ったものだ。

 

 

 テラスの柵にもたれかかりながら、今日から3泊2日の予定で貸し切りの予約が入っている団体を待つ。そして、それはすぐにやってきた。

 

 

「ルールー!」

 

 明るい弾んだ声にかつての幼さを残しながらも、遠目に見てもはっきりとわかるその成長した姿はルーテシアにとっては親友といっても過言ではない少女の姿だ。二人の母と同じ髪色、髪型で先頭切って走ってくる。

 

「ヴィヴィオ、いらっしゃい。また背伸びた?」

「えへへ、わかる?」

 

 ハイタッチしてそんな会話をする二人。ヴィヴィオから遅れる事数秒でルーテシアも見知った、所謂「いつもの」メンバーが顔をそろえる。

 

「お邪魔します、ルーちゃん」

「はい、なのはさん。結婚式以来ですね」

「そうだね。あの時のドレス、綺麗だったなー・・・私もあんなドレス着たい!ね、ね、ちょっとだけ旦那さん貸してくれないかな?」

「フェイトさん」

「うん、えっと、ゴメンルーテシア。予想以上に毒されてるからもう突っ込むことでしかなのはを止められないよ・・・」

 

 更生は任せた筈ですが、と目を向けるもその返事は聞いての通りでもはや手遅れとなっていた。どこまで他人にボケを感染させるんだと溜息をつきつつ、先ほどのなのはの発言。割とガチで言ってるから始末に負えない。

 

 

  まあ、そんなことは意地でもさせないけどね。

 

 

「ルーさん、お世話になります」

「今年から私も参加させてもらいますね」

 

 次いで挨拶に顔を見せるフーカとリンネ。今や魔法戦技の界隈ではツートップの実力を兼ね備えている二人がこうして顔をそろえるのは極めて珍しいことだ。普段は試合やトレーニングに明け暮れている為、オフの日程を合わせるとかなり難しいのだが、そこは両ジムの会長が少し頑張ってくれたおかげと言えるだろう。その他にも名だたるアスリートや局員もそろい踏みで。戦力だけでみたらいったいどこの世界と次元戦争する気だと言われても否定はできないほど強者ぞろいだ。

 

「ようこそ、いらっしゃいました」

 

 そんな中、肩から羽織りをかけて降りてくる赤髪の男。一際目を引くその姿はまさに”王者”の風格すら伺える。このホテル・アルピーノの総支配人にして、ルーテシア・アルピーノの夫。

 

「このアスカ・スカーレット。皆さんのご到着を心よりお待ちしておりました」

 

 これは、いつかある未来の、ほんの一筋の道をたどった場合の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょ、っと」

 

 案内された部屋に荷物を置き一息つくエリオ。背丈も大きくなり、声変わりもしたことによりかつての幼さはもうどこにもない。少し長くなった髪を後ろで縛り、鍛え上げられた肉体は無駄のない筋肉によって綺麗なシルエットを見せる。所謂、イケメンというやつだ。

 

「イケメン死すべし慈悲はない」

「相変わらず酷い言いぐさだね・・・というか、いい加減普通に入ってこれないの?」

「だってイケメン嫌いなんだもん」

「なんだよそれ・・・」

 

 理不尽だ、そんなことを言いたげに溜息をつく。

 

「いやー、慣れないことするもんじゃないし言うもんじゃないな。肩が凝っていけねぇ」

「発言がお年寄りだよ。でも案外サマになってるとおもうよ?その恰好」

「よせやい、くすぐったい」

 

 二つあるうち、手前のベッドに腰掛けてくつろぐアスカ。エリオはその向かいに腰を下ろす。

 

「いつ以来だっけ、こうして話すの」

「多分フッケバインの一件があった時以来じゃないか?ほら、トーマのことで色々あった時」

「あの時は大変だったねお互い。そういえばトーマは?」

「リィちゃんと一緒の部屋。年頃の男女を一緒にしておくとオモシロイことが起こるからな」

「うわ、最低」

「言ってろ。こういうちょっとしたハプニングがあった方が旅も面白いだろ」

「旅って言うほどの事じゃないんだけどな・・・」

「そういうお前はどーなんだよ。キャロと式挙げたのか?」

「お互いバタついててそれどころじゃなかったから・・・あ、でもいい場所があったからそこでしようかなって話してるんだ。記念日は一緒に祝えそうだよ」

「それ聞いて安心した。ルーも喜ぶ」

 

 男同士、のんびりとした空気の中会話する。いつもは女性に囲まれ息のつまる思いで日々過ごす二人だが、こういう時は本当に貴重な時間だと息をつく。しばらくすれば、そこにトーマ・アヴェニールが合流し三人でアスレチックのある方へと向かう。三人とも訓練着に着替え、ここからは支配人から一人のアスリートへと変わる。

 

「しっかしまたスゴイの作りましたね、ルーテシアさん」

「うん。なんか来るたびにグレードが上がってるような」

「もはや狂気の沙汰とも言えるけどな。ま、それはそれとしてだ」

「先輩!」

 

 こちらを見つけたリオが手を振る。そこで二人と別れ、アスカはアスリート組と合流する。

 

「さて、俺はもう格闘技から身を退いて少し経つが・・・務まるのかね、これ」

「大丈夫ですよ」

「そうそう」

「腐っても公式戦無敗のチャンピオン。これほど相応しい相手がおるか」

 

