東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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永夜抄、finalAの方のお話。
紅魔組視点です。最初にちょっと冥界組入るけど()


12、「扉の先 Aルート」

 side Konpaku Youmu

 

 ──竹林(屋敷内)

 

「幽々子様、こちらです」

「は〜い」

 

 幽々子様に促され、霊夢達が言い争いをしているうちに、私達は屋敷の中へと入ってきた。

 

「それにしても、よかったのですか?」

「え〜、何が〜?」

「あの方達を置いてきて、ですよ。ここには、何かの異変を起こした黒幕がいるんでしょう?

 異変を起こすとなると、おそらく幽々子様に近いレベル。

 そうなれば、私では太刀打ちできないですよ?」

「大丈夫よ〜。私達は敵の数を減らせればそれでいいから〜」

 

 ふむ、要するに、私達は後から来るであろう霊夢達の障害を減らせればいいと。

 というか、どうしてわざわざそんな遠回りなことを......。

 幽々子様なら、黒幕とも戦えるでしょうに。敵がどれくらい強いか分からないけど。

 

「遅かったわね」

「早速ですね」

「早速ね」

 

 行く手を阻むように現れたのは、足元に届きそうなほど長い薄紫色の髪を持ち、吸血鬼姉妹のように紅い瞳を持つ女性だった。

 その頭には、兎の耳のようなものが生えている。

 ──って、あれ? 耳の付け根、ボタンみたいなのが付いてる気が......。いえ、気のせいね。うん、絶対に気のせい。

 

「全ての扉は封印したわ。もう姫は連れ出せないでしょう?」

「何をわけのわからないことを。とりあえず、敵みたいですから斬りますね」

「まだまだ、焦っちゃダメよ」

「って、なんだ、幽霊か。焦らせないでよ、もう。

 用が無いなら帰ってよ。今取り込み中なの」

「それは無理な相談ね。早くあの月を元に戻しなさい。妖夢もそうして欲しいよね?」

「え、えぇ、そうですね」

 

 毎度のことだけど、急に振るのはやめて欲しいです、幽々子様......。

 それにしても、月ってどういうこと? 異変に関係しているのかな?

 

「あの月? ああ、地上の密室の術のこと?」

「そうよ。これは物凄く迷惑な術だわ。即刻やめてもらいます。

 妖夢、さぁ斬っておしまい」

「え、えぇ、行きますよ?」

「荒っぽい幽霊ね。少しは話を聞いてからでもいいじゃない」

「あら、お迎えかと思ったら、幽霊? まぁ、お迎えが来れる筈が無いけど」

 

 奥の扉から、銀髪を三つ編みにし、赤と青の特殊な配色の服を着た女性が出てきた。

 見た目は人間だが、雰囲気からして尋常ではない力を感じる。

 おそらく、この人は幽々子様と同等か、それ以上の力を持っている。

 

「妖夢、二人目よ。これも斬るのよ」

「え、えぇ? 行きます、の?」

「ほら、そんなにいじめちゃ可哀想じゃない。月の件は私の術よ。

 ただ、これも姫とこの娘のため。幽霊とはいえ、このくらいの優しさが無いといけないわ」

「それは残念だったわね。これから私達以外の人も来るから、止めないっていうのは無理な話だと思うわよ。

 あの人達、かなり非人道的だからねぇ」

 

 幽々子様......それ、後で知られたら、私達も退治されるんじゃ......。

 い、いや、忘れよう。考えないようにしよう......。

 

「あら、他にも......。そう言えば、未だに外で言い争っている人がいるわね。

 それなら......ウドンゲ、ここはお前に任したわ。時間を稼ぎなさい。

 それと、間違っても姫を連れ出されないようにね」

「お任せ下さい。斬られはしないけど、扉は一つも開けさせません」

 

 あぁ、なんだ。幽々子様と大差ないじゃないか。

 それにしても、敵が逃げてしまったけど、大丈夫なんでしょうか。

 

「脳が逃げて、鳥が残る。妖夢、斬る相手が一人減ったわね」

「え? えぇ、斬りますってば」

「ふふふ。師匠や月のことばっかに気を取られて......。

 既に私の罠に嵌っていることに、気が付いてないのかしら?」

「え!?」

 

 罠? いつの間に!?

 あ、でも言ってるだけとか......いえ、あの目は本当のことみたいね。

 

「貴方の方向性は狂い始めている。もう真っ直ぐ飛んでいられない!」

「あ、そう言えば、幽々子様、なんであいつが鳥なんですか? 兎じゃぁ......」

「兎は、皮をはいで食べると、鳥になるの。覚えておきなさい」

「嘘を教えるな。っつか、無視するな!

 私の目を見ても、まだ正気でいられると思うなよ!」

 

 え? 目を見ても......?

 あ、私、さっきから見てるけど、大丈夫かしら?

