というわけで温めてていたネタです。
どうぞ
※微妙に二部のネタバレが含まれています。イイゾイイゾでない方はブラウザバックしてください。
「いいサーヴァントを引き当てたぜ、アンタ! ってな訳でライダーのサーヴァント、アキレウスだ」
というわけで〇万円でアキレウスが来てくれた。
ギリシャ神話の英雄とかいわれてもピンとこない日本でも名前くらいならみんな知ってるヘラクレスと肩を並べる大英雄だ。
そんなアキレウスの姿を遠巻きに見ている人物の姿がいた。
無精ひげでいつも眠たそうな顔のランサー、ヘクトールおじさんだ。
アキレウスとヘクトールさんの生前の遺恨は知っている。
でもペンテシレイアさんと違って味方なら性格的に問題ないかなと思ったので特に召喚チャレンジの間も要注意対象にはしていなかった。
ヘクトールさんは遠巻きに宿敵の姿を確認すると何も言わずにそっと去っていった。
……やっぱり大丈夫だったか。よかった大人で。
生涯最大の宿敵の姿にアキレウスも当然気が付いていた。
「ヘクトールか…。いや、味方ならいいんだ。敵に回すと厄介だからな」
オケアノスの戦いで敵に回ったおじさんの厄介さは理解していたのでその場は適当に相槌をうつに留めたが、それからしばらくして俺は敵に回したヘクトールさんの
本当の厄介さを思い知ることになる。
〇
アキレウスを召喚して少し経ったある日。
ぐだ子とマシュがお出かけ中だったのでイベント周回中後回しにしていた
シャドウボーダー内の案内に彼と回っていた。
最重要施設の司令部や召喚室を回った後、食堂に続く廊下を歩いていると向こうから緑とピンクの二人が現れた。
ギリシャ神話の英雄・麗しのアタランテとシャルルマーニュ12勇士の一人アストルフォだ。
アキレウスはその姿を認めると
「お!姐さん!」
と言いながら小走りで近寄って行った。
そういえばアキレウスとこの2人、別の聖杯戦争で縁があったと言ってたな。
特に同郷のアタランテさんと仲が良かったとか。
しかし二人のやりとり…というかアタランテさんの表情を見て俺が読み取った感情は「嫌悪感」だった。
アキレウスもそれに気が付いたのか彼女に問いかけた。
「おいおい、なんだよ姐さん!そんな顔してなにかあったのか?」
しばしの沈黙のあと、彼女から返ってきた答えは想像の斜め上のものだった。
「ライダー…汝はその…男色の趣味があるのか?」
「…は?」
「いや…その汝の趣味をとやかくいうつもりはないのだが
私に粉をかけるようなそぶりを見せていたのはカモフラージュだったのだな」
「姐さん。ちょっと姐さん何言ってんの?姐さん?」
「その…男色の趣味はいいとしても流石に汝の性癖は特殊すぎる。
…すまないのだがしばらく私に話しかけないでもらえるだろうか…」
そういうと全く事態を呑み込めない俺たちを置いてアタランテさんは足早に去っていった。
「姐さん!姐さーん!!」
アキレウスの悲痛な叫びが木霊する。
そんなアキレウスの背にアストルフォが冷たく言い放った。
「ちょっと、君ボクのことイヤらしい目で見てるだろ」
「見てねえっての!黒のライダー、そもそもお前男だろうが!!」
「ええ?だってキミはガチホモなんだろ?ならボクみたいな可愛いコを放っておくわけないじゃないか。
