東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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書いてる最中、気付いたら朝になっていた(寝落ちしてた)
何を言ってるのか分からないと思うが何が起きたのか(ry

とまぁ、遅れて申し訳ないです。

今回は題名通り竜宮の使いまで。
次回はどちらの異変もやる予定。


12、「天狗の領域 竜宮の使い」

 side Hakurei Reimu

 

 ──妖怪の山

 

 博麗神社から飛び出した後、自分の直感に身を任せ、妖怪の山を突き進んでいた。

 

「はぁー、酷い天気......。傘持ってくればよかったわ」

 

 山では珍しく強い風が吹き、雨が私の封魔針のように鋭く刺さる。

 

 ──妖怪の気持ちが分かった気がするわ。針じゃなくて雨だけど。

「風と雨が似合いそうなやつと言えば、一人しか思い付かないけど......」

「ちょいと、こんな風が強い日に山に来るなんて死ぬ気ですか?」

 

 山を進んでいると、木の影から背中に鴉の黒い翼を生やし、赤い山伏風の帽子を被った天狗が現れる。

 その天狗とは、鴉天狗で文々。新聞を営む射命丸文だった。

 

 文は私に呆れと警戒の眼差しを向けて、口を開いた。

 

「それと、その一人って私のこと?」

「そうよ。あんたには風と雨がお似合いじゃない?」

「あやや。最初から喧嘩を売るつもりですね。霊夢さん。ここは妖怪の山ですよ? 妖怪の山(ここ)に立ち入ったらどうなるか知っているでしょう?」

 

 私の身を案じているのか、はたまた面倒事になるのを恐れているのか。文は心配そうに私に話しかける。

 

「ごめんなさいね。異変よ。この先に異変を起こしたやつが居そうな気がするから通してくれない? 大丈夫。面倒事は起こさないから」

「気がする、という言葉が不安なんですが......。霊夢さんの頼みといえ、確かな確証も無しにここは通せません。潔く引き返して神社でゆっくりしててください」

「その神社が地震で壊れたのよ!」

「そう、神社が......神社が!? え、け、結界は......いえ、あれは神社じゃなくて......。そもそも、そうなったら紫さんが動きますよね。ならまだ安心っと......」

 

 事の重大性を知っていたのか、文は少し慌てるもすぐに落ち着きを取り戻す。

 やはり、こういう時に新聞屋の客観的な考えを持つ文は強いのだろう。

 

「分かってくれた? なら通ってもいいかしら」

「あ、それとこれとは別の話です。確かな証拠があれば、私も仲間達に説得はしますよ?

 でも、無いなら説得なんてできませんから」

 

 いや、訂正しよう。天狗としてお堅い文は非常に面倒臭い、と。

 

 頭の中で考えを巡らしても、この状況を打破できる方法が思い付かない。

 下手に倒せば他の天狗が報復しにやって来て余計に時間を使う。

 

 ──一体どうすれば......あら?

 

 文を見て気付くと、即座に自分の体にも目を向けた。

 

「どうしました? 何か見つけたように......」

「ねぇ、文? その緋色の霧、何か知ってる?」

 

 文や私の体から、吸血鬼の時とはまた違った緋色の霧が出ていた。

 

 出ていく霧は、薄らと見えにくいものの、その霧が周りの天気を変えているようだった。

 その人の持つ気質の天気へと。

 

「霧? ......あ、本当だわ。でも、霧と言えば紅魔館では? ここには用が無いはずですよ?」

「いえ、これはあれとは別ね。どちらかと言うと、気質関連の......」

「気質? ......気質と言えば、天界、ですかね」

「天界?」

 

 聞き慣れない単語が出てきた。が、名前は聞いたことがある。

 天人が住む場所としか知らないが。

 

「そう、天界。この山上空を昇っていけばたどり着ける天人が住む桃源郷。話によると、すごく退屈そうな場所らしいですよ。私は行ったことがないので」

「ふーん。......で、どうして気質で天界が?」

「あー、それはですね、天人はその名の如く、天を操れる剣を持つとかなんとか」

「ふーん......天をねぇ」

 

 よく見ると、山の上には緋色っぽい色をした雲が漂っている。

 そこに私や魔理沙、文みたいに居るだけで天気が変わる人がいるのか、黒幕がいるのかは分からないが、文の話もあるし、一度見に行った方が良さそうだ。

 

「じゃ、行っていいかしら?」

「え? 何処へですか?」

「そりゃ......天界だけど」

「あ、ここは通せません。......ここから先は天狗の地。鴉天狗である私が通すわけないわよ?」

 

