東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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まず始めに。
それほど長くないのに遅れて申し訳ないですm(_ _)m

今回は題名通り。
なお、レナは出てこない模様。


5、「花の異変」

 side Kirisame Marisa

 

 ──博麗神社

 

 春特有の暖かい風が吹くある日の夕暮れ。

 

 いつものように、いつもと違う出来事、異変が起きた。

 

「霊夢ー! 異変だー!」

 

 そういう訳で、例のごとく神社へとやって来たのだった。

 

「あら。魔法使いの人間じゃない」

 

 しかし、霊夢の姿はそこには無かった。

 

 その代わりと言わんばかりに、一人の吸血鬼が縁側でお茶を飲んで座っていた。

 

「ん、レミリアか。......霊夢は居ないのか?」

「居ないわ。私はお留守番」

「霊夢がお前に留守を任せるとは思えないんだが」

「私が来た時にはもう居なかった。だから勝手に留守番しているのよ。......立ってないで座れば?」

「ん、そうだな。よっと」

 

 私は促されるままにレミリアの横へと座り、レミリアから霊夢のであろうお茶を貰った。

 

「ふぅー......。で、招かれざる客ってやつか。吸血鬼なのに」

「宴会の時に招かれたことがあるから大丈夫よ」

 

 招いたのは私で、霊夢から招いたことは一度も無いけどな。

 

「それで、霊夢は何処に行ったか知らないんだよな」

「知らないけど、異変解決じゃない? こんなにも分かりやすい異変を放っておく人とは思えないから」

「まぁ、放っておいたら、巫女がサボってる、とか思われそうだしな。

 紅い霧の時はギリギリまでサボっていたが」

 

 あの時、幻想郷で最東端に位置する博麗神社(ここ)にも霧が迫っていたくらいだ。

 

 まぁ、あれ以来、異変を長引かせることはあんまり無い......と一瞬思ったりしたが、『春雪異変』の時も長引かせた気がするな。

 それに、『永夜異変』の時は紫が誘ったらしいし、あいつ、全く変わらないな。

 

「『紅霧異変』、懐かしいわねぇ......」

「懐かしいと思うほど経ってないと思うけどな」

「そうかしら? いえ、確かにそんなに経ってないわね。それで? 追わないの?」

「ん、霊夢をか? 何処に行ったか分からないんじゃ、追う術がないぜ」

「勘とか?」

「霊夢じゃないから無理だ」

 

 おそらく、霊夢は今回も自分の勘を頼りに行ったんだろうが......出遅れた私が追いつけるとは思えないんだよなぁ。

 ......まぁ、今回は待ってるか。霊夢が居ないとつまらないしな。

 

「よし、私も留守番するか。レミリア。お前は何時頃来たんだ?」

「憶えてないわ。でも、三時間は経ってると思うわよ」

「待ちすぎだろ。暇なのか?」

「長生きしてると暇な日くらいできるのよ」

 

 それでも三時間は無いだろ......。

 こいつ、暇だから、とか言って暴れてたのを見たことあるけどな。どうしてこういう時は律儀に待つんだろうな。

 

「そう言えば、咲夜やフランとか居ないのか? 妹連中はともかく、咲夜はいつも付いてきてた気がするんだが......?」

「咲夜は買い出し。レナとミアは行方知らず。フランとルナは覚妖怪と遊びに行ったわ。

 他は図書館に篭っていたり、寝てたから一人で来たのよ」

「ふーん......ん? 行方知らずって家出でもしたのか? 珍しく喧嘩でもしたのか?」

「してないから。全然仲良いから。あの娘達は物珍しい物事や幻想郷(ここ)が好きだから、無断で外出すること多いのよ。昔は毎回報告されてたけど、流石に一々聞くのも、ねぇ......」

「あぁ、なるほどな」

 

 めんどくさかったんだな。まぁ、気持ちは分かるが、姉としていいのか、それは。

 人の家のことを言うのも何だがな。

 

「あやや? これはまた珍しい組み合わせですね」

 

 レミリアと話していると、上から鳥の羽ばたく音と共に、そんな声が聞こえた。

 

 音のする方を見ると、そこには烏の黒い翼を持つ烏天狗が浮かんでいた。

 

「もしかして、宴会の準備ですか? それにしては何も準備できてないですが......」

「なんだ文か。それは準備してないからだぜ」

「異変解決に行った霊夢を待ってるのよ」

 

 正確に言えば、本当に異変解決に行ったかどうか分からないけどな。

 この時間だから可能性は低いが、人里に買い物に行ってるかもしれないし。

 