ひょっとしてあの時僕に盾を貸してくれたのもそれが理由?」
「違うっての!何一人で納得してんだよお前は!」
「えーでもキミはあんまりボクのタイプじゃないんだよなぁ。しかもすごいヘンタイみたいだし。
あ!でもどうしてもっていうなら手くらいならつないであげてもいいよ!」
「いらねえよ!しかもなんで俺が振られたみたいになってんだ!そもそも俺にそんな趣味は無え!少しは人の話聞けよお前!!」
「ムリムリ。だってボク理性蒸発してるし。あ、もういかなきゃ。じゃーねバイバーイ」
そう言うと事態を一片たりとも理解できていない俺たち二人を置いてアストルフォは去っていった。
「クソ。一体なにがどうなっていやがる!」
アキレウスのホモ疑惑は置いておいて、とりあえず次の場所、食堂を目指して俺たちは歩き始めた。
何が起きているのか俺にもまだ見当がつかないが
「こうして案内を続けつつ歩き回って情報を集めよう」
という俺の提案に彼は頷いてくれた。
〇
食堂のドアが開くと、そこには両手で余る程度のサーヴァントがいた。
そしてアキレウスの姿を認めるとざわつきだし、彼を避けるように食堂から出ていった。
基本的に素直そのものなモードレッドは一緒にいたフランちゃんの目を塞ぐと
「げ!ガチホモ変態野郎が来た!見るな、フラン!目が爛れるぞ!」
と思いっきり言い放った。
「ウァ……ウウ……(ガチホモ……ドヘンタイ……普通に引く)」
「おい!何言ってるわかんねぇが、今、無茶苦茶失礼なこと言っただろ!」
二人はすさまじい勢いで部屋を出て行った。
3人の人物を残して全員が居なくなった。
残ったのは別の聖杯戦争で縁があったというスパさんことスパルタクス、インド神話の大英雄・カルナさん、
アキレウスの師として知られる賢人・ケイローン先生だった。
その姿を認めるとかつての師に彼は問いかけた。
「先生、いったいなにが起きてるんです?俺がなにをやっちまったんでしょうか?」
その問いに賢人は静かに答えた。
「アキレウス…。まさかあなたがあそこまで特殊な趣味…もとい深い闇を抱えていたとは。
師としてそれに気が付くことができなかった自身の不見識を恥じるばかりです…」
「先生?なに言ってんですか先生?」
「あなたがヘラクレスに憧れているのは知っていましたが、まさかそういう意味で憧れていたとは…。
ここに来てから妙に彼と戦いたがるのはそういうことだったのですね…」
「先生?だからなに言ってんですか先生?」
「ライダー、オレからも問いたい」
アキレウスの困惑をよそにケイローン先生が口を閉ざした代わりにカルナさんが口を開いた。
「おまえの性癖はあまりにも特殊すぎる。異様にしか感じない。
なぜおまえがそんな行いをするのか、なぜ男の肛門にそこまで執着するのかは全くわからんが一つだけ問いたい。…そんなに気持ち良かったのか?」
「だ・か・ら!俺はそもそもホモじゃねえ!ランサーお前なら俺が嘘ついてねえことぐらいわかるだろ!」
「確かにお前は虚言を吐いてはいない。…しかしこの場合周囲の反応を見るにおまえの自己認識が誤っているのではないか?」
「…この野郎正論で返しやがって!返す言葉が無いじゃねえか!!」
じっと黙っていたスパさんが口を開いた。
「変態は圧政!……いや、むしろ反逆か?
