東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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稀に朝にも投稿する以下略。

今回から数回はほのぼの回(予定)。異変? ......気にしてはいけない()


7、「地霊殿のお泊まり会 前編」

 side Renata Scarlet

 

 ──地霊殿

 

 外では妖怪の山に神様が来たとかで騒いでいるある日の昼頃。

 そんな騒ぎも関係無いからと無視して、随分前から約束していた地霊殿へと遊びに来た。遊びに、と言っても一日泊まらせて貰う為、お泊まり会と言った方が正しいかもしれないけど。

 館は咲夜達に任せて、ここには私とお姉様とフラン、そしてルナの四人で来ている。ミアも来る予定だけど、用事があるから来るのが夜になるらしい。

 

「お邪魔しまーす!」

「いらっしゃーい! お姉ちゃん! みんな来たよー」

 

 地霊殿へ入ると、嬉しそうにはしゃぐこいしが出迎えてくれた。

 

「こいし。気持ちは分かるけど騒ぎすぎちゃダメよ。......あ、皆さん。この度は、地霊殿へようこそいら──」

「ねぇ、さとり。遊びに来てるんだから、そんな堅苦しい挨拶しなくていいわよ」

「......まぁ、そうですね。じゃあ、改めて。楽しんで帰って下さいね」

「その言い方だとどこかのお店みたいだけど......まぁ、いいわ。今日はよろしくね」

 

 古明地姉妹に案内され、地霊殿の奥へと歩いていく。

 

「ねぇー、フランちゃんとルナちゃーん。一緒に寝なーい?」

「いいよー! あ、お姉様達はどうするー?」

「そうねぇ......さとりの部屋って空いてる?」

「えっ? ま、まぁ、空いてはいますけど......」

「ならさとりの部屋ね。レナとミアもね」

「えっ!? あ、あの......四人で寝るのは無理だと......」

「大丈夫だよ!」

「ひゃっ!?」

 

 さとりは、自分の横で突然大きな声を上げた妹に驚く。

 

 ──なんだか、既視感があるなぁ。......あぁ、私かぁ。

 

「私とお姉ちゃんだけでも広々と寝れるし、四人でも詰めれば大丈夫! あ、私の部屋もね!」

「はぁー......びっくりしたじゃないですか、もう......。それに、四人は流石に......」

「え? どうして? あ、お姉ちゃん達! 私達は遊んでくるね!」

「あっ、ちょっと」

 

 こいしは突然話を切ると、いつものように無邪気にフランとルナの手を引っ張って、地霊殿の奥の方へと走っていった。

 

「あー、引っ張られるー。あ、お姉様達はゆっくりお話でも楽しんでてねー」

 

 見えなくなった後に、フランの声が聞こえるも、何処に行ったのかは声が反響して分からなくなっていた。

 

 ──私も、一緒に連れて行って欲しかったなぁ......。お姉様とさとりの、姉同士の会話に入れるか分からないし。私、姉でもあるけど妹なんだし......。

 

「行っちゃったわね。あの娘達、まだお昼ご飯も食べてないのに......」

「こいしも食べてないんですけどね......。はぁー、先に食べます?」

「そうね。そうしましょう。......レナ。心配してる? それとも一緒に行きたかったの?」

「え? あ、いえ。心配はしますが、私はお姉様と一緒がいいですよ?」

「......あらそう。まぁ、大丈夫よ。遊んでいる内にお腹が空けばあの娘達も帰ってくるでしょうしね。ねぇ、お昼ご飯は何かしら?」

「西洋の妖怪である貴方達のお口に合うか分かりませんが、簡単な和食を用意しています。聞くのも失礼かもしれませんが......和食は大丈夫ですか?」

「ここに来てからよく食べるようになったから大丈夫よ。というか、和食は好きな方よ?」

 

 和食......幻想郷(ここ)の昼食と言えば、よく人間達が焼き魚と煮物、そしてご飯を食べているのを思い出す。

 

 ──正直に言うと、和食は好きではない。だけど、食べれない訳ではない。それに、せっかくさとりが出してくれると言うのに、食べない訳にはいかないよね。まぁ、それよりもお姉様が好きなら、私も好きになりたい。

 

「私も大丈夫ですよ。むしろ好きです。大好きです」

「レナさん。無理しなくてもいいですよ......?」

「む、無理してないですよ? って、レナでいいですからね?」

「あ、そうでした。レナ。私が(さとり)ということをお忘れで?」

 

 さとり達、(さとり)妖怪には、心が読める。読めるとは言っても、通常は表層意識しか読めないが、トラウマを呼び起こすことで、深層意識も間接的に読むことができるとか。

 

 ──まぁ、その能力も、私の能力である程度は防ぐことができるんだけど......。

 

「常時発動程度じゃ、バレちゃいます?」

「バレちゃいますね。まぁ、隠さなくてもいいんですよ? 無理して食べなくてもいいですから。

 ただ、貴女が好きになりたい気持ちは分かりました。好きになれるよう頑張って下さいね」

「......ありがとうございます。あ、秘密にして下さいね」

「えぇ、もちろんです」

「......なんだか蚊帳の外ねぇ。ねぇ、何の話をしていたの?」

「蚊帳の外、というか、貴女にも関係ありますよ。......あ、まぁ、そう言うことです」

 

 さとりはいつの間にか片目を瞑って、お姉様の心を読むのに集中している。

 

 ──次は、私が蚊帳の外なのかな? ......うん、さっきまでのお姉様の気持ちが分かったかも。

 

「......レミリアは妹思いなんですね。それに、妹のことをよく知って......そうではない?」

「あぁー、さとり。この話はまた後でね」

「......ふふっ。えぇ、そうですね」

 