「異変? そう言えば、そんなこと言ってましたね」

「霊夢に会ったのか?」

「会いましたよ。ただ、付いて行こうとしたら、退治されまして......。

 そして、見失ったので仕方なくここに来たわけですよ」

「退治って......何か悪いことでもしたの?」

「いえ、特に何も。妖怪退治中とかで、話し終えた後にやられました」

 

 あぁ......要するに理由も無くやられたと。

 異変の時のあいつ、妖怪に対しては容赦ないな。

 

「話し終えたって、何を話したの?」

「花の異変のことですよ。折角ヒントをあげたのに、お構い無しでした......」

「うわぁ......。まぁ、どうでもいいわね」

「同情してくれるかと思いきや、結構酷いですね」

「だって烏だし」

「烏天狗です。はぁ、もういいです。さて、横失礼しますね」

 

 そう言うと、文は静かにレミリアの横に降り立ち、私達と同じように座り込んだ。

 

「なんだ? お前も霊夢を待つのか?」

「お茶いる? 私のじゃないけど」

「有り難く貰いますね。えぇ、待ちますよ。何処も彼処も花のことで話はいっぱい。

 だからネタのほ......霊夢さんを探してたのです。まぁ、もうしばらくすれば帰ってくると思いますよ。その時は、異変のことを聞きたいですねー」

「そうねぇ......」

 

 やっぱり行かなくて正解だったかもな。入れ違いになってた可能性もあるし。

 

「もうしばらくってことは、今頃は帰ってる途中なのか?」

「さぁ? それは私にも分かりません。

 ......ですが、今頃は誰かと戦っていると思いますよ。思うだけですけどね」

 

 

 

 

 

 side Hakurei Reimu

 

 ──再思の道

 

「はぁー、花の多さに惑わされたわ......」

 

 烏天狗のヒントを受け、幽霊が集まる場所を目指して初めてここに来た。

 

 なかなか来ない場所だし、どういった場所か聞いてないから知らない場所なんだけど。

 

「花と同じく、異常に増えてるモノが二つもあるわね。

 一つは妖精......まぁ、花に浮かれているだけだと思うけど」

「墓場で何ブツブツ言ってんのさ!」

「そして、幽霊が異常に多い! って、あんた誰?」

「あたいは三途の川の一級案内人、小野塚の小町。彼岸で、三途のタイタニックたあ、あたいの船のことさ」

 

 三途の川......そっか。ここがあの世とこの世の......。

 いつの間にか、そんな場所まで来てたのね、私ったら。

 

「別にそこまで聞いてないんだけど。っていうか、タイタニックって何?」

「そんなことはどうでもいいだろ? それよりも、死に急ぐ人間に最初の警告だ。

 三途の渡し船は法外だぞ。神社の賽銭ごときでは渡れないよ」

「渡らないわよ。お金も無いし」

「今なら一割引」

「安いのかよく分からない。って、どうでも良いわよ。

 私は花と同時に幽霊の数が異常に増えてたのを調べに来たのよ」

「幽霊? 花? ああ、幽霊。幽霊? 幽霊が増えただって?」

「幽霊よ。花に惑わされてたけど、よく見たら幽霊だらけじゃない」

「ああ、なんてこと! よく見ると彼岸花も咲いてるし。

 それに、あの紫の桜も......」

 

 小町はあちこち見回すと、何かに怯えるように慌てだした。

 

 もしかしたら、何か知ってるかもしれないわね。

 

「いやまあ、見なかった事にする。それが一番だ」

「するな、何か知ってるわね?」

「じゃ、あたいはこれにて......仕事があるんでねぇ」

「もしかして......あんたが霊達をちゃんと彼岸に渡していない?

 あんたがサボっているから、幻想郷は幽霊だらけなんじゃないの?」

 

 適当に言ってみたが、案外当たってる気がするわね。

 こいつが幽霊を運んでいるみたいだし。

 

「そんなに焦って何処に行く~。って彼岸に行くんだけど」

「ちゃんと仕事をしなさいよ! サボってばかりいないで!

 はぁー、こいつのボスは居ないの?」

「居るけど呼ばれるのは困るわー」

「見つけた......。何サボってるの! 小町!」

「きゃん!」

「あら。ちょうどいいわね。あんたのボスっぽい人が来たじゃない」

 

 何処から来たのか、いつの間にか横から、笏を手に持つ緑色の髪の女性が来ていた。

 

「小町が何時まで経っても霊を運んでこないから様子を見に来れば......此岸は幽霊だらけ花だらけ、挙げ句の果てに小町は巫女とお戯れ。

 あ~あ。小町を最初に見たときはもっと真面目な奴だと思ってたのに」

「え、映姫様......」

「あんたは......この死神のボスよね。この花の異常はあんたらがやったんでしょ?」

「はぁー。今の無縁の霊達は、自分たちが死んだことに気が付いていない。気が付きたくないの。そういう霊は不安定だわ。だからどうしても体を持ちたがる。行き場を失った霊は花を拠り所にするの。だから花が咲いたのね。そう、今の幽霊は外の人。死を予期できなかった無念の霊」

 

 えっと......そういうこと? でも、これ全てが......?

