※この京子は天然ではありません。   作:ジュースのストロー

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日常を過ごしました。

 

 

 

突然だが、私は一般女性よりも遥かに運動量が多い。それは将来的に命の危険があるから自己防衛で鍛えているという理由もあるのだが、それよりも多分にこちらの比重が大きい事だろう。

 

「おはよう京子! 極限、走りに行くぞー!!」

 

「こんばんは、お兄ちゃん…………まだ夜も明けてないよ。」

 

早朝?から兄の声と言う目覚ましで叩き起こされた私は、急いでスポーツウェアに着替えると明け方の並盛町を兄と2人で走り出した。

まだだれも起きている人はいない、しんとしたこの時間が私は好きだったりする。……兄はたまに煩いが。

 

「極限、誰かとスポーツをすると言うのは良いものだな!!」

 

「そう言えば、こうして走るのも久し振りだね。」

 

少し前に盛大に倒れてから、家族が心配するわ心配するわ。お陰でこうした朝のジョギングや鍛練も最近は疎遠になっていたのである。朝にジョギングに誘ってくれた兄も、自分が誰かと走りたかったと言うのもあるだろうが、妹を心配する気持ちが含まれている事ぐらいは長い付き合いから分かる。

そんなほっこりとした気持ちになりながら始まったジョギングは、久し振りだったのもあり息がいつもよりも乱れたが、気分はとても爽快だった。ジョギングは始めは苦しいが、そこからこの所謂ランナーズハイの状態に持って行くのが楽しいのである。これは他の運動にも言えて、筋トレも、泳ぎも、素振りも、体を酷使し続けると到達する次のステップがある。決してドMな訳ではないが、これが楽しくて私はめげずに辛い鍛練をこなす事が出来るのだ。

いやいや嘘じゃないって。いつでも極限に全力な兄と1週間共に運動してみれば、誰でもそうなるから。それを10年以上続けて来たのだから、新しい扉の1つや2つ開けないとやってられない。

 

「極限! 次はパンチ5000回だ!! 腰をしっかり入れろ!!」

 

「押忍!」

 

「極限! 全力100mを100本だ!! 少しでも手を抜いたらやり直しだぞ!!」

 

「押忍!」

 

「極限! 階段をうさぎ飛びで100往復だ! 下りは足を踏み外さずに上りの1/3以下の速度で!!」

 

「お、押忍!」

 

「極限! 俺の拳を避けて見ろ!! 耐久1時間だ!」

 

「っ押忍!」

 

「極限!反復横飛びしながらナイフを振れ! これは1000……いや、10000往復で!!」

 

「お……す!」

 

これが延々と繰り返されて私の朝は終わる。朝ご飯の時間になると、兄が鍛練を切り上げるのだが、この時の私の疲労度合いは箱根駅伝のマラソン選手もビックリな度合いだ。

毎日毎日、行う鍛練が少しずつ違うのは純粋に面白いので良いのだが、たまにヌンチャクや手裏剣やククリナイフ等の変わり種武器の鍛練や、水中での呼吸停止耐久訓練や電車に紐で体を括りつけて走る高速長距離走等の殺人的訓練があるのはおかしいと思う。

でも何よりおかしいのは、それを全力でやる事によりこなしてしまう兄と、絶対無理だろうと死ぬ気でやって気が付けばこなしていた私である。

あれ……私ってばいつの間に人間を超えていたんだろうか…………いや、人間の死ぬ気ってそれだけ凄いと言う事だろう、きっと。だって原作でも沢田綱吉が車に惹かれてピンピンしてた上に軽く30m位飛び上がってたから間違いない。死ぬ気すごぉい。

朝起きて、鍛練して、ご飯を食べて、シャワーを浴びて、準備して、学校行って、帰って、宿題して、ご飯食べて、お風呂入って、勉強して、寝て…………嘘だろう。思い返せば、これが女子中学生のライフスタイルにはとても思えなくなって来た。しかも兄の場合はこの宿題と勉強の部分が丸々鍛練と部活に変わるだけと言うブラック企業もビックリの過密スケジュールだ。

いや、でも花とたまに買い物に出掛けるし、ランボと遊んだりもするし……よし、大丈夫。寂しくない。寂しい女子中学生なんかじゃないったらない。

 

「そうだ京子!」

 

「……どうしたの? お兄ちゃん。」

 

隣の席で全力で朝ご飯をかき込んでいた兄からの言葉に耳を傾ける。

 

「この間、たまたま雲雀と鍛練の話をしてな。毎朝妹としていると俺が言ったら、お前とも手合わせをしたいと言っていたぞ。」

 

「え……嘘だよね、お兄ちゃん。」

 

「? エイプリルフールはとっくに終わったぞ??」

 

私は並盛中では目立たない様にお淑やかにして来たのに……体育の時も力をセーブしてリボーンに目を付けられない様にして来たのに…………

 

「っ馬鹿!!」

 

────ヒュン

 

この時、たまたま手に持っていたのが箸だったのが悪かったんだろうか。それとも日々の鍛練の中で針による点穴を突く攻撃を習得していたのが悪かったんだろうか。いや、対人戦闘にて目潰しの有用性を学んでいたのも大きいかもしれない。

怒りで我を失った私は兄の心臓を止める点穴と目にそれぞれの手で持った箸を反射的に突き刺そうとして────

 

「極限何をする、箸で遊ぶのは良くないぞ。」

 

それぞれを兄に指で弾かれて、箸はクルクルと宙を舞い、やがて兄の手に収まった。

 

「ごめんなさい、お兄ちゃん。」

 

「極限、分かれば良し。」

 

「あらあら、やっぱり仲が良いわねぇ〜。」

 

「ふふふ、僕達も負けてられないねぇ。」

 

「あらもう真さんったら!」

 

4人家族の暖かな食事風景……おかしいな、ずっと私はツッコミ要員だと思っていたのに…………

私の常識は、いつの間にかこの天然達に侵されてしまったのだろうか…………

 

 

 

 


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