 コロナ、リンネ、そしてフーカの順で言う。いささか体が訛ってるかもしれないがとさらに付け加えれば「嘘ばっかり」とボソッと呟くルーテシアの声。

 

「ルーテシアさんから聞いてますよ。先輩、毎日トレーニングは欠かしてないそうですね」

「うっ、ハルちゃんそんなことまでお見通しとはね・・・いやー、はは。こりゃバテた時の言い訳を完全に潰されてるなこれは」

「そういうこと。さ、もう諦めて私達の相手してもらうよ兄さん」

「仕方ないね・・・・なら、倒れないよう踏ん張らなきゃな」

 

 そうして、特別トレーニングは幕を開けた。形式は一人一人入れ替わりで行われる試合形式。一定のフィールド内で魔法使用可のインターミドルとさして変わらない裁定で1ラウンド30分間。ダウンした場合はその場で脱落となるいわば耐久戦となっている。アスカ一人に対しヴィヴィオ達はルーテシアも含めた合計8人の入れ替わり。体力は勿論のこと、相手をいかにして早くKOさせるかも絡んでくる。それを全員が音をあげるまでやるのだからかなりの練習量だろう。特務六課組はさらにキツい内容になっているかもしれないが、それに触れるとなのは辺りからOSASOIが来るので考えないようにする。

 

「さて、一番最初は誰だ?」

「はいっ。高町ヴィヴィオ、行きます!」

「初戦でヴィヴィちゃんか・・・さて、お手並み拝見」

 

 直後、開始のゴングが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間というのは、長くもあり短くもあり。楽しいひと時というのは、尚の事短く感じてしまうもので。あっという間に陽も傾き夜となった。

 

「お疲れ」

「ん・・・おう、お疲れ」

 

 差し出されたビールを開けて一口。疲れた体にアルコールがしみわたる感覚がたまらないとは、アスカの談だ。ルーテシアと二人、夜風にあたりながら月を見上げる。

 

「そういえば、お前にプロポーズまがいの告白したのもこんな夜だったっけ」

「そうね。あの時はホントびっくりしたわ」

「我ながら結構緊張してたのすっごい覚えてる。口から心臓が飛び出しそうってのはまさにあのことだな」

「アンタが緊張って想像つかないわ」

「お、昔の呼び方に変わった」

「こーいう時くらいいいでしょ?・・・ヴィヴィオ達がいる時、我慢してたんだもん」

 

 そう言って肩を寄せてもたれかかる。生暖かい風が、ルーテシアの髪を揺らした。

 

「・・・ね、アスカ」

「ん?」

「キス、しない?」

「ブフォ!?」

 

 急な申し出に口に含んだ液体を派手にぶちまけるアスカ。いきなりの事に驚きを隠せないでいると、此方を見上げる赤い瞳と出逢う。潤んだ瞳に温泉あがりで蒸気した紅の頬。艶やかな髪色も相まって、いつもより一際大人っぽく、色っぽく映る彼女の姿に生唾を呑み込むアスカ。かくいうルーテシアも心臓の音がはっきりと聞こえそうなほど高鳴っていた。普段の自分からは想像もできないほど大胆な行動に驚くとともに、今度からこういうことをするときは多少お酒の力も借りようかと頭の隅で考えつつ、二人はごく自然な流れで目を閉じる。そして、二つの影はやがて一つに――――ならなかった。なにやら感じる固い感触。いったいなんだコレはと目をひらけばそこには視界一杯の銀。

 

「何をしてるのかな二人とも」

「私達のいない間に盛り上がるのはちょーっといただけないなぁ」

 

 ビールの缶でキスを阻止するヴィヴィオとリンネの二人。何やら笑っているのに顔が笑っていないのはどうしてだろうか。

 

「笑顔って、本来威嚇する時のものだったらしいよヴィヴィちゃん」

「そうなんですか。で、ルールーは?」

「・・・あたし達、自分で言うのもなんだけど夫婦なんだけど」

「それとこれとは話が別ですよ」

 

 そこにアインハルトも加わる。一触即発。そんな空気が流れたと思ったら、リオの一声でゲームをして決着をつけることに。以前と変わらないノリと勢いでその場を後にするメンバーにアスカは一人小さく溜息をついて月を見上げる。

 

「アスカ!」

「ん?」

「・・・んっ」

 

 名前を呼ばれて振り返れば強引に、そして大胆にも口を塞がれてしまう。

 

「あっ、ルールー抜け駆けッ!」

「フン、これが正妻の実力ってやつよ。さ、決着つけましょうヴィヴィオ」

「グヌヌ、負けないから!」

 

 去り際、いたずらっぽくウィンクするルーテシアにあっけにとられながらも一瞬ではあるが重なった唇を撫でるアスカ。

 

「・・・女の子って、やっぱスゲー」

 

 そんな独り言をつぶやいた。




 ~その後、ルーテシア~

ルーテシア「うーん・・・あさ・・・あれ?さっきまであたしヴィヴィオ達とゲームを・・・」
はやて「ルーちゃん」
ルーテシア「はやてさん?というか、なんでドンキとかでよくある動物パジャマ的なもの着てるんですか」
はやて「実はな。これ、夢落ちなんよ」
ルーテシア「・・・・」
はやて「夢ww落wwちwwなwwんwwよww」

 その後、めっちゃ白天凰したはやてであった

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。