小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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久しぶり更新です。
基本、下ネタです。
つまりいつも通り。
よろしければどうぞ。


男たちの絆 前編

「あー女湯覗きたいなぁ」

 

 部屋で一緒にギャルゲーに興じていたオリオンは俺の一言をあからさまに無視した。

 

 俺とオリオンは定期的にギャルゲーをプレーする同好の士だ。

 先ほどまで俺は真面目で世話好きな後輩ちゃんルートを攻略していた。

 もう何回も攻略しているが素晴らしい。

 オリオンに「なんかこの子、マシュちゃんに似てないか?お前どんだけマシュちゃんのこと好きなんだよ」

 と聞かれたので「マシュのことを考えると思わず股間がふっくらしてくるぐらい好き」と答えたらオリオンは明らかに呆れていた。

 オリオンに呆れられるなんて俺ってちょっとすごいかも。

 

「誰かトラップを躱す技術持ってそうな狩人はいないかな。具体的に言うとオリオンとか」

 

 オリオンは俺の一言を無視したが俺は挫けることなく改めて言った。

 やはりオリオンは無反応だった。

 

「誰かトラップを躱す技術持ってそうな狩人はいないかな。具体的に言うとオリオンとか。チラッチラッ」

 

 諦めたらしい。

 ようやくオリオンが反応を返した。 

 

「……協力しないからな。後のこと考えると怖すぎる。アルテミスとか。アルテミスとか」

 

 最近、ローマの特異点で微小な異常が見つかり調査をしていた。

 その時、いい感じの温泉が湧いているのを見つけたのだ。

 

 ダヴィンチちゃんの説明によるとイタリアは火山国なので温泉の湧いている場所は珍しくないらしい。

 レイシフトをするのは今では国連の許可が必要だが折角だから慰労としてみんなで温泉なんてどうだろうという話になった。

 

 温泉が湧いていたのがかなりの僻地であったため、人目に付く可能性も低い。

 無断レイシフトの隠蔽はダヴィンチちゃんとホームズに任せて行ってみようかということになった。

 

 温泉。

 

 もう覗きしかない。

 

 思春期の俺がそう思うのは仕方ない。

 俺は悪くない。

 

「ぐだ男」

「はい」

 

 一緒に話を聞いていたぐだ子は俺の悪心を悟ったらしい(勘のいいやつめ)

 

「覗いたら殺す」

 

 鬼の形相だった。

 こういう時はこう言うに限る。

 

「わかってるよ……その代わり今夜お前でいっぱいオ●ニーしてやる!

……痛い!痛い!ごめんなさい!ヒュドラダガーで殴らないで!死んじゃう!」

 

 俺たちのやり取りをマシュは困り顔で見ていた。

 俺がどうにかしてぐだ子にヒュドラダガーを収めさせると

 

「私は先輩になら見られてもいいんですが……は!やっぱり駄目です!エッチなのはいけないと思います!」

 

 マシュかわいい……

 思わず股間がふっくらしてしまったのは秘密だ。

 

 カルデアには魅力的な女性が大勢いる。

 一番かわいいのはマシュだ。異論は認めない。

 

 それ以外なら……回答にはさんざん悩むが俺はぐだ子の名前を挙げたい。

 初めて出会ったとき彼女は俺と同じように数合わせで選ばれた何も知らない迷い猫のような存在だった。

 

 俺がカルデアで最初に出会ったのは廊下で寝ていた俺を起こしたマシュだったが、次に出会ったのが同じく廊下で寝ていたぐだ子だった。

 静かに寝息を立てている彼女を発見した時。俺はまず「かわいい子だな」と思ったがその次におっぱいを見た。

 あのどこのエロジジイが考えたのかわからない(考案したどこかの誰かありがとう)乳ベルトに挟まれた立派な山が寝息に合わせて上下していた。

 目を覚ました彼女に俺はとりあえず一発殴られた。

 「どこ見てるの?」と聞かれたので「おっぱい!」と答えたのがいけなかったのだろうが、それからすぐに仲良くなれたのは正直に答えたおかげだと思っている。

 時々リヨ形態に変化した時の彼女は手の付けられない暴力の化身になるが普段は至って気のいい人物だ。

 キモオタな黒髭氏にさえ普通に接している。

 彼女は男の英霊たちから絶大な人気を誇っているが当然の結果だろう。

 

 それにマシュだ。

 俺はマシュに初めて出会ったとき「……か、かわいい」と思ったが今では「かわいすぎて死ねる」と思っている。

 最初に出会ったとき、彼女は地味なカルデアの制服姿で眼鏡をかけていたが、その素材の素晴らしさに俺は気づいていた。

 冬木で突然の戦闘になったとき、マシュはあのやたら露出度の高いサーヴァントの格好に転身したわけだが

「これは……大量破壊兵器だ」と俺は思った。

 そして前かがみになった。俺はおっぱい星人なのでまずパッツンパッツンに張ったおっぱいを見たが、あの肉付きの良いお尻も素晴らしい。

 おっぱい星人の俺がお尻星人にもなれることを彼女は証明してくれた。

 戦闘しながら絶えずガン見していたらオルガマリー所長とぐだ子に思い切り睨まれたのは今ではいい思い出だ。

 どうにか冬木を生き延びた後、帰ってオ●ニーしたのは言うまでもあるまい。

 子供の方の英雄王が「彼女は隠れわがままボディと見ました」と言っていたが、さすがは英雄王、慧眼だ。

 あのあとこっそりと彼と固い握手を交した。

 

