はい。お待たせしました。Twitterでの投票でお泊まり会となりました。異変の話は次の次です。
夏の番外編はもうしばらくお待ちくださいませ。
というわけで(?)、暇な時にでもコーヒーを片手にゆっくり読んでくださいませ。別にコーヒーじゃなくても、飲み物を飲まなくても全然大丈夫です()
side Renata Scarlet
──紅魔館(レミリアの部屋)
「ふぁっ、ん〜......っ」
いつも通りの朝。
昨日はたくさん動いていたせいか、体が怠く感じて起き上がれない。
「ふぅ。う〜......うん?」
怠さを取るために伸びをして、体を動かしていると、ふと誰かの体に触れた。
──あぁ。昨日はお姉様の部屋で寝たんだっけ......?
「お姉様ぁ......今日も頑張れるように、おはようのちゅーしてー......」
夢現の境を漂いながらも、手探りにお姉様を引き寄せながら、そう呟いた。
「......あ、あの。れ、レナ? 私はさとりですよ......?」
「ふぁ? ......あ、れ? あ、ご、ごめんなさいっ!」
あまりのことにびっくりした私は怠さや眠気を忘れ、飛び上がった。
改めて声の主をよく見ると、確かに自分の姉とは違う顔がそこにはあった。
自分の姉は、さとりとは逆の場所で寝ているようだった。
寝ぼけていたとは言え、私は今の話を他人に聞かれたことで凄く恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。
──たまにはいいだろうと思った矢先にこうなるなんて......うぅ......。
「あ、あの......気にしてないですし、誰にも言わないですからご安心を」
「あれは、いつもしている訳じゃなくて、その、たまにはいいかなぁ、って思ってしたことなので、あの......忘れて下さいっ!」
「は、はい......。一応、心の声が聞こえているので......言わなくても大丈夫ですよ......」
「あっ、あぁ......」
恥ずかしくて顔が紅潮でもしているのか、触れていなくても頬から熱が伝わる。
頭がどうにかして、真っ白になりそうだった。
「そ、そう言えば、どうしてさとりがここに? ここって紅魔館ですよね?」
話題を逸らすために、今更ながらの質問を問いかけた。
「あれ? 憶えてないですか? ......憶えていないようですね。レミリアの提案により、今度はこちらがお泊まりすることになった、というのは憶えていますか? あぁ、それは憶えていると。その話があった翌日、レミリアが早い方がいいだろうと、早速誘って来たんです。まぁ、用事なんて無いに等しいですから、承諾しました。それで、バレないように貴女の魔法を使って夜中にここへ来て、今に至ります」
──うん。本当に会話要らずだなぁ。それにしても、全然思い出せない......。どうしてだろう?
「もしかしてですが、酔っていたからでは?
あの時、顔が赤く、どこか虚ろでボーッとしてましたから」
「酔って......あっ」
さとりの言葉に反応するかのように、突然記憶が蘇ってきた。
──そう言えば、昨日はお酒をお姉様と一緒に飲めるくらいには強くなろうとして、アルコール度数が低いワインをさらに水で割って飲んでたんだった。ぶどうの味がして美味しかったから、ちょっと飲みすぎちゃったのかな?
