東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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今回はB側の話。会話だけであまり進展しないのでご注意を()


13、「扉の先 Bルート」

 side Kirisame Marisa

 

 ──竹林(屋敷内)

 

「はぁー、貴女のせいで出遅れたじゃない」

「私だけじゃないだろ? 霊夢もだぜ」

 

 言い争いにかなり時間を割いてしまった気がする。

 それにしても、あの幽霊と吸血鬼達、早すぎないか?

 ちょっとくらい、待っててくれてもいいと思うんだがなぁ。

 

「それにしても、あいつらはあいつらで先々行きすぎよ! 全く、巫女である私を差し置いて異変を解決だなんて!」

 霊夢も同じように思っていたのか、大声に出して苛立ちを発散させていた。

 ──まぁ、いつもサボってる霊夢が言うのもおかしいと思うけどな。

 

「そう思うのなら早く行けばよかったでしょうに。まぁ、急げばまだ間に合うと思いますけど」

「言われなくても......そう言えば、貴女のスキマで移動すればいいんじゃないの?

 それなら、すぐにでも追いつくでしょ?」

「スキマの中は私の家同然。他人を土足で入らすわけにはいきません」

「靴を脱げばいいのね」

「そう言う問題ではないのだけど」

 

 霊夢......結構(あいつ)と仲良いんだな......。やっぱり、強い妖怪に好かれる質なのか?

 ......私も強くならないとな。霊夢と並べるくらいには。

 

「魔理沙? 浮かない顔だけど......行かないの?」

「ん? あ、あぁ、行くぜ。霊夢達に負けないようにな!」

「......そっちの方が貴女らしいわね。さて、急ぎましょうか。霊夢達は先に行っちゃったみたいだし」

「え? ......お、おーい! 置いてくなよー!」

「やっぱり気付いてなかったのね......」

 

 霊夢達に負けないためにも、私達は急いで長い廊下の奥へと急進んでいった──

 

 

 

 ──竹林(屋敷内)

 

「ん、あれは......」

 

 長い廊下を進んでいくと、幾つもの扉があった。

 そして、廊下の先には──

 

「幽霊組と......兎? 倒されているみたいだけど、敵かしら?」

「みたいよ。幽々子〜」

「あらぁ、遅かったじゃなーい」

 

 戦っていたらしき幽霊組に、倒されたらしい地面に倒れている兎がいた。

 

 こいつが黒幕か? いや、そんな強そうには見えないな。

 そう言えば、あの吸血鬼達がいないな。あいつらが黒幕を追っていったってことなのか?

 

「この娘達が喧嘩してね。大変だったのよ?」

「あんたは見てただけじゃない」

「見るのも大変なのよ。目を使うから」

「あっそ。で、こいつが黒幕?」

 

 倒れている兎を指差しながら、霊夢がそう言った。

 ──本当にこいつが黒幕なら、もう異変は終わってることになるが......まだ終わってる感じはしないな。

 まだ妖怪連中がピリピリしてやがる。

 

「違うわ〜。黒幕らしき人なら、扉の奥へ進んでいったのよ。それを吸血鬼(あの娘)達が追いかけているわ」

「......それって、あの扉?」

「え? ......いえ、違うわ。あっちの扉よ〜」

 

 幽々子は霊夢が指差した扉とは別の扉を指差して、そう言った。

 

「へぇー、あっち、ね......」

「霊夢? どうしたんだ? あの扉に何かあるのか?」

「いえ、何かある気がしただけよ。早く黒幕を追いましょう」

「......いえ、確かに何かあるみたいよ?」

 

 紫がそう言って、霊夢が指差した扉と同じ扉を指差す。

 ──そう言えば、霊夢の勘って良いんだよな。

 胡散臭いんだが、紫も言ってるし、本当に何かあるのか?

 

「......どうする? 行ってみる?」

「でも、黒幕の方が最優先じゃないの? 貴方達の目的もそうなんでしょ?」

「まあ、確かにそれもそうよね」

「......霊夢。ここは貴女の判断に任せるわ。

 黒幕を追うか、何かある扉の奥に進むか。貴女が選びなさい」

 

 こいつら、本気で異変を解決しに来たのか分からないな。

 巫女として異変を解決するために黒幕を倒しに行くか、自分の勘を信じて進むか。

 霊夢は一体どちらを選ぶんだろうか。

 だがまぁ、霊夢の勘は頼りになる。ここは霊夢の決めた道に......。

 

 私がそう考えてるうちにも、霊夢は「うーん」と頭を抱えていた。

 そして、一分ほど経ち──

 

「決めたわ! 何かありそうな部屋に行きましょう!」

「......それはまた、どうしてかしら?」

「異変を解決するために必要な、何かがありそうな気がするから」

「それはまた根拠の無いことを。でも、貴女の判断に任せたのは私ですし、そうしますわ」

「全く、本当に異変を解決する気があるのかしら。魔理沙、行くわよ」

「ん、ちょっと待ってくれ」

「え?」

 

 そうこうしているうちに、霊夢と紫がその扉を開けていた。

 ──アリスには悪いが、ここは......。

 