 

 そんな不安を胸に、私は剣を手に持つのであった────

 

 

 

 

 

 side Remilia Scarlet

 

 ──時間は少し進み 竹林(屋敷内)

 

「このくらいでいいかしら......。あら、。って、違う人達の方ね」

 

 窓から月が見え、永遠とも思える長い廊下を飛んでいくと、奥には銀髪の女性が一人、いた。

 

「貴方が黒幕ね。一発で分かったわ。この悪党面で」

「酷い言われようだわ。別の人にも話したけど、確かに月の件は私の仕業。

 でも、これも姫とあの娘のため」

「そう、ならやることは一つね。貴方を倒して月を元に戻す」

「本当に非人道的というか、三人中、二人は人外じゃない......」

 

 非人道的? 私が? かなり人道的よ?

 家族限定で。

 

「それにしても、気付かないのかしらね」

「え? 何に?」

「あれよ。ほら、窓の外」

 

 窓の外? 窓の外なんて、月くらいしか無い......いや、違う!

 

「しまった! 嵌められたわ! アレは月じゃない!」

「確かに、ちょっと大き過ぎますわねぇ」

「咲夜、それは近いからだと思いますよ......」

「そういうこと。貴方達は偽物の月と永い廊下に導かれてここに来た。満月は月と地上を結ぶ唯一の鍵なの。

 その鍵を壊せば月と地上は行き来できなくなる。

 ほら、こんな風に偽の幻影に惑わされてね」

 

 幻影......。どうしてこんな回りくどいことまでしてここまで連れて来たのかしら?

 もしかして、こいつも黒幕じゃない? いえ、黒幕なのは確か。

 異変はこいつが起こしたこと。それは自供してるし......姫、か?

 さっき言ってた姫を守るために、こんなことをしてるのかしら?

 

「あら、幻影ですって。さっきの滅茶苦茶長い廊下も幻影かしら」

「そうかもしれませんね。あれだけ長いと、掃除が大変そうですよね」

「幻影に決まってるじゃない。あれだけ長いと、掃除用のモップが持たないから」

「モップじゃなくて、雑巾掛けかもしれませんよ。腰を痛めそうですが」

「そんなこと、気にしなくていいじゃない。幻影よ、幻影」

 

 まぁ、確かに気にしなくてもいいわね。

 だけど、こいつを倒して異変は終わるのかしら? 姫ってやつを倒さないと......そこは霊夢達に任せればいいわね。

 

「あぁ、一つ、聞いていい? どうしてこんな大掛かりなことをしているの?」

「月からの追手から、姫を守るためによ。

 今夜はこのまま朝を迎えれば、もう月から使者はやってこないでしょう」

「あぁ、さっきから兎ばっかり見かけたのは月の兎なのね」

「いや、ほとんどは地上で捕まえた兎。生粋の月の兎は鈴仙だけよ」

 

 鈴仙? あぁ、さっき幽々子達と戦っていた兎か。

 確かに、他よりも強い感じはしたわね。

 

「まぁ、どうでもいいわ。満月を奪ったやつが分かっただけでいいの。理由なんてどうでもいい。

 ここに来るまで、私達、吸血鬼から月を奪ったやつをどうしようか考えていたわ。

 そして、今決まった。レナ、咲夜。手加減無しよ」

「お嬢様、お言葉ですが、今まで会ってきた敵も手加減してないですよ」

「え......じゃぁ、死ぬ気で」

「死にませんよ」

「お姉様、死んじゃ嫌ですからね」

 

 このメイド......。まぁ、いいわ。

 というか、レナがなんか勘違いしてない? まぁ、いいけど。

 

「随分と余裕ねぇ。ここまで誘い出したのも、思う存分遊ぶため。

 安心していいわ。朝になれば満月は元に戻してあげるから。後は朝まで遊ぶだけでいいのよ」

「お嬢様、よかったですわね。勝っても負けても満月は元に戻るようで」

「何を甘いことを言ってるの? なめられたお返しをしないと、幻想郷での威厳が保てないじゃないの。

 もはや満月なんてどうでもいいの」

「お姉様、先ほどと言ってることが違います。それに、お姉様に傷ついて欲しくないのですが......」

 

 はぁー、またそんな悲しそうな目で私を見る......。

 やっぱり、レナを連れてきたのは間違いだったかしら?

 この娘、自分の心配なんかせずに、私のことばっかり心配してヒヤヒヤするし......。

 

「ふん、そこの娘が言ってる通りね。ガキの癖に、貴女みたいな幼い子供が永遠の民である私に敵うはずが無いじゃない。

 貴女の積み重ねてきた紅い歴史。私の歴史で割れば、ゼロよ。永久から見れば、貴女は須臾」

「む......なんだかお姉様がバカにされてる気がします」

「こら、相手の挑発に乗らないの」

「そうですよ、レナ様。年長者は敬わないといけませんよ」

「あんたは一番若いけど」

 

 確か、まだ咲夜は十代よね。

 ......若すぎるにも程があるわ。レナなんてもうすぐ五百歳なのに。

 人間って本当に若いわよねぇ。

 

「あと、時を止めていたのは貴方達か、そのお仲間でしょう?

 そんなことして、姫の逆鱗に触れてなければいいけど......」

「ほら、レナ、咲夜。私を敬いなさい。存分に」

「いつも敬ってますよ? お姉様は」

「話を聞いていない。最近の若者はこれだから困るよ。

 貴方達には、話よりこの弾幕の薬が必要なみたいね!」

 

 その言葉が弾幕ごっこの開始の合図となり、私達の戦いは始まったのだった────


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