永夜抄EXの話が諸事情により飛ばされただけなので()
夏という訳でちょっとだけ夏の要素。
ある意味二つのホラー要素があります故、ご注意ください()
side Remilia Scarlet
──博麗神社
「第二回、肝試し大会始めるわよー」
それは、異変が終わってから数ヶ月後のことだ。
突然、館に魔理沙がやってきて、『肝試しやるから前のメンバーで来い』と言われた時はびっくりしたが、前のように戦うことが無いのなら、それはそれで楽しそうということで来てみた。
「ねぇ、どうしてまたやるのよ?」
「だって普通の肝試しやってないじゃない? せっかく面白いおも......友人ができたんだから、誘わない手はないと思わない?」
「今玩具とか言いかけたでしょ? っていうか、どうしてまたここなの?
肝試しやるだけなら紅魔館とか永遠亭でいいじゃない」
「それはほら。妹紅の時に集まった場所の方が分かりやすくていいでしょう?」
「確かにそうだけど......」
確かに輝夜の言う通り、分かりやすいのは分かりやすかったわね。
ただまぁ、前回のことがあるから警戒はするけど。
「で、メンバーはどうするの? 同じメンバーを呼んだってことは同じなの?」
「いえ、幽々子やアリス、紫がお化け役に回ったり冬眠してるみたいだから、いないメンバー同士で混ぜるわよ。ってことで
「適当だな。まぁ、いいけどな」
「えぇ......私は妖夢とかぁ......」
「どうしてそんな残念そうにするんですか......」
「だって妖夢って怖がりでしょ? だからねぇ......」
「そんなに酷くないから!」
「お嬢様方。大丈夫でしょうか?」
「私は大丈夫よ。全然平気。レナも大丈夫よね?」
「お姉様が一緒なら大丈夫です!」
「......前回の肝試し、私も一緒だったけど、妖夢の次に怖がってたのは貴女だからね?」
前回の肝試しが終わってかなり経つのに、今でも怖がって私の腕を離さないレナの姿は鮮明に覚えている。
いつもと違う甘えた姿が可愛かったし。
「前回はあの......ほら、本物の幽霊が出てきましたから」
「妖精は出てきてたけど幽霊は見なかったわよ? あぁ、幽々子と妖夢は見たけど。
ねぇ、レナ。無理だったら無理でいいのよ? 私も無理強いはしないから」
「ですが、お姉様と一緒に居たいですから......」
「......はぁー、そんな上目遣いで言われたら仕方ない、としか思えなくなるわ。
貴女の好きにしなさい。一緒に来るなら守ってはあげるわ」
「ありがとうございます、お姉様」
まぁ、何を言っても来るんでしょうけど。この娘、フランよりも甘えん坊なところがあるし。
だからこそ、しっかりと姉らしい姿を見せないとダメね。
この娘に、妹に失望されるのが何よりも嫌だから......。
「おーい。そこの姉妹とメイドー。順番決めるから早くこっちに来ーい」
「ってことらしいから、早く行きましょうか」
「はい、そうですね」
「ですね。お嬢様方。ご武運を」
「そんな戦場に行くみたいに言われてもねぇ」
呼ばれるままに、私達は順番を決めるために霊夢達の元へと向かったのだった──
──博麗神社近くの森
「よりによって最初とはねぇ......」
「ですね......。でも、後から来るらしいですし、待っていれば来ますからね。
最後よりはかなり、結構、とてもマシだと思います」
「とか言いながら、顔が引きつってるわよ?」
月と手に持っている蝋燭だけが淡く光る暗い森の中、軽く砂利と石で舗装された道を歩きながら、私達はゴールである森の出口を目指している。
それにしても歩きにくい。理由はレナが私の腕を離さないからなのだが......、歩きにくいからと言って、怖がっている妹の手を振りほどくわけにもいかない。
「だ、大丈夫です! お姉様が一緒なら......」
「そ、分かったわ。私の腕を離さないようにしなさいよ?