 

「もしかして、この花全てが......外の人間の霊って事?」

「えぇ、そうよ。そして、花は性格、つまり魂の質を表す植物、だから霊とは相性が良いのよ。向日葵には明るかった人間の霊が宿り、彼岸花には友人のいない寂しい霊が宿る。そして、紫の桜は......」

「そう......判ったわ。花自体が何かする訳ではなく、行き場の失った幽霊が増えすぎた事が、この花の異変の原因なのね。そうと判れば、あんたらに何とかして貰わないと困るわ」

 

 私じゃどうもできないし。

 流石に妖怪じゃなくて、幽霊を、それも幻想郷中の花全てをどうにかするなんて、私が出来るわけがない。

 

「そう? 私達は困らないし、貴方もそんなに困らないでしょう? それに、幽霊だって花さえ咲かせれば、まだ生きているつもりでいられるんだから......少しくらい放っておいても良いじゃない」

「そういう問題じゃないのよ! 異変を放っておくと、私がサボっている様に見られるんだから! つべこべ言わずに、あんたらを倒せば元に戻るんでしょう?」

「はぁー......全く。

 貴方は大した理由もなく大勢の妖怪を退治してきた。妖怪では無い者も退治した事も少なくない。さらに巫女なのに神と交流をしない。時には神に牙をむく事もある。そう、貴方は少し業が深すぎる」

 

 ん......なんだか面倒くさそうな予感。

 これ、戦いながら説教される気がするわね。

 

「このままでは、死んでも地獄にすら行けない」

「そ、地獄に行けなければあの世に行くまでよ」

「閻魔の裁きはそんな易しいものでは無い。決定を覆すことは不可能よ。

 もし私が裁きを担当すれば、貴方は非ね」

「失礼ね! 妖怪退治は仕事だもの、仕方が無いじゃないの」

 

 とか言ってみたものの、何もしてない妖怪も......いえ、気にしたら負けね。

 絶対に気にしない。そうした方がいい気がする。

 

「泥棒だって人殺しだって、戦争だって、それが仕事の人もいる。 仕事だから、は罪の免罪符にはならないのよ。

 少しでも罪を減らすために、これから善行を積む必要がある」

「そう、貴方を倒して花を戻してから考えるわ」

「紫の桜は、罪深い人間の霊が宿る花。貴方はその紫の桜が降りしきる下で、断罪するがいい」

 

 緑色の髪の女性は、笏を私に向かって構えてそう言い放った──

 

 

 

 ──約一時間後 博麗神社

 

「もう......もう絶対に、説教とかごめんだわ......」

 

 勝つことができ、尚且つ異変も何とかしてくれることになったが......。

 おそらく小一時間程説教されてしまった。

 

 戦っている時間よりも、説教された時間の方が長いのは初めてだわ。ほんと......。

 

「おぉー。霊夢ー!」

「魔理沙? あら。それにレミリアと文じゃない」

 

 神社まで戻ると、縁側でくつろぎながら、お茶を飲んでいた三人の姿があった。

 

「ってそれ私の家のお茶じゃない!?」

「後で何か持ってくるからいいじゃない。で、異変は解決したの?」

「一応、ね。って、文は何も説明してないの? どうせ全部知ってるんでしょう?」

「あやや。私は全然知りませんね。ですから、霊夢さんの口からお願いします!」

「どうしてこんなに必死なのよ......」

 

 そう言えば、ネタ探しをしてたんだっけ?

 まぁ、別にいいや。それよりも、今は......。

 

「まあいいわよ。でも、明日にして。今日はちょっと疲れたから。

 貴女の質問攻めに耐えれる気がしないわ。で、人の家に居る理由を聞きたいんだけど......まあいいわ。夕ご飯作るけど、あんた達も食べる?」

「おっ、いいのか?」

「ついでよ。ついで。一人作るのも四人作るのも変わらないから」

「なかなかいいネタになりそうですね。私も頂きます!」

「私は......まぁ大丈夫よね。頂くわ。ついでに血も──」

「それは絶対に嫌」

 

 そう言うと、私は夕食の準備を始めたのだった────




次回は最近出番少ない姉妹以外の紅魔館組の話をやりたいと思います。

多分、紅霧異変以来......かな()

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