小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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※この話には『Fate/Apocrypha』のネタばれが含まれています。
それでもイイゾイイゾな方はご覧ください。


誰よりもすまない英雄

 フランス・オルレアンの特異点でのことだ。

 

 黒い方のジャンヌが呼び出した大量のワイバーン達の対抗策としてかの地に呼び出されていたはぐれサーヴァント。

 舞い降りし最強の魔竜ことすまな……ジークフリートと介護役のゲオル先生を伴って、俺たちはドンレミからリヨンを経由してオルレアンまでの各地を転戦した。

 

 そして、邪ンヌまであと1歩と迫ったオルレアンでついにすまn……ジークフリートの宿敵ファブニールが現れた。

 

「ジークフリート頼んだ!伝説のドラゴンスレイヤ―の復活だ!」

 

 俺はこの強敵に対し令呪を切って宝具を解放させた。

 

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク )』!」

 

 ドラゴン殺しの魔剣がファブニールを襲う。

 

 魔力の奔流に飲まれた邪竜の姿が視界から消える。

 

 そしてそれが収まったあと……わりと元気そうな姿のファブニールが現れた。

 

「あ…あー、ジ、ジークフリートちょっと残っちゃったね。」

「すまない……。竜相手なのにすまない火力ですまない」

 

 哀愁を帯びたジークフリートの後ろ姿が切ない。

 

「そ、そんなことないよ!ジ、ジークフリートすごーい!う、うわー大ダメージだ!」

 

 ぐだ子も必死で慰めの言葉をかける。

 

「すまない……。気を使わせてしまってすまない……。それと、すまない……のだが竜殺しの効果も切れてしまったようだ」

 

 しまった。相性が関係ないから竜殺しが切れたら、ジークフリートがますますすまなくなってしまう。

 

「小次郎!頼んだ!時間を稼いで!」

「心得た。だが、時間を稼ぐのはいいが――

別に、あれを倒してしまっても構わぬのであろう?」

「やめて!エミヤの黒歴史を抉らないで!」

「ええー?ほんとにござるかぁ?――秘剣『燕返し』」

 

 極東のドラゴンスレイヤーの放った対竜魔剣は一撃で邪竜を完全に沈黙させた。

 

「すごいな、新たなドラゴンスレイヤ―の誕生だ」

 

 そう呟いたジークフリートの大きな背中は少し小さく見えた。

 

××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

 

「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参上した。命令を。

それとすまない…。ピックアップすり抜けで来てしまってすまない…」

 

 オルレアンで縁をつないだ後、暫くして沖田さんのピックアップすり抜けでジークフリートが来やが……来てくれた。

 最終的に沖田さんが来る前にジークフリートが3人来た。

 

 沖田さんを迎えるのに結局4万円弱のi○uneカードを失ったが、毎回申し訳なさそうな表情をして現れる大英雄の姿は良心にチクチクささる。

 誰にも文句を言うつもりにもなれなかった。

 

 ジークフリートとほぼ時を同じくオルレアンで共に戦った白い方のジャンヌも来てくれた。

 ジャンヌ曰く、オルレアン以前にも2人は縁があったらしく

「初対面のようなものだけど良く知っている」というなんとも言い難い表現で彼のことを話してくれた。

 

 さらにその後、アストルフォくんちゃんが来てくれた。

 彼らもまた以前から縁があったらしくジークフリートは控えめに再会を喜んでいた。

 

「黒のライダー、きみも来ていたのか。

そうだ、すまないのだが次から誰かを助けるときは、オレにも声をかけてほしい。

大丈夫だ、オレはもう迷わない。すまない」

「や、やだなあ。セイバー、なんで謝るの?キミは何も悪い事をしてないじゃないか!」

「あ、そ…そうだったな。すまない」

「だから謝らなくていいって!」

 

 それにしてもジークフリートの発言が気になる。

 いったい、二人の間に何があったのだろうか。

『誰かを助けるときは』か。

 謙虚を通り越して自己評価マイナスのジークフリートに聞いても答えて答えてくれなそうだな。

 

「うん!いいよ!」

 

 アストルフォは理性が蒸発している。

 俺とぐだ子が尋ねると全部素直にそのことを話してくれた。

 曰く、ジークフリートはホムンクルスの少年の命を繋ぐために

 自分の心臓を分け与えて聖杯対戦から自ら降りたとのことだった。

 

「その時はどんな感じだったの?」

「えっとね『すまない。本当にすまないのだがこのホムンクルスを助けるつもりはないのだろうか?』

ってセイバーのマスターに聞いたんだけど答えなかったから『すまない』っていってマスターに腹パンして黙らせたんだ。

そうそう、その時も終始『すまない…腹パンしてしまってすまない…』って言ってたね。

それで、自分の心臓を与えるときも『すまない…俺の心臓で助けてしまってすまない…』って言ってたね!