怖がってどこかに走って迷子になられたら、心配になるからね」
「は、はい。大丈夫です......」
はぁー、やっぱり動きやすい服を着てくるんだったわ。
まぁ、急に言われたから仕方ないけど......。
「......それにしても出てこないわね。お化け役」
「お化け役というか、本物のお化けが一人混じっているのですが......」
「あら〜、そっちにも妖夢がいるじゃな〜い」
「え? ふぁっ!? お姉様! お化け! お化け!」
暗い森の中という雰囲気もあるせいか、急に背後から幽々子に話しかけられただけでこの驚き用である。
やっぱり、この娘って吸血鬼に向いてないわね。まぁ、可愛いから何でもいいけど。
帰ったらまた、怖いから一緒に寝ましょう、とか言ってくるんでしょうねぇ。
「よしよし。大丈夫よ、私が居るからね......」
「グスッ......怖い......お化け怖い......」
「あら〜、ただ話しかけただけなのに、ここまで驚かれるなんてね〜。逆にびっくりしたわぁ」
「わざとらしいにも程があるわよ。っていうか、他にもそれやる気?
怖がるのはレナや妖夢くらいじゃなくて?」
「大丈夫よ〜。それで充分だから〜」
うわっ、この幽霊、天然そうに見えるのにかなりのドSね......。
っていうか、私の妹が標的にされてない? 気のせい?
「じゃ、私は他のメンバーを見てくるから、また後でね〜」
「もう来ないで下さい! お姉様ぁ......あの人怖いです......」
「ちょっと幽々子。レナが泣きそうに......あれ? もう行っちゃったのね」
あの亡霊、逃げ足だけは速いわね。今度あったら一回ガツンと......。
「ねぇ、お姉様......」
「え? あ、何かしら?」
「早く進んで終わらせましょう。もう、抜けたいです、こんな森......」
「えぇ、そうね。できる限り早く外に向かいましょうか」
前回よりも落ち着いてるわね。耐性でも上がったのかしら。
まぁ、何にせよ有り難いわ。レナはこうやって落ち着いてる方が──
「ひゅい!? お、お姉様っ! 虫! 虫嫌っ!」
「お化けと同じくらい怖がってない? っていうか虫って何処に......あぁ、あのムカデね。
私も苦手だわ。特にあの足がうねうねしてるのとかほんと......」
「早く! お姉様早く行こっ!」
「え、えぇ。そうね。行きましょうか」
レナに促されるまま、私達は森の出口へと早歩きで向かっていく。
舗装された道のお陰で迷うことは無いけど、逆に言えばお化け役達もこの道の先で待ち構えてるってことよね。
「あ、お姉様。蛍いますよ、蛍」
「ムカデはダメなのに蛍は大丈夫なの?」
「遠くで見る分には平気です。近くだと、その......
「アレ? アレって何?」
「ほら、よく台所に出てくる
蛍に似ていて? よく台所に出る......。
「あぁ、あの黒い──」
「あ! 名前は言っちゃダメですからね! 名前を聞くだけでも恐ろしいです......」
「貴女から言い出したのにそれってどうなのよ」
「ごめんなさい。でも、名前は本当に......。せめて黒き流星とかブラックメテオとか」
「何それ初めて聞いた。っていうか、どっちも同じじゃない......」
っていうか、肝試し中なのにこんなに気軽に話していいのだろうか?
まぁ、レナの気が紛れるならそれでもいっか。
「名前さえ言わなければいいのです」
「あぁ、はいはい」
「それで......あれ? お姉様。あんなところに人が......」
「ん? あら、本当ね。......道にでも迷ってるんじゃない?」
私達の通っている道の先には、見知らぬ黒い髪の女性が立っていた。
まぁ、どうせお化け役なんでしょうね。
後残っているのはアリスだけだし、アリスの人形かしら?
