短いのも申し訳ないです()
今回は題名そのまま。次回もほのぼのが続きますが、暇な時にでも読んでくださいまし
side Remilia Scarlet
──紅魔館(図書館)
外では花が咲き乱れ、妖精達が騒ぐある日。
「ねぇパチェー」
「何?」
いつものように暇を持て余していた私は、友人の居る図書館へと来ていた。
「何をしているの?」
「見れば分かるでしょ。魔法の研究よ、研究」
「何か冷たくなーい?」
「さっきから横で煩くして邪魔するからよ。暇なのは分かるけど、耳元でそんなに言われると、流石に集中できないわ」
「そんなぁ......」
親友であるパチェに邪魔と言われるのは、流石に落ち込んだ。
──悪いのは私なんだけど......。
「紅魔館の主が情けない声出さないの。貴女、シスコンの妹は? 暇なら遊んでくればいいじゃないの」
「それが居ないのよねぇ。いつもなら、『お姉様暇です? 遊びません?』とか、『レミリアお姉様遊んでー』とか言ってくるのに......」
「あぁ、暇じゃないのね。それにしても、今の貴女、カリスマの欠片も無いわね。甘えている時の妹達と全く同じようね」
「そりゃあ、妹の前ならしっかりとした姉として振る舞うわよ?
けど、今は居ないんだし、別によくない?」
「......まぁ、貴女がいいならそれでいいけど」
パチェは意味ありげに首を振ると、再び魔法の研究へと意識を戻した。
「え、ちょっとパチェー?」
「見ての通り、暇じゃないのよ。......そうね。せっっかくの機会なんだし、咲夜達の仕事風景でも見に行けば?」
「はぁ? どうして急に?」
「暇なんでしょ? ならいいじゃない。それに、普段どんなことをしてるか知らないでしょ?」
「流石に知ってるわよ。一応、管理も主の役目なんだから。あれでしょ? 美鈴は寝ることが仕事なんでしょ?」
「否定できないのが辛いわ......。でもまぁ、主ならしっかり仕事してるか見るのも仕事でしょ?」
──むぅ......確かにそれもそうだ。
とは、考えてはみるものの、なんか騙されている気がする。でも、悪いことにはならないはずよね。なら別にいっか。
「それもそうね。そうと決まれば、行ってくるわね!」
「えぇ、行ってらっしゃい。ちゃんと妖精メイドの仕事も見てくるのよ」
友が声をかけた時には既に部屋を出た後だった──
「行っちゃいましたね。パチュリー様、どうしてあんな適当なことを?」
「もちろん、邪魔をさせないため。この魔法、意外と危険なのよ。だから、失敗してレミィを巻き込むことが無いように、行かせたのよ」
「それなら素直にそう言えば良かったのではないです?」
「レミィって好奇心旺盛だから。危険だと知ったら余計に見たがるのよ」
「あぁ......流石お嬢様。子供みたいで可愛いですねー」
「実際子供よ。吸血鬼なんだから、あの歳じゃね......」
そんな話をしている頃、友の心境を知らない吸血鬼は、メイドに会うために、館中を駆け回っていた──
図書館から出てしばらく後、私はキッチンでメイドを見つけたのだった。
「咲夜ー、仕事してるー?」
「あ、お嬢様。していますよ。どうなされましたか?」
「紅魔館の主だから、見回りをしているのよ。ねぇ、今は何の仕事をしているの?」
「夕食のご用意ですよ。今日はハンバーグです」
「あら、そうなの? フランが好きな食べ物よねぇ。それで、見たところ貴女一人ね。いつも一人で用意してるの?」
「まぁ、そうですね。稀に妹様達が手伝ってくれますが、主の妹様に手伝わせるのはメイドとして恥ですし、最近は一人が多いですね」
その言葉に私は驚きを隠せなかった。
── 一人で、私達の分を作っていたんだ......。妖精メイドの分が無いとしても、結構多いわよね? それを一人で作ってるなんて......たまには私が作ろうかしら?
