小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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第二部開幕しましたね。
気が付けばこっちの更新、一か月以上放棄してました。
二部でネタもできたので、とりあえずまず一本。

※なので今回の話には2部1章のネタバレが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


星1コモンの絆再び

※今回の話には2部1章のネタバレが含まれています。

それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。

 

 突然の襲撃によってカルデアは崩壊し、全く裏表のない人物な新所長を迎えて虚数潜航による異聞帯切除の新たな旅が始まった。

 

 歴史上のifの出来事があったまま進んでしまった正史とは別のロシアで新たな任務が始まる。

 

 〇

 

「ヒヒ…クッテヤル。クッテヤル」

 

 それは衝撃的な光景だった。

 

 怪物ミノタウロスを名乗っていたからわかってはいたことだったがそれでも衝撃だった。

 

「先輩!ショックはわかりますがしっかりしてください!」

 

 後衛に周ったマシュが通信で語りかけてくる。

 それは遠く、物理的な距離以上に遠くに感じた。

 

 あの純真無垢でバーサーかわいいを地でいくみんなのマスコットが……

 その変わりように俺もぐだ子もただひとこと絞り出すのが精いっぱいだった。

 

「あわわわわわ……」

「アステリオスが悪い子になっちゃった…」

 

 怪物ミノタウロスに俺たちの言葉は届かない。

 

「イマ…ハライッパイ。アトニシヨウ」

 

 そう言うと俺たちを迷宮に残したまま悪い子のアステリオスは去っていった。

 

 その後パツシイとビリー君、くっころファッションの武蔵ちゃんの助けで

迷宮を無事に脱出した俺たちだったがいずれあの子との再戦が避けれない

ことはわかっていた。

 

「迷宮に取り込まれた状態であのミノタウロスと戦えば必死だ。どうするマスター?」

 

 どうにか出口に辿り着くとビリー君が問いかけた。

 ビリー君の言葉に俺とぐだ子はお互いを見合った。

 言葉はいらない。

 「彼ら」で戦う。

 俺たちに迷いは無かった。

 

 

 〇

 

 

 そして皇帝を目前に再び悪い子になったアステリオスと相見えた。

 

「ヒヒ…コワイカ。コワイヨナ。クワレルモンナア!」

 

 許せない……

 バーサーかわいいアステリオスをこんな悪い子にするなんて!

 

「アステリオス!そんな言葉つかっちゃいけません!」

「今、目を覚まさせてあげるからね!みんなお願い!」

 

 俺たちの号令で最初に飛び出したのは和装に身を包み太刀を持った剣士だった。

 

「承知」

 

 伝説のサムライ、オルレアン救国のドラゴンスレイヤー小次郎だ。

 

「アステリオス。思い出すのだ我ら星1コモン同盟結束の強さを!」

 

 小次郎は俊敏な動きでアステリオスを翻弄する。

 

「そなたの曇った眼、覚まさせてくれよう!『秘剣・燕返し』!」

 

 小次郎の太刀がミノタウロスに突き刺さる。

 それは頑強な肉体を貫くには足りなかった。

 だが、確実に「何か」が突き刺さっていた。

 

「ウ…ウ…。コジロウサン…」

 

 続いて反逆のマッスルがアステリオスに全力のぶちかましをお見舞いする。

 

「アステリオス。今の君は圧制者だ!圧制には愛を、圧制には反逆を!」

 

 いつも暑苦しいスパさんだが今日はいつもにも増して暑苦しい。

 

「アステリオス!おぉ!!アステリオス!!!!わが友よ!!!!私の顔を忘れたのか!!!!!私だ!!!!!!スパルタクスだ!!!!!!!君の友、スパルタクスだ!!!!!!!!」

 

 スパさんの頑強な肉体がミノタウロスの頑強な肉体に突き刺さる。

 しかし、まだ足りない。

 それでもやはりスパさんのぶちかましはミノタウロスの「何か」に突き刺さっていた。

 

「ウ……ウ……。スパサン……」

 

 さらにマタハリの魅了とアマデウスの音楽魔術による妨害がアステリオスの足を止める。

 

「アステリオス。クッキー焼いてきたの。あとで一緒に食べましょ?」

「アステリオス。さあ聞かせてあげよう。僕の新曲だよ。タイトルは『俺の尻をなめろ(Leck mich im Arsch) 』だ!」

 

 二人の妨害がミノタウロスの足を止める。

 

「ウ……ウ……。ママ……ヘンタイカメン……」

 

 巨人サイズになったバニヤンが追い打ちをかける。

 

「アステリオス。パンケーキだよ。一緒に食べよう?」

「ウ……ウ……。バニヤン……」

 

 そして、最後に……

 いつもこのパーティーを献身的に支えてきた英雄。

 わが身と引き換えに争いを終わらせた無私無欲の英雄が進み出た。

 

「アステリオス。俺たちは仲間だ。だからよ……お前が悪い子になったなら叱ってやらないとな」

 

 ペルシャの大英雄が矢を番える。

 

「お前にゃ1発きりのとっておきを見せてやる。だからそんな奴らとは手を切れ。

……俺がステラったの見てまだそんな調子だったら恨むぜ」

「ウ…ウ…。ステラサン…」

 

 大英雄の大地を割り国境を築いた究極の一矢がさく裂する。

 

「おしおきだ。きついのいくから、歯を食いしばれ。『流星一条(ステラ)』!」

 

 アーラシュの霊基そのものを使った2重の壊れた幻想が、アステリオスの強靭な肉体に致命的な打撃を与えた。

 

「こじろうさん、すぱさん、まま、へんたいかめん、ばにやん、すてらさん……ぐだお、ぐだこ。

みんな……ごめん……なさい」

 

 その体が光の粒子に包まれて薄れていく。

 

「いいんだよ」

「また会おうね。アステリオス」

 

 小さく頷くその顔にはかすかに微笑みが浮かんでいた。

 

 〇

 

 後日。

 もともとの縁のおかげで無事アステリオスが再召喚された。

 

 そこに早速星1コモンが駆け付けた。

 

 最初に口を開いたのはスパさんだった。

 

「アステリオス。私を殴れ。力一杯殴るのだ」

「……すぱさん?……どうして?」

「君の目を覚まさせるためとはいえ、私は君を殴った。君に殴ってもらわなければ私は君の友でいる資格がない!」

「すぱさん……いく……ぞ!」

 

 こうしてスパさんとアステリオスは健全に殴り合いを始めた。

 

「うふふ……男の子ね」

 

 マタハリがそれを笑って見ていた。

 小次郎とアマデウスは距離を取って見ていた。

 

「私も混ざる!」

 

 巨大化したバニヤンが健全な殴り合いに参加する。

 今日も種火でステラったアーラシュもきっとどこかで見ているのだろう。

 

 

 




というわけで二部ネタでした。
明日二部の題一章ネタでもう一本行きます。

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