リヨ先生の漫画のもじりです。
ネタはあったんですが、更新サボってましたすいません。
今回、誰が主役かはタイトルからお察しください。
「自分に惚れちまいそう……ポッ」
「うわ……キモ(うわ……キモ)」
「うわ……キモ(うわ……キモ)」
新たに出現した特異点、「亜種特異点」に対応するため、カルデアのマスターである俺とぐだ子は既存の戦力たちの底上げをしていた。
今まで後回しにしていた低コストで動いてくれるサーヴァントたちの強化だ。
今日は、能力的な優秀さは認めていたがあまりに気持ち悪くて故意に後回しにしていた黒髭ことエドワード・ティーチをようやく再臨させていた。
再臨することを決めたのは俺たちだが、再臨させた黒髭が予想を超えて気持ち悪かったため俺たちはつい建前すら考えてしまうことを放棄していた。
「ちょっとぉ!マスターたち、本音と建前が一緒!でも、そんな正直なアナタたちが好き!はぁと」
思わず本音と建前が同時に飛び出してしまった俺とぐだ子に黒髭はさらに気持ち悪く絡んできた。
さすがに俺たちも今度はもう少しオブラートに包んだ表現を考えることにした。
「うわ……キモ(いや、黒髭氏。気持ちは嬉しく無く無く無くもないんだけど、黒髭氏はキモいっていうか、無理っていうか……)」
「うわ……キモ(ごめん、黒髭氏。気持ちは嬉しく無く無く無くもないんだけど、黒髭氏はキモいっていうか、生理的に受けつ受けないっていうか……)」
しまった。あまりの気持ち悪さに本音と建前が逆転してた。
「ちょっとぉ!今度は本音と建前が逆!しかも建前も普通にヒドい!もう!そんなこと言われたら、拙者、ソウルジェムが濁って堕天しちゃいますぞ!」
いやいや、お前のソウルジェムとっくに濁りきってドロドロだろ。
いつもなら適当なところでマシュが仲裁してくれるのだが、マシュは別の仕事で手が空かない。
どうやってうまい具合にあしらおうか。
そう思っていると
「ぐだ男!ぐだ子!」
名前を呼ばれた。
初期のころからカルデアにいるよく知った英霊の声だ。
振り返ると、やはりそこにはルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクが居た。
彼女は強力な戦力で清廉な人格者だ。
そして美少女でおっぱいが大きい。
つまり完璧だ。
が、一つ欠点がある。
それは度を超えたレベルで真面目なことだ。
下手な対応をすると長時間のお説教になりかねない。
「あ……そうだね、ジャンヌ。黒髭氏はキモくなんてないよね」
「あ……ちょっと私たちも言い過ぎたかな。ごめんね、黒髭氏。黒髭氏はキモくなんてないよね」
俺たちはジャンヌの扱いを心得ている。
とりあえず素直に謝っておくことにした。
黒髭は「ッハ!まさかジャンヌ氏、拙者のことを?フラグが立つ予感!」とキモい以外の形容のしようがない反応をした。
それに対してジャンヌは……
「二人とも何を言っているのですか?黒髭さんは気持ち悪いです。それは間違いありません」
斜め上の対応をしてきた。
「んん?ジャンヌ?そこは『黒髭さんは気持ち悪くなどありません』っていうところじゃないの……?」
俺の疑問に対してジャンヌはさらに言った。
「いいえ。そのような思ってもいないことは言えません。私も黒髭さんは気持ち悪いと思います。川底に溜まったヘドロの方がまだマシだと思うぐらいです」
ぐだ子が「ん?ん?……ジャ、ジャンヌ?私たちよりヒドいこと言ってない?」と困惑している。
黒髭は呆然としている。
「ですが、どんなに気持ち悪くて、産業廃棄物以下の汚物でも、立派な主の創造物なのです!慈しみを受ける権利があるのです!