 お姉様達はこちらをちらりと見ると微笑み、止めていた足を再び動かす。

 

「え? お姉様ー? さとりー? どうして笑っているのです? 私にも何か教えて下さいよー!」

「ふふっ。いいから早く来なさい。置いていっちゃうわよ?」

 

 そう言ってどんどん距離を取っていくお姉様達に急ぎ足で歩いて行った。

 

 

 

 しばらく歩いた後、部屋にたどり着いた。

 

「お燐ー! お昼ご飯の支度は終わってますかー?」

 

 さとりはその部屋を少し開けると、

 

「んにゃ。終わってますよー。あ! 昨日言ってたお客様? 強そうなお姉さんだねぇ。あ、そうだ! さとり様! 死んだら死体は貰ってもいいですかい!?」

 

 中から私と同じくらい紅い髪と目を持つ黒っぽい服を着た女性が飛び出してきた。

 その女性は、普通の人間には付いていないはずの黒い猫の耳と二つの尻尾を持っている。

 

 ──耳が四つある気がするんだけど......まぁ、気にしたら負けだよね。

 それにしても、今不吉なこと言ってなかった?

 

「ダメです。というか、死なせません。お客様は丁重に扱ってください」

「えー? まぁ、ご主人様の命令は絶対だからねぇ。ここは退くとしようかなぁ。あ、こいし様は何処です? 遊んできていいですか?」

「ご飯の用意、はまぁ、終わっているんですね。ならいいですよ。あ、こいし達にご飯ができたことを伝えて下さい」

「分かりましたー! では、行ってきますねー。あ、お客さん。死ぬ時は是非私のところに来て下いね? それじゃまた来ます!」

「あ、またっ! ......はぁー、すいません。家のペットが......」

「別にいいわよ。私達はそう簡単には死なないから。それよりも早く食べましょう?」

 

 お姉様はさとりの横の席を座ると、そのまま食事に目を通す。

 

 私もそれにつられる様にお姉様の横へと座ると、食事に目を通した。

 

 焼き魚と煮物とご飯以外にも、味噌汁や酢の物等様々な物が用意されて、よく人里で見る料理よりも豪華に感じる。

 

「......驚きました? あ、いえ。レナの方ですよ。今日は貴方達が来ることになっていましたから、いつもよりも豪華なんです。あ、いえ。お礼は......自分の口で言いたい? あ、すいません」

「いえ。謝る必要は無いですよ。ありがとうございます。紅魔館で食べる和食よりも豪華です」

「そうですか? ......まぁ、何日かに一度の和食であれば、お客様が来た時よりも......えぇ、そうでしょう? ですから、豪華なのは今日と明日くらいですよ」

 

 控えめに言っても凄いのは変わりないと思う。

 

 ──多分、これくらいの量は

 江戸時代や明治なら将軍さんとか偉い人が食べていたんだろうなぁ。まぁ、お姉様も偉いけど。

 

「それじゃぁ、いただきます。あぁ、でもあの娘達は......まぁ、大丈夫よね」

「遊んでお腹が空けばすぐに来ますよ。それに、お燐が呼んできてくれるはずです」

「まぁ、それもそうね。......えぇ、大丈夫みたい」

「......あぁ、能力で。......ほぅ、そんなことも......」

「お姉様。さとり。私も会話に混ぜてくれませんか?」

「......ふふっ。お姉さんが大好きなんですね、レナは。え? こいしも私のことが? ふふっ。ありがとうございますね。そう言ってくれて嬉しいです」

 

 会話が弾む中、私達は妹達が帰ってくるまでゆっくりと食事を進めた。

 

 

 

 食事が終わる頃に、フラン達がお燐と一緒に帰ってきた。しかし、まだまだ遊び足りないようで、ご飯を急いで食べると、再び遊びにへと何処かへ行ってしまった。

 

 正直に言うと、私も行きたかったが出遅れてしまったので仕方がない。

 

 という訳で今は、今日寝るはずのさとりの部屋へと下見、というか暇つぶしに来ている。

 

「へぇー、綺麗な部屋ねぇ。いつも掃除をしているの?」

「毎日はしてませんが、気が向いた時には......」

「私やフラン達と同じですね。お姉様は咲夜に任せっぱなしですし......」

「失礼ね。咲夜がやってくれるって言ってくれるから、任せているだけよ」

 

 ──とか言いながらも、咲夜がやらなければお姉様はやらないんだろうなぁ。

 

 と思っていると、さとりがこちらを見ていた。

 

 それに気付いた私はすぐさま目を逸らす。

 

「......やはり、仲が良いのは素敵なことですね。お互いのことが分かっているという感じがして、本当に良いことだと思います。私も、こいしのことを......え? そう悩まなくてもいいと?

 ......そう、こいしが私のことをそう思って......。えぇ、そうですね。今度、二人きりで話すのもいいかも知れません。ありがとうございます」

「......心の中で話すのもいいけど、私を入れないと怒るわよー?」

「あ、すいません。お姉様」

「まぁ、別にいいんだけどねぇ。私もさっき同じことをしてたし」

 

 珍しく、お姉様は何もせずに留まった。

 

 ──いつも何かするから、逆に怖いんだけどぉ......。

 

「まぁ、そんなことよりも今日はせっかくここに来たのだから、色々と見て回りたいわ」

「ふむ。夕食の時間までまだまだありますし、案内しますよ。少ないでしょうけど、地霊殿の、地底の魅力が伝わればいいですが」

 

 しばらく雑談した後、私達はさとりに案内されて外へと出ていくのであった────




投稿時にお気に入り数が400を超えていたので、近々番外編をしたいと思います。夏だし、丁度いいかもね。
閲覧者の皆様。ありがとうございますm(_ _)m

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