※この京子は天然ではありません。   作:ジュースのストロー

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自分で間違いに気付き修正しましたが、中身は殆ど変わりませんのであしからず。



葛藤編
おかしな事になりました。


 

 

「んぅーーー…………」

 

ピピピッと音を鳴らしていたアラームを止めて伸びをする。

お布団が暖かい…………気持ち良い、眠い。まだ寝ていたいけど、今日は確か月曜日だから学校に行かないと…………。嫌だな、昨日の闘いのせいで絶対に私の体痛いよ。今だってこんなに────

 

「……痛く、ない?」

 

ガバリと布団から起き上がり、パジャマを捲る。昨日まで青あざがあったお腹は綺麗な肌色に治っていた。

 

「あ、あれれ? あれ?」

 

パジャマを全て脱いで下着一枚になって鏡の前に立っても、私の体には傷跡一つ見つけられなかった。

 

「え、えぇーーーっ?!」

 

おかしい、おかし過ぎる。昨日の時点ではお風呂に入る時も傷に染みて、腕なんてパンパンに腫れていたのに…………。一体、私の体に何があったんだ??

 

「京子、極限朝から煩いぞ。何を騒いでいるんだ。」

 

私の部屋の扉を開けて、堂々と入って来たお兄ちゃんに、慌てて体を隠す。

 

「お兄ちゃん、ノックしてから入って!」

 

「今更何を恥ずかしがってるんだ。昨日だって腕が動かないと言ったお前にパジャマを着せたのは俺じゃないか。」

 

「う、煩い! 昨日は怪我してたからしょうがないの!! とにかく、出てって! 」

 

パジャマで前を隠しながらもお兄ちゃんの背中を押して、無理やり部屋から押し出す。

お兄ちゃんは妹の事を何だと思ってるんだ。 私だって、中学に入って胸がそこそこ大きくなっているんだ。兄妹だからと言って、羞恥心がない訳ではないんだぞ。

急いで制服に着替えながらも内心ポコポコと怒りが止まらない。こう言う時に限って掛け間違えるボタンに酷くイライラした。

 

コンコン──

 

「京子、その、さっきはすまなかったな。兄妹とは言え、見られたくない部分もあるよな。」

 

そう言いながら、再び部屋に入って来たお兄ちゃんに溜息が出る。

 

「お兄ちゃんノック…………はしたけど、まだ入室の許可を出してないんだけど。」

 

「むぅ……すまん。」

 

ブラウスのボタンの一番上を留める。制服は着崩さずにきっちと着るのが私のスタイルだ。

 

「別に服着たから良いけど…………今度から気を付けてね。」

 

「極限、承知した!」

 

このやり取り、かれこれ十数回はしている気がするのだが…………毎度返事だけは良いのが何とも言えない。

 

「あっ! そうだ、お兄ちゃん!!」

 

「うん? 何だ??」

 

私はブラウスから覗く腕をお兄ちゃんに見せる。

 

「これ何だけど…………」

 

「うんうん、綺麗に治って良かったな。」

 

「いや、おかしいでしょ!?」

 

思わず治った手で突っ込みを入れてしまったが、お兄ちゃんは何も変に思わないんだろうか…………怪我が一日で治るなんてギャグ漫画でもなければ有り得ない──────いや、そもそもここがギャグ漫画なのか?

 

「そうか? 俺も怪我はすぐ治るぞ。以前セパタクローで脚を骨折した時は半日でくっ付いたな。」

 

「えっ、えぇーーーー…………そ、そうなの?」

 

骨折が半日で…………そんなノリで本当に怪我が治るのか??

 

「……ってそんな訳あるか!!」

 

今まで生きて来て、私は普通に怪我をしたし、普通に治るまでにある程度の時間がかかっていた。転んだら一週間は痛いままだし、冬場のささくれも中々治らない。お兄ちゃんは…………そう言えば確かに怪我をしても次の日にはピンピンしていた様な…………。

おもむろに立ち上がった私は、机の引き出しからカッターを出すと指の先を少しだけ傷付けた。

 

「きょ、京子? 極限、何をしている?! 」

 

突然、自傷行為を始めた私に動揺しているお兄ちゃんを尻目に、私はカッターを机に置くとお兄ちゃんの手を握った。

 

「お兄ちゃん……もう少しこのままでいて…………。」

 

「京子? ……何をして……」

 

変化が現れたのは少し経ってからだった。指先の傷が少しずつ塞がっていって、気が付けば傷なんて何処にもない綺麗な指へと戻っていた。

 

「な、治った…………!」

 

「?? 指の傷位ならすぐに治るだろう? だが、自分自身で傷を付けるのは感心しないぞ。京子も女の子なのだがら、もっと自分を大切にしろ。」

 

「お母さんか………………いや、ごめん。お兄ちゃんの言う通りだね。」

 

思わず口に出た言葉はお兄ちゃんに聞かれていなかった様で良かったが、お兄ちゃんが真面目な顔で私を叱ってきたので、しっかりと謝罪をした。

 

「極限、分かれば良し。京子が何がしたかったのか分からないが、今度から何かあったらまず俺に言え。兄として出来る事なら何でもしてやる。」

 

「お兄ちゃん…………うん、ありがとう。」

 

照れ臭かったのか、頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜて来るお兄ちゃんに笑みが零れる。私はそんなお兄ちゃんが大好きだ。

 

「お兄ちゃん……………………じゃあちょっとだけ指貸して?」

 

「京子?! な、何を…………」

机の上にあったカッターを再び手に持ち、私は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉー…………私よりも治りが早い。」

 

