side Unknown
──竹林
「......久しぶり、ですね」
今、目の前には紅白の巫女と白黒の魔法使いが戦っているのが見える。
そして、その戦っている前には、いつも見ていた、いつも一緒にいた人達がいる。
「話したいのに話せない。......仕方ないですよね。これはここに来てから決めてたことですし」
これは仕方のないこと。いや、そうしなければいけないこと。
そう言い聞かせ、その場を去ろうとする。
「できる限り、会わないように、気付かれないように......巻き込まないようにしないと。
大切な人、大切な思い出。ようやく......」
最後に、大切な人達をもう一度、見るために振り返った。
どうしてここに来たのかは分からない。
いや、本当は分かっている。大切な人達を巻き込みたくない。それなのに、もう一度会いたいと思っているからだ。
矛盾しているのは分かっている。会わなければ、見つからなければ巻き込む可能性はほとんどない。
なのに......どうしても......最後になる前に、姿を見ておきたかった。
もう、違うのに......。
「......ごめんなさい。こんなこと......知ったら絶対に怒りますよね。止めますよね」
頬に何か水のようなものが流れたのを感じる。
何かが込み上げてくるのを感じる。
これは......決意だろうか。それとも......。
「でも、もう手遅れになんかなりたくありません。一人だけだとしても、成し遂げて見せます」
誰にも言えない言葉を、虚空に向かって呟き、久しぶりに来たその場を後にした────
side Remilia Scarlet
──竹林
「んー?」
突然、何の前触れもなくレナが後ろを振り返った。
そして、キョロキョロと辺りを見回したのだ。
「どうしたの? 何かいた?」
「誰か......いえ、気のせいです。何もありません」
「ふーん、そっ、ならいいけど。何か気になることがあったら、隠さずに言いなさいよ」
「はい、言いますよ。多分」
多分って......まぁ、いいけど。レナは嘘をつくのが下手だから、すぐに分かるしね。
「あ、そろそろ終わりそうよ〜。魔理沙が構えてるみたいだしね〜」
「ん、本当ね。やっぱり、決め技はあれなのね」
いつものように、魔理沙はミニ八卦炉を両手に構え、霊夢に向かって──
「霊夢! 覚悟しろよっ! マスター......スパークっ!」
『マスタースパーク』を放った。
極太の光は真っ直ぐ霊夢へと飛んでいったが、流石に隙が大きかったせいか、霊夢には難なく横に避けられてしまった。
「──っと。危ないじゃない。私、まだスペルカード使ってないのよ?」
「ちぇっ、やっぱりお前には当たらないか。それなら──」
「ちょっと待ちなさい!」
「ん? なんだ? 勝負する気にでもなったのか?」
魔理沙と霊夢の勝負を中断させたのは、八雲紫だった。
今気付いたけど、いつの間にかアリスと紫の使い魔の戦闘も終わっているわね。
それに、二人ともどこか、別の方向を......あっ。
「いいえ、違いますわ。あれを見なさい」
「ん? あれって私がマスパを撃った......なんだあれは? あんな物あったか?」
魔理沙が『マスタースパーク』を撃った先に、いつの間にか屋敷のような建物が出来ていた。
いや、出来ていたというよりは、現れた、の方が正しいのかしら?
「結界、ね」
「正解。さて、仲間割れはここまでにして、異変の黒幕が居るであろう屋敷に行きましょう?」
「先に始めたのはお前じゃなかったか?」
「あれは実力をはかるため。これから先、弱ければ死にますので、試しただけですわ」
「試す必要はなかったと思うけどな」
既に仲間内で対立が起きてるけど、これから大丈夫なのかしら......。
ただ単に、みんなが血気盛んなだけかもしれないけど。
「ふふっ、でもまぁ、お礼だけは言っておきます。
こうして、貴女のお陰で黒幕の住処を見つけることができましたから」
「なんか腑に落ちない気もするが......まぁいいぜ。異変が終わるまで一時休戦だな」
「終わったらまた戦う気なの? 私はごめんよ。疲れるわ」
「おいおい、まだ勝負はついてないんだぞ?」
「別に私の負けでもいいんだけど......」
「いやいや、ちゃんと最後までやろうぜ!」
あっちは大変ねぇ。特に魔理沙に絡まれてる霊夢が。
そう言えば、霊夢が異変以外で弾幕ごっこしてるの見たことないわね。
「お姉様。早く行きません?」
あ、私の異変が終わった後に、レナとしてたわね。
何気に、私よりもレナの方が追い詰めてた気がするのよねぇ。
「あれ? お姉様ー?」
今度、レナと遊んでみようかしら。弾幕ごっこで。
まぁ、私が勝つに決まってるけど。楽しそうだしね。
「むぅ......カリスマ?」
「ブレイク。って何言わせるのよ! それと別にブレイクしてないわ! したことないから!」
「別に言わせてないですよ? それに、ブレイクするカリスマも......いえ、ありますね。お姉様、優しいですし」
「レナ様。そこは嘘でも無いと言うのが基本かと......」
「咲夜は何吹き込んでるのよ! まぁ、今はいいわ。それで、レナ? どうしたの?」
「早く行きましょう? 霊夢達が言い争っている間に、黒幕だけ倒してしまいましょう?」
あぁ、確かにそうしてもいいかもしれないわね。
あっちはまだ続きそうだし......。って、あら? あの幽霊達はどこに......?