今日会って思ったけど相変わらずだね!セイバーは!もっと自信持てばいいのに!」

「そうだね。あの背中を見ると切なくなってくるもんね」

「うん!ところでどうしてぐだ男はずっとボクのお尻を撫でまわしてるの?」

「それはね、触りたいからだよ!」

「そっか!じゃあ仕方ないね!」

 

 そのあとしばらくぐだ子にゴミを見るような目で見られた上、俺がフェルグスさんの尻の穴を狙っているガチ●モだという噂を流されたのも今では良い思い出だ。

 

 オケアノス、ロンドン、北米を経てキャメロットへ至った俺達はついにジークフリートの最大の見せ場を作る場所を得た。

 まず今回は敵にまわったロンドンの時とは別人のモーさんことモードレッド。

 

 竜属性の彼女の対策として俺たちはジークフリートを連れて前線に赴いた。

 モーさんとジークフリートもまた聖杯対戦で直接ではないけど縁深いという複雑な仲らしくその姿をみた彼女はいきなりクラレントをぶっぱしてきた。

 しかし今回はそう簡単にはすまなくならない。

 オルレアンの後、アーラシュを爆散させまくって手に入れた種火と素材を注ぎ込んで、俺たちは限界までジークフリートの力を取り戻させることに成功した。

 竜殺しの効果で大英雄は宝具の一撃に耐える。

 

「行け!ジークフリート!」

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今落陽に至る。撃ち落とす――『 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク )』!」

 

 ドラゴン殺しの魔剣が反逆の騎士を襲う。

 

 魔力の奔流に飲まれ彼女の姿が視界から消える。

 

 そしてそれが収まったあと……わりと元気そうな姿のモーさんが現れた。

 

「へっ!竜属性相手にそんなもんか?竜殺しは名前だけかよお前?」

 

 暴走のギフトによってモーさんの体に魔力が充填されていく。

 まずい!2射目が来る!

 全体対策に連れてきたダビデさんとジャンヌを呼び出そうとしたらその前に介護役のゲオル先生が食い気味に出てきた。

 

「誰ですか!ジークフリート殿のことをクソ弱いなどと言ったのは!」

 

 いや、ゲオル先生、言ってない。誰もそんなこと言ってないよ……

 

「弱いのはジークフリート殿ではありません!ちゃんと介護をしない我々が悪いのです!

我々がちゃんとしていればジークフリート殿は弱くなどありません!」

 

 ジークフリートは擁護されたせいで余計に気まずくなったらしく「すまない……すまない……」とうわ言のように呟いている。

 

「ぐだ男、やばいよ……このままだとジークフリートが自害しちゃうよ……」とぐだ子が俺に囁く。

「先輩……ジークフリートさんのライフはもうゼロです……」マシュも俺に耳打ちする。

 

 まずい。ゲオル先生は融通の利かない生真面目な人物だが、このパーティーには同等のレベルで生真面目なサーヴァントがいる。

 

「そうです!なんですか!その言い草は!私はジークフリートほど高潔で優しい英雄を知りません!」

 

 案の定、今度は後方からジャンヌが飛び出してきた。 

 

「確かに性能がニッチでピンポイントすぎてマスターたちを悩ませたりはしていますが、そんな分かりやすい性能だけが強さではないのです!

彼のことをクソ弱いなどと言うのは卑怯者の行いです!彼は弱くなどありません!」

「ゲオル先生!悪意が無いのは分かるけど慰めになってないよ!」

「やめて!ジャンヌ!やめてあげて!時に優しさは人を傷つけるんだよ!!」

 

 ゲオル先生とジャンヌの悪意のない言葉がジークフリートを襲う。

 

「すまない…やはり気を使わせていたのか。悩ませるくらいならいっそ工房にくべて欲しい…。本当にすまない…」

「お、おう…。実は今の少しだけ効いたぞ。…その、自信持てよお前」

 

 ジークフリートの哀愁漂う姿はモーさんの良心に突き刺さったらしい。

 

 ちなみにモーさんはダビデさんが石を投げて倒した。

 

 そして俺たちは最後の獅子王の玉座。

 女神ロンゴミニアドに辿り着いた。

 彼女は竜属性のランサー、これだ!この時を待っていたんだ!

 

「少しは見所があるようだな」

 

 ジークフリートの攻撃についに獅子王が神霊と化した真の姿を見せた。

 竜殺しの効果の隙間にゲオル先生とレオニダスとデオンが攻撃を引きつけそれでも補えない時間はマシュとべディヴィエールの防御サポートで耐え抜く。

 竜属性のランサーという最高の相性の相手に対して、その霊基をジークフリートの一撃が確実に削っていく。

 

 勝てる!勝てるんだ!!

 

「ジークフリート!あとひと押しだ!宝具の解放を!」

「了解した」

 

ゲオル先生が粘りジークフリートの溜めの時間を稼ぐ。

 

「聖槍圧縮。我が手に収まる時だ」

「あ、やべ」

 

 追いつめられた獅子王がチャージを連打してきた。

 

「マシュ!防御!」

「駄目です!間に合いません!」

 

 不意の聖槍の一撃がジークフリートを襲う。

 

「地に増え、都市を作り、海を渡り、空を割いた。何の、為に……?聖槍よ、果てを語れ!

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド )』!!」

「すまない…」

哀愁を漂わせながら竜殺しの大英雄は戦闘不能となった。

 

「うむ。余の見せ場だな」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!(ジークフリート殿!後はお任せを)」

 

 獅子王はネロと雪の城ヘラクレスで粘り勝った。

 

×××××××××××××××××××××

 

竜殺しのスキルが強化されたあと喜んで

ダブルマシュとゲオル先生、スパルタ王にガッツ礼装のフル介護で

獅子王をジークフリートさんで倒したのはいい思い出です。

宝具レベル上げたいのでApocryphaピックアップ是非お願いします。

今はバビロニアでムシュフシュ狩ってもらってます。

 




みんな大好きジークフリート。
君のことをレアプリになんかしないとも。

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