「それなら、道を教えてあげないと、ですね。そこの人間さーん」
「あ、ちょっとレナ──」
止めるよりも早く、レナが人間らしき人の場所へと着いてしまった。
そして──
「え? あ......きゃっ、きゃぁーー!」
人形の顔を見るなり、半場泣きながらこっちへと戻ってきた。
あぁ、やっぱりお化け役の罠だったのね......。
「おねえさまぁ!」
気付いた時には目前までレナが迫ってきていた。
「え、あ、そんなに速度付けて飛び込まれたらっ!」
そして、勢いよく私の胸に飛び込んできたレナを支えきれず、私は後ろへと倒れ──
「ない......? あれ? これは......糸?」
後ろへ倒れないようにと、いつの間にか背後には糸が張り巡らされていた。
「ごめんなさい。まさかここまで驚くとは思わなかったから」
「あ、あぁ、やっぱりアリスだったのね。
大丈夫よ。この娘、ちょっと臆病なだけだから」
「もうイヤ......。お姉様。早く出たいよぉ......」
「よしよし。分かったから落ち着きなさい」
レナでこの驚き様とはねぇ。......ちょっとだけ、霊夢が心配になるわ。主に妖夢のせいで。
「まぁ、もう終わりだから神社に戻っていいわよ」
「あら、ビックリポイントは二つだけ?」
「いえ、本当はもう少しあるけど、その様子だとね」
「まぁ......そうねぇ」
まだあの人間らしき物が人形だと分かっていないのか、レナは抱きしめている腕を離さない。
それでもまぁ、何処かに行って迷子になられるよりはマシだけど。
「レナ。安心しなさい。もう神社に行くから。もう何も怖いモノはないわよ」
「お姉様以外見たくない......」
「かなり怖かったようね。顔無し人形が」
「えぇ。吸血鬼だと言うのに......。まぁ、それもこの雰囲気のせいだから仕方ないわ」
まぁ、雰囲気が無くても、急なことにはあたふたするようだけど。
「それじゃ、真っ直ぐ向かいなさいよ。私はここで待機しているから」
「えぇ、それじゃぁまたね。レナ、歩ける?」
「無理......。抱っこして」
「おんぶはいいけど抱っこはダメ。歩きにくいから」
「ならおんぶでもいいです......」
残念そうな顔をしながら、レナはゆっくりと私の背後に回って、私の首に手を回した。
そして、そのまま私に身を預けて安心したのか、すぐに耳元で安らかな寝息を立て始めた。
「もしかして寝ちゃった......?」
「......すぅー......」
「寝るの早いわねぇ。......それにしても軽いわね。ちゃんと食べてるのかしら?」
歩くのもすぐに面倒になった私は少しだけ浮きながら、神社へと向かって飛んでいった。
そして、しばらく飛び続けると、来た道から何度も叫び声が響いていた。
「......妖夢ね。あいつもかなりの怖がりよね。
まぁ、大体は主の......ん?」
ふと目線を感じたので、その先を見てみた。
すると、少し離れた位置にある木の影。そこに白い着物を着た女が立っていた。
それも、何をするわけでもなく、ただこちらを見つめていた。
「......人間、じゃないわよね? だったら妖怪かしら?」
気にはなったものの、レナをおんぶしている私に何かできる訳が無い。
何かしようとも思わない。
だからこそ、目を凝らして見るだけにした。
その女の顔は暗いせいで全く見えない。それに、薄ら女の先が透けて見える気がする。
「何かしら? あいつ......。なんかウザ......あら?」
一瞬。本当に瞬きをした一瞬のことだ。
その一瞬目を離したうちに、その女は消えて、居なくなっていた。
「......何だったのかしら、あの女は......」
まぁ、どうでもいいわね。今は早く帰らないと。
そう言えば......私、夜の明るさも昼とあまり変わらなく見えるのに、どうしてあの女の顔を、どうしてこの森が見えにくいのかしら?
まぁ、もういつも通りだから問題無いわね。
いつもと変わらない夜の道。
私は眩しい程の光が溢れる神社へと帰っていった────