今回はフラン視点です。
ただ、子供らしく遊んだり姉の話をしたりと、平和を充実するお話。
side Frandre Scarlet
──紅魔館(フランの部屋)
目覚めの朝。吸血鬼なのに朝に起きるのもおかしいが、今の生活に慣れてしまっているせいか、朝にしか起きれなくなっていた。
さらに、今日は珍しく友達のこいしちゃんが来ていることもあり、遊ぶためにも朝に起きるしかなかった。
「ふにゃぁ......おはよぉ」
「おはよ......。こいしちゃん、猫みたいな声出すんだねー......」
目を開けると普段目に映っているお姉様やルナの顔はなく、代わりに緑色の髪をした少女の顔が目に入っていた。
「あれ? ルナはぁー?」
「フラン。私なら、ここにいる......」
「......何してるの? 大丈夫?」
声が聞こえた方へと目を移す。
すると、ベッドの下に落ちているルナの姿があった。
「二人の寝相悪すぎる......」
「あぁー。それで落ちちゃったの? ごめんね」
「ううん......。落ちたのは私も寝相悪かったから」
「紛らわしっ。はぁー。手、貸そうか? それとも自分で起きれる?」
「......ん」
ルナはしばしの沈黙の後、気だるそうな返事とともに手を差し出す。
──素直に言えばいいのに。どうして恥ずかしがることがあるのよ。
そう思いながらも、手を引っ張り上げ、ルナを起こした。
「あ、ありがと......」
「なんでそんなにしおらしく言うのかなぁ......」
「おぉー。お熱いですねー」
「こいしちゃんはややこしくなるから黙っててっ!」
「えぇー。そんなこと言われると寂しいなー。私も混ぜろー」
「えっ!? なに飛び込んで──」
その言葉が合図となり、こいしが暴れ、戯れ付き、部屋中に騒がしい声が響く。
「あ。私も混ぜて!」
「ルナも!? ちょっと、ベッド壊さないでよっ!?」
「ひゃっほぅ! 祭りだー!」
「祭りじゃないからっ!」
珍しくルナもはしゃぎ、毛布はめちゃくちゃに、誰が投げたのか、ぬいぐるみも普段置かれている場所とは違う場所に転がっていた。
「こ、こいしちゃん。ちょっと、落ち着いて......」
「嫌だー! 自由だー! ひゃっはー! やーっ!」
「もう何言ってるか......あっ、フラン! 枕!」
「え? ぶわっ」
ルナの声に反応できず、投げられた枕に当たった私は、いつの間にか頭に枕をのせ、ベッドの上で倒れていた。
「フランちゃん当たったからフランちゃんの負けねー」
「や、やったわねぇ......。もう怒ったからー!」
「きゃー! フランちゃんが怒ったー」
「わ、私も投げる!」
「っていうか、これどういうルール? ま、いいや。とりあえずさっきの恨みー!」
「そんな攻撃私にぶわっ!」
私の攻撃を合図に、狭いベッドの上で三人だけの枕投げが始まった。
それからどれだけ経ったのだろう。
楽しいこともあり、時間を忘れ、また疲れて眠たくなるほどには遊んでいた気がする。
──家に友達が来るのは初めてだったからか、私も少しテンションを上げすぎたかもしれない。
「はぁー......疲れたー」
「まだだ! まだ終わきゃっ」
「終わりだからね? 起きてすぐに遊ぶのは本当に疲れちゃうわ」
「もっと遊ぼうぜー!」
「それ誰のモノマネ? 遊ぶのはいいけどちょっとだけ休ませてー」
それだけ言うと、毛布を被り、勢いよくベッドに突っ伏した。
これだけ遊んでも疲れている気配がないこいしを横目に、目を閉じようとする。
「あ、寝ちゃダメー!」
「えぇ!? ちょっとだけ休ませてよー」
「私も疲れたから......うん。おやすみ......」
「えぇー!? ......しょぼーん」
「......こいしちゃんってさ、たまに意味の分からない言葉話すよね......」
──稀にお姉様と同じようなことも喋るから、全てが意味の無い言葉ではないんだろうけど。やっぱり、こいしちゃんだけお姉様と通じているみたいで......ずるい気がする。
