マーリンのターンです
「王の話をするとしよう」
花の魔術師がそう口上を述べると地には花が、空からは暖かな日差しが差し込みかの大魔術師が幽閉されていたアヴァロンの塔が再現される。
「星の内海。物見の台。楽園の端から君に聞かせよう。君たちの物語は祝福に満ちていると。
罪無き者のみ通るが良い。『
もはや強敵との戦いではマシュの
「お任せを。夢のように片付けよう」
これも定番となっている
「■■■■■■■。■■■■■■■■!!(では参りましょう。速やかに殲滅します!)」
ギリシャの大英雄の膂力を活かした高速の斬撃が目標を完全に沈黙させた。
××××××××××××××××
「そういえばさ、実際王の話を聞いた事無いよね?」
イベントを完走しきった数日後、日課の種火狩りから帰ってきた俺とぐだ子はマイルームでぐだぐだと過ごしていた。
「マーリンの?」
ぐだ子は黙って相槌を打つ。
言うまでもなくマーリンの意味する王とはかの
カルデアにはアルトリアも召喚されているが、彼女はあまり自分の話をしたがらない。
あの有名なアーサー王伝説をマーリンの口から聞ける。
これって相当に豪華なことじゃないだろうか。
今まで王様たちから直接話を聞こうとしていたが、なんでその発想に至らなかったのだろう?
あの宝具の口上聞き飽きたから耳が拒否反応を起こしてたんだろうか?
俺とぐだ子はマシュを連れて早速マーリンを訊ねることにした。
「ふむ、私の口からアルトリアの話を聞きたいとね。いいとも!お望みのままにお聞かせしよう」
俺たちの「アーサー王の話が聞きたい」というお願いをマーリンはそう言って2つ返事で引き受けた。
そして幼年時代からの長いマーリンの語りが始まった。
「王は5歳のころから剣を含めた英才教育を受けていた。
彼女は始めから全てを持ち王となるべくして生まれてきたのだからね」
話は選定の剣を引きぬく15歳ごろまでのことから始まった。
今の凛とした王気に溢れた彼女とは違う、まだ素朴な子供らしさが残っていた時代のアルトリア。
マーリンの口から語られる彼女の話には新鮮な驚きがあった。
そして話は運命の日からアーサー王伝説と円卓の騎士の黄金期へと進んでいく。
「私は言ったんだ。
『それを手にする前に、きちんと考えたほうがいい。それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ』とね。
しかし彼女は辛い道を選んだ。なんて言ってみたけど内心彼女の選択が波乱に満ちたものになることに心躍らせていたのは内緒だ」
それから10年は安定した統治が続いた。
「でもねブリテンの滅びは覆せないものだったんだ」
その後ブリテンは凶作が続き、ヴォーディガーンさえいなくなれば飢えは無くなると考えた民の人心も離れ、それでも正しくあろうとした王は孤立して
カムランの丘での滅びの時が訪れた。
「王の最後の時には幽閉されていたのだけど、私は知っての通り千里眼持ちだからね。
見えてしまったんだ。王がブリテンの救済を求めてしまったことを。
故に、彼女はあの丘に留まり、死の淵であらゆる時代に召還され、幾度と無く聖杯を求めることとなった。
英霊になって聖杯を手に入れるのではなく、聖杯を手に入れる為に抑止力への前借りをしての戦いをね。
私はそれはそれで構わないと思ったんだよ?その決断も彼女の勝手だからね。
でもその結果を得るための方法……選定のやり直しという自己否定だけは認められなかった」
そこで疑問に思った俺は口をはさんだ。
「え、でも前聞いた時アルトリアは聖杯への望みを持ってないみたいだったよ?
『悪しきものであるのなら、正すまでです』って……」
マーリンは俺の疑問に対していつもの悪戯っぽい微笑を浮かべ、答えた。
「ふむ、この話には続きがあるんだ。私は滅びを待つだけしかないのを知っていながら彼女の探索を続けた。
そしてある時、彼女がブリテンの結末を受け入れ選定のやり直しを求めることを誤りとしたことに気が付いた。
私の千里眼は現在しか見通せないからね。いったい彼女が参戦した21世紀の聖杯戦争でどんな出会いがあったのか知る由もなかった。
その時はね。でもこう思ったよ『美しい!なんて奇跡だ!まさかこんな結末があるなんて!』ってね。さてここからが大事なんだけど」
マーリンはそれからおよそ1500年後に知った事実。
二度の聖杯戦争に参戦した彼女の話を始めた。
どちらも俺の知っている世界とは違う正規に行われた冬木の聖杯戦争の話だった。
一度目はマスターと分かりあえず、自らの手で聖杯を破壊した彼女は絶望をより深いものとした。
そして二度目。彼女は運命に出会った。
「アルトリアの二人目のマスター。
彼は朴訥な青年だけど……異常者だった。自分の命がとても軽い。他者のためになることでしか自分の生存する理由を見つけられない。
アルトリアとそっくりな頑固者だ。頑固者通しぶつかり合いながら彼らは絆を深めていった。
そしてバーサーカーとして召喚されたかのギリシャの大英雄との戦いの際、枯渇していた彼女に魔力を供給するため、森にある廃屋でアーチャーのマスターである少女を交えて……
3人で×××(自主規制)したんだ。つまり今度は裸でぶつかり合いしたわけだ。……我ながらうまい事を言ったね」
あまりの唐突な展開に俺もぐだ子もマシュ理解が追いつかない。
「「「え?え!?」」」
「だから○○〇(自主規制)したんだよ。三人で。体液の交換は古典的な魔力供給の手段だからね。
しかし初体験が3Pだなんて私も流石に驚いたなあ。それと英雄王との最後の戦いの前にも〇○○(自主規制)したんだけど。
その時には緊張して××ちゃった彼の○○〇(自主規制)を『……かわいい。すぐ、大きくしてあげないと』などと言って
口で彼の×××を○○〇〇〇(自主規制)してたけど『殿方の悦ばせ方は知っています』ってやはり魔術で○○〇(自主規制)を生やした経験が活きたのかな?
ほら、彼女は生前、表向きは男性として振舞っていたからね。私のファインプレーだね!」
その後マーリンの口から次々に生々しいアルトリアの○○〇(自主規制)話が飛び出してきた。
「……いやあ、まさかアルトリアがあんな女の表情を見せるなんて!長生きはするものだね。
ああ、そうそう。それにあらゆる可能性を内包した4日間では風呂場で○○〇(自主規制)してたなあ。
最初は湯船の中で、その後湯船から出て壁に手をついてだね、後ろからこう……。おや?誰か来たようだ?」
何かに気付いたマーリンが入口に目をやる。
つられて俺たちも同じ方向に目を向けた。
次の瞬間だった。
「マーリン!マーリンはどこですか!!あの不届き者め!!!我が剣の錆にしてくれます!!!」
顔を真っ赤に上気させた件の人物、騎士王アルトリアが聖剣エクスカリバーを手に飛び込んできた。
「マーリンならすぐそこに…」
と言いかけて振り返ると、先ほどまで彼がいた場所には空白が広がっていた。
……幻術使ったな。
「おのれ!マーリンめ!こうなったらアヴァロンまで直接行って本体を斬り伏せてやりますとも!!徒歩で!!」
その後、エミヤが宥めに入るまでアルトリアの怒りは収まらず、ランスロットとトリスタンとガウェインが巻き添えで犠牲となった。
ちなみに3人ともアルトリアに八つ当たりされてほんのり嬉しそうだったことを付け加えておく。
王様って大変なんだな。
俺は心からそう思った。