最近遅れることが多いですが、できる限り間に合わせします。
今回は後編。
side Renata Scarlet
──地霊殿
「お姉ちゃん達お待たせ〜」
夕ご飯を食べ終える頃にはミアが
お出かけ好きなミアと会うのは、何気に二日ぶりだったりするのだが、元はと言えばミアはもう一人の私。そのせいか、久しぶりに会った、という感覚は全くしない。
「遅かったわね。今日は何処に行ってたの?」
「今日は妖怪の山巡りだよー。危うく天狗に見つかりそうになったり、河童と遊んだりして楽しかったよー。今度お姉ちゃん達も行く?」
「貴女ってチャレンジャーよねぇ。危なかっしくて心配になるわ......」
「大丈夫大丈夫! ここに来るのも本当はダメらしいし、お姉ちゃん達も割とチャレンジャーだからね!」
「大丈夫ではないと思うんだけど......?」
確かに、前に霊夢か魔理沙に聞いたことがある。
地上の妖怪は地底には行ってはいけないという、不可侵条約みたいなのを結んでいるんだとか。
──けど、バレなきゃ大丈夫だよね。バレても友達の家に遊びに行っただけなんだから、本当は咎められる謂れはない......はず。まぁ、ちょっとくらいはあるかもしれないけど......。
「さぁ、食事が冷えますよ。早く食べて、遊びませんか?」
「あ、そうだね。レナ。横失礼。それじゃぁいただきまーす!」
そう呟くと、ミアは私の横に座り、ご飯をもぐもぐと食べ始めた。
──それにしてもよく食べるなぁ。お腹空いてたのかな?
「......お気に召したようで何よりです。えぇ、心を読む程度の能力ですよ。すいません。自動で読んでしまうもので......」
「ううん。自動なのは仕方ないからね。全然大丈夫だよー」
「そうそう。お姉ちゃんはいつもオドオドし過ぎー。もっと外に触れないとねー」
「そ、そうですか......? いえ、私よりも外に触れている貴女が言うのだからそうなんでしょうね」
さとりは自分の妹に向かって、羨ましそうにも見える笑みを浮かべる。
──何か思うことでもあるのかな? ......それともただ単に、妹が羨ましいのかな?
私もたまにあるし......。
「さぁて。ご飯食べ終わったら、みんなでお風呂入ろっか!」
「そうだね! お姉様! 今日は特別ってことで一緒に入ってもいいよね?」
「いつもお願いされれば一緒には入りますよ。ただ、早めに上がるだけで」
私が前世が男だったはず、というのもあり、姉妹と一緒にお風呂に入るのは少し抵抗がある。一緒に寝る程度ならまだ問題は無いのだが、妹や姉の裸を見るのは恥ずかしくておかしくなりそうなのだ。
──それでもまぁ、長い年月を共に過ごしてきた成果もあり、短時間だけならフラン達は大丈夫だ。けど、お姉様は未だに慣れない。いや、慣れるのもダメだろうけど。
「えぇー! 今日くらいゆっくり一緒に入ろうよー!」
「そうよ、レナ。たまにはいいじゃない。それとも、何か悪いことでもあるの?」
「無いですけど......」
「あ、さとり様。お風呂上がりましたよー」
お燐が大きな音を立てて扉を開け、部屋へと入ってくる。
先にお風呂にでも入っていたのか、髪は濡れている様子だった。
──猫ってお風呂とか、水が嫌いなイメージがあるけど、お燐は大丈夫なのかな? 猫でも清潔に保つにはお風呂に入るしか無いし、しょうが無いか。
「あらそう。あ、悪いけど、お片付けお願いね。私達はお風呂に入っているから」
「いいですよー。じゃあ、ごゆっくりしてくださいねー」
「ありがとうね、お燐。あ、着替えとか大丈夫ですか? 無ければお貸ししますが」
「大丈夫よ。無くてもレナの魔法ですぐに取りに行けるしね」
「タクシーか何かですか私は......」
「お金払わない分いいよねー。あ、私一番最初に入るー!」
結局はみんなで一緒に入ることになるのに、こいしはそそくさとお風呂へと向かって行く。
──って、ん? どうしてこいしはタクシー知ってるの......? ある意味怖いんだけど......。
「レミリアお姉様。お姉様をちゃんと連れてきてね。こいしー! 私も行くから待ってー!」
「あ......私も行く!」
こいしにつられて、私の妹達も後を追うように走っていく。
「別に連れて行かれなくても、行くのですが......」
「......道に迷わずに着けばいいんですけど......」
「大丈夫じゃないかなぁ。あ、レナ。先に上がったらダメだからね?」
「はいはい。分かってますよ」
「ミア。そう心配しなくても大丈夫よ。さとり。お風呂まで案内よろしくね」
「はい、分かりました」
さとりに案内され、私達はお風呂へと向かって行く。
案内されたお風呂場の中には、既にフラン達が入っていた。
地霊殿のお風呂はとても一人で入るような狭いお風呂では無く、まるで温泉かのように広い。さらに、男女別で分かれていることや、温泉によくある椅子付きのシャワーが複数あることもあって本当に温泉かと間違いそうになる。
「やっぱり広いのねぇ。紅魔館のお風呂よりも広い気がするわ」
「逆にこれ以外では取得が無いですけどね......。あ。足元にはお気を付けて下さい。滑るので」
お風呂場の中では、フラン達が全員近くの椅子に座って体を洗っている。
フランとルナの二人はシャワーを掛け合ったりして戯れている。