名前はフランに似てたけど、何ていう名前だっけ......。まぁ、いいや。
「......お酒が苦手なんですね」
「さとりはお酒、大丈夫なのです?」
「いえ。私も苦手ですね。レナ程では無いと思いますけど......」
「やっぱり、私並に苦手な人っていないのですね......。いえ。きっといるはず......。
ところで、さとりはいつから起きていたのです?」
「レナが私を引き寄せた時に起きました。引き寄せた時は、私も起きた直後の記憶が曖昧だったので、またこいしがしているのかと思いましたけど......」
やはり、妹は姉に甘えたがるものだろうか。それとも、私やこいしくらいなのか。
何れにせよ、自分以外にもする人がいて少し安心する。
「......まだ朝食の時間まであるようですし、何かお話でもしませんか?」
「いいですよ。レミリアも起こしますか?」
「えーっと......」
ちらりとお姉様の顔を覗く。
まだ起きる時間には早いのもあって、可愛い寝顔を見せるお姉様は、ぐっすりと気持ち良さそうに寝ている。
「ぁ......」
「......どうしましたか?」
「あ、いえ。何でも無いですよ。お姉様は起こさない方向にしましょう」
「ふむ。気持ち良さそうに寝ているから起こせない、と。それに......あ、いえ。何でも」
「そこまで気にしなくてもいいですけど......ありがとうございますね」
私への配慮の気持ちにお礼を言いながら、そっとお姉様を起こさないように毛布を上げ、横に入り込む。そして、さとりにも手招きした。
「わ、私もですか......!?」
「だって、そうしないと話しにくいですよ?」
「そ、それなら入らなければ......あぁ、はい。寝顔を見ていると気持ちを抑えきれなくなったと。それはそれで大丈夫なんですかね......」
「何があってもお姉様が可愛すぎるのが悪い、で許されますよ」
さとりの話を聞きながらも、自分の姉の頬を撫で、その感触を確かめる。
──いつもはこんなにしないけど......まだ私、酔っちゃっているのかな? でも、やっぱりお姉様のせいだよね。美しく、愛おしく、私に優し過ぎるから......。
「そうですか? ......稀に靄がかかっているかのように、思考が読めない時がありますね......」
「え? す、すいません。意図的って訳じゃなくて、まだ少し、心までは操作しにくいので......」
「いえ。謝ることはありませんよ。心が読めない人はこいし以外、見たことがないですから。
少し物珍しいというか、嬉しいだけなので......」
──やっぱり、思考を読むことは心的に負担がかかるものなのかな? そうだったら、ずっと有耶無耶にしとかないと......。
「いえ。ご心配なさらずに。ただ、こいし以外に意図せずとも心が読めない人が居るのが嬉しくて。心を読まれて、嫌な人は......あ、すいません。ちょっとだけ、暗い話になりそうでした......」
「......嫌なことは話さなくてもいいですよ。ですが、話して楽になりたい時はいつでも相談して下さい。いつでもそれに乗りますので」
「......ふふっ。ありがとうございます」
「お礼なんていいですよ。それよりも......早く横に来てくださいよ。話しにくいです......」
未だに横に寝てくれないさとりを見上げ、懇願するように頼んでみた。
「......貴女を見ていると、こいしを思い出します。甘えん坊なところとかそっくりですから」
「お姉様以外には甘えませんよ? 甘えを見せたら負けだと思っていますし」
「ふふっ。なら今負けていますよ。いえ。まぁ、いいですよ」
そう言うと、さとりはお姉様を起こさないように、私の横に優しく毛布を上げてゆっくりと入ってきた。
「そ、それにしても少し恥ずかしいですね......。こうやって友達と一緒に寝るのは初めてです」
「恥ずかしいですか? 別に、これくらいなら何とも無いですけど......」
「そう......みたいですね。それにしても、レミリアのことが好きですね。レナは」
「はい。大好きですよ。姉としても......。あ、フランやルナも好きですよ。もちろんさとりも」
「えっ? わ、私も、ですか?」
「そう驚かなくても、恋愛的な意味では無く、友人としてですよ?」
「あ、そ、そうですよね......」
何かガッカリするような事でもあったのか、その声は少し残念そうだった。
「い、いえ! そんなことは無いですからね? とても嬉しいですよ?」
「そうなのです? それならいいですけど......」
そう呟きながら、姉を起こさないように少し抱きしめ、その後の温もりの余韻に浸る。
友達の前ですることでも無いが、こういう時にしかできないので致し方ない。
「致し方ないことも無いと思いますけど......。こいしによくされますし......」
「へぇー。こいしもさとりのことが好きなのですね」
「......本当に、そうなんでしょうか......」
「え? ど、どうしてです?」
「こいしはいつもふらふらと何処かへ出掛けてはそのまま長い間家を空けますし......。私、姉として何かしてあげたことなんて、あまり無いですから......」
「それなら心配いらないと思いますよ?」
改めてさとりの目を真っ直ぐ見つめると、そう囁く。
「え? ど、どうしてですか?」
「言わずもがな、ですよ。好きじゃないなら帰ってはきません。それに、姉として何かするなんて、あまり考えなくても大丈夫です。私はお姉様と一緒に居るだけで充分です。話ができるだけで充分です。それだけでも、私は嬉しいですから。こいしも同じだと思います。あの人、遊んでいる時はよくさとりの話をしてくれますから」
「......心を読めば本当のことと分かりました。けど......そう言って下さると、より嬉しいです。
ありがとうございます。レナ。少し、元気が出ました」
「それなら良かったです。さぁ、朝食まではまだ時間があります。もう少し、お話しましょうか」
「えぇ。そうですね」
しばらくの間、お姉様の寝室では、寝息と共に、楽しい会話が響いていた────
次回はこいし中心となります。最近姉組ばっかり焦点が当たっているしね。