ウチのカルデアにライネスは来ませんでした。
というわけでイベント関連です。
「孔明先生…。あわわわわわわ」
イベント空間で、師匠を名乗る金髪少女に連れられて来たフラットの部屋で俺たちが目にしたのはロン毛の長身男性の死体と『M』のアルファベットのダイイングメッセージだった。
その瞬間、急激に失っていた記憶の一部が戻って来た。
『M』の一言でわかった。
いつもならアラフィフおじさんが容疑者候補筆頭に上がるが今回は違う。
隣を見ると青ざめた表情のぐだ子が視界に映った。
それでわかった。二人とも同じ結論に至ったと。
「(絶対過労死だ。俺のせいだ)」
「(絶対過労死だ。私のせいだ)」
そう『M』。
それは
周回で酷使していたのはわかっていたけどまさか本当に過労死しちゃうなんて……。
「兄上…。一体誰が」
困惑するライネスさんに俺は冷や汗をかきながら言った。
「いや、すごい言いづらいんですけど犯人は誰もいないっていうか……あえて言うなら俺たちが犯人……みたいな」
「はあ、何を言ってるんだ君は?大体君達ずっと私と一緒にいたじゃないか」
ライネスさんの発言にぐだ子が答える。
「うーんとこれは今までの積み重ねっていうか、蓄積疲労って言うか過労死しちゃった……的な」
「だから何を言ってるんだ君達は、あんなに外傷があって死因が過労なわけないだろう!それより来るぞ戦闘だ!」
あ、そうか。よかった過労死じゃなくて。それよりなんか人形が襲って来たの忘れてた。
〇
「危なかったな…その記憶を回収しきったら、一巻の終わりだったぞ」
最後の紙片を回収しようとしたその瞬間、俺たちの目の前にありえない人物が現れた。
序章からずっと相手がライダークラスだろうとなんだろうとずっと一緒だった絆11のベストパートナーが。
「君達…そこまで兄上の事を…」
ライネス師匠の発言で気がついた、俺が泣いていたことを。
同じようにぐだ子の目にも涙が光っていた。
そういえばライネスさん『兄上が死んだと思って超ショックだった。また会えて本当嬉しい。兄上には内緒だぞ(超意訳)』って言ってたな。
後で先生に教えてあげよっと。
「良かった孔明先生…。先生がいなくなったら周回どうしようかと思ってました!」
「良かった!また会えて良かった!本当に過労死したのかと思いました!!」
俺たちの発言に苦虫を噛みつぶしたような表情で件の人物が言う。
「自覚があったとは意外だ」
孔明先生は記憶紙片の回収が罠だったことと共に衝撃の事実『M』が誰を示していたかを語った。
「君らが通信しているマシュは、偽物だ」
なんだって?