「京子……お前まさか、そっち系に目覚めたりしてないだろうな。いや俺も個人の性癖とかにどうこう言うつもりはないが…………そのだな……」

 

あっという間に血が止まって消えていく傷を見る。これは恐らくだが、お兄ちゃんに流れる晴れの炎による活性の力なのではないかと推測する。お兄ちゃんが昔から怪我の治りが早いのも、お兄ちゃんと接触する事によって私の怪我の治りが早くなるのも、晴れの炎のお陰で細胞が活性化され、自然治癒力が上昇するのではないだろうか。

 

「京子…………別に止めろと言っている訳ではないのだ……ただその、兄として妹が心配なのだ…………」

 

そう言えばお兄ちゃんは確か、通常時がいつでも極限の死ぬ気の状態であった。今はリングが手元にないため目に見える形で炎を灯せていないだけで、体から何かしらの波動が出ているのかもしれない。

 

「嫌な事があったら、何でも俺に言うんだぞ…………極限、分かったな?」

 

「えっ? ……う、うん。分かった?」

 

いつの間にかお兄ちゃんに手を握られ、神妙な顔つきでそう言われたのだが、どう言う意味なんだろうか? 私とお兄ちゃんとのあまりにもの温度差に、何か勘違いが起きているのではと勘ぐってしまう。

 

「お、お兄ちゃん?!」

 

「京子、大丈夫だぞ。俺がついてるからな……。」

 

兄妹とは言え、ぎゅうっと抱き締められてどうすれば良いのか分からなくなる。本当に一体、何があったんだお兄ちゃん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■□■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ君、いつの間に人間辞めたの?」

 

「ちょっとそれ、流石に失礼じゃないですか?」

 

「いや、委員長の言葉も無理もないですよ…………笹川さん、昨日ボロボロだったじゃないですか。」

 

並盛中にて、登校直後に風紀委員に呼び出された私は、応接室に入ってまっ先に人外通告を受けた。流石にそれは酷過ぎる…………まぁ、逆の立場なら私も同じ事を思うだろうが。

軽く捲られたブラウスやスカートから覗く傷のない腕や脚をジロジロと見て不可解な顔をする二人には悪いが炎の事を言う訳にもいかず、化粧のコンシーラーの有用性を力説する事によって何とか誤魔化した。

 

「そ、そう言えば草壁さんも昨日あの場にいたんですね。私、全く気付きませんでした。」

 

作り笑いをしながら、何とか話を終わらそうと草壁先輩に話を振る。草壁先輩はまだ疑う様な顔をしていたが、持ち前の優しさからきちんと答えてくれた。

 

「お二人が闘っているのに他の客を巻き込ませる訳にはいきませんでしたからね。少し離れた所で見ながらも、人が来ない様に見張っていました。委員長から急に連絡が来た時は驚きましたよ。まさか婦女暴行はしないだろうとは思いましたが、結果としては対して変わりませんでしたね。うちの委員長がやり過ぎてしまい、すみませんでした。」

 

「ちょっとそれ人聞きが悪いんだけど…………。昨日、火傷と骨にヒビ位は入ったよね? 昨日はもう診療時間が終わっていて無理だから自宅療養にしたけど、本当は今日、並盛中央病院に予約を取って行かせようとしてたんだよ。それなのに何で普通に学校に来て、怪我がもう治ってるの? …………ちゃんと答えないと咬み殺すよ。」

 

「…………。」

 

どうやら二人は、そう簡単に誤魔化されてはくれないらしい。私の馬鹿。どうしてこうなる事に気付けなかったんだ。

 

「えーっと……そのですね…………正直私にも分からない事だらけで把握出来ていないのですが…………朝起きたら怪我が全て治ってまして。恐らく何らかの不思議パワー?が体に作用したのではないかと考えています。」

 

「何それ、新手の宗教か何か?」

 

「笹川さん、怪我は治ったみたいですが、やっぱり病院に行った方が良いですよ。並盛中央病院は精神科もありますから。」

 

「宗教に嵌った訳でも頭がおかしい人でもないですから!! 本当に、朝起きたら怪我が治ってたんですって!!」

 

自分でも言ってる事がキチガイじみているのは自覚しているが、事実をありのままに多少ぼかして話しているだけなので信じて欲しい。

 

「嘘はついてないみたいだけど、それが逆に心配になるね……」

 

「委員長、もしかしたら笹川さんは昨日の戦闘で頭を打ってしまったのかもしれません。一度しっかりと検査をして貰った方が良いのではないでしょうか。」

 

「それもそうだね。」

 

「え…………。」

 

雲雀先輩は机の引き出しからファイルを取り出すと、その中から紙を取り出して私に寄越した。

 

「はいこれ…………早退届と病院の紹介状。今日は君、早退ね。」

 

「……………………はい。」

 

有無を言わさず渡された書類に、私はそう返事する事しか出来なかった。

ちなみに、並盛中央病院の検査は丸一日かけて行われ、結果全くもって異常がない事が証明されたのだが、異常がない事が異常だと二人は考えているのか、次の日にも同様の検査をもう一度やらされた。結果は言うまでもない。

 

 

 




了平 : ストレス的要因からか、妹が自傷他傷に興奮を覚える娘になった…………胃が痛い

雲雀 : 本気で言ってる…………もしかして阿呆の娘なのか?

草壁 : きっと頭を打って混乱しているのだろう……お大事に


三者三様の酷い勘違い
風紀委員組は言うほど本気で心配はしてないですが、心の内でもしかしたらと考えていたりします………………
現実では有り得ない事が起きているので京子の話も完璧にない訳でもない…………だけど、非現実的過ぎる…………結果として取り敢えず病院に突き出す事にした二人です。



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