「つまりだな……」

 

 俺の長い話が終わるころ、オリオンは完全に呆れていた。

 オリオンに呆れられるとはやはり俺もなかなかのものらしい。

 

「見たいんだ。すっごく!ものすごく見たいんだ!」

「手伝わないぞ!手伝わないからな!」

 

 オリオンは全力で否定した。

 俺の熱意は伝わらなかったようだ。

 では仕方ない。

 この手は使いたくなかったが

 

「仕方ない。もうアルテミスにチクるしかないか……」

「いや、アルテミスにチクったらお前の好感度が下がるだけだろ」

「ん?何言ってるんだい?オリオン。誘ったのはオリオンじゃないか」

「いやいや!誘ったお前だろ!……ッハ!お前まさか!!」

「俺の言うこととオリオンの言うこと。アルテミスはどっちを信じるかなぁ?」

「ちょおま!何だそれ!俺もうデスオアダイじゃねえか!」

 

 効果覿面だった。

 オリオンは渋々俺に従った。

 

 原始的な自然に湧いている温泉であるため、仕切りも脱衣所もない。

 温泉には男女交互に入ることになっていた。

 つまり覗くには静かに待っているように見せかけてやるしかない。

 

 俺はオリオンと一緒に地図と睨みあい入念に策を練った。

 ――夢中になりすぎていたせいか……いつの間にか部屋に入ってきている人物がいた。

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

 第三者の声が聞こえた。

 異世界の騎士王アーサーだった。

 アーサーはイケメンをいつも以上にイケメンにして真剣な面持ちで俺たちを見ていた。

 

 ノックをしたが在室中の筈なのにいつまでたっても出てこないから不安になり勝手に入ったそうだ。

 クソ!なんて気の利くやつ!

 このイケメンめ!

 

 やばい。絶対怒られる……

 

 俺はそう覚悟したのだが……

 

「覗きかい?ではお供しよう」

 

 ……え?

 ……何言ってんの?

 

「だから覗きだろう?お供するとも」

 

「いや、でも覗きだよ?」俺が言うとアーサーはより真剣な面差しになって

 

「ぐだ男。マシュの――好きな子の裸を見たいというのは当然の願望だ。

犯罪ではあるかもしれないけど、君は人として、男としては間違っていない。

どう言い繕おうとも僕らサーヴァントは破壊兵器だ。

女湯の壁など切り伏せてみせるさ!」

 

 アーサー……

 

 このイケメンめ!!!

 

 「ありがとう」という俺の言葉に対し、彼は答えた。

 

「僕だけじゃない。彼らも同じ気持ちのようだよ」

「彼ら?」

 

 「彼ら」が――「男たち」がいつの間にかそこに在った。

 

「共に戦えるのがこれほど嬉しいとは。マスター。御身は私がお守りします」

 

 ランスロット……

 

「我々はただ女性の裸が見たいだけなのに……それが『犯罪』と謗られてしまうとは。私は悲しい。共にこの理不尽を嘆きましょう」

 

 トリスタン……

 

「太陽の騎士、ガウェイン!ここに!いざ、すべて(裸)を白日の下に!」

 

 ガウェイン……

 

「あっちには師匠もいるんだぜ?探知のルーン。誰が対処するんだ?」

 

 兄貴……

 

「悪いことするときは目瞑ってやるって言っただろ?任せとけ。お前のことは俺が守ってやるよ」

 

 ベオさん……

 

「覗き!犯罪!つまり――反逆!行くぞ!わが愛は爆発する!!」

 

 スパさん……

 

「すでに海上から最短ルートを探索済みですぞwwwこの黒髭に慢心はないと思っていただきたい!」

 

 黒髭氏……

 

「拙者はそなたの守り刀だ。道具故、存分に振るってくれ」

 

 小次郎……

 

「ぐだ男くん。この覗きはきっと多くの困難を伴うだろう。でもね、苦難のない覗きなんてただのタスクだ。

私は君を支えよう。なに、最悪の場合、夢の世界に逃げ込めばいいさ」

 

 マーリン……

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!」

 

 ヘラクレス……

 

「■■■■■■■■ーーー」

 

 え?メディアさんが?

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!■■■■■■■■■■■……」

 

 え?そんなことしてたの?

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!!!!!」

 

 うん、嫌なもの見ちゃったね……

 

 

 俺たちは顔を見合わせ、そして静かに頷いた。

 もう言葉は必要なかった。

 

 こうして勇者たちが揃った。

 俺たちの戦いは――これからだ!!!

 




後編に続きます。

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