「ねぇ、咲夜。大丈夫なの? 過労死しない? なんなら、私が代わってあげるわよ?」
「いえいえ。お嬢様に手伝ってもらうわけにはいきません。過労死しない程度に頑張りますので、ご心配なさらずとも」
「心配するからね? 咲夜は大事な私のメイドなんだから!」
「お嬢様......ありがとうございますっ」
何かあったのか、咲夜は目から涙を浮かべた。
「え、あ、何か悪いことでも言った?」
「いえ、嬉し泣きです......。お嬢様、成長なされましたね」
「え、褒められているんだろうけど、なんか腹立つ。あぁ、咲夜が悪いんじゃないからね? ただ、子供扱いは止めて欲しいわ。子供じゃないんだから」
「あ、これは失礼しました」
「あ、そうだ。妖精メイドは手伝わないの?」
「手伝わせているつもりが、邪魔されている気がするので......」
妖精というのは、確かに好き勝手にはやる。
──だけど、手伝わせているのに邪魔になるってあるの? まぁ、それほど下手なのかもしれないけど。今度、妖精メイド達を集めて、咲夜を手伝えるくらい、教育させようかしら。レナに。
「お嬢様。何か考えているのか分かりませんが、私のことは気にしなくていいですよ?」
「いや、気にするわよ。今度、妖精メイドを教育させるわね。レナに」
「そこはお嬢様じゃないのですね......。その事ですが、大丈夫ですよ。既に何名かの妖精メイドを育てていますから。まだまだかかりそうですけどね」
「あら。そうなの? 今度会わせてくれない? もしかしたら会ってるのかもしれないけど」
「はい、承知しました。お嬢様。お暇な時に呼んでください。その時にでも紹介致します」
「分かったわ。あぁ、じゃぁ、次は美鈴のところに行ってくるから」
「はい、行ってらっしゃいませ」
──咲夜に育てられた妖精メイド......会うのが楽しみだわ。
その楽しみを胸に秘め、食堂を後にした──
「美鈴。また寝てる?」
日傘を持ち、門へと急ぐと、いつものように立ったまま目をつぶっていた美鈴が居た。
「ふわっ!? フラン様!?」
「いえ、レミリアよ。また寝てたの?」
フランと間違われたことに、多少の驚きを持つも、私は淡々と話していく。
「あ、お嬢様? 一人と言うのは珍しいですね。お出かけですか?」
「神社に行く時は一人のことが多いし、別に珍しく無いわよ。今日はね、美鈴がちゃんと仕事してるか見に来たのよ」
「えっ!? 私です!? あ、ちゃんと仕事してますよ? ただ、ちょっと仮眠を取ろうかと思って......」
「それで寝ちゃってたのねぇ。いえ。怒ったりはしないわ。だけどね? 侵入者を入れたら流石に怒るわよ」
「あ、は、はい! もちろん大丈夫です!」
──本当に大丈夫なのかしら。
そうは思っても、美鈴だから大丈夫、とも思える。
こっちに来てからは危険も少ないし、美鈴も肉弾戦ならそれなりに強いから心配するだけ無駄なのかもしれない。
「それならいいわ。それで、さっきはどうしてフランと間違えたの? そんなに似てるかしら?」
「かなり似ていると思いますよ。それに、フラン様はよく話しかけてくれますし。あ、ルナ様もよくご一緒に」
「へぇー......美鈴に......。あの娘、意外と優しいのねぇ」
「そう言われるとなんだか悲しい......いえ、気のせいですよね。私を悪く言ってないですよね」
「......えぇ、悪く言ってないわよ」
「今の間が怖いんですけど!?」
──私は、主だと言うのに、みんなのことをあまり気にかけていなかったかもしれないわね。
「ねぇ、美鈴」
「え? どうしました? またそんなに改まって」
「私、ここの主としてどう思う?」
「もちろん、最高です! お嬢様のお陰でここに居られますし、衣食住も全て揃えれますし、悪いところは全くと言っていいほど無いですから」
「......そう、ありがとう。ああ、フラン達が帰ってきたら、私が寂しがってる、と言っておいて。事実だからねぇ......」
「えっ!? あ、はい!」
珍しいものでも見たかのような眼差しを向けられながら、私は日傘を手に持ち館の中へと戻って行った────
次回は地霊殿へのお泊まり会編。異変とかそっちのけでお泊まり会です()