「失礼な! 意味はちゃんとあるからね!」
私の気持ちなど知る由もなく、顔はいつもの笑顔で、怒っているかのような口調で話す。
──あ、言い方悪かったかな。......謝らないと。
「そうなんだ......ごめ──」
「まぁ、多分だけどね!」
「あ、そ、そっか......。ねぇ、こいしちゃんはさ、お姉様のこと、どう思ってるの?」
ふと思い付いた私は、何気ない会話のように、そう切り出す。
──おそらくはただの友達のはず。というか、そう思いたい。
「唐突だねー。大好きだよー」
「へぇー......えぇー!? ど、どうして!?」
「え? フランちゃんも自分のお姉ちゃんのこと好きじゃないの?」
「......あ、あぁ、そういう......」
勝手に勘違いして、変な汗をかいてしまう。
──ま、まぁ、勝手に勘違いした私が悪いんだけど......。
「な、ならさ。私のお姉様、レナはどう? 好き? 大好き?」
「大好きだよー! ルナちゃんもフランちゃんも大好きよー!」
「......ふふん。そ、そっか。ちょっと嬉しいかも」
「そうなの? あ、フランちゃんはレナのことどう思ってるのー?」
突然そう言われたからか、恥ずかしくて顔が熱く感じる。
──も、もしかして、顔赤くなってない、よね? へ、平常心......平常心を保たないとっ。
「べ、別に......大好き、だけど?」
「ほうほう。それは親愛的な方で? それとも恋愛的な方でかな?」
「も、もう! か、からかわないでよ......」
「にははー。その反応は恋愛的な方だよね! 私もお姉ちゃんのこと好きだから同じだねー」
「そ、それはどちらの意味かによって変わる気も......わふっ!?」
何の前触れもなく、こいしは私に飛び込んできていた。
──あ、なんだか......暖かい。今にも眠ってしまいそうなくらい、暖かくて気持ちいいかも。
「私ねー。お姉ちゃんとはあまり遊べてないの。お姉ちゃんはいんどあで、私はあうとどあ、だからね。でも、そんなお姉ちゃんでもね。遊んでくれる時は、私の遊び方に合わせてくれるんだー」
こいしの温もりを肌で感じながら、静かに目を閉じ、話を聞く。
「......お姉様達と同じだね。レミリアお姉様はお姉様と違って外で遊ぶのが好きな方だけど、仕事? っていうのがあるらしいから。あまり遊べないの。でも、遊んでくれる時は最後まで付き合ってくれるんだよね。もちろん、お姉様もね。お姉様は暇人だから、毎日のように遊んでいる気がするけど」
「ニー......自宅警備員って言うんだよね! 私知ってるよ!」
「んー、多分違うかなぁ......」
その言葉を聞くと、何故か否定したくなる。お姉様の話なのに、まるで自分にも言われている気がするからだ。
「そっか。なら違うんだねー。あ。ルナー。起きてよー」
「ううん......何? まだ寝たーい......」
こいしは私から離れると、次はルナに覆いかぶさるように顔をぺちぺちと叩いていた。
「えぇー! 仕方ないなぁ......お姉ちゃん達来るまで寝ちゃう?」
「もうすぐしたら来ると思うけど......でもなぁ」
寝るよりも、まだ遊びたい。
疲れて眠たいはずなのに、その気持ちだけが強くなっている。
「明日もまた遊びに行くよ?」
「......ふふっ、心でも読んだのかな? ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」
「どういたしましてー。じゃ、寝よっかー」
「まぁ、うん。そうだね。寝よっか」
私とこいしはルナを挟むようにして隣に寝転ぶと、すぐに目を閉じることになった────
余談ですが、ごく稀にレナータ等の絵を描いたりします。気になる方はpixivやTwitterにて投稿しているのでどうぞー。
次回からは異変のお話。霊夢視点が多くなるかな。稀にレナ視点もあるけどね