何人たりともその存在を否定する権利はありません!」
「やめて!ジャンヌ、もう止めて!俺たちが悪かったよ!これ以上、黒髭氏の傷をえぐらないで!」
「ジャンヌ!もう止めてあげて!私たちが悪かったよ!もう黒髭氏、真っ白だよ!このままじゃ白髭氏になっちゃうよ!」
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「我が憎しみ、我が恨み、思い知ってもらいましょ」
「論理的です!」
数日後。
ジャンヌとジャンヌ・オルタとジャンヌ・オルタ・サンタ・リリィのジャンヌ三姉妹(仮)パーティーでクエストに向かっていた。
このパーティにしたのに特に理由はない。たまたま手の空いてるサーヴァントを集めたらこうなっただけだ。
オルタちゃんことジャンヌ・オルタは他のジャンヌたちのことが苦手でいつも遠ざけようとしている。
俺もぐだ子もそのことは知っている。けっしてこれはオルタちゃんをからかうための遊びではない。
断じて違う。本当だよ。
「ちょっと!最後まで言わせなさいよ!」
「はいはい。かっこいいですね、成長した私」
オルタちゃんの怨嗟の言葉(笑)をリリィが途中で遮った。
恥ずかしくて聞いていられなかったに違いない。
別の存在扱いではあるけど、根本は一緒なので当然の反応だろう。
オルタちゃんとリリィはなおも言い争っていた。
やばい、このままだと面倒くさいことになる。
俺とぐだ子はとっさに止めに入ろうとした。
「オルタ!リリィ!」
一呼吸遅かった。
ジャンヌがスケルトンを旗の物理攻撃で蹴散らしてこちらに向かってきた。
「はいはい、私が悪かったです。聖女様」
オルタちゃんは元々同一存在なので、ジャンヌの真面目さはよくわかっている。
面倒なことになるのは分かっているのでとりあえず謝っておくことにしたようだ。
それに対してジャンヌはより真剣な表情になり、
「いいえ、オルタ。あなたは悪くありません。あなたです、リリィ」
オルタちゃんもリリィも元はジャンヌと同一の存在だ。
それゆえ、ジャンヌのことはよくわかっているはず。
だが、それでもこの展開は意外だったらしい。二人ともポカンとしていた。
「オルタは真剣にかっこいいと思っているのです。……それを否定することは何人たりともできません!」
オルタちゃんとリリィは呆然としていた。
「あの……本来の私、それ、お互いにブーメランなので止めませんか……」
オルタちゃんより先に我に返ったリリィが言った。
しかし、ジャンヌは収まるどころか加熱した。
「いいえ!止めません!彼を見なさい!」
彼、とは手が空いていたので同行してもらった巌窟王、エドモン・ダンテスだった。
協調性ゼロのエドモンはジャンヌ姉妹と連携する気が一切ない様子で、一人で勝手に戦っていた。
「おまえは……地獄を見たことがあるか?
……クハハハハ!
……我が征くは恩讐の彼方───」
……傍から見るとめっちゃ恥ずかしい。
「どうですか?いい年して、少年ジャ●プを読みすぎた中学二年生のようなあの言動!人はあのように自由に生きていいのです!
リリィ……素直な気持ちを言うのです。本当はオルタの言動をどう思ったのですか?」
リリィは「うう……」と小さく唸って白状した。
「すみません、本来の私。……成長した私を見て……ちょっとかっこいいと思ってしまいました……」
それを聞いてジャンヌはにっこりと笑った。
「はい。実は私もです。これでお互いに痛み分けですね」
「はい……自分を繕っていました。ごめんなさい、本来の私」
……アア、イイハナシダナー
「ちょっと!あんたたち何、二人で勝手に分かり合ってるのよ!私が馬鹿みたいじゃない!」
先ほどまで呆然としてプルプル震えていたオルタちゃんがようやく我に返ったようだ。
顔を真っ赤にしてプルプル震えながら叫んだ。
「はい!私たちはそろって馬鹿です。うふふ……意見が合いましたね、オルタ」
本家のジャンヌの方はにっこりと穏やかに微笑んでいた。
「やめて!やめなさい!いい話風にしたら余計に恥ずかしいでしょ!?」
「はい。そうですね。自分に素直になるとは思いの他、恥ずかしいものですね!」
相変わらずジャンヌは穏やかに笑顔を浮かべ、オルタちゃんは真っ赤になってプルプル震えている。
そし、天然生真面目なジャンヌはオルタちゃんに止めを刺しに入った。
「あ、ですのでオルタ、その改造コスチュームの作り方教えてください。私も試してみたいです!」
あ、やばい。
ジャンヌの天然発言がオルタちゃんにクリティカルヒットした。
「あ……あんた、何で私がコスチューム自作してるの知ってるの?」
オルタちゃんは真っ赤になってプルプル震えている。
ジャンヌは追い打ちをかけた。
「ぐだ子からです!あなたとぐだ子はとても仲が良いのですね。私、羨ましいです!
あ、ぐだ男があなたの夢は『池とツーショットで囲みされる事』だと言っていましたが、『池とツーショットで囲みされる』とはどういう意味ですか?」
オルタちゃんの反応を待たず、俺とぐだ子は彼女の眼前から逃亡した。
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また、後日。
俺とぐだ子とマシュ。
つまりいつもの三人は遅い昼食を終えて、業務に戻るところだった。
レクリエーションルームの前を通ると、ジャンヌとオルタちゃんが一緒にゲームをしていた。
マシュが「珍しい組み合わせですね」と言ったが全く同意見だった。
どうやら二人は乙女ゲーに興じているらしい。
乙女ゲーにハマりまくっているオルタちゃんはともかく、ジャンヌも一緒、しかもオルタちゃんはジャンヌのことを避けている。
本当に意外な組み合わせだった。
しかし、穏やかに仲良くゲームとはいかないようだ。
二人の言い争う声が聞こえてきた。
「はぁ!?主人公はプレーヤーの分身なのよ?だったら自分の名前を設定するべきでしょ!?」
「いいえ!ゲームはゲーム!フィクションはフィクションです!自分の世界との線引きはあってしかるべきです!
デフォルトネームで進めるべきです!」
……やっぱりこの二人、根は同じなんだな。
乙女ゲーでそこまで熱く言い争える姿に、やっぱりジャンヌはジャンヌなんだなと思うのだった。
というわけでジャンヌ三姉妹を出しました。
次回は筋肉密度の高いやつにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。