小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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レクイエムコラボより。
エリセがいじられてそうという作者の勝手な思い込み。


彼女は邪気眼を持っている

「ハァ、しょうがない。これも縁だ。

 私は、宇津見エリセ。14歳。

 今より少し未来の、臨海都市《秋葉原》の出身。

 町の見回りが私の仕事。

 夜警ナイトウォッチっていうんだけどね。

 なんか……"死神"って呼ばれてる。……え? ちょっとかっこいいとか…

 そんな、お、思ってないよ……」

 

 というわけで、香ばしい発言と共に新しい仲間が加わった。

 しばらくたってから、〇百連で別の聖杯戦争で彼女のサーヴァントだったという

ボイジャーきゅんも来てくれた。

 

「すこしだけ、すがたがちがうけれど、ぼくがであったエリセと、ほんとうにおんなじだね。とげばかりで、みずをあげるにもくろうする……えへ、えへへ。」

 

 再会を喜びあう二人だがボイジャーきゅんのそれに続く問題発言は俺とぐだ子の二人をざわつかせた。

 

「エリセはね……じゃきがんもち、なんだ。よるに……なると『静まれ…静まれよ!私の右腕!』ってね。よく、いってた。たいへんなんだな。じゃきがんもちは……」

「ちょちょっと!ボイジャー!なに言ってるの!?」

「え……?でも、かいてあったよ、じゃきがんって……エリセのじで?」

 

 即座に反応したのはぐだ子だ。

 

「それは大変だ!!すぐに行こう!今すぐ行こう!!私に任せて!心当たりがあるの!!」

「いや…いいって。別に困って…」

 

 ……こんな面白いオモチャを放置できるか!

 この波に乗るしかない。俺も精一杯真剣な表情ですかさず合いの手を入れた。

 

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちの味方なんだよ!!頼って!」

 

 俺たちの提案を断ろうとするエリセにぐだ子の「頼って」発言は刺さるらしい。

 根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

  〇

 

「そういうことなら私の魔眼殺しを使いますか?」

 

 最初に訪れた人物。

 察しの良いメデューサさんは、生暖かい目でエリセを見るとそっと愛用の眼鏡

魔眼殺しを差し出した。

 

「……あ、いや。だからその必要は……」

「「ありがとう!メデューサさん」」

 

 エリセが断りの言葉を告げる前に俺とぐだ子は勢いよくお礼を言った。

 

「……気が済んだら返してくださいね(生暖かい目)」

 

  〇

 

 やはりというか残念ながら魔眼殺しは邪気眼に効果を発揮しなかった。

 ならば次の手だ。

 

「いや…だから、本当にいいって。これはそういうんのじゃ…」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちを助けたいんだ!!」

 

 俺たちの提案を断ろうとするエリセに、ぐだ子の「助けたいんだ」発言は

刺さるらしい。

 根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

「邪気眼…ですか。それは大変な物を背負っているのですね」

 

 次に相談に訪れた人物、察しの良い賢人・ケイローン先生は生暖かい笑顔を浮かべながらそう言った。

 

「そっか…やっぱりケイローン先生でも治せないの?」

 

 ぐだ子が真剣な表情で尋ねた。

 笑いをかみ殺してるのかプルプルと震えながら。

 悪魔め。

 

「はい。残念ながら私には荷が勝ちすぎるようです。提案ですが……ここはアスクレピオスに聞いてみてはいかがでしょうか?」

 

 

  〇

 

「いや…だから、もう本当にいいって。これはそういうんのじゃ…」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちの力になりたいんだ!!」

 

 俺たちの提案を断ろうとするエリセに、ぐだ子の「力になりたいんだ」発言は

刺さるらしい。

 根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

「邪気眼。……何だそれは?」

 

 次に相談に訪れた人物、医神アスクレピオス先生は困惑の表情をを浮かべながらそう言った。

 

 エリセは顔を真っ赤にして俯いている。

 ……思春期だな。

 

「おい、症状をはっきり言え、愚患者。治療方針が決められない」

 

 アスクレピオス先生のマジレスに、彼女は顔を真っ赤にして俯いたままだ。

 心配して付いてきてくれた、ケイローン先生がそっと耳打ちする。

 ケイローン先生の助言を聞いた、アスクレピオス先生は大きなため息をつき告げた。

 

「なんだ。ただの妄想へ……」

「いけません、アスクレピオス。これは彼女にとって重要な問題なのです。

たとえ専門外でも助言を行うのは医師の務めではないでしょうか?」

 

 ナイスフォロー。

 アスクレピオス先生はまたしてもため息をつくと静かに告げた。

 

「徳の高い坊主のところにでも行ってこい。……もう良いか?」

「ありがとう!先生!さっ、行こ!エリち!!」

「いや…だから、ほんとに本当にいいって。これはそういうんのじゃ…」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちのことが心配なんだ!!」

 

 先生の提案を断ろうとするエリセに、ぐだ子の「心配なんだ」発言は

刺さるらしい。

 根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

  〇

 

「邪気眼。……なにそれ?初めて聞く霊障ね。」

 