 文は、新聞記者としてではなく、一人の鴉天狗として立ちはだかった。

 

 ──こういう時の文は、いえ、文に限らず天狗達は面倒臭いわね......。強いし。

 

「今完全に通す流れだったじゃない! はぁー、いいわ。貴女を通して先に進むことにするわ」

「できるといいわね」

 

 文はスペルカードを構えると、声を上げて宣言した。

 

 

 

「っ!? ......ここまでね」

 

 何枚かのスペルカードを攻略した後、諦めたように文は両手を上げてそう言い放った。

 

「そこまで本気ならば仕方がないわね。私がみんなに言っておくからさっさと行きなさい。こんなこと、もうないからね? 私もただの鴉天狗に過ぎないんだから」

「言われなくても行くわよ。私の直感が外れた事なんて無いんだから。

 でも......そうね。お礼だけは言っておくわ。ありがとう」

「素直なのかそうじゃないのか......分からないですね。おや?」

 

 文は頭を傾け、天へと目を向ける。

 

 同じように見ると、私達の周りは晴れていたが、やはりというかなんと言うか。山の上にある緋色の雲は晴れていなかった。

 

「本格的に怪しいですね。さぁ、早く異変を解決しに行ってくださいよ」

「はいはい。それじゃあ、天狗のことは任せたわ」

「分かってますよ。......久しぶりに晴れるのを見たなぁ。晴れると気持ちが良いわね」

 

 去り際に文と話すと、山の頂上を目指して飛んでいく。

 

 

 

「これは一体......」

 

 山の頂上よりもさらに上へと昇っていくと、雷雲が渦巻く雲の中へと辿り着いた。

 今までは何処に行っても私の周りは必ず晴れていたにも関わらず。

 

「やはり、私の勘に間違いは無かったわ。この不思議な現象を起こした奴は、この上ね」

「おや? 天狗でもない。河童でもない。ましてや幽霊でもない。

 人間だなんて......。山の上まで人間が来るなんて珍しいですわ」

 

 声の主は雷雲の中を泳ぐようにして現れた。

 

 その声の主は紅い目に紫色の髪を持ち、触角らしき長い物のついた帽子と付けて羽衣を身にまとっていた。羽衣は非常に長く、縁は自ら緋色に光っている。

 

「何者? 少なくとも、雷雨の中を泳いでくるなんて只者じゃないわね」

「だって......この雲は私達が泳ぐ雲。私達は、ある異変を伝えるためだけに空を泳ぐ龍宮の使い。緋色の霧は気質の霧。緋色の空は異常の宏観前兆。緋色の雲は大地を揺るがすでしょう。私達はそれを伝えに泳ぐのです」

「大地を揺るがすですって!?も、もしかして......」

 

 気質に緋色の霧や空。そして、大地を揺るがす。

 ここまで知っていて、この人が無関係であるとは私には思えない。

 

 ──なんとかして話を聞き出し、必要とあれば倒さないと。

 

「そう、地震の事です。まだ大丈夫だけどね。

 もうすぐ大きな地震が起きる。私はそれをみんなに伝えるだけ」

「ちょっ、ちょっと、地震ならもうあったわよ! 私、それで酷い目に遭ったんだから!」

 

 思い返すだけでもふつふつと怒りが湧いてくる。

 

 寝るところも無くなり、賽銭箱も無くなったのだから、怒りは当然だろうが。

 

「え? 地震がもう起きたですって? おかしいですわねぇ」

「あー、そうだった思い出した。神社が壊れたんだった。何とかしないとー......ちらっ」

「地震があったら、この雲も収まる筈なんですけど......もしかして、あの方の仕業なのかしら。困ったものですわねぇ」

 

 これ見よがしに言ってみたものの、話を聞かずに竜宮の使いは一人で納得していた。

 

「はぁー......地震が来るって判ってたんでしょ? 何でさっさと教えてくれなかったのよ!」

「神社を襲ったその地震は、きっと試し打ちです。本当の悲劇はこれから始まりますわ」

「もう! どいつもこいつも暢気なんだから!」

「貴方は地震の恐ろしさを既に味わったのなら今すぐ戻って防災の準備をしたらどうですか?」

 

 竜宮の使いの言葉は、私の闘争心に火を付けた。

 

 ──帰る家もないのに防災の準備ですって? 何が何でもおかしな事を企んでいる奴を倒す!

 

「あのねぇ......私の防災はおかしな事を企んでいる奴を倒すことよ!」

 

 そう宣言すると、私はスペルカードを手に取った────


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