……友よ」
「止めろ!勝手に共感するな!」
その時食堂の扉が開き混沌を極めるこの状況にさらに二人の人物が追加された。
入口に立つその人物、セミさまことセミラミスと、天草四郎の二人だ。
そういえばセミ様は以前天草くんのこと「知らない」とか言ってけど一緒にいること多いな。
ほんと乙女なんだから。
そんなセミ様はアキレウスの姿を認めると顔面蒼白になり「ひっ!」と小さな叫び声をあげた。
冷血無慈悲を自称するくせに素の反応がいちいち乙女だ。
顔面蒼白なセミさまにアキレウスが聞いた。
「アサシン、お前もか!?何がどうなってやがる!」
「ライダー…お主どこまで鬼畜なのだ?流石の我でもあんな毒の使い方思いつきもしなかったぞ。
…思い出したら寒気がしてきたわ。ゆくぞシロウ、あの汚物を視界に入れたくない」
そう言うとセミ様は天草君を連れて去っていった。
天草君は去るまでずっと曖昧な表情でやりとりを見ていた。
……これまでのことで俺にはなんとなくいろんなことがわかってきた。
まず行くのはそれを「作った」人のところだ。
俺は困惑するアキレウスの肩を叩いて言った。
「行こう、アキレウス。事態がなんとなくわかった。まずは作った人のところだ」
〇
「いやはやその様子ですと吾輩たちの創作物大いに楽しんでいただけたようですな!」
やっぱりこいつか。俺たちが訪れたのは作家部屋。
そこにいた作家コンビの片割れ世界最高の劇作家シェイクスピアは全く悪びれなく答えた。
「おい。アキレウ…変態ウス、お前どこまでぶっとんだ変態だ?流石の俺でもお前の変態性には脱帽したぞ」
「変なあだ名つけてんじゃねえ!」
もう一人のこの部屋の主、童話作家アンデルセンはいつもの毒舌を彼に向けた。
そして俺とアキレウスはこの部屋で発見してしまった。
『大英雄アキレウスの生涯』と題された薄くない薄い本を。
ちょっと内容は…ごめんなさい下品すぎて紹介できないです。
これでネタはあがった。あとは確認だけだ。
「ねえクズたち。ちょっと聞いてもいい?」
「うーん実に辛辣な呼び名!そして問いはなんでしょうな我がマスターよ?」
「これは二人の完全創作?」
「いえいえ!事実は小説より奇なりと申しましょう!
これはある人物から聞いたアキレウス殿の話を吾輩2人で脚色したものです!
いやあ実に素晴らしいネタをお持ちでした!薄い本も厚くなるというものです!」
「ちなみにその人物の名は?」
シェイクスピアの口から予想通りの名が発せられると同時に
ギリシャ神話最速の英雄はその人物のもとに風となって走り出した。
数秒後、遠くから件の人物たちのやりとりが風に乗って聞こえてくる。
「ヘクトぉーール!!てめえやりやがったなぁ!!」
「やっべ!変態ウスだ!にっげろー」
「変なあだ名つけてんじゃねえ!…痛って!石投げやがったなお前!」
「そらァ! おかわり要るかい!」
「…痛って!いくつ石持ってやがるてめえ!待ちやがれ!!」
「マスター助けてー。次のページで犯されるー」
「止めろ!誤解を上塗りするんじゃねぇ!」
「……コロス……コロス、コロス……ッ!!ウアアアァァッ、ァアアアアッ!!……ッ、アキレウスゥゥウウッ!!」
「ペンテシレイア!ヘクトぉーール!!てめえ汚ねえぞ!!」
英雄って大変なんだな。
俺は心底そう思いつつ、カルデア内で起ころうとしているトロイア戦争に収拾をつけるため必要な人材を呼び出すため行動し始めた。
〇
「そうですか。……あなたにはそのような性癖があったのですね」
俺は裁定者のクラスを担うジャンヌ・ダルクを呼び出していた。
長女気質の彼女は最近召喚されたジーク君の面倒を引き受けており、今日も彼と一緒だった。
「いや、だから違うからな!?」
アキレウスは否定したが……ジャンヌは頑固だった。
「いいえ、誤魔化さずとも良いのです。主はすべてを慈しみ尊びます。
たとえあなたが変質者と謗られようとも、いつか誰かがあなたを理解してくれるでしょう」
「お前も人の話聞かない系かよ!だから、違うって言ってんだろうが!!」
ジャンヌは微笑むとジーク君の手を引いておずおずと立ち上がった。
「ジーク君。行きましょう。あまり彼に近づいては行けませんよ」
「……なんのことかよくわからないが、あなたがそう言うなら善処しよう」
「だーかーらー!!!違うって言ってんだろうが!!!」
アキレウスの悲痛な叫びがシャドウボーダーに木霊していた。
がんばれアキレウス。
人のうわさも75日。
あと70日ぐらいの辛抱だ。
上品でごめんなさいね。