 次に俺たちが向かったのは、仏教系サーヴァントグループの会合だった。

 そこには玄奘三蔵と宝蔵院胤舜、弁慶じゃない弁慶の3人がいた。

 開口一番、不思議そうな表情でそう告げたのは三蔵ちゃんだった。

 それを聞いて胤舜さんと弁慶さんの2人が盛大に吹きだす。

 

「胤舜くん?なに邪気眼って?知ってるの?」

「いけません、これだけはいけません。これは触れてはならぬ霊障です!」

「なに?教えてよ!」

「どうしても知ろうというのならこの胤舜、一命をとしてでも止めねばなりません!」

「なによ!弁慶くんは?」

「どっせいいいい!!」

 

 三蔵ちゃんの暴挙を止めようと、弁慶が仁王立ちする。

 

「さあ、ここは我らに任せてお早く!」

「邪気眼のことは任せたぞ!朧裏月――いざ参る!!」

「ねえ、だから邪気眼ってなんなのよ!!ねえーー仲間外れはやめてよーーー!」

 

 胤舜さん、弁慶さん、ありがとう。

 邪気眼……なんて恐ろしい霊障なんだ。

 

  〇

 

「うーん。ここもダメだったか」

「いや…だから、ほんとにいいって。これはただの…」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちを救いたいんだ!!」

 

 これ以上の行動を止めさせようとするエリセに、ぐだ子の「救いたいんだ」発言は刺さるらしい。

 根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

 ぐだ子の「それよりお腹すいたね」発言で俺たちは腹ごなしに食堂に行くことにした。

 

 今日のシェフはガングロおかんのエミヤとパールさんだ。

 カレーデイということもあって、食堂にはパールさん以外にもインド系サーヴァントがそろっていた。

 

「邪気眼だと……!?なんだその名前!!クソカッコイイじゃねえか!!クソッ!ムカつくぜ!!」

 

 5辛カレーを口に含み汗をダラダラ流しながら、激おこぷんぷんマンことアシュヴァッターマンが言った。

 

 その様子をガネーシャ神が生暖かい笑顔で見ている。

 カルナさんが不思議そうな顔で尋ねた。

 

「ガネーシャ神よ。邪気眼とはなんだ?」

「どっ……どうしてボクに聞くっスか?」

「お前なら知っているに違いないというオレの直感だ」

「……この生暖かい笑顔で察して欲しいっス」

 

 カルナさんが首を傾げた。

 

「……すまないが、生暖かいとは具体的に何度だ?人によって感じる温度には個人差があるはずだ。お前にとって生暖かくても彼女にとっては熱く感じるかもしれない」

「もう!今気にするのそこじゃないでしょ!察して欲しいっス!誰にだって触れられくない黒歴史はあるんっスから!」

 

 今度はバナナを頬張っていたラーマくんが尋ねた。

 

「黒歴史?ガネーシャ神に関する邪悪な逸話があったとは余も初耳だ。教えてくれないか?」

「もう!二人ともどこまで天然なんスか!!」

 

 カルナさんとラーマくんの天然コンビにガネーシャさんは困っている。

 そこに俺たちのカレーを給仕しに、エミヤとパールさんが現れた。

 俺たちの会話を聞いていたのか二人は、テーブルにカレーを置くとそっと言った。

 

「邪気眼……か。まあ、そうだな。食事中に邪気眼の発作を起こすのだけは控えてもらえないだろうか」

「ふふ……。思春期ですね。でも食事中に邪気眼はだめですよ」

 

 エリセの顔は真っ赤を通り越して蒼白だ。

 きっと何の味もしないに違いない。

 

  〇

 

「よし!じゃあ今度はハサン先生たちのところに行こう。ハサンは暗殺教団の歴史があるから何か知ってるかもしれない!百貌さんは専科百般持ち出し、百個の中に邪気眼の答えがあるかも!きっと何か手がかりが見つかるって!エリち!!」

「いや…だから、もういいんだって。これはただの…」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちに頼ってもらいたいんだ!!」

 

 これ以上の行動を止めさせようとするエリセに、ぐだ子の「頼ってもらいたいんだ」発言は刺さるらしい。

根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

 

「邪気眼……そのような恐ろしい武芸を収めているとは……この呪腕のハサンも感服いたします」

 

 ハサン先生こと呪腕のハサン、百貌さん、静謐ちゃんのハサンずは「邪気眼」という単語に微妙な沈黙をした。初代様こと山の翁は黙って仁王立ちしている。

 しばし考えると、(多分)仮面の下で生暖かい目をしてハサン先生が答えた。

 

「先生、邪気眼はどう対処すればいいんでしょうか!?」

 

 ぐだ子が笑いをこらえてプルプル震えながら精一杯真剣な表情を浮かべて聞いた。

 

「魔術師殿……邪気眼は己の一部と思って折り合いをつけるしかありませぬ。有体に言うと……その、そっとしておいていただけるのが一番かと」

 

 ……この人、常識人だ。

 暗殺者のくせに常識人だ。

 エリセは真っ赤になってプルプル震えている。

 

