東方紅転録   作:百合好きなmerrick

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題名ほぼそのままの模様


11、「そしてバラバラに」

 side Unknown

 

 ──竹林

 

「......久しぶり、ですね」

 

 今、目の前には紅白の巫女と白黒の魔法使いが戦っているのが見える。

 そして、その戦っている前には、いつも見ていた、いつも一緒にいた人達がいる。

 

「話したいのに話せない。......仕方ないですよね。これはここに来てから決めてたことですし」

 これは仕方のないこと。いや、そうしなければいけないこと。

 そう言い聞かせ、その場を去ろうとする。

 

「できる限り、会わないように、気付かれないように......巻き込まないようにしないと。

 大切な人、大切な思い出。ようやく......」

 

 最後に、大切な人達をもう一度、見るために振り返った。

 

 どうしてここに来たのかは分からない。

 いや、本当は分かっている。大切な人達を巻き込みたくない。それなのに、もう一度会いたいと思っているからだ。

 矛盾しているのは分かっている。会わなければ、見つからなければ巻き込む可能性はほとんどない。

 

 なのに......どうしても......最後になる前に、姿を見ておきたかった。

 もう、違うのに......。

 

「......ごめんなさい。こんなこと......知ったら絶対に怒りますよね。止めますよね」

 

 頬に何か水のようなものが流れたのを感じる。

 何かが込み上げてくるのを感じる。

 

 これは......決意だろうか。それとも......。

 

「でも、もう手遅れになんかなりたくありません。一人だけだとしても、成し遂げて見せます」

 

 誰にも言えない言葉を、虚空に向かって呟き、久しぶりに来たその場を後にした────

 

 

 

 

 

 side Remilia Scarlet

 

 ──竹林

 

「んー?」

 

 突然、何の前触れもなくレナが後ろを振り返った。

 そして、キョロキョロと辺りを見回したのだ。

 

「どうしたの? 何かいた?」

「誰か......いえ、気のせいです。何もありません」

「ふーん、そっ、ならいいけど。何か気になることがあったら、隠さずに言いなさいよ」

「はい、言いますよ。多分」

 

 多分って......まぁ、いいけど。レナは嘘をつくのが下手だから、すぐに分かるしね。

 

「あ、そろそろ終わりそうよ〜。魔理沙が構えてるみたいだしね〜」

「ん、本当ね。やっぱり、決め技はあれなのね」

 

 いつものように、魔理沙はミニ八卦炉を両手に構え、霊夢に向かって──

 

「霊夢! 覚悟しろよっ! マスター......スパークっ!」

 

『マスタースパーク』を放った。

 極太の光は真っ直ぐ霊夢へと飛んでいったが、流石に隙が大きかったせいか、霊夢には難なく横に避けられてしまった。

 

「──っと。危ないじゃない。私、まだスペルカード使ってないのよ?」

「ちぇっ、やっぱりお前には当たらないか。それなら──」

「ちょっと待ちなさい!」

「ん? なんだ? 勝負する気にでもなったのか?」

 

 魔理沙と霊夢の勝負を中断させたのは、八雲紫だった。

 

 今気付いたけど、いつの間にかアリスと紫の使い魔の戦闘も終わっているわね。

 それに、二人ともどこか、別の方向を......あっ。

 

「いいえ、違いますわ。あれを見なさい」

「ん? あれって私がマスパを撃った......なんだあれは? あんな物あったか?」

 

 魔理沙が『マスタースパーク』を撃った先に、いつの間にか屋敷のような建物が出来ていた。

 いや、出来ていたというよりは、現れた、の方が正しいのかしら?

 

「結界、ね」

「正解。さて、仲間割れはここまでにして、異変の黒幕が居るであろう屋敷に行きましょう?」

「先に始めたのはお前じゃなかったか?」

「あれは実力をはかるため。これから先、弱ければ死にますので、試しただけですわ」

「試す必要はなかったと思うけどな」

 

 既に仲間内で対立が起きてるけど、これから大丈夫なのかしら......。

 ただ単に、みんなが血気盛んなだけかもしれないけど。

 

「ふふっ、でもまぁ、お礼だけは言っておきます。

 こうして、貴女のお陰で黒幕の住処を見つけることができましたから」

「なんか腑に落ちない気もするが......まぁいいぜ。異変が終わるまで一時休戦だな」

「終わったらまた戦う気なの? 私はごめんよ。疲れるわ」

「おいおい、まだ勝負はついてないんだぞ?」

「別に私の負けでもいいんだけど......」

「いやいや、ちゃんと最後までやろうぜ!」

 

 あっちは大変ねぇ。特に魔理沙に絡まれてる霊夢が。

 そう言えば、霊夢が異変以外で弾幕ごっこしてるの見たことないわね。

 

「お姉様。早く行きません?」

 

 あ、私の異変が終わった後に、レナとしてたわね。

 何気に、私よりもレナの方が追い詰めてた気がするのよねぇ。

 

「あれ? お姉様ー?」

 

 今度、レナと遊んでみようかしら。弾幕ごっこで。

 まぁ、私が勝つに決まってるけど。楽しそうだしね。

 

「むぅ......カリスマ?」

「ブレイク。って何言わせるのよ! それと別にブレイクしてないわ! したことないから!」

「別に言わせてないですよ? それに、ブレイクするカリスマも......いえ、ありますね。お姉様、優しいですし」

「レナ様。そこは嘘でも無いと言うのが基本かと......」

「咲夜は何吹き込んでるのよ! まぁ、今はいいわ。それで、レナ? どうしたの?」

「早く行きましょう? 霊夢達が言い争っている間に、黒幕だけ倒してしまいましょう?」

 

 あぁ、確かにそうしてもいいかもしれないわね。

 あっちはまだ続きそうだし......。って、あら? あの幽霊達はどこに......?

