※この京子は天然ではありません。   作:ジュースのストロー

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子供を拾いました。

 

 

 

 

「ガハハハハ! 京子、ランボさんの手下になるんだもんね!!」

 

「いや、ならないから……」

 

駄目だ。最近の私は何かに取り憑かれてしまっているのかもしれない。どうしてここまで厄が付いてまわるんだろうか。

掃除当番でゴミを捨てに行く時に、現在私に抱っこされた状態で寛いでいるランボに会った時点でもう、詰んでいたのかもしれない。何となくその後の展開が読めてしまい、でも絶対に関わらないと心に決めた私を無視して、無情にも事は起こった。

ごみ捨て場と言う人が寄り付かない場所、コンクリートの地面にてランボが盛大に転んだ。それはもう、盛大に転んで両膝は思いっきり服が破けて出血していた。地面に付いた両手もきっと擦り切れて痛いだろうと言う予測通りにわんわんと泣き始めたランボをどうしてほっとけるだろうか。近くに人がいないと言う事は、この泣きわめく子供を助けてやれるのは自分しかいないのだ。脳裏に乱立するフラグを無視して、なんとかランボをあやし、泣き止まらせた私には人として、子供を見捨てるなんて事が出来る筈もなかった。

傷口を水道で洗って保健室に丁度先生がいなかったので勝手に治療をして、傷に染みるだろうに泣くのを我慢をしていたランボはこの年の割に偉いとつい褒めたら、驚く程に懐いた。

何故だ、ぶどう飴もあげてないのに…………こんなに純粋で、お姉さんはランボが誘拐されやしないか心配です。

そうして私に引っ付いているランボをどうにかしようとしているのだが、どうにも離れない。いや、無理やり引っ張れば恐らく、体格差的になんとかなるのだ。だが相手はヒットマンとは言え5歳児の幼子である。流石に無理やり引き剥がすのは気が引ける。

 

「ねぇランボ、ランボはどうして学校に来たの?」

 

「うん? ランボさんはね、リボーンをぶっ殺しに来たんだもんね!!」

 

よし、リボーンに擦り付けよう。即座に私は方針を決定した。

 

「へぇ、そうなんだー……そのリボーンの所に行かなくて良いの?」

 

「はっ! そう言えば、さっきまでリボーンを探してたんだった!!」

 

よしよし、このまま行けば何とかなるだろう。そう思って抱っこしていた手を緩めてランボを下に降ろそうとするが、何故かまだ服を掴んで来るランボ。

 

「? 探しに行かないの??」

 

「ランボさんは歩くの疲れたから、京子もリボーンを探すの手伝うんだもんね!!」

 

「えー……それはちょっと…………」

 

「リボーン! すぐに俺っちが倒してやるからなぁー!!」

 

「だからやだって………」

 

「ガハハハハ!!」

 

「…………はぁ。」

 

本当にどうしてこうも私の周りの人達は、人の話を聞いてくれないんだろうか。いや、私の周りじゃなくて沢田綱吉の周りかもしれないが…………漫画の沢田綱吉も話を全く聞かない周りに振り回されていたなと思い出して妙な親近感を覚えた。

深い溜息はランボの大きな笑い声にかき消されて誰の耳にも聞こえなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……。」

 

「……。」

 

気まずい、気まず過ぎる。確かに広い校舎の中、リボーンを見つけるのは大変だろう。そしてリボーンがいそうな場所というのは沢田綱吉の周辺である訳で、従ってこうやって偶然出会ってしまう事は仕方がなかったと言える。

 

「あー!ツナだもんね!!」

 

ランボの空気を読まない発言が、そのときだけは有難かった。

 

「あー、ごめんね笹川さん。その子、今家で預かってる子なんだ。迷子になって探してたから引き取るよ。お守りさせちゃってごめんね、ありがとう。」

 

「いや……子供は嫌いじゃないし大丈夫だよ。さ、ランボ。お家の人の所に行こう。」

 

前回あんな事を言ってしまったせいもあり、どこかぎこちない空気を振り払うためにランボをさっさと引き渡す事にする。

ランボに優しく声を掛けてそう促すも、何故か私の服を掴んでいた手は余計強くなった。

 

「ランボさんはまだ京子と遊ぶんだもんね!! や〜いバカツナ〜〜! ぐぴゃぴゃぴゃぴゃぴゃ!!」

 

私に抱っこされたまま奇妙な笑い声で沢田綱吉を罵倒するランボに頭が痛くなる。本当にどうしてこんな事に……

 

「おいっ、アホ牛! てめぇ10代目の悪口言うな!! さっさとこっち来い!!」

 

「えっ……」

 

沢田綱吉の隣で事の成り行きを見守っていた獄寺隼人は、ズカズカとこっちに近付くと、無理やり私からランボを引き剥がそうとしだした。

 

「やーだーー! 一緒、いるーーー!!」

 

「ちょっ、獄寺君?!」

 

これは拙い…………そんなに適当にランボを扱ったら……

 

「う、うわぁあああああああん!!」

 

「うぉっ?!」

 

ダムの水が決壊した様に、突如泣き出してしまったランボに獄寺隼人も焦った声を出す。

私はあまりにも子供の扱いがなっていない獄寺隼人に冷たい目を向けた後、ランボの背中を優しくトントンと叩いた。

 

「ごめんね、怖かったよね。この後2人でお出掛けしよっか。お姉さん、ぶどう飴買ってあげるよ。」

 

子供の教育的に何でも物を買い与えて済ますのは良くないが、今回は完全に獄寺隼人が悪いので仕方ないだろう。

 

「うぅ……本当? ……ぐすっ…」

 

「本当、本当。お家の人に許可貰ったら一緒に買いに行こうね。」

 

「うん! ランボさん京子とデートするもんね!!」

 

デートなのかそれ……。たかが5歳児でもイタリア男と言う事なのか、ませた事を言うランボは置いておいて、保護者に許可を貰わないといけない。

 

「そう言う訳で、もう少しだけランボを預かってても大丈夫かな?」

 

「っ……うん、大丈夫だよ。こちらこそ、ランボを宜しくお願いします。」

 

私に向かって優しく笑いかけた筈の沢田綱吉の顔は、何処かぎこちなく感じられた。まぁ、なるべく関わらないでと言った女相手だし、仕方ないだろう。

 

「そうだ、獄寺君に話があるんだけど……」

 

「なっ、何だよっ!」

 

毛を逆立てた猫の様に警戒した獄寺隼人に、何とも言えない気待ちになる。私はそこまでの事をしただろうか、いや、したのか……?

 

「全然子供の扱いがなってない。怒鳴りつけても子供は何が悪いのか分からないよ。ちゃんと言葉で伝えればランボは理解出来る賢い子だから、我慢して接してやって。」

 

「……何でお前に命令されなきゃなんねぇんだよ。」

 

私の言葉に反論は出来ないのか、眉に皺を寄せて獄寺隼人が睨んで来たが、別に怖くはない。

 

「命令じゃなくて説教だよ、どちらかと言えば。沢田君の右腕を自称してるなら、もう少し周りに目を向けたら? 獄寺君が周りを怒鳴りつけて1番迷惑してるのは君の大切なご主人様だと思うよ。」

 

「なっ、にを言って……」

 

「右腕である獄寺君がそんな調子なら、沢田君の器もたかが知れてるって思われるよ。自分が周りに与える影響を少しは考えて。」

 

話はここまでとランボを抱えたまま、私はその場を去った。いつもは騒がしいランボも何故か静かに私に抱えられていて、廊下には私の足音だけが響いていた。

 

 

 


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