すぐ横に居るこいしは珍しくその遊びには関わらず、我先にと体を洗っている。
「お姉ちゃんってば、それで一回転んだもんねー」
「こ、転んでいません! あれは、ちょっと滑っただけで......」
「あ、お風呂入っていいー?」
「突然話題が変わりますね......できれば体を洗ってからにして下さい」
「じゃぁ、もう洗ったから大丈夫だねー。やっふー!」
「あ、こいし──」
姉の静止する声を無視して、こいしは浴槽の中へと勢いよくダイブする。
浴槽の水は壮大に飛び跳ね、ほぼ満タンまで入っていた水は流れ出し、少なくなってしまった。
「痛ーっ! 頭打ったぁ〜......」
「この娘ったら......。こいし? 大丈夫なの?」
「うん! 大丈夫よー。あ、お姉ちゃんもしたいの? どいた方がいい?」
「やらないのでどかなくてもいいですよ。友達が来て楽しみたい、騒ぎたいという気持ちも分かりますが、程々にして下さいよ?」
「はーい!」
元気にそう返事する辺り、反省をしている様子は無さそうだ。
さとりもそう思っているのか、やれやれとした表情で体を洗いに向かっていた。
──フラン達がやりたそうな目で見ている気がするし、やらないように注意しとかないとなぁ。
「ねぇねぇ。お風呂の後は何かやったりするのー?」
椅子に座り、体を洗っていると、突然、左隣に座っていたミアがそんなことを聞いてきた。
もう片方の椅子には、お姉様が。そして、お姉様のさらに横にはさとりやフラン達が座っている。
「寝るくらいじゃないですかね」
「あら。それじゃ面白くないじゃないの。ねぇ、ミア」
「そうだよー。あ、恋バナでもする?」
「別に好きな人とか居ないので意味無いと思いますよ?」
私は前世ではおそらく男だった。そのせいか、男性には恋心という興味は全く湧かない。いや、もしかしたらいつかは前世のことも全て忘れ、湧くようになるのかもしれないが。
「えぇー? お姉ちゃんのこと好きじゃないのー?」
「えっ? いえ、それは......大好き、ですけど......」
「あら。嬉しいわね。私も好きよ」
「あ、ありがとう、ございます......」
まともにお姉様の方を見ることができない。目の前にある鏡により、顔が熱く、紅潮していくのが分かる。
「あれ、レナ? 大丈夫? ......あ、あぁ、いつものあれねー。そろそろ慣れればいいのに。
そんなんじゃ、まだまだ先なのかなー」
「み、ミア......からかわないで下さい......」
「ん? レナがどうかしたの?」
「な、何でもありません......。あ、先にお風呂に浸かっていますね!」
顔を近付けるお姉様から逃げるように、私は急いで浴槽へと入っていく。
「あ、お姉様が入るなら私も入るー」
「ようやくみんな洗い終わったんだね! 遅かったじゃないかー」
「こいしが早いだけだよー」
「......フラン。あまりくっつかないで下さい。狭いです」
「えぇー! そう言われると悲しいなぁー」
フランの声は明らかに遊び半分で言っているが、顔だけは本当に悲しそうにしていた。
「......むぅ、そんな顔で見ないで下さい......。仕方ないです。少しくらいならいいですよ」
「流石お姉様ー。物分り良いねー」
「レナ。さっき、顔が真っ赤になってたわよ? 無理して長く入らないでよ?」
「あ、お姉様......。は、はい。大丈夫です......」
お姉様がそう言いながら、私の横に入ってきた。後ろからは、ミアやさとりも付いてきている。
「それならいいけど......。貴女、無理し過ぎることがあるから心配なのよねぇ。
あ、そう言えば久しぶりにお風呂に一緒に入るわね。......レナ?」
「......え、あ、そうですね。......お姉様。今日、久しぶりに一緒に寝ますよね。楽しみですか?」
「ふふっ、そうね。楽しみね。今日はミアやさとりも居るから、より一層楽しいでしょうね。けど、ごめんね。私は疲れてるからすぐ寝るつもりなのよ」
「あらま。そうですか......」
お姉様と寝る時も話すことができると期待していたのだが、少し残念だ。
だが、姉が疲れているなら仕方がないと割り切った。
「あー。なんだか頭がふらふらしてきたー。あ、私先に上がるねー」
「え? こ、こいし? それ大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫ー。私、強いからね!」
「こいしちゃんそれフラグ」
「回収速度そんなに早くないから大丈夫!」
「それいつか回収するってことだから大丈夫じゃないよね!?」
何故か、こいしがミアと現代っ子のような会話をしている。
──ミアは分かるけど、こいしはどうして知ってるんだろう......。なんか普通に怖いんだけど。
「......まぁ、そろそろ上がってもいいわね。レナ。上がりましょうか」
何気にお風呂でのお姉様に慣れてはきているが、まだまだ抵抗は多い。
いつかは、完全に慣れているのだろうかと心配はあるが、それはまだ先の話だろう。
「......はい。そうですね」
そんなことを考えながら、私はお姉様の促されるまま、お風呂を上がった────
寝る話や次の話が無いですが、特に何も起きないので割愛しました。申し訳ないです()