小説でわかる幕間の物語   作:ニコ・トスカーニ

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秘剣○○返し!!


オルレアンの大英雄

 フランス救国の救世主の話をしよう。

 

 数合わせで選ばれた穴埋めマスターの俺が

 人理救済などという大それた任務について2つ目の特異点。

 かの侍はそこで伝説となった。

 

×××××××××××××××××××××××××××××××××

 

 第1の聖杯、オルレアン。

 

 復讐者として闇に落ちて召喚された聖処女ジャンヌ・ダルクは自分を裏切った祖国を滅ぼすべく大量の竜種を召喚してかの地を蹂躙していた。

 

 冬木の特異点の後、召喚に応じてくれたキャスター、クー・フー・リンにとって

ワイバーンを始めとする竜種は相性の悪い敵であり苦戦を強いられていた。

 だが、俺たちはその時まだ知らなかった。

 後にオルレアンの救世主として語られることになる雅な侍がワイバーン達の天敵であることを。

 

「アンサズ!」

 

 何度目かになるキャスターの炎のルーンがワイバーンを包む。

 しかし、竜の固い鱗に覆われた皮膚を傷つけることはできない。

 

「ルーンだけってのもやっかいなもんだな。槍さえあればどうにかなるんだが」

 槍兵への未練を口にしながら詠唱を続けるがこのままではジリ貧なのは間違いない。

 

 盾となり竜種達の強力な攻撃から皆を守っているマシュもこの様子ではそう長く持たないだろう。

 

 どうすれば…。

 次の手を考えあぐねている俺の眼前で彼は素早く動いた。

 

 後列から飛び出してきた紫を基調にした羽織の剣士は鋭く正確に竜達の鱗の隙間を断ち切り、次々と撫で切りにしていく。

 

「ふ、遅いな」

 

 彼はそう言いつつ敵をあざ笑うかのように爪による攻撃をただの鋼にすぎない得物でいなし、消耗を最小限に抑えながら敵陣深くに切り込んでいく。

 

「…すごい」

 

 マシュがそう感嘆の声を上げた時には

 地平を覆い尽くさんばかりにいた竜たちは皆完全に沈黙していた。

 

「マスター、ここはあらかた片付けたようだな」

 あれほどの激戦の後にも関わらず、アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎はいつもの飄々とした口調で俺に言った。

 

 俺がああ、と肯定の返事を返そうとした瞬間マシュの切迫した一言が俺の耳に入った。

 

「先輩!巨大竜種接近、ファブニールです!」

 

 マシュの声の方向に視線をやる。

 そこには空を覆い尽くすような巨大な竜種が立ちふさがっていた。

 

 傍らの侍が動く。

 

「ふむ、あれが奴らの親玉といったところか」

 

いつもと変りのないトーンで無形の位のまま敵へと歩みを進める。

間合いまで3歩、2歩、1歩。

 

「さて、ここが勝負どころよな」

無形の位から刀を振り上げ独特の構えをとる。

「秘剣『燕返し』!」

3つの斬劇を同時に放つ回避不能の魔剣がファブニールを襲う。

 

「ファブニール、完全に沈黙しました」

マシュの告げた事実に対して小次郎はいつもの調子でこう言った。

 

「図体だけで存外にあっけない相手であったな。

……やれやれ、あの日の燕に匹敵する難敵にはいつ出会えるものやら」

 

 その後、カルデアとの通信で全員から『お前の切った燕は一体どこの幻想種だ』というツッコミが入ったのは言うまでもない。

 

 




『Fate/Grand Order』のプレイヤーの間では
オルレアンでわんさかでてきた竜系の敵を
小次郎が撫で切りにしていく光景がおなじみの物でした。

実際のところストーリー上では彼は全く出てこないのですが
もしストーリー上にいたらこんな感じだったのかなと。

キャスター兄貴が出てくるのは、兄貴が冬木クリア後に
必ず加入するからです。

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