しかしホログラムに映るマシュの表情はその発言が事実であることを雄弁に物語っていた。
確かめないと……。
「ねえ、ちょっとそのマシュ後ろ向いてみて貰えない?」
偽マシュは怪訝な表情をしながらも律儀に後ろ姿を見せてくれた。
その後ろ姿は表情以上にその事実を雄弁に俺に語りかけていた。
「……本当だ」
皆の視線が俺に集まる。
「マシュのおしりは横幅が2.1センチ広いし、アンダーの部分がキュッと1.5センチ上がってる。マシュのおしりマイスターの俺にはわかる!つまりお前は偽物だ!」
「アホか!」
ぐだ子に宝石剣ゼルリッチでしこたま殴られ、俺は昏倒した。
気がつくとバベッジさんの城にいて、なんか時計塔も偽物で本当は偽ロンゴミニアドで
そこに乗り込んで黒幕を倒しに行くことになっていた。
途中で合流した孔明先生の内弟子というグレイさんのロンゴミニアドで偽ロンゴミニアドに干渉し出来上がった塔への階段の途中俺たちは運命に出会ってしまった。
「バルバトスくん…」
呟く俺の隣でライネスさんがバルバトスくんが再現された説明をしているが全く耳に入ってこない。
バルバトスくん、享年12時間。落とす素材が美味しすぎたせいで朝日を見ることもできずに散った儚い命。
まさかまた会える日が来るなんて。
「一体どんな戦い方をしてきたんだ君たち!サーヴァントだけで打倒できるような相手じゃないぞ!」
そう、わかっている。リンゴでお腹をタプタプにしながら皆で走り抜けたあの日を。
隣のぐだ子に目をやる。
そこにいたのは、いっちゃってる目の
彼女は孔明としての力の大半を失っているにもかかわらず強引に連れてきた孔明先生と
フレンド孔明先生のW孔明をいつの間にか呼び出していた。
「私は不死身ダ。我々は無尽蔵ダ。この空間すべてガ我々……(ジャーンジャーン)げえっ!ダブル孔明!!」
口上を口にしていた途中でバルバトスくんがボスらしからぬ横山三国志顔で驚愕する。
彼女たちの姿はバルバトスくんのDNAに深く刻まれたトラウマを呼び起こさせたらしい。
「バールーバートースくん…あーそぼ…」
「来るな…!来るな……!!来ないで下さい!!!」
「ヒャッハー!塵だ証だ歯車だQPだ!!吐き出せ!もっと吐き出せ!!」
限突黒聖杯イリヤちゃんとダブル孔明先生による一方的な殺戮劇はその後3日間続いた。
〇
特異点解決後、ゴルドルフ所長のふわとろパンケーキ目当てに食堂に向かった俺たち3人。俺とぐだ子とマシュは先客の姿を目にした。
●万円できてくれた司馬懿先生ことライネスさん、諸葛孔明ことエルメロイ先生の兄妹
それにもう一人、朕こと始皇帝の3人だ。
同じ中華系だからだろうか、何か面白そうな話をしていたので同席して聞かせてもらうことにした。
自分より前の時代の中華統一の覇者が相手ということなのか
憑依した英霊の影響もあってエルメロイ先生もライネスさんも恐縮しているようだった。
「この方たちが扇子から
その発言に俺は思いっきり吹き出した。
「始皇帝陛下、何か熱心にお話を聞かれていましたがお二人に何を聞かれていたのでしょうか?」
というマシュの質問に対する答えがそれだったのがそれに対する回答はさらに俺を困惑させた。
「もちろん出せるとも」
先に答えたのは司馬懿先生だった。
司馬懿先生は基本的に憑依しているライネスさんに肉体の主導権を委ねているが孔明先生と違ってちょいちょい表に出て来る。
エルメロイ先生は少し間を置いてから言った。
どうも自身の中にいる孔明先生に確認をとっているらしい。
「私の中の諸葛孔明も言っている『もちろん出せる』と」
「…あの、これfateですよ?三国●双じゃないですからね」
「それについては俺から説明してやろう」
そして司馬懿先生は語り出した、およそ1800年前の直接対決の話を。
時は西暦231年。
諸葛孔明率いる蜀軍は4度目の北伐を決行した。
「それに対して俺は自軍を二手に分け、自分の率いる本体を諸葛孔明へと向けることにした。局地戦では敗れはしたが、悪天候が続き物量で劣る蜀は兵站の補給に問題が生じ撤退し始めた。当然俺は追撃することにした。