「......アリス、私は霊夢達が言ってる扉の先に行こうと思う」

「はぁ? ど、どうしてよ?」

「理由は......まぁ、無いぜ。ただ、そっちの方がいい気がするんだ」

「......貴女も根拠の無いことを......」

「あら、紫に......いえ、霊夢に付いて行くの〜?」

「うわっ!? お、おい! 急に出てくるなよ!」

 

 いつから話を聞いていたのか、いつの間にか横には幽々子がぷかぷかと宙に浮かんでいた。

 ──いつも驚かされているレナの気持ちがちょっとだけ分かった気がするぜ。

 

「あらあら、ごめんなさいね〜。で、どうなのかしら〜?」

「ん、付いて行くぜ。そっちの方がいい気がするからな」

「分かったわ〜。なら、黒幕の方は私達に任せて行きなさい。

 大丈夫よ。吸血鬼の娘達も先に行ってるし、相手の強さを見るに、私達が行けば確実に勝てるはずだから〜」

「え? 幽々子様──」

「妖夢。貴女も勝てると思うわよね? その刀で斬れないものはあんまりないのよね?」

「え、あっはい。き、斬れないものなど、あんまりないです!」

 

 なんだか......言わせてる気がするぜ......。

 でもまぁ、安心はできるな。こいつらもかなり強い方だしな。

 

「ありがとな。それじゃぁ、私は行くぜ。アリス。お前はどうするんだ?」

「......はぁー、仕方ないわね。私も行くわよ。貴女だけだと心配だから」

「へへっ、ありがとな」

「ほら、そんなのは後ででいいわよ。急いで追わないと、見失うかもしれないわよ?」

「ん、あっ、そうだった。それじゃぁ、幽々子! 任せたぜ!」

「任されたわぁ。さぁ、妖夢。行きましょう」

「......はい、幽々子様」

 

 私はアリスと一緒に、急いで扉の先へと進んでいった────

 

 

 

 

 

 side Konpaku Youmu

 

 ──竹林(屋敷内 扉の先)

 

「......幽々子様、どうしてあんな嘘を?」

「嘘って何かしら〜?」

「とぼけないで下さい。あの黒幕らしき人、幽々子様と同等。いえ、失礼ですけどそれ以上の強さですよ。

 あんなに強い人は、吸血鬼達も含め、五人で本当に勝てるかどうか......」

「あら、そんなことはないわよ。だって......弾幕ごっこなのよ?」

「......あぁ、なるほど」

 

 そこまで言われて、ようやく気付いた。

 ここは冥界でも何でもない。ここは幻想郷だ。

 幻想郷には幻想郷のルールがある。部下らしき兎ですらそのルールをしっかりと守っている。

 そのルールを守っているうちなら、私達にも勝機はある。

 

「そういうこと。私は嘘をついてないわ〜。あの敵は確かに強い。それも、私達じゃ敵わないくらい。でも、それでも勝てるわ。弾幕ごっこならね」

「......幽々子様、お上手ですものね」

「あら、妖夢も上手だと思うわよ〜。あぁ、それと。もう一つあるわ。勝てる理由」

「え? そうなんですか?」

 

 一体どういう理由なんだろう?

 一生懸命考えてみるも、全く分からない。

 

「あの敵さん、全力を出す気がないのよ。理由は分からないけど、力をある一定よりも出さないつもりらしいわ」

「......よく分かりましたね。まだ戦ってもないのに」

「その辺り、私と似ている気がしたから〜」

「要するに、霊夢の勘と同じような根拠の無いことなんですね。分かりました」

 

 私は「はぁー」とため息をつき、長い廊下の先へと急いだ────

 

 

 

 

 

 side Kirisame Marisa

 

 ──竹林(屋敷内 扉の奥)

 

「霊夢ー! 置いてくなよー!」

「魔理沙? 付いてきたのね」

「まぁな。ちょっと心配になったんでな」

「あらそう。......それよりも窓の外、見なさい」

「え? ......月、か?」

 

 窓の外には月が、それもかなり大きな月が見えていた。

 おそらく、大きく見えるのは近くにあるせいだとは思うが......それにしても大き過ぎないか?

 まるで、空高くまで飛んできたみたいだ。

 

「そうよ。月よ」

「それも、本物みたいだわ」

「......そうね。本物の月に見えるわ」

「本物? なら、本当の黒幕、月を偽物に替えた奴はこの先にいるってことか?」

「さぁ? そこまでは分かりません。ですが、この先を行ってみる価値はできました」

 

 そうか......。やっぱり、霊夢の勘は頼りになるな。

 こっちに付いてきて正解だったぜ。

 

「......あら、もう終わりみたいよ。誰かいるわ」

「......本当だな。おい! そこにいる奴! 誰だ!?」

「ちょ、ちょっと! バレるじゃない!」

「え? バレても勝てば同じじゃないか?」

「そ、それはそうだけど......!」

「あら、騒がしく、珍しいお客様なこと」

 

 そうして、奥に見える誰かがゆっくりと、こちらを振り返ったのだった────


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