※この京子は天然ではありません。   作:ジュースのストロー

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傷が痛みました。

 

 

 

 

「京子、あんたもう体大丈夫なの? 」

 

「あーうん、もうすっかり良くなったよ。心配してくれてありがとう。」

 

病院通いから開けて翌日、何とか風紀委員の二人に私の正常さを証明出来た私は、やっと学校へと来ていた。

 

「それにしても今の時期にインフルエンザなんて、あんたもツイてないわね。」

 

「あはは……丁度日曜に出掛けたから、その時に貰ったのかもね。」

 

一昨日に学校を早退したのは、インフルエンザによるものと学校に伝えてある。出席日数も減らず出席停止扱いになるため有難い措置ではあったが、心配をかけまいと雲雀先輩とのバトル云々を伏せていた花に心配を掛けさせてしまっていたので、少しだけ申し訳なく思った。

教室の扉が開き、聞き慣れた騒がしい声が聞こえて来て肩が跳ねた。

 

「? どうしたの、京子?」

 

「いや、何でもないよ。」

 

そう言いつつも視線は騒がしい集団に向けられる。沢田綱吉を中心として、右側に獄寺隼人、左側に山本君が陣取って楽しそうに喋っていた。

じっと見ていたからだろうか、ふと沢田綱吉と目が合ってしまった。慌てて逸らす訳にもいかず、取り敢えずと朝の挨拶をすればあちらも同様に返してくれる。しかしその後をどうすれば良いのか分からず、思わず黙ってしまっていると、意外な事にあちらから話を振ってくれた。

 

「日曜日、大丈夫だった?」

 

「あ…うん。大丈夫? だったよ。」

 

あの大学生達には何もされなかったが、雲雀先輩にはコテンパンにされた私が大丈夫と言えるのか甚だ疑問だが、こうして今は健康な体でいられるのだし…………まぁ、大丈夫だろう。

 

「ごめんね、急にいなくなっちゃってさ…………雲雀先輩が来たから心配ないとは思ったんだけど。」

 

「うん、雲雀先輩がトンファーでボコボコにしてたから全く問題はなかったよ。」

 

「そっか……」

 

少し傷付いた様にそう呟く沢田綱吉を見て、返答を間違えてしまったと悔やむ。気にしなくて良いと伝えたかっただけなのに、先程の言い方ではまるで沢田綱吉が私を助けてくれても、助けてくれなくてもどちらも変わらないみたいではないか。

私は彼と関わりたくはないし恐怖してるが、別に彼が嫌いでも傷付けたい訳でもない。彼の善性はよく知っているために、彼をどうしても傷付けてしまう事に対して罪悪感を感じる位の良心が私にはあった。

 

「その、あの時助けてくれてありがとう。本当に、助かったよ。」

 

感謝の気持ちが少しでも多く伝われば良いなと、精一杯の思いを込めて伝えた言葉は、安易だけどそれだけに彼の心に響いたらしかった。

 

「うん、本当に無事で良かったよ。」

 

柔らかい笑みで、そう私を気にかけてくれる沢田綱吉を見て、きゅうっと心が締め付けられた。

 

「何だか分からないけど、良かったのな!ツナ!!」

 

「まっ、沢田さんはお優しいからな。」

 

少し離れた位置で私達のやり取りを見守っていたらしい彼らが、そんな声を掛けながら沢田綱吉の肩を叩くのを見て、私は眩しさに目を細めた。あぁ綺麗だな…………私は汚くて醜いな…………。

酷く優しくて綺麗な彼らに対して拒絶をしている私が嫌いで、でも生きるためにそうするべきだと唱える自分がいて…………罪悪感で痛む胸が無くなってしまえば良いのにと、そう思った。

 

 

 

 

 

 


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