その途中だ、追撃を命じた張郃が討ち取られたとの知らせを聞いたのは」
「張郃というのは魏軍の武将で歴戦の勇者と言われた人物です」
そっとマシュが耳打ちして教えてくれた。かわいい。
「歴戦の勇者を失った魏軍は悲しみにくれたが、俺は考えた『張郃ほどの男を屠ったのはどのような人物か』と。
そして俺と諸葛亮は出会うこととなった。それが五丈原の戦いだ」
次を孔明先生が引き取って言った。
「渭水の南に陣を敷いていた司馬仲達に私は挑発を繰り返したが相対してすぐに気づいたよ『こいつはマジやばい』と」
「それは俺のセリフだ。何せこの男は相対すると――いきなり目から備位務を撃ってきたんだからな。あの時とっさに地盤をひっくり返して防御したが、全くなんて男だ」
俺たち3人は困惑とともに言った。
「え?」「え?」「え?」
それとなんか孔明先生中の人表に出てきてないか?よほど興奮してるのかな。
「何を驚いている、あの乱世の時代、目から備位務くらい撃てなくてどうする」
孔明先生の発言に深く頷き司馬懿先生も同意する。
〇
「
「
二人の三国超人対決は、両軍の兵に多大な巻き添えを食わせ激しいビームの応酬で
地形を変えながら数時間に及んで続いた。
「諸葛孔明殿、どうやらもう魔力も尽きたようだな」
「それはそちらも同じことでは司馬仲達殿」
司馬懿先生の肩から「ドシン」という重たい音がして何かが落ちた。
司馬懿先生は平時、力を押さえるために重さ100貫に及ぶ肩当付けていたのだ。
それが合図だった。
続いて孔明先生の足から「ドシン」という重たい音がして何かが落ちた。
孔明先生は平時、力を押さえるために重さ100貫の靴を履いていたのだ。
二人の超人が相対する。
「(あれは……龍の構え)」
「(あれは……虎の構え)」
無風の筈の大地に風が巻き起こり、それはやがて嵐になる。
「来いよ孔明!武器なんか捨ててかかって来い!」
「応!」
一撃必殺の剛体術を使う司馬仲達の拳を諸葛孔明は流水の動きでいなし続ける。
しかし中国大陸で最も苛烈な剛の拳と最も華麗な柔の拳の対照的な二人の肉弾戦は思わぬ形で終わりを告げた。
孔明先生が吐血したからだ。
「諸葛孔明殿、貴殿まさか病を…?」
「見られてしまったか…しかし加減は無用。私はまだ貴殿を葬る程度の力は残しているつもりだ」
その言葉に司馬懿先生は拳を下ろして言った。
「いいや、やめよう。貴殿ほどの強者とは万全の状態で戦いたい」
しかしそれは叶うことは無かった。なぜなら戦い自体が孔明先生の過労死という形で幕を閉じたからだ。
〇
……これなんて北●の拳だよ。
二人が語り終えるとマシュは困惑しながら言った。
「五丈原の戦いは挑発を繰り返す蜀に対して魏が乗らず、持久戦に持ち込んだ結果蜀軍が敗北する結果となったはずなのですが…。
そもそも諸葛孔明と司馬仲達が直接対決したなどという話は聞いたことがありません」
二人の超人は平然と答えた。
「何を言っている、相手は目から備位務を撃ってくる怪物だぞ。魏の軍内で対抗できるのが俺以外にいなかったのだから直接殴りあうのは必然だろう」
「私の中の諸葛孔明も深く同意している。……しかしこれで何故私が依り代に選ばれたのかよく分かったよ。やはり三●無双をプレイ中に寝落ちしたのが理由だったか」
三国時代半端ない。俺はそう思った。
あと朕は凄く満足そうだった。
こんなのですいません。
ちなみに、ほぼ私事ですが、お知らせしてる通り私が脚本・制作で参加した映画が単館上映ですが商業作品として上映されることが決まりました。
東京・池袋の劇場で5月11日から5月17まで限定でレイトショー上映(20:45開始)されます。
公式サイト
https://sorekara.wixsite.com/nov19
映画.comにも情報載りました
https://eiga.com/movie/90916/
filmarksにも情報載りました
https://filmarks.com/movies/83376
また、ちょっと忙しくなりますがそう遠くないうちに投稿しますので引き続きよろしくお願いします。