 

「ねぇ、レナ、咲夜。あの幽霊達はどこに行ったの?」

「あ、そう言えば......どこに行ったのでしょう?」

「あぁ、あの方達なら、我先にと屋敷の中に......」

「......確かに急いだ方がいいわね。一応......霊夢ー! 先に行ってるからー!」

 

 あ、言い争っているせいか、聞こえてないみたいね。

 まぁ、紫はこっち見てたし、聞こえてるだろうから大丈夫よね。

 

「さっ、レナ、咲夜。行きましょうか」

「他の人は放っておいていいのです?」

「大丈夫よ。そのうち来ると思うから」

「お姉様がそう言うなら......行きましょうか」

「お嬢様方。ここから先は、私が先導します」

「えぇ、お願いね。咲夜」

 

 未だに気付かない霊夢達を置いて、私達は屋敷の中へと足を踏み入れるのだった──

 

 

 

 ──竹林(屋敷内)

 

「広いわね。レナ、はぐれないようにしなさいよ」

「私、方向音痴じゃないですよ?」

「へぇー、よく言えるわねぇ。咲夜。レナが道に迷わないように、注意を払ってて」

「はい、分かりました」

「絶対に違うと思うのですけど......」

 

 この娘ったら、どこまで意地っ張りなのかしら。

 昔、と言ってもここに来てからだと思うけど、道に迷ってフラン達を困らしてたのに......。

 

「......お嬢様。この先に冥界の幽霊方と誰かがいます。どうなされますか?」

「異変の黒幕かしら? まぁ、行くしかないわね。咲夜、後ろに下がっててもいいけど、どうする?」

「私はお嬢様の矛であり盾でもあります。後ろに下がるなどという選択肢はありません」

「そう。なら任せたわよ」

 

 やっぱり、咲夜がいてくれて助かるわぁ。

 最初、家に来たときはまだまだ未熟な子供だったのに......成長するものなのね、人間って。

 私達も、まだ子供だから、成長するのかしら? あまり想像つかないけど。

 

「あれは......兎、ですかね?」

「え? 何が?」

「ほら、お姉様。あれですよ、あれ」

 

 レナが指差す方向には、冥界の幽霊と庭師、そして、長い薄紫色の長髪と兎の耳らしきものを持った女性が戦っていた。

 少し出遅れちゃったわね。......でも、黒幕って言うには、少し力不足な気もするわね。

 それでも強い方みたいだけど。

 

「手伝う?」

「いえ、あれは任して、黒幕を探しましょう。奥に幾つか扉がありますし、そのどれかから行けると思いますし」

「まぁ、そうね。そうしましょうか」

 

 って、あれ? どうしてレナは黒幕じゃないって......いえ、私と同じようなことを思ったのね。

 私達、姉妹だし、考えることは似ててもおかしくないでしょうし。

 

「あ、吸血鬼姉妹とその従者じゃない〜。遅かったわね〜」

「敵を目の前にしてよそ見とか、油断してたらすぐに死ぬわよ!」

 

 幽々子がこちらを振り返った瞬間に、兎が幽々子に向かって指を指し、弾幕を放った。

 

「ちょ、前! 前見なさいって!」

「──斬り捨て御免。幽々子様、ちゃんと戦って下さい......」

 

 が、当たるかと思われた瞬間に妖夢が弾幕を真っ二つにしてしまった。

 

「あら〜、ごめんなさいね〜。でも、妖夢が守ってくれるって信じてたのよ?」

「そう言うのはいいですから、敵に集中してください。ここは私達に任して、貴方達は先へとお進み下さい。

 黒幕らしき敵はあの扉の先へと入っていきましたので」

「分かったわ。レナ、咲夜。行くわよ!」

「仰せのままに」

「......はい。行きましょうか」

「レナ? どうしたの? 何か気になることでもあった?」

 

 一瞬、レナの表情が暗く見えた。

 こういう顔をする時は、大抵の場合何か気になることがあったか、考え事をしていた時だ。

 おそらく、今回は前者の方だろう。

 

「いえ、大丈夫です。先を急ぎましょう」

「貴方達も通さな、っ!?」

「はぁー、早く行ってください。止めとくのも大変なので」

 

 邪魔が入りそうになったが、妖夢が進行方向を防いでくれたお陰で助かった。

 これで、黒幕に......。

 

「ありがとうね! 帰ったらお礼はするから!」

「なら、無事に帰れたら料理作ってね〜」

「さっ、あれは無視して行きましょう!」

「確かに量がやばいですしね......」

 

 この異変の黒幕を倒すため、私達は妖夢の言っていた扉の先へと入っていった────




切るところ迷って、結局こうなった模様()
5ボスの会話は次の話でやりまする。

後、投稿時、評価が495になったので、日常編(末妹編)を後日、投稿する予定です。
ちなみに、リクエストとかは活動報告でコメントしてくだされば、やるかもしれません()

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