「呪腕の……百貌の……静謐の……」

 

 仁王立ちしていた初代様が徐に口を開いた。

 

「貴様ら、邪気眼なる武芸を知りながら何故、収めておらぬ……」

 

 やばい、この人だけ理解してなかった。

 ハサン先生、百貌さん、静謐ちゃんが一気に青ざめた。

 

「首を出せい!!!!」

 

 ハサン先生が慌てて口を開いた。

 

「初代様、お待ちくだされ!邪気眼は……邪気眼は……」

「……邪気眼は?」

 

 常識人のハサン先生は出来れば言いたくなかったはずの事を言った。

 

「……思春期の少年少女しか収められぬ武芸なのです!」

 

 初代様の殺気が収まり、気まずい気配が場を支配した。

 初代様がゆっくり口を開いた。

 

「許せ……少女よ」

 

  〇

 

「よし!じゃあ今度は図書室だね。あれだけ貴書がそろってるんだ!きっと何か手がかりが見つかるって!エリち!!」

「いや……だから、もういいんだって。これはただの……」

「エリセが心配なんだ!」

「そうだよ!エリち!!私たち仲間でしょ!!私もぐだ男もエリちに頼ってもらいたいんだ!!」

 

これ以上の行動を止めさせようとするエリセに、ぐだ子の「頼ってもらいたいんだ」発言は刺さるらしい。

根が素直なだけに好意には弱いとみた。

 

「邪気眼と聞いて!」

「おい、邪気眼とやらを見せてみろ」

 

 図書室にいた作家系クズコンビのシェイクスピアとアンデルセンは開口一番に言った。

 二人はワクワク顔でさらにまくしたてる。

 

「いやはや、これは楽しみですな!アンデルセン殿!!吾輩も噂だけは聞いていましたが本当に保有者がいるとは!!」

「全くだ!俺もこれをネタに今度は人魚姫を邪気眼持ちにしてみるか!」

「ささ、お早く!邪気眼を発動して下さいませ!!」

「俺たちはここで見物だ。さぞかし恐ろしい霊障なのだろうが、これで霊核が砕けようとも自己責任だ。気にするな!」

 

 エリセの表情は真っ青を通り越して今度は赤黒くなってきた。

 香子さんこと紫式部さんがあわあわしながら心配そうにこちらを見ている。

 

「あれ?どったのみんなして?あたしちゃんも混ぜて混ぜて」

 

 そこにカルデアいちの陽キャ、なぎこさんこと清少納言がそう言いながらやってきた。

 エリセが救いを求めるように、なぎこさんを見上げる。

 クズ作家コンビが畳みかけるように言い放す。

 

「これはこれは清少納言どの!一世一代のショーですぞ!あの邪気眼を目の当たりにできるという!」

「そうだ!お前もギャラリーになれ!これは見ものだ!」

 

 なぎこさんはそれで察したらしい。

 さすが陽キャ。

 

「あ!なになに!そういう属性のごっこ遊び?よっし!もっと属性もりもりにしちゃおうぜえ!!」

 

 そしてなぎこさんと作家コンビの悪ノリによりエリセは邪気眼持ち、新月の夜に666の悪魔の数字を見ることで金髪オッドアイの最終形態に進化する

 イスカリオテ第13機関によって封じられた、禁断の超生物として爆誕することとなった。

 しばらくの間カルデアでは、エリセにすれ違う度邪気眼の症状を尋ねることが挨拶代わりとなり彼女の表情は曇っていったという。

 がんばれエリセ。君には輝かしい未来が待っている。




おまけ「汝は人狼なりや?」

なんか、イベントで人狼ゲームが始まった。
みんなをあおりながら怪しい雰囲気をプンプンさせているアマデウスを初めに
だれを処刑するかの初日の合議が始まった。

皆が自身の意見を述べ最後に俺たちに順番が回ってきた。

「うーん、いろいろ考えたんだけど……とりあえずアマデウスを処刑すればいいんじゃない?」
開口一番ぐだ子がそういった。

「なぜですか、ぐだ子?確かにアマデウスはあからさまに怪しいが、それ故に皆の意見は分かれています。理由を教えてください」
「……いや、単純にアマデウスはクズだから処刑しても良心が痛まないだけだけど?」
(以降、10分間に渡ってアマデウスのクズぶりを熱弁)

「ならアマデウスでいいか」
「ならアマデウスでいいですね」
「ふふっ!そうね!それでいいと思うのだわ!」
「うんうん!君たちの僕への評価がよくわかるね!!」

こうしてあっさりアマデウスの処刑は決まった。

「しかし、絞首刑は非人道的だ。やはりギロチンは用意できないのでしょうか?」
「サンソン、絞首刑もギロチンも残酷すぎるよ……。ぐだ子そんなことできない、だから陳宮!!」

どこで手に入れたのかぐだ子は陳宮のトークンをつかってかの死神を呼び出した。

「弾が補充されたと聞いて」

こうしてアマデウスは流星となり、人狼ゲームはあっさり終わった。

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