「ねぇ、レナ、咲夜。あの幽霊達はどこに行ったの?」
「あ、そう言えば......どこに行ったのでしょう?」
「あぁ、あの方達なら、我先にと屋敷の中に......」
「......確かに急いだ方がいいわね。一応......霊夢ー! 先に行ってるからー!」
あ、言い争っているせいか、聞こえてないみたいね。
まぁ、紫はこっち見てたし、聞こえてるだろうから大丈夫よね。
「さっ、レナ、咲夜。行きましょうか」
「他の人は放っておいていいのです?」
「大丈夫よ。そのうち来ると思うから」
「お姉様がそう言うなら......行きましょうか」
「お嬢様方。ここから先は、私が先導します」
「えぇ、お願いね。咲夜」
未だに気付かない霊夢達を置いて、私達は屋敷の中へと足を踏み入れるのだった──
──竹林(屋敷内)
「広いわね。レナ、はぐれないようにしなさいよ」
「私、方向音痴じゃないですよ?」
「へぇー、よく言えるわねぇ。咲夜。レナが道に迷わないように、注意を払ってて」
「はい、分かりました」
「絶対に違うと思うのですけど......」
この娘ったら、どこまで意地っ張りなのかしら。
昔、と言ってもここに来てからだと思うけど、道に迷ってフラン達を困らしてたのに......。
「......お嬢様。この先に冥界の幽霊方と誰かがいます。どうなされますか?」
「異変の黒幕かしら? まぁ、行くしかないわね。咲夜、後ろに下がっててもいいけど、どうする?」
「私はお嬢様の矛であり盾でもあります。後ろに下がるなどという選択肢はありません」
「そう。なら任せたわよ」
やっぱり、咲夜がいてくれて助かるわぁ。
最初、家に来たときはまだまだ未熟な子供だったのに......成長するものなのね、人間って。
私達も、まだ子供だから、成長するのかしら? あまり想像つかないけど。
「あれは......兎、ですかね?」
「え? 何が?」
「ほら、お姉様。あれですよ、あれ」
レナが指差す方向には、冥界の幽霊と庭師、そして、長い薄紫色の長髪と兎の耳らしきものを持った女性が戦っていた。
少し出遅れちゃったわね。......でも、黒幕って言うには、少し力不足な気もするわね。
それでも強い方みたいだけど。
「手伝う?」
「いえ、あれは任して、黒幕を探しましょう。奥に幾つか扉がありますし、そのどれかから行けると思いますし」
「まぁ、そうね。そうしましょうか」
って、あれ? どうしてレナは黒幕じゃないって......いえ、私と同じようなことを思ったのね。
私達、姉妹だし、考えることは似ててもおかしくないでしょうし。
「あ、吸血鬼姉妹とその従者じゃない〜。遅かったわね〜」
「敵を目の前にしてよそ見とか、油断してたらすぐに死ぬわよ!」
幽々子がこちらを振り返った瞬間に、兎が幽々子に向かって指を指し、弾幕を放った。
「ちょ、前! 前見なさいって!」
「──斬り捨て御免。幽々子様、ちゃんと戦って下さい......」
が、当たるかと思われた瞬間に妖夢が弾幕を真っ二つにしてしまった。
「あら〜、ごめんなさいね〜。でも、妖夢が守ってくれるって信じてたのよ?」
「そう言うのはいいですから、敵に集中してください。ここは私達に任して、貴方達は先へとお進み下さい。
黒幕らしき敵はあの扉の先へと入っていきましたので」
「分かったわ。レナ、咲夜。行くわよ!」
「仰せのままに」
「......はい。行きましょうか」
「レナ? どうしたの? 何か気になることでもあった?」
一瞬、レナの表情が暗く見えた。
こういう顔をする時は、大抵の場合何か気になることがあったか、考え事をしていた時だ。
おそらく、今回は前者の方だろう。
「いえ、大丈夫です。先を急ぎましょう」
「貴方達も通さな、っ!?」
「はぁー、早く行ってください。止めとくのも大変なので」
邪魔が入りそうになったが、妖夢が進行方向を防いでくれたお陰で助かった。
これで、黒幕に......。
「ありがとうね! 帰ったらお礼はするから!」
「なら、無事に帰れたら料理作ってね〜」
「さっ、あれは無視して行きましょう!」
「確かに量がやばいですしね......」
この異変の黒幕を倒すため、私達は妖夢の言っていた扉の先へと入っていった────
切るところ迷って、結局こうなった模様()
5ボスの会話は次の話でやりまする。
後、投稿時、評価が495になったので、日常編(末妹編)を後日、投稿する予定です。
ちなみに、リクエストとかは活動報告でコメントしてくだされば、やるかもしれません()